IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

28 / 115
遅れましたが完成です。ただ遅れたせいで焦ってしまい、最後らへんが大分大雑把です。
おまけに少佐回なのに登場してないセレニアがメインになっちゃってるし・・・
今後直していきたい欠点です。今回はとりあえずこれでいきますが、その内直せるものなら直してみたいなぁ~。


25・5話「少佐殿がセレニアを採点するそうですよ?」

 薄暗く、照明による光量が必要最低限に抑えられたトンネル内を駆ける私の前に今、扉が現れた。鋼鉄製の扉だ。

 軍事機密の塊であり、世界中に現存している全てを合わせても千機にすら満たない世界最高戦力を扱う操縦者育成学校という都合上、どうしても警備には多数の人員配置よりも頑丈で巨大な鉄の塊をもって当たる必要があった日本政府は目に見えない部分までもを含め、徹底的に頑丈で威圧感のある鋼鉄により学園全体を鎧った。

 ISアリーナも含め、その気になれば都市ひとつを一時間で瓦礫の山に変えられるISから身を守る壁の素材に通常素材ばかりが使われているのはその為だ。

 バリアフィールドで覆われていようとも所詮は通常素材。破ろうと想えば簡単に破れるし、作った側もそれを承知で通常素材のみを使っている。

 

 安心したいから。

 通常の素材などISの前では無意味で無力だと知ってはいても、それでも尚人間は鉄で武装することを本能的に求めてしまう。

 

 鉄で守られているうちは安心だと。

 誰かに守ってもらえるのだから安全だと。

 鉄(国)が自分たちを護ってくれているのだから、どんなに愚かなことを仕出かしても権利と生活が奪われることは決してないと。

 盲目的に、従順に、素直に、上から目線で国家に当然の権利を要求する。

 

 自分たち国民を、鉄で(国が)守れ、とーー。

 

「けっ、忌々しいモン建てやがって・・・」

 

 私は腹いせに扉を蹴破り、中へと踏み込む。

 世界最高戦力と謳われるISだが、その超性能は大部分を完璧なステルス性能と現行兵器では決して追いつくことが適わない高機動性に頼っており、攻撃性能そのものはそれほど高くない。ISバリアのおかげで防御面は完璧に近いが、火力は脆弱で通常兵器と比べても大差はない。

 それ故にか巨大な鋼鉄の扉をカタログスペックだけで蹴破るのは消耗が激しかったが、悔いはない。後悔もしていない。こんな糞忌々しい代物をぶっ建てた奴が全責任を負うべきだ。私は悪くない。

 

 

 ーーしかし、

 

「この扉、妙に頑丈すぎたが・・・この先に何か秘密兵器でも隠してやがるのか・・・?」

 

 だとしたら好都合だ。先の一戦で醜態をさらした手前、手柄が欲しい。IS学園が秘匿している秘密兵器というなら、白式奪取の失敗と天秤に掛けても釣りがくるだろう。

 私は先ほどまでとは打って変わって上機嫌になり、鼻歌すら歌い上げながら奥へ奥へと進んでいきーー“そいつ”と出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、ようやくお目見え出来て嬉しいよフロイライン。

 ようこそ、戦争を語る夜へ。大隊各位を代表して歓迎の意を表しよう」

 

 死。

 何故だかそいつを一目見た瞬間、私の頭に浮かんだ単語はそれだった。それだけだった。

 そして私は確信する。理由はなく、理屈もない。本能が告げているという言い方すらも当てはまらないナニカを根拠に、私は決して外れることのない予言をする。

 

 私は確実に死ぬ。

 この戦場で、この戦争で。

 私はこいつに八つ裂きにされて殺されるだろう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーだからこそ私は、

 そいつに自分と同じ臭いをかぎ取って歓喜に打ち震えた。

 

 もしかしたらこいつは、私と同じ闇を共有できる唯一無二の存在なのではないか、と。

 確信めいた喜びが恐怖を退け、そいつに対する興味が私を突き動かして話しかけ続けた。

 まるでガキ臭いオママゴトみたいな恋愛ゲームのように。

 学生たちがよくやる、遊びの関係みたいに。

 私は年甲斐もなくはしゃぎ、まとわりついた。

 

 そいつの本性を誤解したまま、誤認したまま、ただただ同類だと錯覚し続けて・・・

 

 

「・・・てめぇ、なにモンだ? 明らかに人間が越えてもいい線を、越え過ぎちまっているじゃねぇか。もう人間なんかじゃねぇぜ、確実に。

 すげぇな、オイ。羨ましいぞ、私も一口噛ませてくれよ。

 その力、絶対に戦争で役に立つだろうからな」

「はっはっは、こんなモノを欲しがるなんて、君もなかなかに好き者だね。理解に苦しむが、それもまた人の業か。

 無理もない、人は弱い生き物なのだからな。力が欲しいし、不死も欲しい。

 死なず老いず何時何時までも戦争を楽しむことが出来る力と身体は、きっと大変に素晴らしく写るものなのだろうな」

「ああ、最高だ。なんとしても欲しいし、なにを捧げても欲しい。人を殺して手に入るってんなら、何百万人だって殺し尽くしてやりたいくらいさ。

 アンタだってそうだったんだろ? だからこそ、殺して犯して奪って嬲って挽き潰して、それだけの事を繰り返してまで手に入れたかったから手に入れた。無限に他人を生け贄に捧げ続けて手に入れたはずなんだ、その力は。

 そうでなけりゃあ、辻褄があわねぇ。化け物に成るのに代価が必要ないなんて理屈、通用するはずがねぇ。

 必ずナニカがあるはずなんだ。アンタがそうまでして手に入れたかったモノを手にする手段が。それを是非とも私は知りてぇんだよ」

「はっはっは、実に勉強熱心なお嬢さんだね。気に入ったよ。人間というモノが、実に良く分かっているようじゃないか」

 

 朗らかに楽しそうに笑うソイツの笑顔で私は、改めて確信する。

 こいつは私と同類だ。他人をいたぶり、苦しめ、藻掻き足掻き呼吸困難で窒息死していくのを見て、観客気分で劇を見学して回る快楽殺人者のお仲間だ。

 それもとびきりの上玉で、特別天然記念物レベルの特級品。今の時代じゃちょっとお目にかかることが出来ない、正真正銘マジモンのキチガイだ。正気じゃない。

 

 そしてだからこそ私は確信できた。こいつとなら共に歩めると。一緒になって死の川を築いて、歩き続けられるだろうと。

 もしかしたらスコールとでさえ築くことが出来なかったかもしれない、特別で特殊で異質な関係。死によって繋げられた二人の女。

 そんな理想的すぎる未来の青写真を思い浮かべながら、私は笑顔でソイツに手を伸ばし、死をまき散らす伴侶へ誘いの言葉を紡ごうとして口を開きーー

 

「ああ、本当に人間のことがよく分かっているよ。驚くほど的確に人間の臆病さを捉えていて、勇気や愛や正義を良しとしない。信念など、笑い話の類としか思ってはいないのだろうな。

 そしてだからこそーー君は戦争を、まるで分かっちゃいない。

 零点だ。落第だよ。君の在り方は彼女に比べて余りにも弱すぎる。面白味がまるで存在していない。ハッキリ言ってそそられるモノが何一つとして見いだせないな。場末の酒場で娼婦を買う方がまだマシだと思える程に」

 

 一言も発することなく口を閉ざした私は、先ほどとは違う殺意に満ちた瞳でソイツを睨む。

 殺してやる。本気でそう思いながら向けられている視線に動じる気配はなく、ただただニタニタと嫌な感じで笑い続けるIS学園女子用の制服を纏った眼鏡の小娘は、平然と話題の中心を別に移す。

 それはまるで私のことなど炉端に転がる小石と同価値でしか無いのだぞと、無言の内に伝えてくるようで、先とは比較にならない殺意で私の心が満たされそうになる。

 

 ・・・が、その様なことなど些事だとでも言いたげに、小娘は高速で饒舌さを発揮していく。

 まるで、考えることしかできない、頭でっかちの司令官ででもあるかのようにーー。

 

「彼女は・・・はははは。なんだろうな。うん、分からない。都合よく例える言葉が見つからない。

 奇跡のようなと呼ぶには冒涜過ぎる。

 冗談のようなと呼ぶには、与える効果の範囲が壮大すぎる。

 自分でも気づいてすらいないが、おそらく永劫、気づける日は来ないのではないだろうか?」

 

 懐かしむように、悼むように、悲しむように悦しむように笑い飛ばしてやるようにーー僅かばかりの畏怖を込めてソイツは誰かの対する評定を語る。

 私にではない。たぶん、私を通して誰かに語って聞かせているつもりでーー。

 

「『こっちはあっちと、わたしはあなたと違う』この世の戦争の全ては、それが全てだ。人間がこの世に生まれてからずっとね。

 君も私とは違うと思っている。戦いの布告は今成された。戦争の形式は整った。いつでも始められる、開戦できる。さぁ、戦争ができるぞーー?」

 

 戦争を求める者特有の狂った笑みで誘いを掛けてくる小娘だが、その表情には奇妙な愉悦があった。

 まるで夢を見ているかのように。万願成就の一夜の夢の、そのまた続きを魅せられ続けているかのように。

 

「そうだ、これが戦争だ。戦争の全てだ。この世で起こる戦争は、全てがこの理論と概念で形成されているーーはずだった」

 

 喜悦、愉悦、憧憬。そして、狂気。この世のあらゆる負の感情が、戦争に至る全ての醜さが凝縮されたような狂った笑顔に満面の喜色を浮かべてソイツは嗤い、笑い、微笑む。

 悪魔のように、天使のように、魔王のように、神様のようにーーあるいは、それら全ては同類でしかなかったかのように綯い交ぜになった悪と善が、狂気という形を得て小娘の容れ物に降臨したかのように。

 

「彼女の戦争は戦争を否定する戦争だ。戦争を形作ってきた概念こそが彼女の倒すべき敵だ。彼女から見れば初戦において目の前に立ちふさがる敵など先兵に過ぎまい。

 強いか弱いかなど関係ない。何故なら彼女は誰よりも弱い。弱すぎる。確実に私程度でも勝てると断言できてしまうほどに弱く、そして脆い。きわめて脆弱な肉体の持ち主でしかないのだ。

 それこそ私の撃った下手な鉄砲に掠られただけで重傷を負ってしまうのではないかと、こちらが心配でたまらなくなる程に弱々しい。

 にも関わらず彼女が挑む敵の強大さは我々ミレニアム大隊さえもを遙かに上回ると言うのは、一体どのような理屈が作用して生まれた結果なのだろうね?」

 

 愉しそうに嬉しそうに語るそいつの目には確かに私が写っていたが、私を見てなどいなかった。

 

 まるで私などゴミだとでも言うかのように。

 路傍に落ちたタバコの吸い殻だとでも言うかのように。

 

 世界最高戦力で武装した私など、こいつの語る「誰よりも弱い、こちらが心配してやらなければならない」小娘以下だと言葉以上に雄弁に、人を人とも思わぬ眼差しで語り尽くしていた。

 

「てめぇ・・・」

 

 私の中でこいつが「殺すべき敵」と認識されたのは、間違いなくこの瞬間だった。

 殺したいし、犯したい。蹂躙したい、嬲りたい、輪したい、晒し者にしたいし、八つ裂きにして内蔵を食い破りたい。

 獣のように犯したい。家畜のように追い回したい。野良犬のように踏みにじりたい。

 弱者は弱者らしく強者の足を舐めてりゃいい。無駄口を叩くな、息を吸うな呼吸をするな空気を吐くなウザイウザイウザイウザイウザイウザイウザイーーーーー

 

 

 

 

 

「ああ、良い目だ。実に良い目になった。

 なぁんだ、君もやれば出来る子だったんじゃないか。

 よかった、心から安心したよ。実に喜ばしい。

 君みたいな馬鹿な小娘でも死を起こせる可能性を秘めている事を確信できたのは、実に僥倖だった。これならば彼女の戦争にも期待が持てそうだ。

 心からお礼を言わせて貰おう。有り難う、お嬢さん。君は本当に、良いモルモットだったよ」

「てめぇ・・・! てめぇてめぇてめぇてめぇてめぇっ!!!!」

「ああ、良い音だ。良い悲鳴だ。良い叫声だよ、お嬢さん!

 君は最高の道化だ。最高の大道芸人だ。人生そのものが笑い話で、生き方そのものが戦争ごっこに勤しむ、幼く無力な子供の遊びだ!」

 

 両手を広げてそいつは嗤う。

 世界中全てを抱きしめる聖女のように。

 世界中全ての命を愛おしむ聖職者のように。

 世界中全てを戦場にしたい、地獄を創りたいと望む魔王のように。

 

「君の考える戦争はね、お嬢さん。遊びなんだよ。子供の児戯だ。実にしょうもない代物だよ。

 反撃を受けない場所から攻撃して、なにが楽しい?

 殺される可能性を考慮しなくても良い敵手に、なにを期待している?

 滅ぼされるつもりもなく滅ぼしに行くことに、いったい何の目的が有るというのだね?

 ーーつまるところ君は、求め過ぎているのだよ。

 勝利も欲しい、命も欲しい、女も欲しい、金も欲しいし、下手に出て這い蹲るだけの手下も欲しい。

 それでいてプライドも護りたい。負けたくないし恥をかけば濯ぎたい。無限に殺し続けたいが、無限に負け続けるなど真っ平御免。

 勝利だけを得たいし、敗北は一度たりとも味わいたくない。他人に血を流させたいが、自分の血が流れるのには耐えられない。

 心に歓喜を得たいのに、それを他人と共有したくはない。自分だけの特別なものなんだと、他者に向かってエバリ散らしたい。

 無数の命の一つに数えられたくない。自分だけは特別で居たい。

 人に向かって自分の思想を語りたい。人が自分の思想で驚き慌て、怒り狂う姿を見て優越感に浸りたい。

 自分は人間を超えたのだと言いながらも、人間であり続けていることは否定しない。

 最強、最強、最強・・・同じ言葉をオウムのように繰り返すくせに世界最強と当たるのを避け、尤もらしい言い訳を並べて逃げ出す己の醜態を正当化し、ちっぽけな矜持だけでも守ろうとする。

 強者と戦い、勝利したことがない自分を最強と称し、卑怯卑劣を正しい戦争と賛美しながらも、戦術で劣れば卑怯者と相手を詰る。

 弱い者と戦い、勝利を得たい。

 強者を騙し、誇りを踏みにじることで満足感を得たい。

 強い者と戦い、負けて最強の座を降ろされたくない。

 雑魚と戦い、勝利して得た無冠の王座を絶対として、有象無象の強者たちと戦い勝利してきた表の王者を「戦争を知らないド素人」と呼んで嘲嗤う。

 存在の全てが他者否定による自己正当化に直結している。平凡きわまる子供の理屈だ。

 フロイライン、君は自分で思っている以上に愚かで、度し難く、心の底から腐りきった勇気の欠片もない雑魚だよ。私が保証する。

 フロイライン、名も知らない路傍の小娘よ。君には男に縋り、ケツでも振ってご機嫌を取るのがお似合いだよ。分際を弁えて早くトイレに帰り給え。客が待っているぞ、出来損ないの格安娼婦さん」

「ーーーーーっ!!!!!!!!」

「そう吠えるなよ、暑苦しい。

 もう少しだけ私の話を聞いていてくれ。今良いところなのでね。君みたいなじゃじゃ馬娘に茶々を入れられるのは、大変不愉快なのだから」

 

 

 

 

 

「歓喜に満ちた神への信仰による戦争。ナチズムによる殺戮の戦争。吸血鬼という存在の一体化へと至らせる為の戦争。いろいろ見てきたが、流石にデモクラシーによる大戦争までは見たことがないなぁ」

 

 

「我々と同じものではないのに同じ結果を齎し、それ以外の物も齎す。

 負け続けるだけと確定している戦争に敗けを承知で挑み続け、諦めの悪さでは空前絶後。あれは死んでも生き返らずに神を殺しにいく道を選ぶ類のイカレだな」

 

 

「今回でダメなら次はこの手だ、この手でダメなら次はこれでどうだ。考えることしかできないのなら、せめてそれぐらいはやっておこう。自分程度が考える事なんて物の役には立たないけれども他に出来ることもないのだし」

 

 

「『こっちはあっちと、わたしはあなたと違う』

 ならば関わり合わなければいい。嫌いな奴とは交わらねば良い。どうせ悪口を言い合うだけの人間とは、会話を交わす行為自体が無駄そのもの。話せば気分を害すると分かり切っている相手との会話は、しなくて宜しい」

 

 

「ビジネスライクな関係だというのであれば、それに徹しろ。私情を混ぜない大人な態度で相手を見下したいのであれば、最後まで大人な態度でビジネスライクなセールススマイルを保ち続けて心の中で舌を出せ」

 

 

「『こっちはあっちと違うと分かっているのならば、それで良いじゃないか』どうして自分の在り方を押しつける? 受け入れられないと分かり切っていることを自分自身で認めた相手に受け入れられないことがそんなに嫌か?」

 

 

「何故、嫌いな相手と関わりたがる? 否定することしかできない間柄なら距離を置けよ。置けないのならば受け入れて、自分なりにストレスの少ない付き合い方を模索しろよ」

 

 

「怠けるなよ、努力しろ。勝つために努力している暇があるのならば、まず自分の今までのやり方を捨てて改めるための努力をしろ。自分のやり方に固執して違う存在を攻撃するのはガキの所行だ。いい歳した大人がやることですか?」

 

 

「ははは、実に耳の痛い言葉の数々だったよ。さすがに私の心も崩折れ掛けた」

 

 

「世界中の全ての人間が我々を必要としていなかった。

 彼女は世界中から必要とされる必要がどこにあると言い切った。

 我々は我々のために必要だった。

 彼女は、自分たちのために自分たちのみがやりたいことをやる事がどうしていけないのか分からないと断言した。

 ただ死ぬのなんかいやだった。それだけじゃ足りない、我々が死ぬためには何かが必要だと思ったから殺した。

 彼女はそれを「ごく普通の戦争理由」と軽く流した。誰もが何かを求めて戦争を始め、何も求めていない人々を死地に赴かせるのだと」

 

 

「彼女の有り様は、この世の戦争全ての否定だ。彼女の存在意義は、それで全てだ。

 人間がこの世に生まれてからずっと続いてきた行為の否定。無価値ではないが、多数の人命を掛けるには値しない。掛けたいのであれば自分たちだけで勝手にどうぞ。

 ーーははは、言葉もない」

 

 

「彼女の人生は戦争だ。人を殺す必要もなく、自分が生きているだけで戦場を作り出せる。自分が戦場だと認識した瞬間、そこは戦場になってしまう。場所も状況も相手も選ばず、誰の理解も了承も得る必要がないままに彼女の一存、只それだけで。

 なぜならそれが、戦争だからだよ」

 

 

「一体どこに相手国の了解を得てから攻め込む侵略国家がある?

 自分の国を武力制圧した国が虐殺理由を説明したならば、家族を殺された事に納得できるのかね?」

 

 

「人を殴るのに理由はいらない。殴られた相手には関係ないからだ。殴られた方にとっては、ただ自分が殴られたことのみが重要なのだから、事実も真実も同様に無価値。彼の人が信じたいと思った理由のみが万金の値を持つ」

 

 

「こんな思想を抱いている人間が民主主義者で、戦争完全否定の人命尊重主義思想家?

 ・・・あり得ない! 絶対に、どう考えてもあり得ない事を、彼女は当然のこととして当たり前のようにやっている! 常識だと信じ、疑ってもいない!」

 

 

「まさに歪みだ。自分が弱いことを知り、人間が弱い生き物だと知り、人間では絶対に勝てない強者の実在を実感したとき、彼女は自分の手札を確認する。

 自分が勝つにはどうすればいい? 何が必要だ? 何が出来て、何が出来ない?

 人が人のままで化物に打ち勝つにはどうすればいい? 敵が神であるなら何が効く?

 彼女は魂が人間ではない。自分を人間だなどとは思っていない。一個の状況を構成している要素だと定義している」

 

 

「これほど見応えのある戦争はないよ、お嬢さん。君も私も、彼女から見たら舞台装置であり、一人の兵士であり、一つの駒であり、兵器であり戦力であり数字であり、数だ!

 自分自身を含めた全てが数! 戦争を形成している一要素だ!

 ああ、壊れている。絶対に、頭がおかしい! イカレている! 普通じゃない!」

 

 

「そんな彼女の戦争は、是非とも最後まで見届けたい。

 見届けるためにも生き延びなければならないし、滅ぼされるわけにもいかない。

 殺さなければならない。滅ぼさなければならない。敵を殲滅しつくさなければならない。

 ーーと言うわけで、悪いが死んでくれ。なに、心配せずとも苦しませるような野暮はしないさ。一瞬で死ねる。

 なにしろ君にはーー端役としてすら一秒たりとも見続ける価値など有りはしないのだから。

 他の誰より私が認めていない。世界中が認めようとも、私だけは認めてやらない。

 断言しようフロイライン。

 君は誰より無価値で、生きているに値しない。

 だから、死ね。

 死んで新たな戦場を生むための肥やしになれ。

 肥やしになる事でようやく君は価値を持つ。

 死んで価値を持てフロイライン。

 そうでないと君は・・・永遠に無意味で無価値な、雑魚のままだぞ?」

 

 

要望があれば続く?




追記:いま改めて読み返してみると、いまいちでしたね・・・少佐殿の狂ってる感が足りな過ぎました。反省しております。
どうやら言霊版にし過ぎたみたいです。少佐の主張が薄すぎる。猛省の必要大。

次の機会をお待ちください。必ずや雪辱を果たして御覧にいれますから!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。