IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
最近、戦争戦争で疲れたのと次話が本編でないのが気になり過ぎて他の事に意識を回しづらかったものですから・・・。
時間軸的には原作開始のはるか手前、すでに混沌化している幼女時代のセレニアが束さんと知り合ってたらのIF設定回です。
私の名前は異住・セレニア・ショート。
現代日本で交通事故死した後に転生の神様だかなんだかの起こす奇跡によって《インフィニット・ストラトス》という作品世界に少女として生まれ変わらせられた男子高校生であり、所謂TS転生者と呼ばれている存在です。
転生後十六年の歳月が流れましたが、世は至って平和そのもの。何ひとつとして異常な事態は生じていません。
いちおう十年ほど前には「白騎士事件」と呼ばれる怪しさ爆発一大イベントが起こりましたが、これは転生時に与えられていた原作知識で理解済み。何も驚くことなど存在せず、私も家族も平和理に毎日を送ることができました。
それから六年。世の中から既存の通常兵器が無くなっていく一方で《IS》は、この世の春を謳歌するように世界中でイベントや大会が開かれる一大産業へと発展し、今や世界の主要産業はIS産業に取って代わられた・・・事になっていますね。世間一般の認識ではですが。
ですが実際のところ庶民生活にISが与えた影響は微々たるものに過ぎず、誤差の範囲にとどまることしか出来ませんでした。
今でも料理は人の手で作ります。調理ロボットは未だ出来ていません。お掃除ロボットも同様です。
都市部での主要な交通手段が電車とバスなのも変わりませんでしたし、空飛ぶ車もどこでもドアも発明されるのは二十二世紀の到来まで待つ必要がありそうです。
要するにISが与えた影響はIS業界内に留まり、それ以外の分野では+α程度のレベルでしかなかったという事。正直、つまらないなぁと言うのが私の感想でした。
まぁ仕方がないのかもしれませんけどね。どんなにロボットバトルの世界に生まれ変わろうとも所詮は現代の日本が舞台。逸脱できる次元も高が知れているという事でしょう。創作物の限界という奴です。現実は小説より奇なり、ではないんですよね、現実では。
そんな夢もフィクションも存在しない私の第二人生ですが、ひとつだけ特殊な出来事があったりします。
それは私が子供の頃に、ISの妖精さんと出会っていたことーーー
「じゃじゃーんっ! 呼ばれて飛び出て、IS妖精のタバネンさん登場だよーっ!
元気にしてたかいセレニアちゃん? その様子だと変わりなさそうだねぇ~?
いけない、いけないよセレニアちゃん! 子供は子供らしく、もっと天真爛漫に! 明るく楽しく和やかムードで笑顔になって!」
「・・・・・・・・・はぁ~・・・」
「ちょっとセレちゃん!? 久しぶりの再会なのに、溜め息はヒドいんじゃないかな!? タバネンさんだよ? タバネンさんなんだよ? 今話題の中心にいるISの妖精、しののん・タバネンさんなんだよ!?
もっとこう・・・ほら、あれだ!「え! あなたがあのタバネンさんなんですか!?」的な反応をだね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ああ!? ついには、溜め息すらもなしに!? タバネンさんには溜め息ひとつ与える価値もなしと判断されちゃったのかな!? 天災と呼ばれる私が凡人の子供ごときに見下されるなんて屈辱の極みだよ!
・・・・・・お願いセレちゃん、反応返して。君のぼんやりとした無表情でだんまり決め込まれるとガチで心が折れそうになるんだよ~・・・」
「・・・分かりました。分かりましたから早くそこから出てきなさい。
さすがの私でもドラム缶の中から頭だけ出してるウサ耳女性と会話するのは、精神的に辛いので」
何時でも何処でもドコからでも出てこれる(自称)ISの妖精さんと私は場所を選ばず、合う度にこんな会話を繰り返していました。今思い出してみると、相当に異常な状況だったのだなと思い知らされます。
間が差したと言うのもあるのでしょうが、単純に私が前世に引き続いてぼっちだったが為にリア充たちの過ごす友達ライフが理解できずに、この人との関係が異常なのかリア充なのか判断材料が乏しすぎたのです。今では赤面ものの黒歴史なので、心の底から抹消したい。ターンAはどこに埋まっていますか? この際Xでも可。
「さて! 今日は私をどこに連れて行ってもらえるのかな?
また私を驚かすことが出来たのなら、ご褒美を上げようじゃないか! こう見えてもタバネンさんはお金持ちだからね、娯楽に飢えているのさ!
パンがなければケーキを食べればいいじゃない! ケーキがないなら私のケーキを恵んであげようじゃない! 富豪が欲するのは物より愉悦!
けど、激辛麻婆だけは勘弁な」
「・・・・・・はぁ~・・・」
思い出せば思い出すほどに、溜め息ついた記憶しか出てこない。彼女と私の関係はか細い溜め息で繋がれた、糸より細くて不確かな物でしかありませんでした。
・・・・・・いえ、間違いです。ごめんなさい、もう一つだけ有りました。
彼女が求める未知。それを私が提供し続け、彼女が私の見せるもので満足している限りににおいて、私と彼女は友達でした。物という確かな存在が、私たち二人の間をしっかりと繋ぎ、情という不確かで形にない曖昧な物が介在する必要性を求めていなかったのでしょう。
今更ながらクソ生意気なガキだったと自嘲せざるを得ませんが、その一方で彼女の反応が妙におもしろくて新鮮で、また見てみたいと毎日のように思っていたのも確かな真実ではあるのです。
なにせ私にとって日常的にある物で、あそこまで驚き慌てる人も珍しいでしょうからね。天災という表現はきっと、彼女の驚いたときに見せる表情を指していった言葉だったのでしょう。
「ね、ねぇセレちゃん? タバネンさんたち、今さっきまで住宅地を歩いてたはずなのに、いつの間にか左右どっちを向いても空き地ばかりの道に迷い込んじゃったみたいだよ?
それに、おっかしいなぁ~。束さんの開発した次次次世代型GPSがてんで見当違いの方向やら数字やら文字やらを表示しまくり出しちゃったよー。あはは~、ビックリだよねー。
・・・ところで、あそこの家の玄関をそっと開いて私たちをじとーっと見てた人は誰? て言うか、なに?
見間違いだと確信してるけど、扉を閉じる一瞬前にチラッとだけ見えたときには青白い鱗のような物に覆われてて、ぼんやりと光る肌をした魚のように丸い二つの双眼を持った、両手両足の指が水掻きになってる生物学上あり得なさすぎる生き物もどきだった様な気がしてならないんだよね・・・」
「田中先生ですね。私が二年生の時、大変お世話になった方です」
「何をどうして何があったら謎の半魚人にお世話になれる事態が来るのかな!?」
「あ、ここですね。私が来たかった本屋さんは。他のお店にはあまり置いてない、珍しい古本が沢山あって面白いのです」
「なんか、過去に凄惨な連続殺人事件が起きてそうなリアルお化け屋敷キタ━(・∀・)━!!!!」
「ヘイ、ラッシャイ! ワタシ、アラブから出稼ぎに来ました店長のアブドゥル・ハザートです! 希少な本がいっぱい置いてあるから、取り込まれて狂わないよう気をつけながら悦しんでってクダサイね!」
「なんか狂ってるっぽいアラブ人男性までキタ━(・∀・)━!!!!」
「アブドゥルさん。はいこれ、今月に翻訳した分です。翻訳した分のお駄賃は、適当な本を借りて行かせてもらうと言うことで宜しかったですよね?」
「チェケラ! これなんか今月の入荷分でオススメだーよ!
呼んだら狂う魔道書ネクロノミコン! セレニアちゃん以外が読むとちょっとだけ壊れちゃうけど、セレニアちゃんは冷静に狂ってるから問題ナッシーング!
さぁ、どんどん読んで、どんどん世界を混沌で包みまくってクーダサーイ!」
「やめろーーーーーーっ!!!!!!(怒!!!)」