IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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バケモノを書いてる最中なのですが、少し前から途中まで書いてあった言霊の方が先にできてしまいましたので、とりあえずは投稿しておきます。

ただ、間を空けながら書いてた回の為に文章などが大分適当になってる可能性があります。問題があるようでしたら後から一部を書き直しますので今のところは出させてください。
待たせまくってきた悪しき実績で、胃が痛いのです・・・。


54話「超星、戦闘開始直前に墜つ!」

「ーー『日本を使って日本人を守ってあげて』・・・ですか」

 

 私はあまり印象の残っていない当時の記憶を掘り起こしながら、今さっき届いたばかりの上崎叔母さんが言ってたらしい言葉をつぶやきました。

 

 ーーが。

 

「簡単に言ってくれるものですねぇ・・・。こちらにも戦略的条件とか優先順位とかいろいろある上に、現状の日本政府が何の役にも立たない以上、責任を押しつけられたとしか解釈できかねるのですけどね・・・」

 

 おまけに、今この戦況下にまで追いつめられてる日本に使い道なんて『敵を誘い込むための餌』ぐらいしか私には思いつきませんし。

 あと、微妙に今の私アッテンボロー提督みたいになってる気がして不思議な気分です。嫌いなキャラじゃないはずなのに、なんだか似てると思うと凄くヤだ。

 

 割と非人道的な発言だなぁ~と、自分でも心底から思える発言をしてみたところ、傍らで戦況を見守っていてくれてる半軍半民のナターシャ先生は大きく頷くことで賛意を表していただけました。やったぜ。

 

「同感ね。ISは世界最高戦力と言ったところで所詮は数に限りがあって、バリアも機動時間も出撃してからは刻一刻と消耗していくだけの欠陥兵器に過ぎないですもの。

 攻める際に高速突撃で奇襲を仕掛けるか、機動戦術で引っかき回すか・・・とにかく時間を限定して戦う以外に勝ち目はない以上、受け手に回らざるを得ない防衛戦では圧倒的に不利になる。攻勢防御に出る機を逸しすぎてる今となってISは、敵の攻撃を受け流した後で行う決戦兵力以外に使い道は私も思いつかないわね」

 

 彼女の言葉に多少の異論はあれど、大方においては私も同意。それ以外の使い道が無いわけでもありませんが、今回の作戦目標を達成するために取れる戦法が限られすぎているのは事実なのでね。

 

「ISだけしか手元に戦力がないのが悔やまれるところですね・・・。侵攻作戦ならともかく防衛戦においては、敵の攻撃が行われている間中ずっと案山子として立ってるかモグラとして隠れ潜んでいるかしか出来ない兵器です。コレを使って敵から国を守るなんて土台無理な話ですよ」

 

 戦うことしか出来ず、守ることには向いてない戦闘兵器。言いにくいことではありますが、私の中でISはそういう認識です。

 あくまで“兵器として捉えたIS”は、ですけどね?

 

 

 そんな風に世界最高戦力ISを二人で扱き下ろしていたところ、遠くから聞き覚えのある足音がーーいえ、象のように床を踏みしだいて進む轟音が轟いてきました。

 

 ああ・・・これは来たみたいですね。この事態を作った『元凶』さんが

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・

 

 

 

 ・・・・・・バタン!!

 

「出撃許可をまだ出さない気か異住ーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 

 おいでやすです、織斑先生。お茶漬けいかがです?(訳:とっとと帰れ)

 

 

「なんですか織斑先生、ノックもしないで騒々しいですね。

 ーーあと、せめて何かしら羽織ってから来てください。ISスーツと貴女の肢体は目の毒になり過ぎますから・・・」

 

 一応は私も元男なので、大人の色っぽい女性には耐性ないのです。同世代以外の異性と出会える確率がバカ高いギャルゲー主人公以外の男は大体そんなものです。

 

「なんですかではない! 敵艦隊が首都東京を射程圏内に収めたことを通達してきたのに未だIS部隊に出撃命令をださないなどと、人々を守るためのIS操縦者を育成する教育機関IS学園の生徒を名乗る資格無き者のみがする所行だぞ!」

「逆です。もう主砲の射程に捉えられてしまったのでしょう? ならば今更でたところでどうにもなりません。敵砲弾の雨霰を撃たれた中では、数が少ないISは数で押しつぶされるだけですよ」

「ISが人々を守るための盾になればいい! エネルギーが尽きない限り、ISの防御は打ち破られることはない!」

「バリアは範囲が狭すぎます。人型大のサイズでしか張れないバリアなんて、敵襲団からの攻撃から人々を守るために使うには小さすぎるんですよ。

 所詮、世界最大の大会モンド・グロッソでさえペアかチーム以上の数で運用できなかったISは、決闘か試合以外の戦いでは用を成し得ません。もう少しお待ちになっててください」

 

 顔を赤らめながら詰め寄ってこられる先生に多少辟易しながらも、言ってること自体には気持ち的にだけですけど理解できちゃうんですよねー。

 

 私も出来損ないとは言えヤン提督の弟子を自称してきた者。民衆を守るための楯になるため部下を出撃させて、指揮官としての責任に押しつぶされそうになりながらも耐えてるシーンには憧れを持ってきました。・・・今までは。

 

(でも・・・・・・結局私は異住セレニア・ショートであって、ヤン提督でも何でもない。ただのロクデナシで人でなしなガキでしかなかったんですよね・・・)

 

 それが土壇場になって初めて心の底から実感させられた私の心情。

 私の奉ずる民主主義は、ヤン提督の唱えた民主主義愛を『ヤン提督大好きな私』がヤン提督を好きだからこそ愛してきただけだった・・・とまでは言いませんが、私なりの解釈で歪めてしまっていたのは確かだったのでしょう。

 前世で犯した過ちを、今生でもまた繰り返していたという事実は私の心を痛く気づけはしましたが、二度目になると耐性が付いてた分だけ受け入れやすかったようです。

 

 私の歩幅で、私の夢見るヤン提督へ至る道を、私の歩きたい歩き方と道を選んで選択しつづけて歩み続ける。・・・戦闘前に思考に耽る癖があった提督の猿真似でもしたかったのか、今の私はそんな事を考えていました。

 もっとも、安心できる理由があるから安心してただけとも言えますけどね。

 

「ならば私が一人で赴く! 嘗てと同じように全ての攻撃を切って落としまくるだけのこと! 離れた相手にも大型荷電粒子砲を撃てば済むのだからな!」

『・・・・・・はい?』

 

 私とナターシャさんが揃って間抜け面をさらしながら異口同音に疑問の声を発しました。曰く、“なにバカ言っちゃってんのコイツ。頭おかしくなっちゃったん?”

 

「な、なんだその表情は? 知らないかもしれないが、私は嘗て世間から見向きもされていなかったISを世界最高戦力にまで押し上げた大事件『白騎士事件』において世界初のIS白騎士をーー」

「・・・ああ、いえいえ、一応ですがそこら辺は把握していますので改めての説明は結構ですよ。今の「は?」は、まさか本気で言ってませんよね?という意味での「は?」です」

 

 なんか自分でも言ってて不可思議な文法になっちゃったなぁと思いましが、冷静さを失っている今の状態ではこれが限界です。あまりにも予想外すぎる仰りようでしたので。

 ナターシャさんも同意見なのか「うんうん」と静かに何度も頷いてくれてますしね。織斑先生の発言が・・・言っちゃあなんですがバカすぎたので精神的に足払いされまくってる状態なんですよマジでマジで。

 

「・・・??? 至って本気での発言だったのだが・・・どこかおかしかったか?」

 

 本気の本気で大本気のまま至って正気で素面な表情でのアホアホ発言を受け、私の胃は久々に絶大なダメージを与えられて悶絶させられます。

 

「胃が・・・胃がぁ・・・・・・!!!」

 

 シュターデン中将がぁ・・・・・・・・・!!!!!

 

「お、おい、大丈夫か異住? 一体おまえに何が起きたというのだ!?」

「放っといておあげなさい、織斑先生。久しぶりにダメージを受けたから胃の耐久力が落ちてただけでしょう。そのうち回復して帰ってきますよ」

「は、はぁ・・・そういうものなのか? ファイルス先生・・・」

「そういうものです。ーーほら、セレニアさん。お水をどうぞ。今背中をさすってあげますからね~」

 

 うっ、ぐ・・・あぅぐ・・・ぁ・・・・・・・・・ごくごくごくごくごく・・・ぷはっ。

 

「はぁ、はぁ・・・し、死ぬかと思いましたよ久々に」

「戦争終結のために行われる最後の戦闘開始直前に指揮官が、味方のおバカ発言で胃が破壊されて死亡・・・この上なく嫌な死に方ね・・・」

 

 ええ、本当に。私も心の底から賛成しますよ、その意見には。

 

「えーと・・・織斑先生? 大変言いにくいことではあるのですが・・・白騎士事件で白騎士はミサイル切り落とせてはいないと思いますよ?」

「なっ!? そんなバカな事があるわけないではないか!

 私はあのとき確かに各国から発射された二三四一発のミサイルを切り落とし、撃ち落とすことで伝説となった世界初のIS白騎士の操縦者なのだぞ!?」

「・・・意外と誇ってたんですね、その功績・・・」

 

 そう言えば彼女がIS乗り辞めたのって、織斑さん誘拐事件でIS乗ったまま人斬り殺しまくった後でしたね。

 その直前まで第二回モンド・グロッソ決勝戦に出て優勝する気満々だった訳ですから、自分が人殺しに使いさえしなければISに悪感情なんて抱くことはなかったのかもしれません。つまり、今のこれが本音と言うわけで。

 

「よく思い出してください織斑先生。あの時に各国のミサイルをハッキングしてたのは誰でしたか?」

「束だ」

「日本に向けて発射させたのは誰でしたか?」

「束だ」

「発射させたミサイルを落とすために白騎士を纏わせて織斑先生に出撃させたのは誰でしたか?」

「束だ」

「白騎士の開発者で、白騎士が装備している武装のスペックと限界、射程に至るまで把握していたのは誰でしたか?」

「束・・・だ・・・」

「白騎士事件を起こすことで自分の開発したISの性能を世界に対して見せつけ、自己の才能を認めさせたがっていたのは誰でしたか?」

「たば・・・ね・・・だ・・・」

 

 だんだんと声が小さくなってきた織斑先生。・・・本当に今の今まで疑ったことなかったんですね・・・純粋すぎるにも程があるでしょうよ、なにを考えて生きてきたんだこの人は。

 

 狙った場所に切り落とさせるつもりで撃たせたミサイルを一発でも切り落とせなかったら、むしろ恥でしかありません。落とせる分だけ撃たせて、切って落とす。終わったら即座に帰る。白騎士マジすげぇ、IS最強世界一ぃぃぃぃぃぃっ!の出来上がり~♪

 

 マッチポンプ乙!

 

「いきなり出現した謎の人型兵器ISには何が効いて何が効かないかは、開発者である彼女しか知りませんけど、相手の方は全て把握されちゃってますよね? ハッキングされちゃってるわけですから」

「・・・・・・・・・」

 

 ついに黙り込んじゃった織斑先生に私はため息を付きながら、最後の一言を付け加えました。・・・今まで散々言い続けてきたことだから別にいいかなーと・・・ね?

 

「だから最初から私はず~っと言い続けてきてたでしょ? 『白騎士事件はデモンストレーションとして失敗だった』って」

「・・・・・・・・・・・・たぁぁぁぁばぁぁぁぁぁねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!

 貴様っ! 私を騙して利用していただけだったのだなぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 ばぁっんつ!!!

 

 どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどっ!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「・・・何しに来たんでしょうかね? あの人は・・・」

「戦時下ですもの。気が触れて叫び声をあげる兵士がでるのは、珍しくもないことよ」

 

 本気でどうでもよさそうに語られてるナターシャさん。

 

 つかさー、この世界の人たちはよく『犯人兼計画立案者兼武器調達係兼解決役の黒幕さんが全部同一人物で占められてる事件』なんかでIS最強説を受け入れましたよね。どっから見たってマッチポンプ以外にあり得ない事件でしたのに・・・。

 

 先生の純粋さって、もしかして種族病なのでしょうか? IS世界人特有の。・・・あり得そうで怖いな~・・・。

 

 

 

 ・・・・・・ま、いっか。今はどうでも。

 

 

『織斑先生! 敵が攻撃を始めました! 警告で通達された時間より早くにです! 私たちと日本は騙されたんでs・・・って、あれ!? 織斑先生はどこに行ったんですか異住さん!? こちらに行くからって教えられてたんですけど!?』

「そんなのはどうでも良い事なので、山田先生。攻撃してきた部隊と、艦隊内での位置表示を見せてくださいませんか? こちらのでも見れるのですが、確証が得たいんですよ」

『え? あ、はい、わかりました。・・・どうぞ、これが敵の配置と編成です。上から俯瞰して撮影した映像をプリントアウトした物です。幾つかのドローンを中継に使うことで時間は掛かりましたが、そのぶん精度と確度は確かなものになっているはずです』

「ありがとうございました、山田先生。助かりました。以後もそちらはお願いしますね」

 

 お礼を言ってから通信を切り、私は数枚のプリントアウトされた資料を軽く眺め回してから「ああ、やっぱりと」安堵の息を付きました。

 よかったです。これで『戦闘だけは』勝てそうです。

 

「敵の編成に、なにか穴でも見つけたの?」

「ええ、まぁ。似たようなものですかね。マイントイフェル准将からのメッセージを表現したものですからね。お互いに同類なので読みとるのには苦労しませんよ」

 

 不審そうな顔をするナターシャさんでしたが、今の私に片付いた問題に割ける思考力の余裕は微塵もありません。なにしろ、次の問題が一番の難題なのでね・・・。

 

「・・・問題は、日本国のみなさんがどう動くかですからねぇー・・・バカやって、ロックウェル大将みたいにならなきゃいいのですが。はてさてどうなることやら」

 

 え? もしそうなったらどうするのかって? そんなのは最初から決まっています。

 

 頭をかいて誤魔化して、みんなに寄ってたかってお仕置きされる。

 ヤン・ウェンリーになりたがってただけの贋作には、今はこれが精一杯。

 

つづく


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