IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
SEEDネタ多数登場。なぜか苦労させられてるアズラエルさんメインの回です。
「ーー『要求は不当なものであり、従うことは出来ない。我が日本国は今までもこれからも専守防衛の理念を貫くことに変わりはない』ーーいや、これは意外な返答だ。日本人はボクが期待していたよりもずっと愚かで愚劣な民族だったみていですねぇ~」
アズラエル分艦隊の旗艦『ブルーコスモス』の艦橋で日本政府防衛大臣を務めているナンターラとか言う女から遅ればせに届けられた降伏勧告の拒否文を声に出して読み上げながら艦隊司令を務めるロード・アズラエル予備役少将はニヤ~っと、嫌な感じに唇を歪めながら側近たちに戦闘前の訓示を垂れている最中だった。
「我々に攻撃態勢は万全です。直ぐにでも日本を再占領し閣下の前に献上してあがるとお約束いたしましょう」
「加えて、警備体制も万全です。これまでに三十七機の敵攻撃型ドローンを撃破しました」
「来るならこいです。あのような散漫な攻撃でいったい何が出来ましょう。日本自衛隊の主力は打鉄です。左程の事はございません」
「ふん・・・烏合の衆ですか。こんな国、制圧するのは容易なんですけどネ~。なんだって議長も大統領も躊躇ってきたんだカ」
鼻で笑い飛ばしてから指揮シートにもたれ掛かると長めの足を高々と組み、傲然と憮然の中間みたいな表情を浮かべながら宣う。
「だいたい我々は弱い生き物なんだからサ~。強い牙を持つ奴はIS学園って名前のアメリカが作らせた檻に閉じこめておくか、繋いでおくかしないと危ないからサ~。今、目の前にいる敵の坊やたちみたいに・・・ネ?」
ははは、とさざ波のような笑い声が室内を満たし、情感の心理を介せない無骨者の軍人たちは機嫌良さげに作戦の細部を詰めていく。
それら従順なだけで役には立たない飼い犬がごとき連中を前にアズラエルは窓外へと視線を移し、片手をポケットに突っ込んで未だ震えが止まらぬ掌を部下たちの視界から消してしまえるよう努力する。
そして思うのだ。あんなバケモノ共以上のバケモノなんかと、一緒にやっていられる訳がない、と。
(そうだ、ボクたちは弱い生き物なんだ。そのはずなんだ。一度世界はISに負けた。完敗した。あの時ボクたちは敗北の事実を受け入れたんじゃなかったのか? 圧倒的な力の前に膝を屈した、惨めな敗残者として生きていくことを己に架したんじゃなかったのか?
なのに何故、アイツは・・・アイツだけは平然と嗤いながら「ISなど案山子も同然。すぐに大人しくしてご覧に入れますよ」だなんて言い切れるんだ? しかも、言うだけじゃなくて結果も出してしまえるなんて!)
所詮は自分たちと同じ“男”だと思っていた。ISの登場によって日陰者となり、有り余る屈辱を鬱憤に換えて殴っても殴り返してこれない奴らに対してのみ凶暴さと残忍さを発揮できる同類に過ぎないのだろうと。権力をチラツかせて、今よりもっと甘い汁を吸えるイスを用意してやるぞの一言でコロリと寝返る安い男だから、弱い物いじめと呼ぶべき今回の日本国遠征の指揮を買って出たに違いないと。
ーー見込み違いにもほどがある。ボクに、人を見る目が無さ過ぎていた。
よりにもよってボクたち名門を背負って立つⅡ世の一人を任務完遂率を高めるため、ただそれだけの為に見せしめとして皆の前で処刑して見せるなんてどうかしている! 常識では考えられない! あり得ない! アイツは狂っているに違いない!
戦後のことを考えるなら自分たちは生かしておいた方がいいに決まっているのだし、軍人が非常時にしか役立たない平時における無駄飯ぐらいの身分であることくらい分かる程度の頭がないとは到底考えられない。
ならば、出てくる答えはシンプルである。
あの男にとって、与えられた任務を完遂できない無能ならたとえ自分であっても生きている価値などないーー完全にイカレた思考である。義務感とか責任感とか言うレベルで語っていいものでは絶対ない。
(あんなバケモノに背中を預けながら、正面の敵とも戦わなきゃならなくなるなんて・・・!!!)
アズラエルは挫けそうになる心に渇を入れながら、それでも必死に前を向こうと足掻いて見せる。このままでは帰れない、このまま帰ったら自分たちは必ず『あのバケモノ』に利用された末に処分されてしまう。
何故ならば、それだけの暴挙を平然と成せる狂気こそ、あの男にとっての『常識』なのだから。
「東京にたいして無差別ミサイル攻撃を開始してくださイ。ISがどんなに強いったって、あの極東の片田舎に浮かんでるチッポケな島国を滅ぼしさえすれば戦争は終わル。
ーー撃たれる前に討たなきゃ、後ろにいる奴にボクらが討たれる。ボクたちが撃たれてからじゃ、死んでからじゃ何も出来ない。遅すぎるんだ・・・ッ!!!」
指示を出してから離れていく部下たちに聞こえないよう小声でつぶやかれた不安こそ、彼にとってのまごう事なき本心だった。
きわめて皮肉なことに、彼ら親の七光り提督たちを死地へと駆り立てていたのは失ってしまった大地ではなくて、自分たちの価値基準では計ることなど絶対出来ない異常者であるマイントイフェル本人であったのだ。
そしてその事実をマイントイフェルが知ることはなく、また敵方であるセレニアにとっては、仮に知っていたとしても知ったことではなかった。
彼らに攻め込まれている中で迎撃の指揮を執っている彼女にとって、彼らの精神的な脆さは、敵司令官がさらした漬け込むべき隙でしかなかったのだから・・・。
彼が覚悟を決めたその瞬間、艦橋内に最低最悪の悲報が轟いた。
「敵IS部隊、学園からの出撃を確認しました! こちらへ向かって真っ直ぐ進軍してきます!」
「なにィっ!?」
敵は撃たれても撃ち返してこない。それを前提にした作戦案しか用意していなかったアズラエル艦隊司令部は恐怖と驚愕に満たされた。
話が違う。敵は、日本が掲げる平和理念などどうでも良いタイプだったとでも言うのか・・・?
不審と不安が蔓延していくアズラエル分艦隊。それは集団心理によって他の分艦隊にも伝播していき、瞬く間に前線部隊全てが共有するものとなり、やがて・・・不審の
意味合いが変わっていった。
「・・・・・・・・・なにやってんだ? あれ・・・」
「さぁ・・・」
艦隊要員が敵部隊を指さしながら疑問と疑問をぶつけ合う。
セレニアが仕掛けた戦術、『ヤン・ウェンリーから学びたいこと第1段 出来ませんでしたけどね編』が始まってしまった。
「・・・私たちは、間に合わなかったのかも知れないわね・・・」
「・・・・・・はい?」
突然なにトチ狂ったこと言い出してんだ、この人は? ーーそんな想いを思いっきり口調に乗せて発した私の疑問には答えずに、ナターシャさんは陣羽織を着て艦隊指揮する頭のイカレたフッァションセンスの歌姫さんと同じような台詞回しを述べはじめました。
・・・ポージング取りながらなんで、明らかにわざとですけどね。ホント何やりたいんでしょうかね、この人って・・・。
「平和を叫びながら、その手に銃を取る。それもまた悪しき選択なのかも知れない。
でも、どうか。今、この果てない争いの連鎖を断ち切る力を・・・!!」
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「・・・で?」
「いえ、別に。ただ、場面的にはこう言うべきなのかなーと思って」
「・・・はぁ」
ぺろっと、可愛らしく舌を出してお茶目な表情をするナターシャさん。私としては場面的に、反応に困るシーンなのですが・・・?
「えっと・・・それではこの場合、私はなんと言うべきなのでしょうかね・・・?」
「そうね・・・『それでも!』とかで良いんじゃないかしら?」
「じゃあ、『それでも』と言うことで」
「・・・雰囲気でないわねー・・・」
ナターシャさんの嘆きぶりに私は肩をすくめながら「はじめから無いでしょ、そんな物」と言い捨てました。
「付け加えるなら、理由の如何によらず銃を手に取るのは悪しき選択です。戦争は国際的外交問題の最終的な解決手段であって、選ばざるを得ない場合に限って限定的に選ぶことが容認されざるを得ない最低最悪の選択肢です。
それが選択肢にでている時点で、良いとか悪いとかの議論しておくべき段階をとっくの昔に通り過ぎまくってます。何が悲しくて敵殺しながら人の命はどうたらこうたら議論せにゃならんのですか。場所が違うでしょ、会議室でやりなさいよそう言うことは。
現場は血を流し合わせる場所であって、平和について語り合う場所じゃありません。銃を向けあいながら平和を語り合うって、絵的に変でしょどう考えても。戦争万歳映画じゃないんですから、私はそう言うのはごめん被ります。大反対」
つか、現場と後方の本部がぶつかり合ってりゃ無用な血が流れまくるのは必然のような気が・・・。
できれば現場で流れる血の量を減らす手段について議論している会議室が出てくる映画が見たいです。でも、そんな会議室では踊ってほしくないので微妙なところでもありますが。
「この期に及んで何一つ変われないあなたの破綻者ぶりを見るのが最近なんだか快感になってきてるんだけど、どう思う?」
「知りません!」
これ以上の変態量産はお断りです! ノー・サンキュー! 私は変態と行かない一人きりの孤独な道を赴く!
「ま、冗談はさておいて。・・・この部隊行動は何を狙ってやらせているものなの?
さっきから出て行ったり戻ってきたりを繰り返しているだけなんだけど?」
「今おっしゃってたとおり、特に意味のない行動ですけど、それが何か?」
「・・・なるほど、示威行為って訳ね。これで敵から先に撃たせる、と」
ナターシャさんの予測は当たっていますが、作戦がたった一つの目標のみを達成する事という思い込みに迎合する必要性はないと私は考えていますので、狙える限り多くの目標を設定しておきました。
実際にやること自体が増えるという訳ではないので問題なかったですしね。むしろ、作戦に参加しない遊兵を作ってしまうことの方が私にとっては大問題。
せっかく敵を誘い込んで行える初の防衛戦。ヤン提督気取りで楽しみまくりましょー。どのみち似非ヤン・ウェンリー劣化量産版の私にはこの程度がお似合いだー。
「単に勝利を狙うだけなら洋上にいるときに艦隊を海中から襲って沈めれば済みましたからね。なにしろISだけじゃ航続距離的に国許まで帰れませんので。
ここまで来てもらったからには、また、来ていただけたからには平和のために死体の山を築くだけです。平和の尊さについては、平和な時代に生まれて人を殺してない人たち同士が話し合って決めればよいことかと。
人殺し同士で平和語ったって自己正当化か自己憐憫か自虐かのどれかになるだけでしょ? 時間の無駄なんで今やる必要性無いです。そう言う話は、それが出来る環境を整えられるように小細工しながら戦争を終わらせてからにするとしましょう」
「世の大人たちが聞いたら受け入れ難い思想ねー。あなたの前世って絶対に虐められてた経験あるでしょ?」
「・・・・・・・・・ノーコメントで」
ーー空母『ブルーコスモス』艦橋
「なんなんだ! あの無意味な部隊運用は! 奴らはいったい何を目的にあんな動きをしているんだ!?」
ヒステリーをお越しかけながらアズラエルは側近たちから意見を求め続けたが、帰ってきた答えは期待はずれも甚だしいものだった。
「お、おそらくですが単なる示威行動かと思われます。あからさまに目立つ動きをして見せることで注意を集め、我らを疑心暗鬼に陥らせることによって動きを止めてしまいさえすれば日本の国土は守られるわけですから・・・」
彼の言うことは尤もであり、このポイントまで接近してくるまでの間に撃ち続けていたミサイルも砲弾も艦隊の動きさえもが停止させられていた。敵の狙いが何なのか、首脳陣の誰一人として答えにたどり着けないでいたからだ。
無論、今の彼が言っていたのと同じ趣旨の予測をして見せた者など幾らでもいる。いるのだが、いるだけでは役に立たない類の意見だから動けずにいるので意味はなかった。
「そんな事ぐらいボクにだって予測できるさ! 分からないのは奴らにそれをやることで何の得があるのかって事がだよ!」
「で、ですから日本の国土を我々から・・・・・・」
「だから!」
物わかりの悪い頭でっかちの職業軍人のバカ思考に頭を掻き毟り、血走った両眼で相手を睨みつけながら罵声と説明を両立させた怒声を放つ。
「エネルギーも数も限りがあるISを主砲の射程ギリギリに展開しながら、一機ずつ突出しては下がるのを繰り返させる無意味な示威行動で国が守れると、そう言いたいのかアンタら軍事の専門家どもは!?」
『・・・・・・あっ』
側近共の間の抜け過ぎた反応を前にアズラエルは、本気で司令官の職務を投げ出して個人的感情に走ってやろうと思った。それをギリギリの所で自制せざるを得なかったのは皮肉にも部下たちの誰も彼もが無能ばかりで、自分の代わりをこなせる人材が存在していなかった故である。
前線からの帰り道にはバケモノ率いる督戦隊が自分たちを監視していて、敵を前にして命を預け私室で昼寝を楽しんでいられる程に信頼できる味方が一人もいない。
この状況下で自制心を放棄するのは蛮勇どころか無謀でさえ褒めすぎている。ただの自殺志願者で十分すぎるほど適切な表現だと言い切れるだろう。
「向こうはアレやってるだけで戦闘可能時間が少しずつだけど減っていく! こっちは時間が減るだけで弾一発減らしちゃいないのにだ! そんな無意味すぎることをなんでやる! 何のためにやっている! 奴らの狙いは何なのか説明して見せろ! 素人のボクより詳しいはずの職業軍人上級将校共!」
『・・・・・・・・・』
「!!!! この薄らデカいだけで役立たずの木偶の坊どもがぁぁぁぁぁぁっ!!!」
半狂乱にはなっていたが、アズラエルの言い分は概ね正しく、そしてそれ故にコネと政治力で成り上がってきただけのお飾り上級士官たちには合理的な解析がしてみせられなかった。
彼らはあくまで太鼓持ちであり、主のご機嫌取りと同僚の足を引っ張って成功と功績を横取りするしか脳のない無能であるからこその、給料と待遇だけがよい実質権限皆無な特権階級の取り巻き役に任命されてただけの連中でしかなかったのである。
「あ、アズラエル理事会委員・・・いえ、アズラエル予備役少将閣下。パトリック少将から通信が入っておりますが・・・」
「・・・あのネクラが?」
アズラエルは頭の中で理事会最年長メンバーの、妙に老け顔で陰険そうな印象の顔を思い浮かべながらも通信を繋ぐことだけは許可した。
仲は悪いというか最悪の相手ではあるが、それでも互いには公人としての立場がある。敵を前にして仲間割れをしていることを味方の兵にまで周知させるわけにはいかないのだ。たとえ公然の秘密でしかなかったとしても・・・いや、むしろだからこそ互いに公的な場にあっては私情を優先することはないことを表明しておく必要性があったのである。
ーーだが、しかし。アズラエルの覚悟を決めた決断は直後から揺らぐことになる。
彼は通信が繋がったと見るや時候の挨拶もすることなく、傲然とした態度で要求だけを突きつけてきたのである。
『アズラエル! こちらの準備は完了しているのだろう!? なのに、なぜ撃たない!? なぜ攻撃しようとしない!?
私の妻を奪っていったIS操縦者共がたてこもっているIS学園は、我々全人類の敵だという事実をを未だに正しく認識できていないとでも言うのか!!』
「・・・・・・」
思わず激しい頭痛に襲われたアズラエルは一瞬だけだが言葉を失った後、弱々しく抗弁してみた。・・・無駄だろうなーとは思っていながらだったが。
「・・・いや、あのさパトリック。キミんとこの奥さんって、日本の代表選手だった織斑千冬の追っかけやってて、彼女の引退とともに帰化日本人の国籍手にしただけじゃなかったっけ・・・?」
『つまり私は、愛する妻をIS操縦者に奪われた犠牲者なのだ!』
いや、単なるモテない振られ男の僻みだよ。
あと、奥さん愛してたんだったら身だしなみぐらい整えようよ。さすがにその顔で三十代は社交界だと隣に並ぶと恥ずかしすぎると思われて当然なんだヨ。特に女性の美的センスから見た場合はさァ~・・・。
最年長とはいえ、彼らⅡ世の中ではである。実年齢は三十代の後半でしかない。にも関わらず妙に老け込んで見える画面に映し出されている男の顔は、どう贔屓目で見ても四十代後半としか思いようがなかった。
この顔の男と長年連れ添うのは、社交界という華やかな世界でーーしかも女性優遇で、入れ食い状態でもある女尊男卑社会でのーー今時の若くてきれいな女性には荷が克ちすぎていたと、柄にもなくアズラエルは彼の奥さんに同情した日のことを覚えている。
若白髪の目立つオールバックヘアー、口元の皺、目元の皺、常に眉間に両眉寄せてるいかめしい顔つき。止めとして渋めのオッサンボイス。こんな男が三十代だと紹介したとして、誰が信じるというのだろう?
『奴らが・・・敵が目の前にいるのに、何故それを撃つなという。撃たねばならんのだ!撃たれる前に!
敵は滅ぼさねばならん。男の敵は滅ぼさなければならんというのに、何故それが解らんのだ!?』
血涙の滝を両目からあふれ出しまくる中年みたいな青年男性パトリック・ロゴスの慟哭を聞いて誰もが思った。
ーーあ、こいつダメだわ。ーーと。
「・・・ああー、はいはい分かった分かった分かりましたヨ。んじゃ、あなたが先鋒役ってことでどうか宜しく」
『おお! 解ってくれたか! うれしいぞアズラエルよ! やはり男の悲しみは男にしか解らんのだな』
一緒にするな老け爺! ・・・そう叫びたがったが自重して、アズラエルはひきつった笑みを浮かべつつも戦意昂揚の策だけは伝えておいた。
「とりあえず、おたくが持ってるご自慢の砲艦を撃ってもらえるかな? その後でボクたちが全軍そろって突撃していくから・・・」
『任せておけ! なぁに、我らが力を合わせれば日本などだ』
ーーブツン。・・・映像は向こうから切られた。
「・・・い、胃がぁぁ・・・・・・」
何故だか敵味方ともに胃痛に苦しみ出す日本再占領作戦戦闘開始前の数分間。
「貴下の艦艇を斜線上から下がらせろ、我ら男の真の力・・・今こそ見せてくれるわ。
思い知るがいい女尊男卑主義者ども。この一撃が、我ら真の漢の創世の光と成らんことを。
《エクスカリバーα》発射ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」
「・・・いえ、少将閣下。さすがにあの大出力砲を命じられた直後に撃つのは不可能です。今少しチャージ時間をいただければとお願いいたします」
「ええい、なにをチンタラやってるのだクルーゼ! 戦争は勝って終わらなければ意味がないのだぞ!? おまえも出撃して何とか持たせるのだ!」
「はっ! 承知しました!」
「・・・劣等種でしかない日本人とのハーフであるお前を拾ってやった恩は、ここで返すのだぞアサクラ・クルーゼ。さすれば恩賞は望むだけくれてやる」
「はっ! 光栄であります、近い未来のアメリカ大統領パトリック・ロゴス閣下!
(ふっ・・・。愚かな男だ。この世界に終末をもたらす神の如き兵器を持ってして、私が全人類の頂点に立つのだ! この男に望めて私の望めぬ道理がない!
自ら育てた妬みと憎しみの光によって滅びるがいい! 旧人類の猿どもよ!)」
ナタ「ねぇ、セレニアさん。あなただったら、あの巨艦をどう評価するのかしら? 意見を聞いてみたいわ」
セレ「どうもなにも、時代遅れの大艦巨砲主義が演出派手にしただけでしかない、薄らデカくて足が遅い金食い虫でしょ?
まぁ、大きさ的に丁度いいですし折角でもありますので、沈没させて湾内の入り口ふさぐのに使わさせてもらうと致しましょう」
ナタ「わーい、どこかの誰かさんが聞いたら発狂死しちゃいそうな酷評だわ~♪」
ちふ「そう言えば、異住。お前、憲法9条はどう思ってるんだ?」
セレ「好きですし、できたら守りたいです。守りたいんですけども・・・」
ち・ナ「「も?」」
セレ「・・・私自身が実力不足過ぎるので、守りながら戦うのは限界ありすぎます。守れる範囲で守って、違法かどうかは他の人たちに判断を委ねようと割り切りました。どのみち一人じゃ何もできない私なのは今に始まったことでもありませんしね」
ち・ナ「「・・・ほわわ~ん(戦闘中に和みを求める人殺しちゃったトラウマ持ち)」」
アサ・クル「この憎しみの目と心と、引き金を引く指しか持たぬ者たちの世界で、何を信じる、なぜ信じる!?」
セレ「はぁ・・・世界と言われましてもねぇ・・・。私日本から一歩も外に出た事ないので国外在住の方とは会ったこともなく、何も知らない人たちに関して語る資格は持ってないんですけども・・・」
アサ・クル「知らぬさ! 所詮、人は己の知る事しか知らぬ!」
セレ「それでは、自分は相手の事を何も知らない無知なガキだと言うことと、いつか相手を知る事が出来た未来の自分でも信じている事にしておきますよ。
ぶっちゃけ、知る努力を怠けることなく精進する動機になるなら何でもいいんで」