IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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本編での最終回です。昨日書き忘れていた世界情勢とかも含めて書いときました。

あくまで私が下手だと自覚した『戦争モノ』としての終わりであり、原作との(自分なりに)関連付けてた物語としての最終回であり、セレニアたち個人としての「その後」はエピローグ形式で少しずつ書いていって考えていきたいと思っております。

一先ずは長い間、応援ありがとうございましたー!
またすぐにエピローグ書いちゃう可能性も0じゃないですけど、とりあえずは感謝です!
心の底からありがとうです!


謝罪と説明:
もしかしたら昨日の地震について触れない私をヒトデナシと思われているかもしれませんので謝罪と弁明をさせて頂きます。
まず、私が地震についての詳細を知れたのは先ほどの事です。それまでは概略だけしか知らされておりませんでした。得られる機会がなかった故ですので、知ってさえいたら何かしらの配慮はしたとは思います。出来るかどうかは能力的に微妙ですけど・・・。

そうなった事情についてはプライベートのため規約に引っかかりかねませんので大部分を省略せざるを得ませんが、テレビに向かって話しかけたがる親族がいるからイヤホンをして食事するのが夜7時以降は常態化していることだけは知っておいてくださいませ。


本編最終話「私、IS学園の言霊少女を卒業したいと思いはじめました」

 米国が内輪もめに明け暮れている頃、世界各国もまた手をこまねいていた訳ではありません。盛り返そうとする動きは十二分にあったのです。

 

 が、それを見越しての日本国侵攻であり敗戦でありグロテスクな殺戮映像を世界規模でワールドワイドに強制放送して見せまくる『血の衝撃と畏怖作戦』でしたのでね。マイントイフェルさんが立案&命名したこの手の作戦に間違いはないのですよ。

 

 ちょうど世界では長らく続いてきた女尊男卑勢力が倒れ、戦時下での臨時政権が国を主導していましたが、政治から遠ざかっていたのは男性たちもまた同じこと。

 思うようにまとまらない国内事情と対外交渉に手こずっている間にアメリカ国内に残っていた急進的な不満分子たちの一斉粛正『マイントイフェルの草刈り鎌』事件が勃発したことにより志は完全に頓挫。

 

 世界に残っていた戦争を求める声が完全に消滅させられたことにより、交渉での平和的な経済的優位確立をめざす方向へとシフトしていくこととなります。

 

 

 

 ーー今時大戦には今までの歴史には余り見られない特色として、異色な点が一つ見られます。それは、アメリカと戦い無条件降伏させられた全ての国々にたいして『侵略』も『征服』もしていないと言うところ。寸土といえども領土を割譲させたりはしたことがないのですよ。

 

 こうした目的は直ぐにも明らかになりました。

彼等が世界と交わした取り決めは『完全なる終戦条約の締結』であり、戦勝国は敗戦国へ一切の強制及び違法な搾取は行わず、完全なる独立自治権を存続させることを認め、両国が互いに『対等な関係性にあることを尊重しあう』ものとする。

 

 細かい記述だと、互いの国交を回復した後に行われるであろう民間企業同士による商取引に際して『国家権力は一切介入しないことを明記しあい』公正な値段と平等な条件での商取引を旨とし『互いに妥当であると納得した交渉のみを行いあうこと』を約束しあうものだったのです。

 

 

 勝利国が敗戦国にたいして求める要求としては異常なほどに無欲であり、勝利者として得た権利の全てを放棄するに等しい行為。・・・政権を取り戻したばかりの男尊女卑政党の皆様方にはそう感じられていたようですね。所詮、今の時代の大人たちは戦争を聞いて育っただけで見たことも体験したこともないのに『知ってるから分かってると思いこんでるだけ』の大人たちが多い以上、仕方のないことでもありましたが。

 

 

 この条約の本当の目的は、言うまでもなく戦災者たちへの援助義務を放棄することであり、『助けてほしいなら頭を下げてお願いしに来い』とする盗人猛々しいものではありました。

 が、しかし。もともと戦争は得があるから仕掛けるものであり、勝っても損しかしない戦争などに意味はありません。ましてや世界中を戦場にしてしまった米国としては敗戦国への支援など無償でやっていたら破産は免れなかったのですから仕方がないのか、ならないのか・・・・・・ううむぅぅ・・・。

 

 

 それはともかく、アメリカ企業と外国資本との商取引が条約に基づき正当に行われていたのは事実です。勝利国だからと無茶振りしたことなど一度もありません。適正価格での売買に関する全ての約束事は徹底的に遵守されたのです。

 

 何故なら、条約を無視してまで多すぎる額を求める必要がなかったから。

 

 世界最強の軍事国家相手に貧乏になってしまった元大国や小国、元々からの零細国家に所属している企業たちが完全に対等な条件での交渉など求める権利がある訳がない。

 

 戦争に勝利した側として当然の権利を行使しながら通常よりは割高の『勝者と敗者を基準とした適正価格』での取引が当たり前のものとして世界中が受け入れ、国が敷いたルールを守らない違反者たちには容赦なく官憲の手が伸びて『悪徳商人』としてのレッテルを人種国籍民族を問わず張り付けられてから刑務所に叩き込まれると言う、ある意味でマイントイフェルさんらしい手法での戦後復興での役立ち方を見せつけられて「ぐう」の音も出ませんでしたよ私は。

 

 アメリカの大企業相手だろうと情け容赦なく問答無用で合法的に取り締まっていく彼の姿は『アブナイ刑事』よりも順法精神あふれているのに悪役感満載すぎてて正直引きまくらされました。

 

 

 

 ーーそんな中、我らが愛する日本とIS学園もまた楽ばかりしていたわけではありません。それなりには大変だったのです。

 

 当初は『血の衝撃と畏怖作戦』が功を奏して血の臭いに辟易していた日本国民の皆様方でしたが、内部のゴタゴタを片づけて後のアメリカにいの一番に駆けつけて土下座して国交の回復と援助を願い出た伊能のおじさんたち臨時政権の皆様方の活躍により今まであったのに減ってた物が届くようになると平和ボケ時代の精神までもが逆戻りしてきやがったようでしてね。

 

「全然足りない!もっと寄越せ!」「たったこれだけしか取ってこれなかった、アンタら無能な臨時政権の失態だよ!」

 

 と、見苦しい限りの言い分を披露されまくり責任問題を追求してくるお歴々に対してタジタジになっていた閣僚のみなさん(欠伸していた叔父さんは除外しておきます)。

 

 それを守るように立ちはだかったのは、悪名高き我らがIS学園校長にして『海賊どもの頭目』轡木十蔵用務員さま。

 

 

「文句があるならワシの所にまで言いにきなさい。なんだったらアメリカ政府の代表者に直接苦情を言えるようセッティングもしてあげようじゃないか。

 もちろん、望むのであればカメラやマスコミが一切入ってこない無礼講の場だって用意してやるぞ?」

 

 

 ・・・形ばかりの戦闘勝利者として処罰を免れながらも武装を解除され、駐留軍の駐屯地と化している学園島の日本側責任者からこう言われて黙り込まないでいられる日本人は余り会ったことありませんのでね・・・。

 批判の声は普通に沈静化しましたが、今度は別の所からの不平不満が政府に向かって押し寄せてくることになります。

 

 アメリカから届けられた援助物資は言うまでもなく有限であり、飽食の時代であった戦前の日本と同水準など夢のまた夢なのが当たり前の低レベル。

 

 限られたリソースを有効に活用するため数字だけを目安とした配分計画を実施しだした伊能の叔父さんのもとには全ての都道府県の代表者たちが押し寄せてきて「足りない! もっと寄越せ!」と怒鳴り散らしまくったのですが、叔父さんからの反応は冷淡と言うより面倒くさそうなものだったと伝え聞いております。

 

 

「要らんと言うなら貰わんでもいい。くれる物を突き返す権利と自由ぐらい誰にでもあるからな。この量でも我慢できると承諾した奴だけが貰っていってくれればそれでいい。強制はしない。

 俺たちがした交渉に文句がある奴や、もっと上手くできるという奴がいたら勝手にやってくれて構わない。法的処罰はしないと約束しといてやるよ」

 

 完全無欠の正論でしたが、それで素直に納得する日本人なら現代日本人になってはおりません。半分以上が席を立ち、サクラも交えた残りの半数以下だけが叔父さんの言い分を受け入れて少量物資その他を受け取り、自分たちで勝手に交渉して上手くいかずに泣きついてきた半分の人たちの内の半数は『最初の提示量の半分だけ』わたしてもらえることになり、それ以外の人たちはちょっと分かりませんね。私の地位身分では知り得るレベルの悲惨な状況ではなかったのでしょう、きっと。

 

 

「どうして最初の時より減ってるんだ! 他の奴らは元のままなのに不平等じゃないか!」

 

 そう訴えかけてくる相手の主張を、叔父さんは一刀両断してしまいました。

 

「差し伸べた手を最初に振り払って出て行ったのはアンタ等の方であって、俺じゃあない。それとも何か?

 アンタ等は最初に少ない量でも我慢することを決めた人たちと、自分勝手な理由で飛び出してって上手くいかなかったから逃げ帰ってきた家出息子でしかない自分たちとを同じ条件で遇するのが平等だとでも主張するつもりなのか? 最初から苦しい状況なのは皆同じだったんだぜ?」

 

 これもまた完全無欠な正論。それでも納得しないのが感情論を理論武装したがる現代日本人。

 あーだこーだと聞くに耐えない理屈もどきの全てを、最後の一人に至るまで聞くだけ聞いてあげてた叔父さんは言い終わって静かになって室内に集う全員の前で短く告げて閉幕としました。

 

 

「納得いかないなら受け入れずに帰る自由と権利を認めよう。

 ただし、次に助けを求めに来たときには今言った量をさらに減らすけどな」

 

 

 これで全ての決着はついちゃいました。

 唇を噛みしめながら頭を下げて食料を押しいただいていく各組織の代表者さんたちには『改心したことへのご褒美』として減らす分を半分にしてあげることで恩を売り、直ぐにも回収してやるつもりだと叔父さんは私に話してくれるのです。

 

 

 

 

「どうせ奴らが恩に着ているのは今だけだからな。着てくれてる内に最大限かっぱらうためにも恩を着せるときにケチっちゃいけねぇ。値切った上で感じる恩は多めになるよう調整しとかねぇとな。

 恩なんて感情は、着せた側だけが長く覚えているものであって、着せられた側が長く感じといてやる義理は、少なくとも着せられた側の主観的には存在しない。

 貧乏人が上から目線で金を投げ与えてくれる金持ちたちに感謝するはずないのと同じ理屈でな。差別感って感情は、理屈だの正論だのでは決して正しく動いてくれるもんじゃねぇ。

 施しの気持ちに値段を付けるのは、いつだって感謝の気持ちに行動で返す側だけがもてる特権なんだよ」

「・・・それは分かりますけど・・・どうして私にそんな話を持ってくるんです? 私別に経済官僚も悪徳商人も目指してた覚えはないんですけど・・・」

「じゃあ、お前さんは一体何になりたくて努力してきたんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「お前が何かを、もしくは誰かを目指してガキの頃から努力してたのは知ってる。

 だが、そろそろお前も卒業の時期だ。心がじゃなくて年齢的にな。学園卒業後の進路ぐらい考えてみても言い頃合いじゃねぇのかなと思ったからお節介しにきてやったんだよ、姪を大切に思ってる叔父さんとしてな」

「・・・・・・・・・キモ」

「話を逸らして誤魔化すな。お前もいい加減、分かっているはずなんだろ? 罪滅ぼしで生きていきたくても、現実は自分にしか価値のない罪悪感だけで生きていけるほど甘くはないことぐらい」

「・・・・・・・・・・・・」

「お前さんらの処遇が、日本政府と米国政府の協議で決められるのは仕方がないことではあるが・・・冷酷なことだが一応言っておく。処罰はないに等しい。

 お前らが強すぎるせいで、誰にも裁くことが出来ないからだ。だから、イヤでも生き続けざるをえないのがお前さんらの今後の人生だ。

 好きに選べ・・・とまで言えるほど自由度は高くないが、それでも0にだけは絶対にならない。お前らが欲する物を留める力が俺たちにはないからだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「だからなぁ、セレ坊。選ぶために考えろ。普通の人間として生きていくとしたら、自分はどう生きたいかをな。選べる選べないは他人の都合も絡んでいることだが、自分で選んで望んで考えるのを邪魔できる奴はこの世にいねぇんだからさ」

「・・・・・・・・・・・・」

「ん。言いたいことはそんだけだ。邪魔して悪かったな。じゃ、そういうことで」

「・・・・・・・・・叔父さん」

「ん?」

「前から言おう言おうと思い続けていたんですけど、この際だからハッキリ言っちゃいますね。

 私、子供の時から叔父さんのそう言う所が・・・・・・大大だーーーーっい嫌いだったんですよ! いーーーーーーーっだ!! さっさと帰っちゃえ!」

「はっはっはっは! こりゃあいい、まさか子供帰りした姪っ子が大人になったように見える日が来るとはな! 生きていると退屈しなくていいとはこのことか!

 ーーよし! 俺は後半世紀ぐらい生きてセレ坊を苛つかせるよう努力してみよう」

「ヒトデナシ! 帰れ帰れ帰っちゃえーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

 

 

 

 

 ・・・この後、世界は単独で生きていくことが不可能になった国家同士で憎み合ったり嫌い会ったり時には喧嘩したりしながらも、暗殺兵器としてのIS専用機の存在に脅威を覚え、本格的な武力戦争にまでは至らぬまま安定期へと移行していくことになります。

 

 アメリカが絶対的な力を有したままだとトリューニヒト政権以降が誕生したとき危険きわまりないので、そのことを危惧した末での『地球連邦政府樹立』が議長たちにとって残されていた課題。

 

 地球にある全国家が名を連ねた史上初の地球圏統一国家構想は、アメリカを中心として影響下にある国々から徐々に広がっていき最終的には地球すべてを飲み込むまでに至ります。

 

 これによりアメリカ合衆国をはじめとする全ての国は、国ではなくなり地方それぞれの独立行政区として機能し始めるのです。

 

 要するにアメリカのトップに立ってから世界を支配するための征服戦争仕掛ける必要がなくなり、アメリカから選出された政治家が自動的に地球連邦首相候補の筆頭に名を連ねることが出来るということ。おかげで争い事が減りました。0にはなりませんでしたけども。

 

 その後の宇宙史ではどう推移するのか? それはゴップ議長にでも聞いた方が確実すぎる予想を語ってくれるでしょうし、だからこその地球連邦政府構想でもあります。

 

 

 世界は何も変わらないまま、社会システムだけが変わっていく。

 人が変わったわけではないのに、人の社会だけが急速に移り変わっていく。

 

 

 だから。

 私は。

 ーーーーいい加減、自分の道でも探してみたいなと思い始めている今日この頃です。

 

 

 

 

「異住新生徒会長ーーっ! 心の準備まだつきませんか~? もうそろそろ就任演説してもらわないと困るんですけども~?

 リハーサルの時みたいに『皆さん、学園生活を楽しんでください』で済まそうとした場合には容赦なくお仕置きするよう、のほほんさん副会長から命令されているんで私~。そのつもりでお願いしまーす。

 ・・・・・・いい加減にウジウジしてんじゃねぇですよゴラァっ! 妹様の最愛のお姉さまだからっていい気になってると怪我するだけじゃ済まさな――あ、ごめんなさい謝ります。

 5つある分校すべてを束ねる本校にして初代IS学園の新生徒会長になられる御方がわたくし如き便所コウロギを本気で相手にする事なんてないですよね? ね? ね? そうですよね新生徒会長ちゃん様?

 わたし、新生徒会長のことを誰よりも信じていまぶぇぐるほげはぁっ!?」

 

 

本編はこれで終了です。

次話はたぶん、本編とは関係のないセレニア個人によるエピローグかなにかになると思われます。




補足:
人々に恐れられるようになったISは、兵器としての能力を完全に取っ払った災害救助用や作業用が束さんの手で量産されてます。
もともと宇宙開発用につくってたものですから、戦わないこと前提での開発には積極的なのです。
引きこもって研究してるだけで自分の思う通りに進んでいく今の状況は彼女の理想であり、性能を下げまくった戦わないISを供給し続けては宇宙用に本来のISの強化も頑張ってます。

IS学園はIS操縦者育成機関のままですが、ISの在り方が戦闘用でもスポーツ用でもなく災害救助用などの民需関係に移行したため職業訓練校のひとつとして一定の信頼を回復してます。

一夏たちは危険すぎるので各分校にバラして配置。
セレニアは本校での新生徒会長と言う人質生活が再スタートしております。

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