IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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今話のセレニアはちょっとだけ邪悪です。お気を付けください。

注:原作に出来るだけ近づけようとしたところ、さすがに日数に無理あり過ぎましたので書き変えときました。無謀な真似して申し訳ございませんでした。


34話「セレニア思想」

『祝! 織斑一夏君、亡国乱入事件で誕生日会出来なくてごめんねパーティー開催!

 十月五日だけど九月二十七日の誕生日会よん♪

 匿ってるけど名目上は軟禁中だから、目一杯ストレス発散しちゃってちょーだい!

                                By更識楯無』

 

 

「者共!大いに食って大いに飲め! 払いは更識会長が持ってくれる!

 では改めまして・・・・・・かんぱーっい!!」

『かんぱーい!!』

 

 

 階下から聞こえてくる喧噪に、私は平穏を感じて心が安らぎを覚えます。

 

 ーーああ・・・平和って・・・本当に良いものだなぁ~と・・・・・・。

 

「本当に? 本当にそう思っているのかしらセレニアさん?

 エクスカリバー落として、世界中のIS保有国を大混乱の坩堝に叩き込んで、挙げ句の果てには米国に政権交代起こさせて亡国機業討伐軍を編成させるに至った貴女が、本当にそう思ってそう言っているのかしら?

 そんな悪いこと言っちゃうのはどのお口なのかしらね? この口かしら? このお口なのかしら~?」

「・・・嘘ですごめんなさい、少しだけ現実逃避したかっただけなんです。ちゃんと現実見据えてますから目を逸らしてませんから。

 だからお願い口を抓らないで痛い痛いいひゃいいひゃいです~・・・・・・」

 

 一階で織斑さんの誕生日会(八日遅れですが)が始まった直後に行われる、ナターシャ先生から私への愛あるお仕置き。これは地味に痛いです・・・。

 

 彼女はIS学園から監視役兼いざという時の処理役に派遣されてきたと言う名目で、日本の暗部更識家の屋敷に匿われている私たちへの連絡係を勤めてくれてます。

 宣戦布告はされてなくとも事実上の敵対国から派遣されてきてる国家代表候補を連絡役に使うのはどうかと思う・・・のですが、今更過ぎるような気がしなくもないです。

 

 事実上ではなく、明らかな敵性組織と化した武装テロ組織亡国機業の元とは言え構成員さえ何の蟠りもなく生徒として迎え入れる我らがIS学園に一般的な常識はいっさい通用しません。

 成せばなりますし、成せないのなら力付くで押し通ります。

 ・・・なんか亡国より質悪い組織になってる気がするのは、私だけなんでしょうかね?

 素直にテロして裁きを逃れようとする一般的なテロ組織亡国機業の方が、まだしも正攻法で外道な攻め方してくれてるような気が無きにしも非ず?

 

 

 

「世界中が混乱してますもんね~。

 エクスカリバーどころか亡国機業についてさえ知らされず毎日を平穏に送っていた一般の方々にとっては、青天の霹靂以外の何者でもありませんし。

 慌てるのが道理ですし、政府の責任を問う声が紛糾しまくるのも当然のことです。

 自分たちの平和な日常が実は火薬庫の上で成り立っていたなんて事実を知らされて、冷静さを保っている方がおかしいんですよ」

「・・・世界中の誰よりも貴女にだけは言う資格のない台詞だと思うのだけど・・・まぁ、そうね。それについては全く同感だわ。

 発言者である貴女こそが事態の最高責任者でさえなければ、心の底から賞賛したいぐらい尤もらしい理屈だと思うもの。

 ねぇ、セレニアさん。貴女もそう思うわよね?(に~っこり♪)」

「・・・・・・本当にごめんなさい、心の底から反省しております。二度としないので許して下さい・・・」

「本当だな? 本当にあんな無茶は二度としないな? 約束だぞ?

 嘘ついたら針千本ではなく、お前の嫁に口を塞がせるからな。唇で」

「それは怖すぎますが・・・なぜに篠ノ之さんまで私の糾弾裁判に参加して・・・いえ、なんでもないですごめんなさい。黙って土下座続けさせて頂きます・・・」

 

 どう言うわけか一階で行われている織斑さん誕生日会ではなく、二階の小部屋で行われている私への糾弾裁判(要するにお仕置き部屋です)の方に参加しにきてる原作メインヒロイン篠ノ之箒さん。

 またなんかおかしな方向に舵を切ったのかな~、この世界。いい加減疲れましたし、胃も痛くなり過ぎました。休ませてもらえませんかねぇ本当に。

 

「「・・・・・・」」

「ごめんなさい嘘です。そんなこと思ったことすらありません。

 だから乗らないで。重くはないですけど、頭に女の人のお尻が乗られると私の矜持がですね・・・」

「「黙れ。悪い子に人権はない」」

「・・・・・・はい・・・・・・」

 

 左右から背中を向け合う形で二人の女性が、土下座してる私の頭にお尻を乗せてきます。本来なら人一人分の体積だけで相当な物なんでしょうけど、そこは流石にIS操縦者。

 バランス取って適度に私への圧迫を加えてきてます。主に屈辱的な方面で。

 

 私の前世が男であることをナターシャさんは教えられて知っているようでしたが、篠ノ之さんには未だに気付いてる素振りは見えません。嘘つくのが苦手な人ですから、純粋に気付くことなく私へのお仕置きに参加しているのでしょう。

 

 ・・・良い人なのか悪い人なのか・・・少なくとも今の私にとっては怖い人でしかありませんけども・・・。

 

 

「はぁ・・・もういいわ。真面目にスパイやってた私がバカに思えてきちゃった。

 とりあえずの近況報告だけしてあげるから、お尻に敷かれながら聞いてなさい。

 返事は「はい」か「YES」の二択だけよ。いいわね?」

「・・・ラジャー・・・」

 

  ぺちんっ。

 

「・・・・・・イエス・マム・・・・・・」

「よろしい。やっぱり子供に言うことを聞かせるにはお尻ペンペンが一番効率がいいみたいね。今後はそうしましょう」

 

 やめてください、死んでしまいます。主に恥ずかしさが理由で。

 死因が恥死とかイヤすぎる・・・せめて胃痛で死にたい十六歳女子高生な私です。

 

「なるほど・・・こうすれば良かったのか。私も見習わせてもらおう」

 

 篠ノ之箒さん、貴女もか・・・。

 

「まずは現在のIS学園に関してだけど・・・・・・平常通りに運営されてるわ。生徒にも特に取り調べは行われず、いつもの日常に戻っているみたい。

 ・・・こう言ってはなんだけど、事の発端になったIS学園が今の混迷している世界の中で一番の平穏を保っているわね。生徒同士で争うでもなく、いつものように学校にきて友達と会話して、授業受けて部活やって下校する。・・・日本人ってこんな民族でしたっけ?」

「どこかのバカの影響が良い方にも悪い方にも出たのでしょう。

 それでその・・・・・・彼女たちのご家族の意向は・・・?」

「紛糾してるわ。当然だけどね。

 まず市民団体から激烈な調子で学園側に弁明と謝罪と事情説明を求める声が届いたのだけど、学園側の返答は『一部生徒が独断で行った暴走であり、学園側は関知しない。

 尚、生徒の氏名、年齢、学年、所属クラスなどの情報公開は、これを一切拒否するものである。

 未成年者の犯罪は警察と裁判所の管轄であり、あくまでも教育機関である当学園に判断する能力も権利も与えられてはいない。

 ましてや彼女らの内数名は日本国籍を有する日本国民であり、国家が守るべき責をおった民間人である。裁くのも許すのも、また個人情報の公開の件も含めてすべてが国と政府が責任と義務を担うものである。

 学園側は日本政府の賢明なる判断と善処を期待する。』・・・どこの横暴な独裁者よこのオッサン・・・」

「あは、あはははは・・・・・・」

「止めとしてマスコミ相手に『我が学園はIS委員会の下部組織でしかない。情報公開を求めるのであれば我々ではなく、彼らに直接聞いた方が手っ取り早いぞ?

 なんだったら直接聞けるよう便宜を図ってやるから、君のところの新聞社名と会社社長の名前を教えてくれたまえ。私から委員長に直談判してやろう。

 世界的大物に名前を覚えてもらえるのだから、マスコミ冥利に尽きるだろう?』

 ・・・どこの世界にマスコミを脅迫する、国立学校校務員が居るのよ・・・」

「あはは、あははははは・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 篠ノ之さんも流石にフォロー仕切れなかったみたいですねぇ、当然ですけど。

 たぶん私にも無理っていうか、絶対に無理でしょう。開き直りにも程があるーー痛い痛い、ツッコミは優しく頭を叩くくらいに抑えて! マジで屈辱で死にかけてるから!

 

「それから事件の混乱に紛れて何人かの生徒が行方をくらませたわ。実家を当たってみたけど戻っておらず、ご家族も居場所に心当たりがないって。

 まぁ状況から鑑みて、まず間違いなく亡国機業の構成員だったんでしょうね。

 本部から合流命令が届いたのか、自主的に合流するため行動を起こしたのか。それは分からないけど、知る意味も必要もないから別にいいわ。

 彼女たちは世界の敵になる道を選んだ。私たちは世界の側で彼女たちと戦う立場にある。

 敵なら倒す。倒さなければ味方が死ぬ。殺される。それが戦場のすべてよ。これに関して時代や状況は、なんらの意味も持ちはしないわ。

 仮に意味があるのなら、何千年も前に戦争なんて撲滅されてたでしょうからね・・・」

「・・・・・・」

「ーーあと、ここから先はセレニアさんにも意見を聞いてみたいから発言を許可します。起きあがってよろしい」

「・・・はい、先生。ありがとうございます。それから、すみませんでした・・・」

 

 悄然としながら起き上がり、つい数秒前まで頭上にあった女性のお尻に何の感慨も沸かない自分は「ああ、本当に女の心になってきたんだなぁ・・・」と実感して、この場と関係のない感慨に耽ってしまいます。

 

 思えば随分遠い所に来たものですねぇ・・・・・・心が・・・。

 男の私はどこに置き忘れられて泣いているのでしょうか? 迎えに行ってやれば喜んで・・・くれそうにないですね。

「おや、今更ですか」とか言われそうで、我が事ながら地味に凹む。

 なんだか自分の人格にはじめて不審を覚えた様な、そんな錯覚を覚えてしまうお尻の感触でした。

 

「実は亡国の工作員とは別に一般のIS学園生徒の中からも数人規模で自主退学願いがでてるのよ。

 とは言っても、これ自体はおかしくもなんともないわ。危ない事態に危ない場所で悠々と学園生活送れる方がおかしいんだもの。むしろ彼女たちの方が一般的な反応だと言えるほどだわ。

 最近のIS学園生徒達は些か以上に頭おかしい子が多すぎるみたいね・・・」

「・・・なぜそこで私を見て・・・いえ、別に何でもありません。

 黙って聞いてますので、続きをどうぞ」

「ーーその子達が辞めたこと事態はおかしくない。どちらかと言えば当然の選択であって、異常な選択をしたのは残った生徒達の方。

 この時点で残留を希望して平然と居座り、親には「IS学園は学費タダで寮もあるから、なんだったら自立しようか? 私はいいよ別に。それじゃあバイバイお母さんお父さん。また来世で会えるといいね☆」なんて言葉をこの情勢下で放てる精神性には、将来を心配するよりも先に寒気を感じるほどだったわよ・・・」

 

 うちのクラスには大量にいそうだなぁ、そのセリフ言った人たちが。神経図太すぎますからねぇ彼女たち。先日私と再会したときも普通に挨拶されましたし。

 

 ・・・実の娘がテロ行為に走ったと聞かされた最初の一言が「そうか。休暇の時にでも、たまには顔を見せろよ」だった合法ロリ母よりかはマシですけどね・・・。

 親に信じられてるのか見捨てられてるのか、判別しづらい反応でした。

 

「この上で残った生徒の方が圧倒的多数派なのも微妙すぎるのだけど、問題はこの後よ。

 どういう訳なのか辞めていった子達に成績下位者は一人もいない。逆に優秀な生徒ほど辞めていってる比率は圧倒的に高いのよ。これが私には理解できないの」

「・・・?? なぜですか?先生。志の高い生徒達が懸命に努力して腕を磨き、切磋琢磨していくのがIS学園の活動趣旨です。

 ならば彼女ら成績上位者が今の不安定な情勢下でISの力を他人に振るうのを拒否するのは、当然のことなのではありませんか?」

「違うわ箒さん。まったく違う。IS学園もIS学園生徒達も、そして私や辞めていった生徒達も、誰一人として気高い志なんて持ってはいない。

 IS操縦者に必要とされるのは純粋に力と才能、そして結果を出すことだけよ。結果が出せない努力は無駄な足掻きでしかないの。無価値なのよ。

 生徒個人の思いや覚悟は、学園にとっても専用機持ちを派遣してくる各国政府の要人達にとっても何の価値もない。

 強いて言うなら思いの強さは・・・・・・0円よ。そう言う風に国と社会は出来ているの」

「!!!!!」

 

 衝撃を受けてるらしい篠ノ之さん。夢見る乙女な学生さんには酷な裏事情でしょうけど、これが現実。

 IS開発は国家事業。IS産業は国の主力産業。ISは世界最高戦力で、国が保有している最強の兵器でもあります。

 これだけ揃って綺麗事の入る余地がある方がどうかしてますよ。

 

 普通に考えてIS学園に国が求めていたのはイメージ戦略と、そして何よりも国民達に“夢を見せてあげること”でしょうから。

 

「力のあるIS操縦者達の殆どは功名心やプライド、権威に地位名誉。そして多額の報酬。これらを得るために腕を磨き、相手を倒して栄冠を手にする。

 亡国の人たちには悪いけど彼女たちが望んでいた戦争なんて、日常的に似た様なものが世界中あちらこちらで多発してるのよね・・・」

 

「極端な話をするなら、モンド・グロッソだって同じ様なものなのよ。

 単純に名目上では世界大会のスポーツになってるだけで、参加している選手達の心には国の名誉なんかよりも大切な富と名声、そして更なる待遇向上への渇望だけがある。

 それは互いに私利私欲で相手を殺して、持ってる奴から奪っていこうとする戦争と、根源的には同じもの」

 

「積まれる死体の数が数十で留まっている限りにおいて、ISを使った戦争なんてモンド・グロッソと大して変わらない。死体の数だけが決闘と戦争を区別する唯一の条件なのだから」

 

「名義はどうあれ、他の無関係な人たちから見ればどう見えるのであれ、その場にいて実際に戦場を目にして戦った人たちから見た戦争と決闘の違いは、自分たちが巻き込まれて死んだか否か。それだけなのよ」

「・・・・・・く・・・・・・!」

 

 唇をかみしめて何かに耐える篠ノ之さんですが、私の興味は他の方に行ってしまっていたので大して気にならず、今一番興味の沸いた質問に意識を持って行かれます。

 

「つまりナターシャさんが問題視しているのは、野心ある優秀な若手が勝ち戦を前にして戦線を自分から離脱していった件についてですね?」

 

 彼女は篠ノ之さんの方を気遣わしげに見つめた後、やや険のある視線で私を眇めながら言葉を発してきます。

 

「・・・ええ、そうよ。正直ここから先の展開は私にも予想がつかないのだけど・・・でもこれだけは分かる。断言できるわ。

 亡国機業は敗北する」

 

「ーー元々彼女たちの強さは、その隠匿性にあるの。正体が露呈しないから、露呈させられないから隠然たる力を行使できていた。裏社会を牛耳ってこられた。

 でも時代は変わった。変えられてしまった。

 安穏とした平穏から、動乱と混迷の時代へと代わり、裏も表も関係なく力有るものは否応なしに舞台の上へと引き摺りあげられる。そういう時代になってしまった。

 ・・・だからもう、亡国機業に先はないの。失われてしまったのよ全てが」

「どう言うことですか・・・? 確かに世界中すべてのIS操縦者が束になれば敵わないかもしれませんが、それでも奴らは強かったじゃないですか。キャノンボールファストで見せた力を先生もご覧になったでしょう!?」

「そういう力じゃないのよ篠ノ之さん。そんな個人の強さを語ることに意味のないもの。それが戦争というものなのだから」

「だからって・・・それはーー!」

 

 ナターシャさんと篠ノ之さんが言い合いを始めたようですが、私の興味は彼女たち辞めていった優秀なIS学園生にあったために見過ごしてしまい、後で偉い目に遭わされますが後日のことですので今は割合します。

 

 今重要なのは、それはーー

 

 

 

「先ほどのお話ですがね。答えは案外あっさりと分かりそうですよ」

「「え?」」

 

 言い合いを無関係な言葉によって途中で止められた二人が、ポカンとしながら私の方を見つめてきます。

 

 私の役目はいつもこんなのかと、内心思うところがないわけでもありませんが、とりあえず今回も解説役を務めさせていただきますね。

 

 

「私たちIS学園一年一組は生徒数二十九名、織斑さんを始めとして途中参加組合わせれば三十人を越えますね。

 逆に学園が保有しているIS数は、教員用と訓練用、それから専用機を足しても三十機ほどだそうです。

 ちなみにうちのクラスだけで専用機持ちは六人を越えてます。

 ーーそう言うことなのではありませんか?」

「・・・? 

 ・・・・・・・・・・・・ああっ!!」

 

 言われた当初は不思議そうにしていたナターシャさんの顔に理解の色が浮かぶと、唐突に叫んで頭を抱えこんでしまいました。篠ノ之さんは未だ理解が及んでいないらしく、不思議そうな顔のままです。

 

 対照的にナターシャさんは、ヨロヨロと机に手をつけながら体を支えると、「迂闊だったわ・・・」と呻いてます。

 ごく自然な回答だと思うんですけどね~。

 

「・・・? 先生? どうなされたのですか?

 今のセレニアの言葉に何か?」

「・・・簡単な話よ篠ノ之さん。そう、すごく簡単な・・・小学生レベルの算数の話。

 1クラス三十人の生徒が1コマ1時間にも満たない授業で、一週間のうち多くて三回のIS実習を受講する。使える教材は次のクラスの事も勘案して、1コマにつき多くても三機から四機。

 専用機持ち以外の生徒はいつでも展開できる専用機がなく、常時実体化したままのISを学園側から借り受ける許可を取るしか乗るための機会は与えられない。

 そして枠内を逸脱したIS運用をした場合は刑法によって罰せられ、学園に所属している学生が許可を取らずにISを動かせば明らかに学生として逸脱した行為に該当してしまう。

 止めとしてISは国家資産であり、一個人で所有できる民間人は篠ノ之博士以外だと国から預けられる形で与えられる国家代表候補生だけ。

 ・・・そう言う事よ」

「・・・・・・??

 ・・・・・・・・・・・・・・・ああっ!!!!」

 

 お、気付いたみたいですね篠ノ之さんも。

 ぴんぽーん、大せいかーい。

 

「ふつうの生徒が授業でIS操縦を習えるのは一人頭五分から十分程度。稼働時間がものを言うIS操縦でこれは、絶対的に訓練時間が足りていない。

 そうなると強くなるには授業が終わって放課後になり、生徒達が自主的に行う自主トレで訓練しまくる以外に手がないんですよね」

 

「かと言って限られた数を多人数が使い分けるわけですから、一人頭の時間はどうしても少なくならざるを得ません。更にISにはエネルギー問題が原因で稼働時間に制限があり、訓練のために確保した時間一杯使い潰すのはほぼ不可能。

 逆に専用機持ちは学園に入学する前までに稼働時間が最低でも二百時間を超えていて、展開さえすればいつでもどこでも稼働時間を稼げて様々な戦場を想定した訓練を常に行える」

 

「代表候補と一般生徒の間には明確すぎる隔絶した格差が入学直後よりずっと前には、既に設定されているんです。IS戦争が茶番なのではなく、IS社会そのものが盛大な茶番で形作られている」

 

「彼女たち、辞めていった優秀な生徒達はそれを知っていた。知っていたから優秀であろうとした。

 上が目指せて、でも一定以上は決して上れなくて、どう頑張っても自分たちが代表や代表候補になれない事実を知っていたから、危急の際にISに搭乗して戦わなくていいことを知っていたから、彼女たちは幹部になるため訓練して上を目指した。

 国家権力に属し、剣を権に持ち替えて強敵を打破し、女尊男卑思想の社会でトップを目指す。政治的な意味でのトップを」

 

「IS学園に・・・いえ、IS社会全体に平等などどこにもない。すべてが差別を制度化することで成立している歪んだ社会だ。

 平等という名の甘美な夢に酔わせるためにこそ、IS学園には存在価値と意義がある」

 

「政治の本質はフィクションで、政治が演劇と同じであるとするならば。

 国民に甘美で優しい、希望に満ちた夢を見せるのが国家の役目。

 ISとIS学園は、その為のドリームマシーンです」

 

 

 

オリ主が邪悪になった時点で一旦切ります。次回には普段のセレニアに戻ってます。




補足説明:表向きセレニアたちは国外逃亡した事になっていて、上層部には更識が軟禁していると報告してます。ナターシャさんは裏と表の事情を知ってる唯一の教員なので指名されました。他の一般生徒たちは真相を知っても気にしません。慣れてますから。

先生は議長たちに伝わる事前提の人選です。隠し立てする意味も理由も特には無いので。暴れられたら手に負えない原作メンバーの主戦力たちですし。

世界最強さんは弟に甘すぎるので、候補から真っ先に外されました。
彼女のファンたちの間では周知の事実でもあったので、偽装にならんと言う理由もあります。

尚、原作キャラたちの大半が割り切って素直にパーティーを楽しんでます。
狂ったオリ主に率いられてるうちに神経がレバーになってた原作キャラ達。
良いのか悪いのか、よく分かりませんね。

注:書き忘れてましたが、今作世界の国家代表たちの思想はハガレンの国家錬金術師たちをモデルにしてますので原作とは大きく異なります。

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