IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

29 / 115
寝不足から迷走してしまい、最近ずっとご迷惑をおかけしてばかりですみません。
十時間ばかし寝てある程度回復したので準備運動に書いてみました。
他作品を含む最新話たちを正常に書くための準備回なので正直読み飛ばしても話的には問題ありません。
暇を持て余してる方のみがお読みになる事をお勧めいたします。


26話「ようやく主人公は原作介入を決意した(注:セレニアから見た認識です)」

 私は転生者、異住・セレニア・ショート。この世界に於ける異分子であり異端者です。

 

 言ってしまえば、この世界にとっての癌細胞みたいなモノですね。皮膚癌のですけども。増殖を開始して悪性に変異しない限りは、無害な細胞の塊ですよ。

 

 適切な治療を加えてさえおけば、それが死因となる事態にはまずたちいたらない。

 《インフィニット・ストラトス》を手術台に載せることなく人生を送り、人生を終える。それが私の幼い頃から抱き続けていた夢でした。

 

 誓って言いますが物語に介入したいと思った事なんて一度もありません。

 何一つ関わり合うことなく、平々凡々なモブキャラとして生きて死ぬ。

 第二の人生で私が私の運命に求めたのは、その一点だけでした。

 

 ーー私の存在が、銀河英雄伝説においてルドルフ・フォン・ゴールデンバウムを生み出した人たちのような、遠い萌芽になるのが怖かったから。

 

 後に四十億人の人々を虐殺してのけた銀河帝国初代皇帝は、別に特別な生まれではありませんでした。

 軍人の家庭に生まれ、当然のごとく長じて軍籍に入っただけの普通の人間。「鋼鉄の巨人」の面影は、この時点では見いだせません。彼が名を上げ出すのは宇宙海賊組織の壊滅させて以降です。

 

 ですが、それ以前に彼を生み出す土壌となったのは「中世的停滞」が人類社会全体を覆っていたからです。

 

 人々からやる気が失われた世界。それが私の頭の中で《インフィニット・ストラトス》の世界観と一部ながら被っていると感じた瞬間、私もやる気を失いました。

 

 私がなにかするとルドルフが生まれる・・・かもしれない。

 私の生み出した何かが、彼を生み出す遠い萌芽となってしまう・・・かもしれない。

 

 しれない、しれない。

 人類史の可能性と言うよりも、フィクション世界の無限性が私を雁字搦めで縛り付け、私は出来うる限り原作には関わるまいと決めて生きてきました。・・・IS学園に入学させられるまでは。

 

 それ以降はもう、トントン拍子で転がり落ちていくだけの人生でしたね。余りにもお笑い草な半年間でした。

 正直、前世今生、二つの人生をあわせても密度と濃密さでは、この半年間に遠く及ばない。なにやっても上手く行かない、上手くできた試しがない。おもしろ可笑しく、胃が痛いのが日常茶飯事な毎日でしたよ。

 

 訳の分からない理由での訳わかんない展開に次ぐ展開。

 よく理性が付いてこれたなぁと我ながら感心しきりだったのですが、それに止めを刺したのが議長と国防委員長のお二人。

 

 私と同タイプで上位互換なこのお二人がいる世界において、私如きが何する物ぞ。

 何したところで何一つとして及ばず適わないのならば、何したって良いじゃない。

 

 開き直った私は、メインキャラクターになるつもりで戦闘に参加してみました。

 バトルラブコメの世界でバトルに介入すれば、メインキャラクターの仲間入りできるかなぁと。・・・甘かったですけどね?

 

 そのツケを、私は今までの分も混みでお支払いしようと思います。

 それがどう行った結果を招くかなど考えるだけ無駄と割り切って、この世界に生きる一人の人間として現実に向き合ってみようかと。

 

 さし当たってはそうですね。

 ーーそろそろお昼時なので、作ってきておいた手作り弁当を食べた後でよろしいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うぅん・・・。やめてくださいボーデヴィッヒさん。白いベレー帽を私の頭に載せないで・・・。

 違うんです、誤解なんです、私が成りたいのはメインキャラクターなんです、メインヒロインじゃないんです。

 やめて、笑顔で押しつけないで、善意のラブコメはノー・サンキューですぅ・・・。

 ーーあと、その娘には妙にデジャブ感じるんで、本気でやめてくださいね?」

 

「・・・なんだ、この意味不明な寝言は・・・? 本当に寝言なのか?

 ・・・・・・と言うか普通に考えて起きているよな、こいつ・・・?」

「なにを言う。いつも通りのセレニアの寝姿じゃないか。

 可愛らしいし愛らしいぞ? こうして毎日眺めていても飽きが来ない程にはな」

「そうなのか・・・?

 ーーって、ちょっと待て一夏! なんでお前、セレニアの寝姿を見慣れているかの様な発言を! ま、まさか貴様こいつと・・・!!」

「誤解も甚だしい。俺は何もしていないし、やってもいない。

 単にこいつは昼飯を食べると眠くなるから、毎日この時間帯はオネムなんだ。

 だから毎日一緒にいる俺は見慣れている。それだけの事だ」

「子供かこいつは!

 満腹になると眠くなる女子高生って実在したんだな! ラブコメ世界だけだと思っていたぞ! 世の中不思議でいっぱいだな!」

「何を今更。大昔から世の中には不思議と神秘で満ち溢れていたぞ?

 なにしろ女体は神秘の固まりだからな。特におっぱい」

 

 ・・・なにやら聞いた覚えのあるような無いような、不可思議きわまる会話を耳にして私の意識は急速に浮上。表層意識に舞い戻ります。

 瞼を開けて周囲を見渡し、状況を確認。

 

 うん、いつものIS学園1年1組ですね。

 

 ああ、良かったメインヒロインになっていなくて。

 

 本当にもう、これ以上余計なフラグはノー・サンキュー過ぎますよ。

 もしもではなく確実に彼女たちのフラグを折りたいラブコメ世界です。

 

「お早うございます織斑さん、篠ノ之さん。相変わらず仲がよろしいんですね。

 ・・・ところで、なんで円さんはヘバっているんです?」

 

 唯一の可笑しな点としては、先日転校してきた所属国のない専用機持ちという明らかな矛盾設定の織斑円さんの姿と格好。

 

 世界最高戦力の、そのまた最新鋭機である専用機。それを与えられているにも関わらず、所属がない。

 アンタいったい、どこのオルフェンズだよとツッコミを容れざるを得ませんよね。

 

 

 ・・・まぁ、それは慣れたし気にしませんが、さすがに転校生の女子生徒が潰れたカエルみたいなポーズで這い蹲り床に伏せっている姿は、背徳的すぎて嫌なんですけども・・・。

 

「気にするな」

「・・・いや、でもこれは・・・」

「気にするな」

「・・・・・・はい、分かりました。気にしません」

 

 なんだか最近、周囲から私に対する扱いが雑になってきたような気が・・・。

 これが部外者から登場人物の一人に格上げされて、メインキャラ入りするという事なのでしょうか? すっごくビミョ~な気分です。

 

「まぁ、一応説明するとだな。挑まれたから揉んでやって、ペナルティに修行させたらこうなった。以上だ」

「修行? ペナルティ?」

「重さ三十キロの甲羅を背負わせて全力疾走。その後に大岩切らせて、波も切らせた。

 おまけとして錆びた日本刀で大木を切れと命じるつもりだったんだが、その寸前でバテたんだよ。

 ーーふんっ。ペース配分を間違えるとは何たる未熟。

 このバカ弟子の修行には今日の倍は課してやらないと物の役には立ちそうにないな。やれやれ、先が思いやられる」

 

 混ざってる混ざってる、なんか色々な修行が混ざってる。

 と言うか、明らかにラブコメ世界でやっていいレベルの修行じゃねぇし。

 普通に死ぬでしょ、ラブコメキャラならば。

 この世界のヒロインたちが人外過ぎて怖い件について。

 

 

「ふぁ~あ・・・眠気覚ましに購買にでも行ってきますね。

 私はカフェオレ買ってくるつもりなんですけど、織斑さんは何かご入り用ですか?」

「ん、そうだな。メロンパンは昨日頼んだから、今日はカレーパンとコーヒー頼む。

 代金はいつも通りに俺の財布から取っといてくれ」

「ふぁい・・・・・・ふぁ~あ」

「・・・・・・なんだ、この熟年夫婦は・・・?」

 

 篠ノ之さん(原作では織斑さんのファースト幼馴染みで、一番古い知り合いです)が呆れ混じりに呟くのが聞こえたような気がしましたが、眠気と空腹で意識がぼやけていた私はスルー。

 後ほど恥ずかしさで悶絶することになるのは、確定された未来です。

 

 

 

 

「ただいま戻りました。

 はい、カレーパンとコーヒー」

「ん、サンキュ」

 

 手元の雑誌から目線を上げることなく差し出された織斑さんのお財布。

 代金分だけを抜き取ってお返しすると、篠ノ之さんからはスゴく微妙な目で見られましたが・・・なんででしょうかね?

 

「ずいぶんと熱心に読んでらっしゃる様ですが、何かおもしろい記事でも掲載されていましたか? 差し支えなければお教えいただいても?」

「『隔月キャノンボール・ファウスト』、不定期的に発行されてるIS関連のマイナー雑誌だ。

 内容としては「ISの高性能を支えているのは、外宇宙知的生命体から送られて来たEOTだった」とか、「古代超科学文明を解き明かした女、篠ノ之束は古代ミケーネ人の末裔か!?」等だな」

「・・・どこの「月刊ムー」ですかそれ・・・?

 つか、ISって最新科学でしょ? それがなんで古代文明?」

「いつの時代、どこの社会でも男は幼い少年時代には夜空の星を見上げてUFOと超科学古代文明に夢を馳せる。これが自分にとって本当の宝なんだと信じて手を伸ばす。

 そして、やがては現実とフィクションは別物なのだと知る。それが大人になることだと言う。

 だが、俺はそうは思わない。必ずや漢のロマンをこの手に。

 何故ならどれほど時代が揺れ動こうと、漢の信念には何一つ変わることが無いからだ。

 セレニア、お前にならこの気持ちを理解できるだろう?」

「ごめんなさい無理です、理解できません。

 私も一応は女なんで男のロマンを解れとかマジ無理ッス、不可能です」

「そうなのか?

 『敵・即・斬』は、全てのIS操縦者たちが共有すべき只一つの正義でありロマンだと、俺は思っているんだがな」

「誤解を招く発言はやめろ!

 次に不用意な発言をしたらテロ防止法違反で訴えるからな、一夏!」

 

 相も変わらずツッコミが冴え渡る篠ノ之さん。・・・原作でもツッコミ担当だったんですかね?

 今となっては全てが遠く、何もかも皆懐かしい原作設定です。

 

「それはまぁ、ともかくとしてだ」

「いやいや流すなよ一夏!? 結構重大なことなんだぞ!?

 世界で唯一の男性IS操縦者であるお前の発言って、意外と大きすぎる影響が出始めているんだからな!?」

「知らん。誇りも尊厳も失い、世の中が変化して行くとともに易きに流された腰抜けどもなど知ったことか。戦いもせずに尻尾を巻いた負け犬が徒党を組んで大声をあげたからと言って、何ほどのものがある?

 せいぜいが政府に泣きついて助けを求める程度が関の山だろう。放って於け」

「お前・・・いい加減時代に適応しないと、本当に逮捕されかねないからな・・・?」

「どう時代が揺れ動こうと、俺の真実は何一つ変わることは無い。

 敵は直ちに断ち、巨乳は即座に揉む。

 即ち、『敵・即・斬』『胸・即・揉』。

 それが俺、織斑一夏と言う男の生き方だ」

「・・・ダメだこいつ・・・早く何とかしなければ・・・」

 

 二人の原作メイン中のメインキャラ同士の間で交わされる、(たぶん)原作ではあり得ない会話シーン。

 この一件だけを切り取っても、私たち転生者が今更遠慮したところで何一つ状況が改善しないことは自明の理。

 

 与えてしまった影響は取り消せない。

 起きてしまった事を無にする事は絶対にできない。

 

 私は今、此処に居る。

 私はもう異住・セレニア・ショートであって、冴えない無名の男子高校生ではない。

 今となっては前世において十数年間を現代日本で生きた男子高校生も、この世の何処にも居はしません。

 

 僕は死んだ、もう居ない。

 私は生まれた、もう死ねない。・・・いや、死ねますけどね? 自己判断と自己責任で。

 

 でも別に私、自殺志願者じゃないですし。特別強く生きたいと願ったこともないですけど、死にたいと思ったほど苦しんだこともないんですよね。

 

 普通に平凡で禄でもない、ただの転生者に特別は求めないでください。人は平凡な生き物なんですから。

 

「それよりもこれだこれ。これを見てみろ二人とも。スゴいのが載っている。

 見るがいい! これぞレースクィーンの胸元丸出しコスチューム!

 でっかいオッパイこそが至高!この世全ての神秘!人生の勝利を約束されし巨乳だ!

 ーーと言うわけで二人とも。予約しといたから大会当日にこの衣装を着ーー」

「ふんっ!」

 

 目にも止まらぬ速さではなく、目にも映らない速さで鼻先を通り過ぎて行った篠ノ之さんの後ろ回し蹴り。

 吹き飛ばされて壁に激突し、ガラガラと崩れ落ちる瓦礫の中から悠然と立ち上がって肩についた埃を払う織斑さん。

 

 ーーなんで死なない上に、殺さずに済ませられるのでしょうか・・・? 殺さずの信念って次元じゃないですよね絶対に。

 もう既にバトルマンガ世界の理屈だなぁ。

 ここってラブコメ世界のはずなんだけどなぁ。頭にバトルは付きますが高機動人型兵器がメインってだけの話だしなぁ。

 

 少なくともIS操縦者が行う高機動戦闘という意味ではない・・・はず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか久方ぶりな気もしますが、改めてこの疑問が浮かびます。

 ハイスピード・バトル・ラブコメって・・・なんなんでしょうね・・・・・・?

 

つづく


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。