IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
今話からの注意事項です。
本来このシリーズ自体が始められたとき、原作ではMF文庫版にプラス一巻分の8巻目までしか持っていませんでした。
なので当然、その後の展開であるワールドワイドな戦争もどきは今作でも想定しておらず、想定しないままここまで来てしまったせいで本来なら入らないはずのガチ戦闘シーンや戦争シーンなんかも入れざるを得なくなってます。
その為そういう回ではギャグが極端に少ないです。作者がガチバトル書くの苦手なせいです。戦争シーンは戦記物好きが災いして暴走してしまいます。
緩く書くとギャグ戦記物しか書けないので、そっちはエロ作でやりたいです。
と言う訳で今回、ガチバトルはないけどガチな陰謀バトルをお愉しみください。
「准将閣下、皆様方をお連れしました」
「ご苦労。それで? 敵から再度の奇襲は?」
「ありません。我々もそれを警戒して貸与していただいた対IS兵装で武装し、歩兵用対IS陣形を構築しながら進んできたのですが、敵は陰すら見受けられませんでした。
恐らくは官邸のどこかに息を潜めて隠れているのかと・・・」
人質“役”の日本政府要人たちを護衛しながら案内してきた、現地徴用兵にしては良く訓練が行き届いている“元”亡国機業構成員の練度の高さに感心しつつ、この私アメリカ空軍参謀『ワイアット・フォープ』准将は鞍替えして部下となった者たちに寛大な態度で指示を下す。
「よくやってくれた、礼を言う。これからも忠勤に励みたまえ。
私は私に尽くしてくれる者たちを、決して無碍には扱わない」
「は、ははぁっ! ありがたき幸せに存じます! 努めて閣下のお役に立って見せますので、その時はどうか我々を米軍士官の末席に!」
「了解しているとも。もとよりそういう契約で諸君等はマイントイフェル閣下と約定を交わているのだろう? 交わした約束を私は決して破らない」
「ははぁっ! お言葉、肝に銘じて臣の全力を尽くします!
では我々は入り口を固め、死守いたしますればこれにて!」
深々と頭を下げてから敬意と感謝を込めて退室していく男どもに私は相変わらず心地よい気分にさせられて、一時だけだが陶酔に浸る。
ああ、これだ。これが良い。生まれたときから求め続けた快楽に酔いしれ、私は依然戦場にある己の立場を忘れて忘我の境地へ至りかける。
ーーたとえ今この時だけでも良い。存分に味あわせてくれ。どうせ本国に帰国したら二度とは味わえないだろう最後の地位と名誉と栄光を、私に思う存分に!
「ーー随分と彼らに報いるんですのね、フォープ准将。あんなの所詮は捨て駒に過ぎないのですわよ? 駒の、それも最も格下のポーン如きに感情移入し過ぎるのは栄光あるアメリカ軍人として、どうかと思いますけれど?」
オルガズムさえ感じかけた人生最高の瞬間に余計な横やりを入れてきたのは、背後でワイングラスを傾けていた海軍参謀『ノーマ・アレキサンダー・ベイツ』少将。
私と同じくマイントイフェル大佐(我々が失脚した今は三軍参謀として昇進しているだろうが)から持ちかけられた交渉に応じて日本へ渡航してきたIS操縦者である。
能力的には優れているし、なによりも獲物を嗅ぎ分ける嗅覚が人並みはずれて優れており、その点が今回の任務に選ばれた理由なのだろう。
ーーあるいは汚れ仕事を進んで買ってでる意地汚さが向いていると判断されたからか・・・。
心の中で毒づきながら私が想起するのは一ヶ月程前のこと。
エクスカリバーが撃墜された直後のことであり、報道される直前のことでもあったため半信半疑であったのだが、その直後にテレビで流れた巨大質量の落下映像を見せつけられた後では反論も異論もあったものではない。
私は彼の話を聞き、仲間を募り、作戦開始の合図を待った。
それは意外に遅くはあったが、タイミングとしては中々のものだったと思う。
ある朝玄関のポストに投函してあった書類を一読すると、私は即座にホワイトハウスへ直行し、現地で落ち合った二人の指揮官ノーマ少将とバスタ大佐と合流。その足で予定通りに大統領閣下の元へと乗り込んだ。
自慢するわけではないが、私の演技力は中々のものであったと自負している。大統領が国防長官の頃より鍛え上げられてきたその能力で私は閣下との間でアイコンタクトすらする必要もなく演技を最後までやり遂げる事に成功した。
「自分を欺くには、まず自分は本心からそう思っているのだと思いこませること」
大統領閣下の無茶ブリと呼ぶべき指導を受けた甲斐があり、執務室に集った4人の役者たち全員が“たった一人の観客”を騙しきることに成功し、そのまま無事に日本へ渡航。現在に至る。
「程々にしておきなさいな。飼い犬に感情移入しすぎると居なくなった後に寂しくなりますわよ?
捨てるにせよ、殺すにせよ、見殺しにするにせよ、敵に殺させて生け贄にするにせよ。死なせ方はどれだったとしても同じように寂しく、ね」
男を格下と見下し、人としてすら見ていない彼女の言い草には同じ白人主義者である私を以てしても些か以上に不快感を掻き立てられる。
別に人道主義だ平等だなどという理想論を唱えるつもりはないが、締め付けるだけでは統治は出来ない。まして此処は占領地なのだ。参考にすべきは愚将ではあったが統治者としては実績にあるマッカッサー元帥であって、軍事バカを地でいく毛沢東ではない。
指揮官としては偉大でも統治者としては無能を極めた彼を『20世紀最大の成功した独裁者』として崇め奉るのは米国軍人として以前にアメリカ人としてどうかと思うのだ。
「貴官こそ、今の発言は些か問題ではないのか? 亡くなったとは言え、彼女は一応公式記録上では我々と同格の高級軍人だ。貴い犠牲を払った友軍を、敵国人と同じに見なすのは如何なものか」
「明日をも知れぬ戦場で、綺麗事を言うのはお止めなさいな。
それに、手柄さえ立ててしまえばこちらのモノなのでしょう? 敵の捕虜を虐殺しても、友軍を犠牲の羊に捧げても、母国の安全と引き替えに守るべき国民を敵に売り払おうとも、勝ちさえすれば正当化される。・・・ねぇ、貴方もそう思いません?
日本政府の重鎮にしてご意見番でもある『売国奴』の貝木さん」
「おい、ノーマ少将。さすがにその呼び方は・・・」
「構いませんよフォープ准将、事実ですからね。否定する言葉など何一つ持ち合わせていないのが私です。お好きなように呼んでくださって結構ですとも。私は一切、気にはしませんので」
のんびりとした口調で悠然と笑ってみせるのは、かつて政府閣僚として辣腕を振るい、引退後も隠然とした影響力を行使し続ける日本政府の財界陰の大物『貝木澱宗』。
齢90を越える老齢の身でありながら政界に及ぼす影響力には一切の陰りを見せない日本政府に巣くった妖怪。
男性政治家にとっては致命傷となってもおかしくない『白騎士事件』に際してはアメリカから提案されたばかりの『IS学園設立計画』を全面的に支持する事で保全を図り、それ以降もIS絡みの事件が起きる度に暗躍して日本を陰から『守ってきた』知られざる功労者。
日本の暗部にして対暗部カウンター組織『更識』の上役であり、対諜報機関であると同時に暗殺組織でもある更識の当主を国家代表候補にするよう政府に訴え、候補として実力を示した後には日本の仮想敵国であるロシアに国家代表として売り込みさした国家保全の天才。
国益を追求すれども自己の利益は省みず、国民を犠牲に捧げた数の倍数分だけ国民と彼らの遺族を救ってきた。
国家を守ることが国民を守ることではなく、“国益”を守ることこそが国民の生活を、ひいては命を守るのだと信じてやまない戦後日本の資本主義が生み出した化け物。
「売れるのなら、国でも親でも家族でも、己の腕さえ一本だけなら売り払ってしまえ。
IS技術全盛の今では、高性能な義手が格安で販売されている。売った金で購入し、お釣りを元手に商売を始めろ。隻腕の経営者はマスコミが食いつきやすい話題になるぞ? せいぜい利用してやればいい。
何処の誰がどんな手段で手に入れた金だろうと、最終的に日本の資本主義経済に還元されるのなら別に構わん。気にしない。日本経済が潤いさえすればそれでよいのだ」
かつて部下にそう語っていたと言われる老獪な彼は、正しい意味での政治業者だ。
なぜなら彼は心の底から政治家を、国と言う名の会社を経営している企業経営者としてしか思っていないのだから。
「米国にはエクスカリバーの件でご迷惑をおかけしてしまいましたからな。出来れば今のまま支援物資の提供を続けていただきたかったのでね。
その為に総理は邪魔になるようでしたし、国と国民を継続的に食わしていくためにも今回マイントイフェル大佐から持ちかけられた商談は実にありがたかった。
たかだか替えの利く頭一つで支援を続けていただけるのであれば、安い買いものだったと言うべきでしょうな。いやはや、本当にありがとうございました」
抜け抜けとのたまう彼だが実のところ彼と総理は近親者、それも他家へと嫁いでいった実の孫娘であり、幼い頃は子煩悩ではなく孫煩悩と揶揄されるほどの好好爺だったはずだ。
それが今はーー
「・・・よろしかったのですか? 小池総理は貴方の・・・」
「無論、残念でなりませんとも。可愛がっていた初孫ですからね。老い先短い祖父を残して死んでしまうとは何事かと、生きていたのなら叱ってやりたいくらいですよ」
「でしたらーー」
「ですがね」
そこで声のトーンが急激に変わったわけ“ではない”。私がそう感じたと言うだけのことだ。それ程までに彼の発言と思想は常軌を逸してしまっていた。
「死んでしまった後ですからね。死体相手に語りかけるのも殴って叱るのも、オママゴトとやってる事は大差ない。むしろ見た目が似ていると言うだけで孫の死体に、孫そのものを被せて見るのは彼女自身に失礼と言うもの。死者の魂を愚弄することに他なりません。
私は死者の霊を敬う典型的な日本人として、死んでしまった孫娘の冥福を祈りましょう。願わくば来世という別世界で幸せな第二の人生を送れていることを」
「「・・・・・・」」
さすがにこれは予想外だった。ここまでヒドいなどとは誰も想像できなかったであろうし、当然私もノーマ少将も予想なんかしてきていない。
先ほどまで舌打ちしたげな苦み走った表情で彼を睨んでいたノーマ少将も、彼に飲まれたのかそっぽを向いてワインを飲むフリをしている。グラスはとっくの昔に空になっているというのに・・・。
唖然として言葉を探す我々に、彼は滔々と語り続ける。
今回の作戦目的と手段と結果を正確に予測してのけた、日本きっての大梟雄はまるで時代の覇者のように、勝者のように、勝負に負けたが計算どうりだ別に良いと笑い飛ばすような満面の笑顔で語り始める。
日本の取ってきた戦略を。日本の方針を。現在日本が行っている愚行の精算方法を。
「戦争なんて儲からない。儲からないならやる必要はない。
海洋国家である日本は侵略戦争など考えず、ただただ国土と交易による利益のみを追求し、死守さえすればそれでいい。戦争は他国同士にやらせ、日本は言われるがままに物資を売りつけ続けさえすればそれでよいのです。
名誉? 誇り? 民族としての矜持?
そんな食えもしない代物は、犬にでも食わして懐かせた方が儲かるではありませんか」
「確かに『白騎士事件』勃発当時の日本はIS技術を独占している状況にありました。『白騎士事件』で世間が浮かれ、頭の悪い若造どもが主戦論に走る可能性もありましたし、また実際に走りかけるバカもいた。
その為の抑えとして更識に、完成したばかりのISを与えておいたのです。暴徒化した市民が他の一般市民に害を及ぼすようなら、対暗部用とはいえ更識の出張る理由としては十分でしたからね。
白騎士事件に混乱する世界にあって、国内で大規模な暴動など起きでもしたら列強によって即日のうちに滅ぼされていたのが当時の日本の置かれていた状況です」
ーーISを使って戦おうとは思わなかったのか?
私の質問に彼はこう答える。
「一時間で都市を更地にできてしまう兵器を使って他国と武力衝突するとして、戦ってボロ負けした世界は大人しく日本に従うことを良しとしますかな? 私には到底そうは思えない。
必ずや戦力の建て直しを計って再侵攻を企図する事でしょう。その為の力と自信と、なにより弱小国日本の言いなりになんかなりたくないと言う強い思いが、大方の大国にはありましたからな。敗戦後に停戦交渉、その後条約を無視して再度侵攻するのは当然の帰結と言うものですよ」
ーー当時は日本だけが持っていたISを用いて逆侵攻してやろうとは思わなかったのですか?
「ISを使って築き上げた瓦礫の山を手に入れて、どうせよと仰られるのです? 貧乏人となった敗戦国の領地経営なんて、余程の事情がなければ誰も引き受けたがらない。違いますか?
あなた方アメリカもソ連という敵性国家が存在しなくば、焼け野原を0から復興させるGHQ司令官の座を左遷先としか思えなかったのではありませんかな?」
ーーなぜ、そうまでして日本の“今”を守りたがるのか?
国家の代表を生け贄に差し出せてまで、敵国のIS操縦者と共謀の末に国家代表を一人弑する人殺しを犯してまで。
「私はもう二度と貧乏人には戻りたくない。だから戦争など真っ平ごめんだ。攻める側としての戦争ならね。
どうせやるなら、守る側がいい。権益を守り、航路を守り、利権を守る。ひいてはそれが国民の生活を守り、豊かな生活さえ守り抜けば人は決して無駄死になどしないものです」
ーーそうまでしてあなたは、いったい何を守りたい?
「ただただ、金。金さえあればそれで良く、金の成る木そのものな海を手に入れ守り抜ければそれでよい。
どのみち人も国家もいつかは死ぬのです。ならば生きている間は豊かに贅沢に飢えることのない生活を送って死にたいと願うのが、人間として正しい在り方というものではありませんか?
人間として豊かに平和に健やかに生きて死ねるのであれば、大国の下で飼い慣らされようと、核の傘の下で守られようと、這い蹲って靴を舐めるよう強制されようとも、何ら問題はない。委細承知するまでのこと」
ーー何故? どうして?
アメリカは貴国を対等には扱わない、それを承知でどうしてそこまで譲歩することが出来る? 恥知らずな生き方をして平然と笑える理由を聞かせてもらいたい。
「どのみち資源も土地も乏しい小さな島国である日本で1億人以上を養う為には、他国に縋ってお余りだろうとなんだろうと安く買い叩いて掻っ払い、第二次産業で加工して食うか売るかしなければならんのです。
謂わば現代の日本人は外国人が垂れ流した糞を加工し、金へと換える錬金術師だ。他人を食い物にして生きている国家に誇りがあるとするなら、それは卑怯卑劣な強かさであるべきだ。厚顔無恥である事こそ、日本人は誇りとすべきだ」
ーーでは、貴方にとっての敵とは何のことを指す?
「私の愛する日本を貧乏に戻そうとする輩は、誰であろうと許さない。必ず殺して、金に換えてみせる。
例外はありません。子も孫も妻も友も部下も国民も総理も閣僚もすべて、例外なく日本に損益を与える輩は私の敵だ。敵は殺し、味方は迎え入れる。
即ち、あなた方は私の味方だ。私はあなた米国とトリューニヒト大統領に絶対の忠誠を誓います。
あなた方が日本と私に利益を与え、利権を害しようとしない限りは永遠にーー」
ーー正直これほど不誠実きわまりない忠誠の証もないと思うのだが、議長はやけに彼を気に入ったらしく懇意にし続けている。
今回の騒動で来日直後、最初に訪れる先として彼の邸宅を指定してきたのは議長であり、マイントイフェル閣下からは「現地においては彼の指示に従うよう」命令も受けている。無碍にはできない。
ーーだがしかし・・・。
「ですが、本当に宜しかったのですか?」
「?? なにか私の言動に不審な点でも?」
まるで子供のような仕草で小首を傾げてみせる老人に、私は根気よく丁寧な態度で説明していく。
「総理を人質としてバスタ大佐を屋上に出す。それを狙って撃たせればいい。
あの性格では名誉を傷つけられて平然とはしていられますまい。後は敵が片付けてくれるーー。確かに貴方の提案されたとおりに事は運んだ。その点については感謝しています。
それになにより、今回の事件は『陽動作戦』だ。本命が亡国機業本部に対して行う全面攻勢を魔王に悟らせないためのね。IS学園さえ動かなければ我が軍の勝ちは揺るがない。
今頃は魔王に対する止めとして、海を南下している艦上からリアルタイムで電話している頃合いでしょう。この時点で我々の作戦は成功裏のうちに完了し、後は勝ち負けに関わりなく貴国に投降して外交官を通じ帰国するだけ。
帰国後は戦力の主軸からはずれたIS操縦者として、各軍のエースにでも成るつもりでいますが・・・・・・貴方はどうするつもりなのです貝木先生?
貴方の今後について我々は、是非とも知っておきたい。よければ教えていただけませんか?」
でなくては枕を高くして眠れない。
私は議長たちほど肝が強くはないのである。
彼はやはり笑顔で応じ、心の内を開陳してくれる。
ーーこの上なく胸糞の悪い思想を伴って・・・。
「捕らえた貴女方を傷ひとつ付けることなく送り帰す。その代価として、日本はこれまで通りの支援物資を提供していただける。それにより日本は今まで通りの平穏が保たれるでしょう。
日本人の平和ぼけは既に病気の域だ。肯定してくれる要素を無意識のうちに探してしまうし、見つけたら後は適当な理由付けを自分たちで探し出して付け足してくれさえする。後は簡単だ。彼らの言い分を肯定し、その為の証拠をでっち上げてやりさえすれば彼らは信じ、普段の経済活動へ戻っていってくれる。私の理想とする海洋国家日本の平和と経済活動は保たれる」
「国民ひとりひとりは決して愚鈍な生き物ではない。だからこそ、個人のままにしていてはいけない。組織に入れて自由行動権を奪わなければ。
思想は自由で良い、言論の自由だって人に与えられて当然の権利だ。統治者を責めない国民がいた時代など一秒たりとも人類史には実在しません。新聞も宗教もマスコミも、好きなだけ他国に買収されて金を貰えばいいのです。
世界は繋がっているのが現代の経済なのですから、取られた分は別のところで倍にして取り返してやれば決算はプラスに転じるはず。なにも取られた間抜けが取り返す必要もありませんしね」
「一人の間抜けが死んで多数の企業が潤うのなら、それは資本主義国家日本の正義と言うものだ。正義が人の数だけ存在しては社会はやっていけないと言う奴はいても、国家の数だけ正義が存在するのを否定するバカはいないでしょうからね。
居るとしたらそれは、認めることで損するから認めたくないだけの利己主義者だ。同じ利己主義者である私が認めてやる必要のない存在だ。無視して勝手に進むだけですよ。
負け犬は路傍でも社会の片隅でも、好きなところで野垂れ死にするのが正しい末路と言うもの。奪うときだけ自由を唱え、奪われるときだけ権利を叫ぶ無能は死ね。経済活動には必要ない。利益を生まず、損害だけを被らせる輩など私は存在自体を決して認めない」
「だからこそ今、私と彼らは敵になった。
私と彼女の利害は一致するが、彼女の行う『思想戦争』に私は一切の旨みを感じない。旨みがない戦争など迷惑なだけだ。だから邪魔させて貰ったのだ。
ーー分かるな? 織斑一夏君。
私は今この時、日本の利益を君たちの親玉である魔王から守りきったぞ」
「「!!!!!」」
バタンっ。
「・・・・・・薩奸死すべし。
新しき時代に生きる器に非ず、過去とともに首だけ晒す器なり」
「できるかな小僧。世の中にはな、勝てないと分かった上で挑むからには相応の仕込みをしておく大人の方が多いのだぞ?
強ければ勝てるだなどと思い上がれば、命を無駄撃ちするだけさ」
「結構。戦だ、飛んでも跳ねても構わない。あらゆる手を好きに使え。俺が許可する」
「・・・己が死ぬことで事を成そうとする類の功名餓鬼か。ちっ、面倒くせぇのが現代に蘇りやがって。
オメェら戦国武士なんざ、この世の終わりまで地獄で合戦してりゃ良かったものを。お陰で現代に生きる俺たち現代日本人が迷惑してるじゃねぇか。どうしてくれるよ? ああ?」
「知らんわ、たわけ。鉄砲玉の俺に大戦略など語ろうとするな。そう言うのはセレニアとやれセレニアと。あの銀の魔王様と楽しくおしゃべりしていやがれ。
・・・・・・あ、やっぱダメ。今のなし。想像したらイヤな気分になってきたから、とりあえず俺がこの場でお前殺して可能性のまま葬り去るわ。
ーーと言うわけで、疾く死ね俗物。今の時代に老害が生きる場所など何処にもないぞ」
「・・・・・・・・・・・・なんか最後の一歩手前で変なのが混じった気がするが・・・・・・まぁいいか。とりあえず始めるってのは賛成だ。
殺し合おう、若造。爺だって結構やるんだって所を見せつけてから逝ってやる」
つづく