IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
それと新しい執筆スタイルになってから色々とアイデア浮かんで困ってるので、とりあえず適当に書いてこちらに載せます。番外編シリーズ集とか適当な名前付けて章別にしておきますね。そちらも近日中には投稿ですので宜しければお楽しみに。
ーー訪れる決着の時を前に女神が思っていた言葉を、私は確かに聞き、しかと心に焼き付けている。
「ねえカリオストロ、先ほどあなたが感じた想いは、必ずしも気のせいじゃない。
レンに自分の血を混ぜること、で私を変えられると信じたこと」
彼女は人に触れたかった。抱きしめたいと思っていた。
だから彼女を変える者は、人でなければならなかった。
しかし、人では処刑刀(マリィ)に触れられないから・・・・・・
「面倒な女で、ごめんね」
ーー何を言うのだマルグリッド。面倒などと戯れごとを。
君が私に向ける物はすべてがご褒美。
その言葉、その視線、その息その匂いその香りその表情。そられ全てが私を魅了してやまない。
ーーああ、至高なる愛の化身よ。私は君を愛している・・・。
「だから総てを仕組んだんでしょう?」
呆れと、そして若干の憤慨を混ぜながらも感謝するように。
勘違いしないでねと。自分はあくまで怒っているし、自分を変えたのは蓮であってあなたではないのよと念を押しつつ。
まあ、自分がどうしたところでこの人は喜ぶんだろうなと、ある意味駄々っ子に対する母のような心境で。
ーーああ、マルグリッドマルグリッドマルグリッドぉぉぉぉ。
可愛い愛おしい愛らしい愛でたい愛でます愛でました。
まさに、これこそが愛!
ハインドリヒ、我が不肖の息子よ。私は今こそ君を断じよう。
ーー君の語る愛など、私の愛の前では取るに足らぬ、とーー。
「その願い、叶えたい。ううん、絶対叶えてみせる。
あなたの友達も、全部終わった後なら聞く耳持ってくれるかな」
ーー愚問だよ、マルグリッド。我が女神よ。
君の願いは世界の願い、宇宙の大原則万物の法則そのものなのだから、叶わぬ道理が有るはず無かろう?
全ては君の望むままに。全ては君の願うとおりに。
ーーこの世界、否、全宇宙余す所なく君の物であり君の所有物。
だから、好きに決めても良いのだよ・・・?
それによって、いよいよ顕現する最終局面。
歌劇の名はーー
「Dies irae」
これにてアクタ・エスト・ファーブラ(歌劇は終幕)
これにてアルゾ・シュフラーハ・ツァラストゥラ(新世界へ始まる物語)
飽和する神威三柱を包み込むように、女神の覇道もまた流れ出す。
その祈り(渇望)は万象の慰撫にして・・・・・・
「Amantes amentes(すべての想いに)――Omnia vincit Amor(巡り来る祝福を)」
あらゆる愛(祈り)は綺麗事じゃすまされない。
だけどだからこそ、それは尊く・・・・・・何にも勝る輝きであるとマルグリッド・ブルイユは信じている。
だから総てを抱きしめよう。
あまねく渇望の絶対肯定ーー
彼女が最初で最後となる、彼女にしか出来ない理のカタチだった。
ゆえに決着を見届けながら、マリィは愛しい彼らを包み込む。
皆それぞれに、それぞれの愛。
たとえ個々は狂気であっても、彼らは想いを遂げた勝者なのだと慈しみながら抱きしめて・・・・・・
「マァァァァルグリッドォォォォォォォッ!!!!!!」
「うぅぅぅるせぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
坑道内の狭い空間いっぱいに私と変態の声が轟き渡った。
なんだコイツは!? なんなんだコイツは!?
走ってたら偶々出くわして一人オーケストラやってると思ったら、いきなり砂糖吐きまくりたくなるポエム語り出した挙げ句に知らない女の名前を初対面の女の前で大声出して叫ぶとか、頭おかしいんじゃねぇのか完全に!
本当の本当にIS学園には禄な奴いねぇなマジで! なんでこんなモンに税金使ってんだよ! 捨て金だろ、確実にさぁ!
国民が払った血税は、もっと大切に使いやがれぇぇぇぇっ!!!!
「ーーって、ちょっと待て。お前、その右手に持ってる、ソレなにさ。
なんか、ど~っかで似たようなのを最近見た記憶があるような無いような、あってほしくないような・・・」
「ん? 見て分からないのかね? これだから愚かで矮小な俗物は度し難い。
良かろう、特別に教えてしんぜよう。これこそ正しく至高の逸品。女神の創りたもうた偉大なる創造物。
多次元宇宙に保存しておいたマルグリッドの使用済みパンティーだよ」
「通報ーーーーっ!!!!」
「ああ、しかも今生の女神のも併せるとダブルで嬉しいお得な逸品・・・。
これぞ正に究極の聖遺物! 私は今ここに至高の楽園を見つけたり!
・・・くんかくんか、すーはー、すーはー」
「か・ぐ・なぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
超弩級の変態を前に、さしもの私も疲労困憊。戦ってもいないのに疲れ切って倒れそうとか初めての経験なんだが、誰の役に立つんだこの実戦(?)データ・・・?
「なんだね、先ほどからけたたたましい上に喧しい。少しは静かにできんのかね?
まったく淑女の慎みに欠けるにも程がある。二人の女神たちには程遠い。
やはり人は、より良く導かれねばならん。指導する絶対者が必要なのだな。その為にはなんとしてでも女神に立っていただかねばならんのだが、それはともかく今は、くんかくんか、すーはー、すーはー」
「だ・か・ら・嗅ぐなと言っとろぉぉぉがぁぁぁぁっ!!!!」
「ぺろぺろ、ぴちゃぴちゃ」
「やめろ!本気でやめろ! いえ、やめてくださいお願いします!
さすがの私でも、お前みたいなキモオタにパンツ舐められてる奴の気持ちは分かりすぎて心が痛い!痛すぎる!
なけなしの義侠心から切りつけてしまうそうだから、本気でやめてください! 私は善人には成りたくありません!」
「・・・ふぅ、満足したよ。では替わろう。
次は君だ、もう一人の私よ。存分に第二の生を謳歌したまえ私が許す。
好きにして良いから、好きにしゃべって好きに蹂躙してくれたまえ」
散々に舐め回していた女子用のパンツを咀嚼までし終えた後、ようやく満足したらしい変態はパンツをどこかに仕舞って不気味な笑みを浮かべると意味不明なつぶやきを残して雰囲気を変える。
変態からキチガイに。
不気味な笑みから、危ない笑顔に。
――本っ当に禄なのが居ないなIS学園! 亡国機業がまともに見える国立の教育機関ってなんだよ! どんな学校だよ!なに教えているんだよ!テロリスト養成施設だってもう少しはまともだぞ!
日本政府は本気でもう少し真面目に危機管理に取り組みやがれぇぇぇぇっ!!!
「はじめまして、フロイライン。お初にお目にかかる。
さて、早速で悪いのだがひとつ質問させてほしい。
ーー君は戦争が好きかね?」
「大好きだ!」
いかん、食い気味に答えてしまった。
だが仕方ない。これは仕方がない。うん、やむを得ない特別な事情だ。
だって戦争だぞ! 殺しまくれて好きに暴れられて奪える物は残らず奪って良い!
最高じゃねぇか!実に良い!これほどの快楽と悦楽を求めないバカが存在するとでも!?
いや、居ない!絶対にだ!居るとしたら、そいつは玉無しの臆病者だ。敗北主義者の負け犬どもだ。この手で撃ち殺してやりたいくらいだぜ!
「ああ、そうだろうそうだろう。戦争は楽しい。実に素晴らしいものだ。
かく言う私も戦争が大好きでね。
殲滅戦が好きだ
電撃戦が好きだ
打撃戦が好きだ
防衛戦が好きだ
包囲戦が好きだ
突破戦が好きだ
退却戦が好きだ
掃討戦が好きだ
撤退戦が好きだ。
平原で、街道で、塹壕で、草原で、凍土で、砂漠で、海上で、空中で、泥中で、湿原で、この地上で行われるありとあらゆる戦争が大好きだ。
戦列をならべた砲兵の一斉射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く放り上げられた敵兵が、効力射でばらばらになった時など心がおどる。
戦車兵の操るティーゲルのアハトアハトが敵戦車を撃破するのが好きだ。
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった。
銃剣先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ。
恐慌状態の新兵が、既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える。
敗北主義者の逃亡兵達を街灯上に吊し上げていく様などはもう堪らない。
泣き叫ぶ慮兵達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。
哀れなレジスタンス達が雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのをドーラの4・8t榴爆弾が都市区画ごと粉微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える。
露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ。
必死に守るはずだった村々が蹂躙され、女子供が犯され殺されていく様は、とてもとても悲しいものだ。
英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ。
ヤーボに追いまわされ、害虫のように地べたを這い回るのは屈辱の極みだ。
フロイライン。私は戦争を、地獄の様な戦争を望んでいる。
フロイライン。私と敵対し銃口を突きつけてくるテロリストのお嬢さん、君は一体なにを望んでいる?
更なる戦争を望むか? 情け容赦のない、糞のような戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし、三千世界の鴉を殺す、嵐の様な戦争を望むか?
よろしい、ならばクリーク(戦争)だ。
私は満身の力をこめて、今まさに振り下ろされんとする握り拳だ。
だが、この暗い闇の底でーー」
この時点で私は既に死んでいた。いや、死のうとしてたし死んでいたかった。たぶんISの絶対防御なんて余計な物がついてさえいなければ、即座に自殺していただろう。
それぐっらい怖かった。怖すぎた。正直、チビリかけたというか盛大に漏らしたままぶっ倒れて、死んだフリしてる最中です。
こいつヤバい。ヤバすぎる。ヤバいという言葉では言い表せないくらいにヤバすぎてヤバい。マジヤバい。ショックの余り言語中枢が幼児化するくらいに本当にヤバい。
こいつの生きてる世界で生きていたくないので死のうとしてるのに、絶対防御が邪魔して死ねない。ダメージ量がなかなか限界値を越えてくれない。
攻撃力の低さが裏目に出た結果になってしまい、残念に思う。これで攻撃特化、防御力無視タイプだったら簡単に即座に一瞬で死ねたから、こんなに怖い思いをせずに済んだだろうに。
(できれば「殲滅戦が好きだ」辺りから記憶消えてくれたりしないだろうか・・・?
禄でもない人生の最後が一番禄でもなかったんだし、それぐらいサービスしてくれても良いじゃん神様さぁ)
私はそう思いながら最期の時を待つ。
やがて私の無様な醜態に気がついたのか悪魔が(どう考えても人間じゃない。資料で見た日本の代表候補に似てた気がするが別人だろう)小首を傾げ、軽く腕を上げて指を振る。
「少佐殿!!」
「うん、射殺しろ憲兵少尉。敗北主義者だ。
なんなら諸君等の晩飯にしてくれて構わんよ」
どうやらようやく処刑命令を下してくれたらしい。助かった。本気で助かった。
誰に命令を下したのか、この場にこいつと私以外の誰が居たのか、そもそもそこいら中に転がっていた死体どもが全員起きあがっている気もするが、気のせいだ。
うん、全部が全部気のせいだ。気の迷いだ、こんな事はあり得ない。
これは夢で悪夢で幻で、明日の朝には綺麗さっぱり忘れて普通にベッドで目を覚ますのだ。隣で眠るスコールの髪に櫛を入れてやりながら恋人同士で目覚めのコーヒーを煎れて、飲むのだ。
ああ、美味しい。最高だ。真っ赤な色したコーヒーなんて美味極まる。
ああ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーー
「中途半端にはするなよ。グールになられてもその、なんだーー困る」
「ふむ、それを言うなら我々全員がもう既に困っているぞドク。
この世界にはどうやら我々を養うに足る戦場が、確実に存在していない。このままでは我々は無限に長く歩き続けなければならなくなりそうだよ」
「左様ですな少佐殿。と言って、彼の御仁の意向を無視して勝手に死ぬわけにも参りません。と言うか死ねませんしね我々。
あの方のご助力により、今の我々は本物の不死の軍隊に成ってしまっている。
ハッキリ言って、自らの力だけではどう足掻いても死ねません」
「確かに。まぁ、それはそれで仕方がない。諦めるのには未だ半世紀ばかり早かろう。
今はただ、その時が来るのを信じて待とうじゃないか。十分に準備を整えながらな」
「はい、承知しております。
既に創造とやら言う力によって「Aー4ロケット」「V2ミサイル」の量産が可能となりました。直ぐにでもロンドンはおろか世界中を燃やし尽くせます」
「パーフェクトだ、ドク」
「誠に恐縮の極み」
ーーああ、化け物どもが怖い話をしている。
ーー今のうちに地獄から逃げ出せた私・・・幸せー・・・・・・
「グチャッ!」
つづく