IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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なんか、アニメ版マンガ版ラノベ版ゲーム版二次創作と
色々と参考にしていたら記憶が混雑して設定に矛盾が生じてきたので
タグに一部オリジナル設定を付け加えました。

今回は二話同時投稿です。先に11話目をお読みください。


12話「天災VS魔王」

「うふふ・・・銀髪の魔王ちゃんかぁ・・・。ちょっとだけ興味がわいたなぁ。

 計画の悉くを壊して変なふうに解決しちゃうその手腕・・・。どんなものなのか確かめるために、この天才の束さんが直々に遊んであげるよー♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーひくちっ」

 

 くしゃみが出るなんて珍しい。風邪でしょうか?

 まぁ、もともとバトルラブコメに転生したわりに私の身体は貧弱すぎますからね、特におかしくはないでしょう。

 

「しかし、遅いですね。お二人とも、時間には正確なイメージだったんですが・・・」

 

 時計を見て待ち合わせ時間が十分ほど過ぎていることを確認し、私は首を傾げます。

 今日私をデートに誘ってきたのは他ならぬあのお二人、デュノアさんとボーデヴィッヒさんです。しかし、約束の時間になっても未だに姿を現しません。

 

 もしかして事故か事件かな・・・少しだけ不安を感じ始めた頃ーー

 

 

「やあやあ、始めましてだねー、銀髪の魔王ちゃん。この私が開発した探知機で探せば一発だったんだけど、わざわざ自分で探すのもたまにはいいかなーと思って、ウィンドウショッピングのついでにキミのこと探索しちゃったよー。ぶいぶい」

 

 ーー変質者に声をかけられました。

 

 

 ど、どうしましょう・・・。転生してからそれなりに経って、変わり者が多いIS学園で耐性はつけたつもりでしたが、まさかこれほどの変態がこの世に実在していたとは・・・!

 

 とりあえず、今私がするべき事はーー

 

「ーー1、1、0・・・と」

「なんでいきなり通報するのかな!? 私をなんだと思ってるのかなキミは!?」

「なにって・・・変態ですよ。それ以外の何だと言うんです?」

「へん・・・っ!?」

 

 なぜか驚愕した表情で黙り込む変態さん。

 いったい何処に驚くべきポイントがあると言うんでしょうか。

 むしろ、驚かれたことにこっちが驚いていますよ。

 

「腐った魚のように淀んだ不健康きわまりないツリ目の下に濃いクマをこさえ、TPOを弁えない上に自分の年も考慮していない時代錯誤なコスプレドレスを纏い、さらには明らかに胸を強調している服の選択、挙げ句の果てにはウサミミの付いたカチューシャです。

 そんな変質的な格好をしている人間が私のような女子高生に怪しげな笑みを浮かべて異常なテンションで話しかけてくる・・・これを変態と呼ばずしてなんと呼べと?」

「て、天才は凡人とは違う思考で生きてるから、常識から外れるのは当たり前で・・・・・・」

「常識から外れたいなら常識の通じなくていい世界に永住して下さい。常識の世界に出てこられても迷惑なだけです。天才や英雄なんて太平の世では、普通の人間に合わせることができずに自分勝手な都合を正義だ理想だと宣って押しつけてくるだけの異常者でしかないんですから」

「ぐふぅおぉっ!!」

「わっ」

 

 な、なんでいきなり吐血したんですかこの人・・・?

 とてつもない血の量ですが・・・大丈夫でしょうか?

 

「あの・・・大丈夫ですか・・・?」

「だ、大丈夫だよ~・・・。わ、私は天才だからねー、失敗とか挫折とか殆どしたこと無いからさ~、ちょっとだけ逆境に弱かったりするのさ~・・・」

「え・・・? 失敗したことのない天才、ですか?

 それってつまり、甘やかされて育った天才園児と同レベルの精神年齢ってことじゃ・・・」

「ぐふぇはぁ!」

「しかも「殆ど」と言うことは最低一度は失敗か挫折をしたわけですよね? 経験が少ないと耐性が付かないぶん、ダメージが過剰に大きくて、あっさりと現実逃避したりするのが失敗した天才のパターンですよ?」

「ぶぇっほぅ!」

「その上、他人を見下すことしかしたことないから、自分の失敗を認められずに他人のせいにして罵ったり、「世の中バカばっかりだ」とか厨二みたいなこと言い出したと思ったら「凡人と一緒にいても無駄」とかなんとか自己正当化して全責任を放り出した挙げ句、自分がしでかした事を都合良く忘れて自分一人の楽園にたった一人で引き籠もったりするのがお約束だったりしますよね。・・・貴女も、そんな天才を自称してるんですか。ハッキリ言ってドン引きします」

「ぶぅえぇふぉふぉ!!」

「・・・・・・あの、本当にお体の方は大丈夫なんですか・・・? 明らかにストレスで一瞬にして胃に穴が開きまくったような血の量ですけど・・・」

 

 と言うよりも、なんで生きてるんですかねこの人。どう見ても致死量なんですけど。

 

「ま、まだ大丈夫だから・・・それよりも~お姉さんと~お話~しましょうよ~・・・」

「はぁ・・・」

 

 死人みたいな顔色はともかく、生者を憎む亡者みたいな表情でお話と言われましても反応に困るんですけど。

 

 ま、別にいいでしょう。

 本音を言えば変態とは一刻も早く縁を切りたいところですが、だからと言って病人を見捨てるのは気が引けます。

 しょうがないので、もうしばらくお付き合いしますか。

 

 私たちは、吐血した自分の血で赤く塗装されたドレスを纏った変態さんを近くのベンチへと移し、休ませながら話しをすることにしました。

 

 言うまでもありませんが、肩を貸しただけです。それ以外で体力一桁の私が肉体労働の役に立つなど有り得ませんから。

 

「えっと・・・それで何についてお話しすればいいのでしょう? 私は貴女のことを何も知らないので話題として何が適切なのかわからないんですけど・・・」

「うっふっふ~・・・そーなんだー・・・。じゃあ、まずはISについて聞かせてもらえない~?」

「ISについて、ですか?」

「そうそう。制服からして、キミはIS学園の生徒さんでしょう~?

 聞かせてもらいたいなぁ~、キミにとってのISの価値ってものをさぁ~」

 

 なぜか舌なめずりする猫を彷彿とさせる口調でねちっこく問いかけてくる変態さん。

 正直キモい上にウザいのですが、変態に理屈は通じませんし、適当にあしらっておきましょう。

 

 それにしても、ISについて、ですか。ふぅむ・・・・・・

 

「・・・生まれてくる時代を間違えたオーバーテクノロジー。数十年か百年ほど先なら人類にとって神からの恩恵となったでしょうが、今の時代には混乱と争乱と対立を招くだけの破壊神・・・いえ、疫病神ですかね」

「ぐぅえはぁっ!」

「そもそも、なぜ開発者である篠ノ之博士は宇宙開発に誰もが興味がない中でハードウェアだけを与えたんでしょうかね? どう見たって宇宙開発に人類が目を向ける下地ができていないのに・・・才能があるだけのバカだったのかもしれません」

「ぎゃうぇふぉうっ!」

「なによりも、ISのデモンストレーションが最悪すぎました。現行兵器の全てを上回るマシンを戦力として全国家に見せつければ、そりゃ誰だって兵器として使いますよ。子供でもわかる簡単な理屈です。この程度のことも考えずに「自分が望んでいたのはこんな使われ方じゃない」って、精神年齢幼すぎでしょう。どう見たって異常者です。精神科医にかかるべきですね」

「ぐぇぇはぁぁうぇぇぇっ!」

「宇宙開発したいなら、まずはメリットを見せるべきです。にも関わらずその手間を惜しみ、道具の成果だけを見せて「解れ」って言っても解るわけないでしょう。宇宙開発に使われるISなんて、篠ノ之博士の頭の中にしかない妄想の産物なんですから。理解してもらう努力をせずに理解を求めるガキです。それ以外の何者でもありませんよ、彼女は」

「ぶぇふぇほぉっ!」

「自分が思い描く理想がなによりも正しくて尊いなんて思っているとしたら、彼女は独裁者の素質がありますね。きっと善意のつもりで世界に災厄をばらまいておいて「こんなつもりじゃなかったの!」とか言い出すようなクズですよ。・・・死ねばいいのに」

「ぎぃぃぃえぇぇぇっ!」

「・・・あ、すいません。ISについてじゃなくて篠ノ之のバカに対する愚痴になってしまいました。どうにも自覚のなさそうな有害なバカを見てるとイライラしてしまい、誰かに当たってしまいがちで・・・ごめんなさい」

「ぐぅぅぅぅえぇぇぇぇぇっ!!」

「・・・・・・あの、さすがに吐血した血の量が凄いことになってきましたし、そろそろ救急車を呼んだ方がいいのではないかと・・・」

 

 これは・・・凄いですね。ほとんど人間噴水です。頸動脈を断ち切ったところでここまで出血しないのではないでしょうか。

 

 ・・・これでも、まだ生きてる変態さんは何者なんですかね?

 ・・・・・・まさかとは思いますが、変態は本当に常識を突破した超人だったりするんでしょうかね? 漫画やアニメみたいに。

 

「ま、まだ、大丈夫、だから・・・最後に、聞かせて・・・欲しい、な・・・。

 キミだったら、どんなふうに、ISを、デモンストレーションして・・・宇宙開発を、はじめ、させ・・・る・・・?」

「宇宙開発・・・ですか?」

 

 虫の息な変態さんが、負け惜しみでもいうかのような口調で訊いてきた内容に、私は無い知恵を絞って少しだけ考えてみます。

 

 あいにくと政治も経済も習ったことがなく、ど素人でしかない私に思いつく方法なんて現実味のないモノしかありません。

 

 が、それでもいいでしょう。別段、本当に実践するわけでもなし、変態さんの戯れに付き合っているだけなので、どんなにバカをやっても言っても問題が起きる事なんて有り得ませんからね。

 

「まぁ、普通にISを使って宇宙から資源衛星でも取ってきますよ。ゴールドラッシュも同じような始まり方でしたし」

「ぐぅぅぅぅぅはぁぁぁぁぁうぅぅぅぅぅえぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

「うわっ」

 

 な、何があったんでしょうか・・・?

 突然大声で叫声をあげた変態さんが、自分の血で池みたいになっているアスファルトの地面をのたうち回りながら身体中の穴という穴から大量出血し始めましたが・・・。

 

 ・・・もしかしなくても、これは新しいウィルスかなにかでは? 早く病院に・・・いえ、危機管理センターへ連絡しましょう。

 

「え、と・・・電話番号を検索して・・・あれ?」

 

 いつの間にか変態さんの姿が消えていました。

 

 まるで煙のように、後にはなにも残さずに・・・と言えればいいのですが、あいにくと血は一瞬で消せても臭いは一瞬では消えません。血臭とおぼしき錆びた鉄の臭いがそこいらじゅうに充満しています。

 

 ・・・まぁ、あれだけ大量に出血したんですから当然なのですが。

 特に実害はなかったので別にいいのですが。

 

「セレニアーっ!」

「お母様ーっ!」

 

 ん。どうやら到着したようですね。それでは、買い物に出発しましょうか。

 

 今日は、来週にせまった臨海学校に持って行く水着の買い出しです。

 私は学園指定のスクール水着で充分なんですが、その格好だとデュノアさんが・・・あと、オルコットさんの視線も・・・

 

 つくづく変態が多い世界です。やはり、ああいう手合いは幾らでもいるのでしょう。モブの変態キャラの事なんて忘れて久しぶりの買い物を楽しむとしますかね。

 

つづく


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