IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
これからはもう少しだけでも計画的に進められるようになりたいものです。
「つまり・・・どう言うことだってばよ?」
「さぁ・・・私にもさっぱりでして・・・もう、何がなんだか・・・」
織斑さんがあまりの急展開に付いていけず、人切り侍からうずまき忍者に口調が変わっっちゃいましたね。とはいえ混乱具合では私も同程度。人のこたぁ言えません。
もう、頭の上に「さっぱりさっぱり」と変な妖精が歌いながら踊り狂っている幻覚が見えてきそうですよ・・・。
「えぇと・・・と、とにかくセレニアはその議長って奴の主催するゲームに招かれたった事でいいのよね? んで、その議長には世界の未来を左右する力があって、ゲームの勝者に世界を変える力を与える、と・・・神かよ! 何様だ、そのクソジジイ!
良い度胸だ、表出ろ!決闘だ!サシで勝負してやる!返り討ちだ、この野郎!
新しい時代を作るのは老人ではないっ!」
「・・・六四天安門事件以降友好的とは言い難い中国の代表候補生がアメリカ議会議長に喧嘩売ったら問答無用で全面戦争突入しちゃいそうですけど・・・」
「・・・やっぱり政治家はダンディなオジサマに限るわね! 三十代の若造なんか青二才よ! 見習いだわ! 男と政治家は年寄りの方が良い!」
はやっ! 手のひら返すのめっちゃ早い! 通常の三倍かよ!悪い意味でですけどね!
さすがは一主権国家の代表候補、国益のためなら舌の根の乾かぬうちに前言を撤回します。
・・・将来は政治家にでもなるんでしょうかね、この人・・・?
凰さんの日和見っぷりに呆れた空気が流れるなか、食事を乗せたトレイを抱えてデュノアさんが合流してきます。
「お待たせー。みんなごめんね待たせちゃって。
もう話し合いは終わったの?」
「いや、セレニアからゲームに関して説明が始まったばかりだぞ。
むしろ丁度良かったな。食いながら聞くとしよう。腹が減っては何とやらだ」
「うん、そうだね。それじゃあ改めまして・・・いただきまーす!」
『いただきます』
「・・・・・・」
・・・あれ? これって世界の未来を決めるゲーム大会の説明じゃあ・・・まぁいつものことか。気にしないで置こう。そして私も食べよう。お腹空きましたし。
「いただきます」
日英ハーフな見た目でやると違和感アリアリなお手手の皴としわを合わせる仕草でいただきますをしてから食べ始める私たちが今いる場所はIS学園学生食堂。そして時刻は昼休み中。午前の授業が終わって午後に移る前のインターミッションな時間です。
部外秘の内容を不特定多数の耳目がある中で言っちゃっていいのかと言えば、良いんですよ、この学園。
だって私たちの話に耳を傾けてる人誰もいませんから。
ほら、お隣で食べながら休日の過ごし方について語り合ってる女子二人が露骨に目を合わせようとしてくれません。むしろ全力で居ない物として処理してます。
・・・その理由が織斑さんに向けられてる嫌悪の視線と無関係であってくれると良いなぁ~。うん、大丈夫だよきっと。だって彼ラブコメラノベのハーレム主人公ですもん。女子生徒から毛虫のように嫌われてたってヒロイン達からだけは好かれるのがお約束のラブコメ展開。
うん、だから大丈夫。たとえ今彼の隣にいるのが私で、私だけで、それ以外の人たちが彼を遠巻きにして座ってたって、なんとかなるに違いない。
うん、きっとそうだ。そうであって欲しい。
そうであってくれると・・・嬉しいんだけどなぁ~・・・。
「ーーまぁ、参加するしないは皆さん個人個人で決めていただくとして、とりあえずルールブックに書いてあるIS戦争における取り決めをご説明させていただきますね。
ーーって、ちょっとデュノアさん。私の好物のフライドポテト取らないでください。娘の前で親がして良い事じゃないです、ボーデヴィッヒさんに悪い影響が出たらどうするんですか、まったくもう」
油断も隙もないんですから。
彼女が最近やたらと食べる量が増えてるのに体重が増えないのは、食い意地が張った腹ぺこキャラにジョブチェンジしたせいじゃないでしょうね? 育児教育に悪いのでやめてくださいよ、本当に。・・・もぐもぐ、むぐむぐ・・・。
なにはともあれルール説明です。
1、参加者はIS学園所属の異住・セレニア・ショートが選出した当校生徒及び織斑千冬教官による『セレニア・チーム』とアメリカ国防長官ヨブ・トリューニヒト傘下の兵力のみ。
2、試合会場はアメリカ上院議会議長ゴップとIS学園上層部との合意のもとで設定された学園行事関連会場内のみとする。会場から一歩でも外に出た者がいた場合は即座に失格、敗北と認定。この場合、残存兵力数は関係しない。
3、戦争は秘匿を旨とする。民間人に無用な混乱を招くのは双方ともに望むべき事ではない。お互いに可能なかぎり被害を抑え、戦禍を及ぼすことなく戦争終結を目指すべし。
4、実弾実銃の使用は禁止しないが対戦者に致命傷を与える攻撃を殺意を持って行った場合、これは殺人罪が適用される。ただし、殺意無き一弾か斬撃によって死亡した場合は名誉の戦死扱いとなり犯罪行為には該当しない。
5、投入する戦力に規定はない。IS以外の兵器を用いることはルール違反には該当しない。
ーー相手を殺すつもりで殺すのはダメだけど結果的に殺すのはありって、どこのガンダムファイトですかこれ? Gは宇宙世紀が舞台じゃなかったはずなんだけどなぁ。
・・・と言うか、どうせロボット使った武道大会やるなら選手は織斑さんでいんじゃね?
初っぱなから明鏡止水使える時点で優勝確実すぎて観てても全然面白くない機動武道伝インフィニット・ストラトスになるんでしょうねぇ。・・・超観たくねぇ・・・。
「でもさ、このゲーム自体おかしくない? なんでアメリカがISの世界普及に一役買ったみたいな説明されてんのよ? 白騎士事件で被害受けたのは全世界共通でしょ?
まるで自分とこだけが篠ノ之博士と特別なコネクション持ってたみたいに言ってるけど、どうせいつものハッタリでしょ?
はっ、これだから米帝様は図体ばっかで体面ばっか。少しは民族の誇りくらい持ちなさいっつーの」
凰さんが敵意と偏見剥き出しでアメリカをこき下ろします。・・・仲悪い国同士ですからねぇ~。無理もないですが悪意が固定概念化してる事に関してのみ、ちょっとだけ心配。
「後半はともかく前半に関してはわたくしも鈴さんの意見に賛成ですわ。
仮にアメリカがIS開発技術を持っているのだとしたら、それを使って征服戦争を起こし世界を軍事的に支配することが容易にできるはずですもの。
それが成されていない以上、アメリカがIS開発に関わった経緯などないと断言して良いと思いますわ」
「・・・・・・え?
・・・・・・ああ、そういう理解の仕方ですか・・・。まいったな・・・」
意外な落とし穴にはまり、少しだけ思考が停止しました。正直この事態は想定していなかった・・・。
考えてみれば白騎士事件以降の世界は局所的な争乱こそあれ、概ね平和な十年を過ごし今に至る。 確かにこれでは戦争の基本的概念が忘れられてもおかしくはない。
ましてや彼女らは少女、学生です。戦後世代が知っていないのも無理ないですか・・・。
「凰さんにオルコットさん。誤解があるようですが・・・今の時代に戦争起こしたとして、勝ち負けに関係なく双方ともに大損しかしませんよ? 儲かるのはせいぜい第三国だけです」
「「ええっ!?」」
ああ、やはり知らなかったみたいですね。良かった今のうちに知ることが出来て。
土壇場で勘違いされてることに気付いたら取り返しが付かないですもんね・・・。失敗は出来るときにしておきたい。そして失敗から得た教訓を失敗できない事態に活かしたいものです。
「え、だって・・・それおかしくない?
戦争やれば需要爆発とか戦争景気とか色々起きて景気回復は確実って学校じゃ教わったんだけど・・・」
「わたくしもユダヤやフリーメーソンによる『死の商人』疑惑の話はイギリスにいた折りにチェルシーから寝物語として聞かされていたのですけど・・・」
共産主義国出身者とホラー大好きロンドン市民が、お国柄故の盛大な勘違いを披露してくれます。
まぁ、必ずしも間違っているとは言い切れませんし一面的な事実でもあるところが厄介なんですけどね。
とは言え、やはり一昔前の認識と言った方が正しいでしょう。
ネルフの上にあるゼーレみたいな秘密結社に憧れる気持ちは分からなくもないですが、物事は以外と単純な物でしてね。
陰謀や秘密結社なんてなくても戦争は起こせますし、起こしたところで秘密結社だけが漁夫の利を得る手段など合法的に経済で潰してしまえばいい。
「確かアイゼンハワー大統領でしたか? そのお話を語られたのは。
あの言葉は確かに正しい正解ではあります。正解ではあるのですが・・・それも第一次大戦で完全に崩壊しちゃいましたからね~・・・。
現在では政府が一部マスコミを通じて世間に流布させたその認識を有効活用し、意図的に流す情報を鵜呑みにしてしまった人たちだけが都市伝説を真実だと信じて踊り狂わされている、謂わば「過去からの亡霊」です」
なお、ギレン・ザビの亡霊もデラーズ・フリートも一切関係ないのであしからず。
「ほ、本当なのシャルロット? アンタ一時期デュノア社の社長令嬢だったんだから知ってるんでしょ!? ホントのこと教えないとただじゃ済まないわよ!」
「ん? 戦争景気が嘘か本当かどうかの話?
それなら完全に嘘だよ。
実際に、うちの会社が経営難になった理由の一つがそれだったから良く覚えてるんだ」
唖然として口をポカンと開けるお二人。
私をそれを横目に見物しながらポテトを一本ボーデヴィッヒさんの口へと運びます。
はむはむと、ウサギが草を啄むように食す仕草がとってもラブリー♪
・・・行儀が悪いのは可愛いので見逃してください。可愛いは正義。
「今の世界各国政府首脳は事件後に台頭してきた若手女性政治家が中心なんだけど、女尊男卑の風潮を利用して男を貶め蹴落とし、失脚させて政権とっただけの人たちだからね。実績以前に能力経験コネパイプ、政治家に必要なあらゆる要素を欠いてるんだ。
だからこそ、自分たちが寄って立つ女尊男卑の象徴IS開発に最優先で国費を投じてるんだけど」
そこまで言って彼女が常に浮かべている穏やかで優しげな笑顔に苦い物が混じります。
「軍事知識皆無の素人が軍需産業の経営にまで口出ししてくるんだから経営者にとっては迷惑極まりないよ。おまけに、お嫁さんまで宛がって派閥に組み入れようとしてくるんだ。
それも多額の支援金という首輪付きで、ね。
これじゃ、真っ当な手段でIS企業経営はやっていけない。かと言って初期投資が半端な額じゃないから途中でやめることも難しい。抜け出すことが出来ない底なし沼に企業を引きずり込むための餌が、公の場において彼女たちが大声で発する女尊男卑思想の強調さ」
『・・・・・・っ!!』
「あれは完全に政府のプロパカンダだよ。現に白騎士事件で鉄クズ認定された軍需産業は新しい新規事業へ参入する以外に生き残る道は断たれた。
もちろん、母体である企業総体は傷が浅いうちに撤退できるんだけど・・・残された軍需部門の従業員や取引先はどうすればいいのかな?
国は世論に乗って女尊男卑、IS最強、現行兵器は鉄クズ同然、そう叫ぶ人たちの声を煽りこそすれ、鎮めてはくれない。そのうえで今度は『欧州連合の統合防衛計画』の始動だよ?
いったい彼らは何処に住み、何をして生きていけばいいのかな?」
誰も何も言えない空気が周囲に立ち込め、沈黙がこの場を支配します。
・・・私たちの周囲の人たちは賑やかですけどね! ワイワイガヤガヤ騒いでますけどね!
でも、とりあえずそこの1年1組生徒さん、「ISスーツはデザインが命!」って叫ぶの今だけはやめようかっ!
て言うか本気でやめてお願いだから!私の胃がキリキリ痛む! 皆さんに聞こえていないのか、聞こえてるけど無視してるのか分からないから余計に痛い!
い、いかん・・・なんとか話題を逸らさねばドクターストップで前線(原作)離脱してしまう・・・。
「そ、それに関連してなのですが・・・白騎士事件で白騎士に敗れ落とされた戦闘機パイロットの中には十名近い数の女性士官が混じってたそうですよ?」
『うそぉっ!?』
ホント。
「アングラ記事ですから信憑性に疑問はありますけどね。それでも複数箇所で似た内容の物が散見できる。まったく同じではなく似た内容という所が妙にリアリティを感じますね。勿論そう言う演出な可能性も捨て切れませんが・・・。
ーーただ、その時点でアメリカ空軍に複数名の女性パイロットが登録されてたのは事実らしいですよ?」
前世でも話題になってましたからね、最新鋭ステルス機を操る初の女性パイロットって。機体名はたしかーーFー35ライトニング? でしたっけ?
記事を見たのが2010年かそこらだったので、もしかしたらこの世界では白騎士事件で落とされたのかもしれませんねぇ。
最新鋭ステルス機なんて何機もある訳ないですし、少ないからこそ少数精鋭でなければいけませんし、総力戦を想定してるなら兵士の士気を鼓舞するために見目の良い女性士官が出撃してるのは有効ですし、動員兵力から見て総力戦を企図していたのは明白ですし・・・・・・だからこそ、“明らかに状況と矛盾している”訳ですが。
「事実としてボクの義母はボクだけじゃなく、父にも全く興味がなかった。冷めた夫婦関係と言うよりも、同じ家で暮らしてる夫婦という形式だけ整えた赤の他人みたいな関係だったよ。
一緒に過ごした期間は短かったし、そのころのボクはお母さんに先立たれたばかりで精神的に参ってたから気付いてあげられなかったけど、お父さんも相当疲弊してたんだと思う。
元々IS産業は誕生したばかりでノウハウどころか経営戦略をトライ&エラーを繰り返すことで少しずつ作り上げていくしかない段階。リスクマネジメントすらどう取ればいいのか分からない。何もかもが手探りの状態から国家事業として無理矢理参画させられたんだ。企業総体に見捨てられた軍需部門はそれに縋る以外に道はなかったから・・・」
デュノアさんの言葉が紡がれるたびに空気が重くなる私たちのいるスペース。周りが騒がしいから余計に疎外感が強まります・・・。
人間エアポケット状態を形成してどうすんでしょうね・・・しかも、原作ヒロイン自ら原作世界観を完全否定しちゃってますし・・・。
「政府は毎年のようにIS企業へ「さらなる高性能な新型」の開発命令を出し続けた。
戦争のない世界でモンド・グロッソは主要各国が参加して自国の軍事技術をお披露目し、対立国や関係各国を恫喝できる事実上の世界大戦だ。戦争は勝たなきゃ意味がない。
だからこそ、フランス政府は焦りを募らせていた。資本力で負けてるから当然だけどね。『イグニッション・プラン』からの除名がそれに拍車をかける結果となって、ほとんど自暴自棄になった挙げ句ボクに白羽の矢が立った。・・・少なくとも今のボクはそう解釈してるよ」
自嘲気味に微笑むデュノアさんの傷だらけの笑顔が非常に痛々しく感じられます。・・・感じられるのにーーおいそこ!そこの変態ドM会長!
今の話を聞いた感想が「羨ましい・・・」なのはどういう了見だコラ。いつか後ろから刺されますよ? ・・・刺された後も「気持ちいい・・・☆」とか言いそうでキモいですね。
想像しちゃって思わず吐き気が・・・うっぷ。
「い、一応の政府弁護をさせていただくと、彼女ら以外にも責任のある方は大勢いらしゃるんですよ。そりゃもう星の数ほど」
「・・・誰よ、それ。今の話に出てた奴よりヒドいんだったら今すぐ私の甲竜で衝撃砲ぶっ放して粉々にしてやるんだかーー!」
「世界人類六十億人。地球人類ほぼ全員です」
『はぁっ!?』
皆さん目を剥き驚きを露わにします。まぁ、当然の反応ですよね。つか、私も盛りまくったし。
正確には政治に影響力を持つことが出来ない人々は除外するので、軍事独裁国家の国民は外していいのかな? ああ、あと教育が行き届いてない地域の人たちもですね。
無知は罪とか言いますけど、この場合一番悪いのは無知でいさせたまま放置し、自分に都合の良い教育を自分の手駒にする人材にだけ施す支配者層だと私は思う。
「凰さん、貴女は今の話を聞くまでIS企業をどう思っていましたか?」
「う・・・そ、それは・・・」
「自分の要求通りに通らない新武装開発、派閥争いに明け暮れる戦場に出てこないモグラども。現場の声はどうせ上に届くことはない。
自分はVIPで重要人物だと自惚れ“歳を取っているだけで偉そうにしている大人”をバカにしたことはありませんか?」
「で、でもだってそれは・・・!」
「はい、貴女の言うとおりの大人も確かに居ます。そりゃもうワンサカと。
でもね凰さん。貴女の使ってる甲竜も含めてISは大人がいないと生まれないんです。整備は学園の整備科ででも出来ますが、製造するのはあくまで企業。子供経営者がいないとは断言できないご時世ですが、それでも生まれて間もない新規事業への参入には時間によって積み重ねられた実績と信用が必要不可欠なんです。
誰も一人では生きられませんし、ISは操縦者だけでは鉄クズ以下にしかなれないんですよ」
『・・・・・・・・・』
「誰もがISを見ていた。ISだけを見て、それ以外に目を向けなかった。
自分が見ている範囲を世界の縮図と思いこんだ。あるいは、思いこみたかった。
苦い現実より甘い夢を見ていたかった。夢の中から出たくなかった。
世の中は男尊女卑という間違った思想から女尊男卑と言う正しい思想に変わり、本来あるべき正しい姿がこれだったのだと信じたかった。
女性は今まで見下されていた(と思いこんでいた)鬱憤を晴らし、男性は社会全体に戦いを挑むより「世界最強のISは女性しか使えないから、女性の方が生まれながらに強い」と自らが努力しないことを正当化した。
腐った世界です。腐った社会です。私を含む地球人類全てがISに甘えきっていた」
『・・・・・・・・・』
「そして、その程度のことも理解しようとせず、世の中の現実も見えない跳ねっ返りどもが、こういう連中を生み出すことになる・・・!」
抑えきれない怒りを込め、私は手元のルールブックに記された対戦相手チームの名前をトントンと指で叩き、紙を凹ませる。
『亡国機業・ファントム・タスク』
裏の世界で暗躍する秘密結社。第二次大戦中に生まれ、五十年以上前から活動している。
ISメーカーの一つだとか、世界中を戦場にしたいテロリスト集団だとか色々書かれていますが、そんな“宣伝広告”などどうでも宜しい。
「運営方針を決めている「幹部会」は国家御用達からあぶれて経営が危うい各国IS企業ほぼ全て。実際に戦場にでる「実働部隊」は幹部会によって意図的に破滅させられた高級軍人や自分たちで暗殺した特殊部隊員の遺族か孤児を洗脳教育した者達だと私は断定します。
戦場にいるから自分たちは平和ボケした市民たちより優秀。世の中しょせん弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ。
強者である自分たちは優良人種であり神に選ばれた存在。だからこそ、無力な平民を、身分いやしき者どもを吹き飛ばす権利がある・・・?
宇宙の摂理は弱肉強食であり、適者生存、優勝劣敗。人類もまた、その例外ではありえない?
ーーそんな戦争を美化して自らの無能を正当化しようとする自称戦争至上主義者などクソ食らえです。
戦争ゲームなど関係ありません。私はこいつらに必ず・・・地獄を見せて差し上げましょう」
返答はない。反論もない。
どのみち一人でもこいつらを地獄へ叩き落とす腹積もりだった私には、始めからどちらも必要としていませんがね。
「参加は強制ではありません。戦争ゲームの説明もまだ途中です。勝利条件や敗北した際のペナルティなど語っておかなければならないことは数多い。
ですから、抜けたい方は今ここで仰ってください。「参加したくない」と。
去る者は追いませんし無責任とも臆病者とも罵るつもりはありませんから、どうぞご遠慮なく」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
うん、不参加者はなし、と。
「では、これより作戦会議を始めます」
『イエス・マァム!!
少佐! 少佐殿! 代行! 代行殿! 大隊指揮官殿!
少佐! 少佐殿! 代行! 代行殿! 大隊指揮官殿!
クリーク!(戦争)
クリーク!(戦争)
クリーク!!(戦争)
クリーク!!(戦争)』
やめなさいって。私、地獄見せるだけで作りはしないし。
あと、仕込んでたと思しき簪少佐のニヤケ面をブン殴りたい。
つづく
何度目か忘れましたが、もう一度言います。
この作品はフィクションです。登場する人物・団体・組織・軍事知識は作者の妄想による部分が大半を占めます。実在する軍事知識とはかけ離れたおとぎ話のような物だとご理解下さい。
その為、それらの指摘に対する回答が不十分になるであろうことを予め宣言させて頂くモノであります
*次回辺りから簪に水銀要素を加える予定です。