IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
他の方のを参考にしすぎてゴチャゴチャしてしまい、碌なのができなくなってますので!
とりあえずは本編の方の続きを書きました。
あと、オリジナルの百合言霊でも書いて練習しようかなと思ってます。
存外に他の方の百合を参考にしながら自分なりの百合を書くのは難しかったです・・・。
*今さっきご指摘受けましたが、最近血なまぐさい展開ばかりで申し訳ございません。
想定していた内容を終えて次に移るべきかと思い余計なことを交えずに急いでいるのです。ご理解いただけますようお願いいたします。
*2:正式に61話が書けたので今話の分にはサブタイトルに『ボツ案』と付けさせてもらいました。
日本国領海内に侵攻後、初の敗北を喫して一時後退した米国艦隊は体勢を立て直すための準備中であり、回収されたIS企業の二代目経営者たち“以外”は忙しく再編作業に追われていた。
やるべきことが多々ある中で、彼らが城壁の奥の平和を享受できていたのは営巣に放り込まれていたから・・・ではない。地位階級に相応しい待遇としてディナーに舌鼓を打っていたからである。
「この鹿肉のローストは絶品ですな」
「いやいや、こちらのフォアグラなども捨てがたいですぞ?」
「いやはやしかし、敵国の領海内で飲む晩酌と言うのも存外に悪くないものですな~」
グビグビ、ぱくぱく。マナーに則り、礼儀正しい仕草で食事を楽しみながら会話に花を咲かせている彼らは至福の時を満喫していた。帰還直後まであったマイントイフェルへの憎悪も今はない。亡き同胞、アズラエルに対する想いも復讐の念から哀れみの対象へと移り変わり、食事が一段落した頃には
「では、諸君。我らが愛すべき盟友アズラエル氏の冥福を祈って・・・乾杯!」
『乾杯!!』
「彼は良き友人であり、良き理解者であり、確立される新秩序にあっては肩を並べて同士となるべき戦友でもあった。我々は彼のことを決して忘れまい。
ーーその為にこそ、今一本シャンパンを開けたいと思うのだが如何がだろうか!?」
『賛成!! アメリカ万歳!!』
と、飲むための酒の封を切る口実に使われる程度にまで落ちぶれてしまっていた。
今、彼らの頭にあるのは生き残ったことと“許してもらえたこと”。自分たちが裏切った上官が規律に喧しいだけで、物わかりが悪い石頭というわけでは決してなかった事実の対する賞賛。そして、“誤解から暴走してしまった”自分たちの醜態に対する気恥ずかしさ。ーー只それだけだった・・・。
「司令官が出撃を禁止したにも関わらず、その命令を破り敵と交戦した罪は重い。軍規をもって処断する。階級章と銃を差しだし、軍法会議に出頭する用意をせよ」
逃げ帰ってきた二代目たちを待っていたのは厳しい調子の通達文であった。「結果良ければ」と思って挑んだ挙げ句、敗けて命からがら逃げ帰ってきた敗軍の将である彼らは萎縮し、激しく青ざめ天を仰いだ。
が、状況が彼らに味方したことを知ったのは、自暴自棄の挙げ句逃亡を計画していた時のことだった。
なんと、自分たちが予想以上に負けすぎたため損害が大きすぎ、軍法会議で裁判長を勤めなければならない司令官のマイントイフェルが仕事場より手が放せなくなってしまっているとのことだったのだ。
何しろ今回の遠征計画における数の上での主力は、彼ら各種大企業からの義勇私兵集団だったのだから、それが初戦において半減したともなれば計画の根本的見直しが必要になるのも仕方のないことではあった。
それら止むを得ない事情によりマイントイフェルは軍法会議の実施を延期し、彼らお荷物と化した二代目たちを厄介払いした。後方にである。
『予定通りに敗北して母艦を失った』二代目たちを待っていたのは、素行はどうあれ階級は階級として相応の待遇だった。
組織の規律を遵守するを良しとする彼としては、裁判もなしに問答無用で処断するヒムラーの如きやり方は嫌であり、判決がでる前の虜囚を虐待するハインリヒ・フォン・ヒトラーの猿真似などしたくなかったと言う心理も働いてはいたのだろう。
それらの結果、妥協案として提供されたのが大型補給艦『オシアナス・グレイブ(洋上の墓場)』号である。
元々は民間企業が所有していた豪華客船であり、洋上のホテルとも呼ばれるセレブ御用達の見事な出来と荘厳さを誇っている。
調度品の類も高級品で占められており、食料および酒類も徴発された軍艦とは思えないほど充実している。
ただ、不吉すぎる艦名だけが微妙ではあったが、こればかりは仕方がない。なにしろこの船は本来、存在していてはいけない代物ーー所謂“曰く付きの船”だったのだからーー。
「う~む・・・しかし海の上で高級ロイヤルスウィートを満喫できるとは思っても見なかったよ」
二代目の一人がワインを片手に隣席に座る者へと話を降り、開いている手で壁に飾られている絵画の一群を指し示す。
「見たまえ、どれも一級品だ。酒も食い物も絵画も壷も階段さえもが、この船では超一流の物しか存在を許されていない。まさに我々のような選ばれし者たちが乗るに相応しいとお思いになりませんかな?」
「まったくですな。これだけの物を揃えるのには、さぞや苦労があったことでしょう。
ーーもっとも・・・」
途中までは率直な賞賛だったのが、後半は下卑た本性丸出しの表情へと早変わりし、
「没収されるために精魂込めて収集し続けていたのかと思うと、些か哀れにも思いますがな。彼ら亡国機業の幹部会どもにも」
相手に併せて笑顔を作って見せた男、アズラエルの従兄弟にしてマイントイフェルに腹心のサザーランド中佐を皆の前で射殺されたムルタ・ジブリールは皮肉気に口紅を塗った唇をゆがめると、吐き捨てるように言い放つ。
「どのみち、いずれは燃やす予定だった藁人形どもです。そう、気にするほどのこともないでしょう。命日が僅かばかり移動する程度、暦上の意味合いぐらいしか持ち得られませんよ」
言い切って笑い飛ばしワインを飲み干す彼の言うとおり、この船はもともと今は亡き亡国機業の経営陣である幹部会が会合場所として所有していた完全違法船舶であった。
表向きは今回の遠征に併せて民間企業から接収したことになってはいるが、実際には船内にあるほぼ全ての物が表に出ては“ヤバすぎる”ご禁制の品ばかりであり、数少ない例外である高級食材も出所を辿れば相当にヤバいことになってしまう。
紛争の火種が巨大船の形を取って海上に浮かんでいるような代物なのだが、しかし。
彼らにとってはどうということもない。
なんとなれば、こういった物品に囲まれて暮らすのが当たり前の少年時代を過ごしていた彼らである。この程度の国際問題の火種の塊などに、自分たちが気にするほどの価値を認めてやる気は毛頭ない。平然と泰然とごく自然に芸術品を愛でながら見て回っている。
「美しい・・・」
ウットリと見蕩れる様な口調でIS操縦者が描かれた絵をーー某国から盗み出された国宝をーー見物する彼の脳裏は、すでに戦後のことで占められていた。
この戦いは勝つ。戦略的優位性を確立し、政略的にも島国日本を完全包囲下の状況にあり、数の上では勝負にもならない。元より自分たちの命さえ掛かっていなければ、完全武装のハイキングに着た程度の心構えでいた彼らとしては手柄を立てる機会を事実上損失してしまったこともあって、心は完全に観戦モードになっていたのである。
「親父殿たちには悪いが、戦えないのでは致し方有るまい。我らに戦闘艦を提供しないのはマイントイフェル准将の判断なのだから、むしろ彼の方が親父たちから叱責を受ける義務と責任があるのだ。そうではないか? 皆もそう思うであろう?」
そうだ、そうだ。その通りだ。
片手を突き上げ元気よく唱和するジブリールと愉快な仲間たち。
生まれながらに特権を享受し、苦労と無縁に生きてきた彼らにとって責任とは他人が負ってくれるべき物であり、自らが責任問題で追求されるなど問題外であった。
価値観が違うのである。IS社会が確立していく課程の中で育ってきた彼らは、飼い殺しにされた状態が当たり前の社会しか知らない。親の世代の苦労さえ彼らは体験できたことはない。
IS優遇IS尊重社会を、いずれは絶対IS主義思想へと繋げるために邁進していた前アメリカ政権の女尊男卑政党たちが如何に愚かしい政策を採ってきたかは彼らを見ればよく分かる。
それだけしても責任が追及されることがなかったのは、IS条約自体が防波堤の役目を果たしてアメリカ政府を守ってきてたからである。
なまじ完全平和、戦争完全拒否路線を行きながらも武力自体は手放そうとしなかった世界各国はその使い方に苦慮せざるを得なかった。
極論してしまうなら、軍隊の存在意義は二つに一つしかない。
外敵から国と国民を守るか(この場合は災害なども含めていい)国を内部から破壊しようとする危険因子だと『国が』判断した者たちを弾圧するかのどちらかだけだ。それ以外に核だの戦車だのを何に用いればいいのかと聞かれたら素直に返答に困ってしまうのはセレニア以外も多くの人が同様だと思われる。
そしてISは、外敵と戦う際に用いられる武力としての『戦争利用』を条約で禁止されている国内最強の軍事力だ。これはIS社会においては誰もが知っている一般常識である。
普通に考えたなら、有事の際にしか出番のない(しかも守るだけで実入りのない)防衛力としてだけ用いる世界最高戦力に国家が大枚はたいて支援しなければ経営が成り立たないような国営企業を防衛力のためだけに創設するのに対して国民から不満が出ないことなどあり得ないのだが、モンド・グロッソだの幾つかのイベント事などで使っているから「そういうものなのだろう」と、経済に明るくない彼らは納得して自分たちの日常へと帰って行ってしまう。
そこに漬け込む余地が生まれてしまっていた。
根本的な話、ISに用いられてる技術の多くは現代科学の限界の遙か先を行くものであり、通常の手段では再現するまでには至っていない。
大本のエネルギー源であるISコアがあるからこそ可能となるのが携行用ビーム兵器等のSF兵器の類であって、一般に出回っている「IS技術関連商品」と銘打たれている物の多くはISの登場に影響受けた各種企業が普通に開発してきただけの既製品の延長線上に過ぎないのである。
そしてISコアは、篠ノ之束から各国政府と研究所に提供された467基しか公式には確認されておらず、それ以外のコアは未確認の違法品である。国軍にも国営企業にも表だって採用するわけには行かない。条約が有名無実化してしまう。
ーーそんなことにでもなれば、女尊男卑を支える唯一の支柱ISが、本当に外敵相手の軍事力という『金だけかかって実入りの乏しい』過去の遺産である既存兵器と全く同じ鉄クズと化してしまうではないか!ーー
IS以外に政党の主張を裏付ける根拠も後ろ盾も擁していない女尊男卑政党が手に入れた権力を維持、永続するためにのみISは用いられるべきである。そう考えた彼女たちが条約を作り、社会を構築し、彼ら彼女らを腐らせてきた。
その末の尻拭いを、今から支払わされようとしているのが彼女たちではなく彼らであるのは不幸と言うより他あるまい。
だって彼らは知らないのだから。
自分たち特権階級が前線にあって敗北したとしても後方で安楽で豪勢な食事をとれることが当たり前だという現実しか彼らは知らない。彼らにとっての世界とは、社会とは、現実とはそういう物しか存在してはいなかったから。
だから自分たちが優雅な食事を満喫している隣で停泊している通常の輸送船に雑魚寝同然で押し込められてる兵士、下士官、下級士官たちが如何に貧しい野戦食で空きっ腹を満たしているかを知らない。
船を失い、逃げ出してきた兵士たちの人員と艦隊が持参してきた食料物資の限界点が彼らの敗北によって一気に近づき、臨海寸前まで干上がりつつあることを彼らは知らない。
兵士たちが彼らの楽しく笑いあう声を聞きながら怒りに震える拳を握りしめていることを知らない。彼らが手柄を立てるためだけに自分たちを捨て駒としか思っていないことを受け入れている『訳ではない』ことを彼らは知らない。
そして最後に。
“戦場における士官の死因の二割が部下に殺された”ものらしいと言う事実を、彼らは自らの人生が終わる最期の一瞬に知ることが出来るまで知らされることなく生きてきたのだったーー。
「・・・発砲音確認。はじまったようです」
「結構。これでようやく肩の荷の一つが降りたと言うわけだ」
双眼鏡と艦内スピーカーで即席補給船舶の内部状況を観察していた士官が報告した内容に、上官であるマイントイフェルが答えた内容がそれである。
その上で「やれやれ、中々に疲れさせられたよ」と部下たちに対して苦笑を見せながら美味しそうにコーヒーを飲む司令官閣下の倫理観に今更口出しする物好きなど、艦隊旗艦の艦橋内で生き残っていられるはずがない。二、三時間で胃に穴があいて五時間後には死んでいるだろう。それぐらいにはマトモさを維持しながら仕事するのに向いてない職場なのがマイントイフェル艦隊旗艦のブリッジ要員なのだった。
『(あれ・・・? 旗艦のスタッフってもう少し良いご身分だったような気が・・・まぁいいか。給料良いし生きて帰れそうだし、気が狂うぐらいで死ぬ訳じゃないんだし。
生きて家族に再会できた時には平和のありがたみを心底から思い知ったんだと解釈できるようになっておけば、もうそれでいい)』
なんか、どっかの島国にいる一部変人たちと似たような前向きさと後ろ向き差の混同が見受けられ始めているが、彼らが良いというなら良いのだろう、多分だが。
それよりも、だ。今は彼らにも確認しておかなければならない事項があるので、それを聞かなくてはならない。任務遂行と自らに課せられた義務を果たすことこそがマイントイフェル艦隊旗艦で生き残っていくために最も有効な処世術であることを彼らは知っている。学んだからだ。
学ばなければ生きていけなかったから学んだ。生存欲求こそ向学心の最たる物である。「必要は発明の母とは」よく言ったものだと感心させられる程度の余裕が持ててきた昨今の旗艦艦橋要員たちの未来や如何に。
「これで飼い犬どもは飼い主たちの腕だけでなく心臓までもを食い散らかしたわけですが、野良犬になるには知識も経験も自信も乏しい。心の内はどうであれ我らの傘下に加わる以外に生き残る道はないと思いますが・・・受け入れるのですか?」
「受け入れざるを得まい? まさか投降を申し出てきた友軍を虐殺するわけにもいかんし、飼い殺すには食糧備蓄が乏しすぎる。使える物は使う。戦場の基本だ。彼ら二世たちと同じようにな・・・」
「・・・パイプ振り回しながら「日本人を殺さなければならんのだ~っ!」は凄いインパクトでしたよね。パトリックのおっさん、意外とガッツあったんですね・・・」
「まさに、旺盛な仕事人ぶりであったな。私も所属を同じくする者として鼻が高い。見事なアメリカ兵魂を見せてもらった気分だよ。実に清々しい心地だ。
ーーそれに比べてジブリール氏は見かけ倒しだったな。
まさか自分たちのリーダー格を自認していた人物が、誰よりも早く命乞いを始めるとは想像すらしていなかった。言うことが大きい者ほど窮地に陥ると反転するという都市伝説は、どうやら事実だったらしいな」
「我々の視点だと、将官のみならず同乗していた中級士官たちまで抗争し始めたのは地味にショックでしたけどね・・・。
しかも普段から穏健派で出世とかに興味なさそうにしていた奴が、直属の上司の首筋にナイフ突き立てまくって「手柄首取ったどー!」って、アイツは蛮族宗教でも信仰してたのか・・・?」
首を何度も何度も振りながら嫌な記憶と嫌な感情とを振り払おうとしている士官の一人の耳に、同僚がぽつりと呟く声が聞こえてくる。
「権力って・・・本当に人を変えちまうんだな・・・」
その声に艦橋内にいた幾人かが彼を見て、マイントイフェルも意味深な表情を目に浮かべながら視線だけで周囲の人間に発言を容認する旨を伝えて下がらせた。
「俺さ、アイツとは士官学校時代に同期だったんだ。
未来のアメリカのこととか色々語り合ってた仲なのに『白騎士事件』のゴタゴタで一家離散しちまって養育権も別れた奥さんに分捕られて、裁判所は女尊男卑で男の訴えになんか耳も傾けてくれなくて、仕方がなしに金持ちのボンボンに小金もらいながら庶民たちの情報収集係に徹して生きてきて、今回の遠征が終わって生きて故郷に帰ったら「新しい恋人にプロポーズするんだ!」って嬉しそうな笑顔で語ってくれながら別々の船で出航してきたんだぜ?
それがどうだよ、あの狂相は・・・。上司の首を取ったぐらいで出世できるかどうかなんて判んないのに、もう「将来の栄達は確実だっ!」って顔してやがったぜ・・・。
あれがアイツの本性だったのかと思うと、今まで普通な振りしてただけのアイツにも、裏側を知らずに平然と付き合ってきた自分にも反吐が出るし怖気が走るよ」
長い長い毒を掃き終えた後、話以上に長い沈黙が艦橋内に舞い降りるーーと言うことは全くなく、その手のことには経験豊富な我らが独裁国家の三軍参謀出身者マイントイフェル准将が有り難くない人間観察ならぬ権力施行者観察を解説していただけるとのことです。どうぞー。
「いや、それまでの彼は事実として誠実な人間だったのだろうと思うぞ?」
『・・・は?』
部下たちポカーン。
そんな彼らには構わずに、備蓄状況を記した報告書に目を落としながらコーヒー片手にマイントイフェルは平然と言葉を紡いでいく。
「直接の面識はないが優秀そうだったのでな。少し調べさせてもらっていたのだが、少なくとも彼にはそう言った権力を求め縋る性質と無縁に、私には思えた。
無論、千里眼など持っていないので私に人を見る目がないだけかもしれんがな」
「あの・・・では、どうしてアイツは変貌をしてしまったのでしょうか・・・?」
「決まっている。権力を手にした前と後とでは同じ人間でも中身は別人に変わってしまっているからだ。
人は力を持つと欲が出る。持たない時点で持った後の自分や他人について想定してみたところで意味などない。持ってない人間を試すのであれば、一定の力を与えてしまった方が手っ取り早いし確実だよ。持たせないまま幾ら試したところで本当はどうかなど誰にもわからんし無意味だ。
ーー相手を知るためには、良きところだけではなく汚い部分も詳らかにしてしまわなくては本当の意味で信用などできん。
一度も人を殺したことのない者が、やむを得ない事情により殺人を犯してしまった者の気持ちを「気持ちは分かるけど・・・」などと言い出した場合には間違いなく詐欺師だ。国民の資産を守るべき軍人の役割として拘束し、警察へと引き渡したまえ」
『・・・・・・・・・・・・』
もう、夢が壊されまくって跡形もなくなりそうな米国兵たち。
それでも怖ず怖ずと話しかけてくる副官は選ばれし者、勇者です。選んだのは「洪水起こして皆殺しされたくなければ俺に従え」とか言ってくる独裁者だろうけれども。
「あ、あの~・・・閣下? それだと刑事ドラマとかの名探偵や名刑事たちの殆どが詐欺師ということに・・・」
「他の部署の担当案件に首を突っ込んでくる刑事が「名刑事」などと呼ばれている警察組織は腐っているな。改革するためにも、まずはその腐りきった刑事から粛正すべきだろう」
「・・・・・・」
「名探偵と呼ばれている存在に至っては、定義自体が曖昧すぎる。探偵業を営んでいない者まで探偵を、それも「名」などと呼称されているところからして怪しさし感じられん。詐欺師だ。処分してくれたまえ」
「・・・・・・・・・」
「なによりも」
コーヒーの最後の一滴まで飲み干した彼は、迷いなく躊躇なく堂々と断言してのける。
「『名』などという過剰な形容句で呼び習わすのは中身の無さを隠す意図がある場合での行為。自信がない者ほど虚勢を張って誤魔化したがる者だよ、気にするな」
『・・・・・・・・・』
この上官には、二度とコッチ系の話題は振らねぇー。何度目かは忘れたが、それでも何十度目かの同じ決意を胸に抱いた士官の一人が前を向いて立ち直るのを白い目しながら見守ってた最初の士官が「こほん」とわざとらしい咳をかまして仕切り直す。
「・・・話が脱線しすぎましたが、彼らの処遇をどうされるのですか? 少し数が減った分、今日一日は難なく養えますが明日になると急にキツくなる。
軍人なんて戦っても戦わなくても飯だけは人一倍食う大飯ぐらいな甲斐性なしどもの俗称に過ぎませんからな。たった一日の違いだけで減る飯の量は桁が違ってしまう場合すらあります。そこのところを配慮していただけると有り難いのですが?」
「つまり、今日一日の間は問題なく使えると言うことなのだろう? ならば投降してきた直後に半日分を食わせることで一日分のやる気を出させるとしようか。
人間、腹が減っていたのでは戦闘どころではないからな。飢えさせて出させる全力など、前にしか進むことを知らない死兵を作るだけ。
わざわざ敵に演習用の的を提供してやるぐらいなら、より多くの割り当てを手にするために味方の死体を盾に使いながら陣中突破し、壮絶な玉砕を遂げてくれた方が遠征の目的にも合致すると言うものだ」
『・・・・・・・・・(サーッ・・・(顔から血の気が引いてく音))』
「世間では、人を襲い食らい、ひたすら撃たれまくっても目減りしないゾンビが主役の映画が流行っているそうじゃないかね。まさに彼らに相応しい役所だ。是非にも観客として、熱演を期待させていただこう。
ーー無論、出来の悪い映画の脚本には観客としてシナリオの変更を要求する権利ぐらいは貸与されていると見て良いだろう。食った飯分は働いてもらうことを要求するのは食い逃げ犯を出すことなく、正当な労働への対価と成すべく工夫する軍人としての責務なのだから・・・」
つづく
二代目たち、絶滅。
投降兵たちは今日一日で手に入る分の食料を、前払いで半日分手に入れた!
腹減ってたので、請求書が添付されていることには気づいていない!
マイントイフェルは減るはずだった食料負担を軽減させることに成功した!
セレ「悪魔です・・・悪魔が日本に来ています・・・。
ISって、怖い世界だったんですね・・・」
みんな「おまえが言うな!(ですわ!)(だよ!)(ですよ!)」
ジブリールさんたち戦死(?)
次回こそがセレニア出したい!
おまけ話:
セレ「どうぞ、粗茶ですが」
ナタ「ありがとう、いただくわ。・・・うん、相変わらず美味しい紅茶ね」
セレ「どもです」
ナタ「でも、不思議ね。あなたって自分ではあまり飲まない銘柄でも紅茶の入れ方だけは極端に上手なんですもの。・・・それ以外は癖なくパーフェクトに平均値なのに・・・」
セレ「酷い言われ様ですね・・・。まぁ、私にも色々と事情があるんです。前世でもあんまし飲んでこなかった紅茶を飲めるレベルになれただけでも努力したんですからマシな方でしょうよ」
ナタ「ふーん・・・? ――ああ、そう言えば前に大統領閣下から聞いたところによると、あなたの尊敬してた人って紅茶好きなんですってね」
セレ「・・・・・・」
ナタ「もしかしたら、生まれ変わりなんてものがあった以上、その人のお嫁さんになって紅茶いれてる自分を想像してるうちに気付いたら上手くなってたなんてことは・・・ないわよね。うん、ありえない。ごめんなさいね、変なこと聞いちゃって。気にしないでセレニアさん」
セレ「・・・・・・・・・」
ナタ「・・・・・・え・・・。うそ・・・。セレニアさん、まさかあなた・・・あなた・・・あなたって人は!」
セレ「・・・・・・良いじゃないですか、別に。誰かに迷惑かける類の妄想じゃないんですから。
娯楽や趣味なんて、その程度のものでいんです~!(ぷんぷん!)」