IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

109 / 115
なに書いていいか分からなくなってますので、思いついたの適当に書いてみる事にしました。一本目です。
別に新シリーズとか連載とかではなくて番外編ですので、割と本気で意味のないお話です。暇つぶしにでもどぞ。


言霊ISであり得たかもしれない可能性の話

 ーーモニターの向こうに織斑さんの白式とかいう新型と、オルコットさんの第三世代機ブルー・ディアーズが映し出されて対峙しているのが見えています。

 今はIS学園入学から約一週間後の月曜日、場所は学園内にある第三ISアリーナ。

 

 織斑先生により一週間前に決定されたイギリスの国家代表候補生セシリア・オルコットVS世界初の男性IS操縦者にして知名度だけはバカ高いド新人・織斑一夏さんとの公式試合当日です。

 

 

 ・・・レポーターは、織斑さんとオルコットさんが事を起こしたときに余計なことを口走ってしまった責任により、ピットの中で織斑先生と同席させられることになってしまった私、異住セレニア・ショートがお送りしまーす・・・。

 

 

「ーー勝てよ、一夏。必ず勝って元の強いおまえに戻ってくれ・・・っ!!」

 

 隣に立って試合を見学している篠ノ之箒さんが祈るように呟かれておりますが・・・この人って、なんでここにいるんでしょうかね?

 一応ここって警備主任でIS操縦指導の二羽ガラス織斑千冬先生と山田麻耶先生が試合を監督しながら控えている、いわば試合中に不正がないかどうかの審判役兼判定確認係みたいな場所なんですが・・・。山田先生なんてさっきから画面に映る情報を整理しまくってますしね。

 

 ・・・普通に対戦相手の片割れの幼馴染みがいていい場所じゃねーよーな気が・・・・・・。まぁ、今更か。

 

「一夏、頑張れ! おまえならきっと勝てる・・・っ!」

「どうでしょう? 順序で行くなら負けなければおかしい試合内容ですし、微妙なのではありませんか?」

 

 私の冷めた意見に篠ノ之さんが非難がましい目を向けてこられます。

 そう言う目をしたって仕方ないじゃん。だって、本当のことなんだし~。

 

「・・・いやに薄情な見解だな、異住。隣の席に座る学友に対して冷たすぎるんじゃないのか・・・?」

「そうは言われましてもねー」

 

 私はヤン提督の真似をして頭を右手でかいて見せながら、

 

「相手は実力を認められて専用機まで与えられたベテランのエースで、織斑さんの方は一週間前までISには触ったこともないズブの素人。・・・たった一週間の付け焼き刃な訓練で勝てたりしたら、それこそ才能こそが勝敗を分かつことを事実によって証明してしまうことになり兼ねません。それは、織斑さん的にも好ましくない事態なのでは?」

「う・・・。そ、それはぁ・・・・・・」

「それに加え、織斑さんには実績がありません。プライドの根拠とすべき自信と実績・・・この二つが今の彼はアンバランスすぎますからねぇ。

 女性が偉そうにしてたら問答無用で女尊男卑主義者だと決めつけて下に見る態度も良くはありませんし、下手に初陣を勝利で飾ってしまったら増長させてしまう結果をも招きかねませんし、惜敗ぐらいが理想的な決着の仕方だと私は考えますけどね」

「・・・・・・ぐ・・・ぐぬぬぬぬ・・・・・・」

 

「て、ゆーか常識でいったら負けますし。女性にしか動かせないロボットに触って動かせたから特別に入学許可降りたロボット操縦者の専門校で初日からベテランに喧嘩売るとか、いつの時代のスポ根漫画ですかって感じの展開でしたしね。ここがマンガ世界じゃなかったら確実に負けますよ絶対に」

「ぬ、ぬぅぅぅぅ・・・・・・」

「団吉さんがコーチしてくれたら別でしたけど、彼にコーチングしてくれたのは幼馴染みの経験者さんで、一週間の間ずっと剣道の素振りしか教えてもらえなかったみたいですしねー。

 人事を尽くすことなく天命だけで勝利を得てしまうのは、彼の精神的にも不味いのではないですかねー?」

「ぐ・・・ぐぐぐぐぐぐぅぅぅぅ・・・・・・っっ!!!」

 

 歯ぎしりしながら睨みつけてくる篠ノ之さん。だから仕方ないじゃないですか、本当のことなんですから。

 彼女のことは放っておくとして、私は少し離れた位置から腕組みして試合が始まるのを待っている織斑先生の方へと視線を移すことにしました。

 

「・・・・・・・・・」

 

 彼女は沈黙を保ったまま厳しい面差しを崩さずに、ただモニターを眺めています。

 その姿は一見すると、弟を信じて千尋の谷に突き落とした厳しい姉に見えなくもないですが・・・・・・本当にそうなんでしょうかね?

 

 専用機は量産機に搭載されている普通のOSとは違い、操縦者一人一人にセッティングしてから動かす為に乗った直後から動かし方が頭の中にインプットしてくれると聞いたことがあります。『その人その物になるからこそ、その人専用機なのだ』とかなんとか。

 

 とは言え。機体と一体化して『教えてもらった』動かし方を『知っているだけ』では力とは呼べない。知識は自分に合う形で『身につけなければ意味がない』。

 

(・・・たとえるなら、ヤン提督から色々学んでおきながら未だに頭デッカチで無能なクソガキでしかない私みたいにね・・・)

 

 『学んで』『修めて』こそ『学習』と証するに足る。・・・誰のセリフでしたっけかね? これだけいい言葉をいっぱい授かっておきながら未だにこの程度でしかない私が言うのですから間違いありませんよ?

 

(出来たばかりの機体である白式に織斑さん繋いで互いに情報を交換し合い、一瞬にして学習装置で自分の体と同じように扱えるようになるまでなら『とある科学のレールガン』におけるミサカ妹さんたちと同じですが、それによって熟練の敵手を倒すーーもしくは、互角の戦いを繰り広げてしまえるようになるのであれば、それは才能でも実力でもなく『そう言う風に出来ている生き物』になっちゃう訳なんですけどねー。

 そのことを知ってるとしたら、この余裕も納得がいくのですが果たして・・・・・・)

 

 思考に耽っていた私は、自分が致命的な失敗を犯していることに気づけていませんでした。

 知識だけの頭デッカチだから、教えてもらっただけの素人だから、弱くてバカなただのクソガキだから。ーーそんな戒めのため自虐の言葉を吐きながら、私は口で言い勝ってしまった現状で油断していたのです。

 人から教わっただけの言葉を使って人に言い勝ち、愉悦に浸る・・・・・・最低です。前世の私と同じく最低最悪の悪行をなした私には当然の報いが降り注がれます。ーーさっきから黙り込んだままだった傍らの長身ポニーテールさんから。

 

 

「そ、そうだ異住! 貴様の言っていたことにも矛盾は存在していたぞ!!」

「・・・ん? あれ、篠ノ之さん。まだいらしたんですkーー」

「あれほどまでに一夏の敗因となる要因を並べ立てておきながら、貴様は試合の勝敗そのものついては最初の一言目でこう言っていたはずだぞ!『微妙なのではありませんか?』ーーとな!」

「ーーーーーーーあ」

 

 ウ・カ・ツ♪

 ・・・思わず頭が真っ白になった私は、反神羅組織アバランチに所属していたジョシーさんみたいな言葉を思い浮かべてしまいました。それしか思う浮かばなかったものですから・・・。

 

「貴様が一夏の勝利を信じていないことは理解した! しかし! ならば何故貴様は一夏の敗北も信じようとしてはいないのだ!? 言ってることが理に合わなくなるではないか!!」

「・・・あ、あう、あう・・・・・・そのあの、えーと・・・・・・」

 

 いかん、完全な不意打ちだったせいで頭で考えるよりも先に体が反応してしまっています。

 考えてみれば、私自身も《インフィニット・ストラトス》の物語に参加させられたのは一週間前からのことでしたね。

 (たぶん)オリキャラなので、生まれ変わってから十数年分の人生は物語本編に絡んでないでしょうしねー、サイドストーリーとして本編に区切りがついた辺りで描かれる可能性が歩かないか程度のものでしかありません。

 

 ズブの素人なのは、私も彼らと変わりありませんでした!?

 

「さぁ、答えるのだ異住セレニア・ショートよ! なぜ一夏が負けると言い切れないのか、その理由についてキリキリ白状してしまうのだ! さぁ! さぁさぁさぁ!!」

「あ、あうあう、はわ、はわわわわ~・・・・・・」

 

 ・・・不味いです、どうしましょう。まさか本当に白状してしまって『織斑さんはラブコメバトルアクションの主人公ですから、ご都合主義で勝てる可能性は常にあります』・・・なんて言えるわけがありません。信じてもらえませんし、変な人に見られてしまいます。・・・いやまぁ、今の時点で結構変な人扱いされてるんだろうなぁーと自覚はしてるんですけどね? 元男としてキョドり方気持ち悪いですし。

 

 い、いったいこの状況で私はどうすればよろしいのでしょう? こう言うときには、助けてドラえもーーーーーー・・・・・・んは止めておきましょう。なんかイヤな記憶がデジャブリかけて胃痛を覚えさせられましたから。

 

 

 

「さぁ! 答えるのだ異住! 一夏が負けない理由を! 負けると信じれない理由を言わなければ私はお前を許さなーーーー痛い!? ち、千冬さん? いったいなにを・・・?」

「・・・・・・・・・なにをと聞くか貴様・・・。人の弟の初陣を前にして負けるのを信じない隣席のクラスメイトに脅しをかけていたのと同じ口で、お前は『なにを』と抜かすのだな篠ノ之・・・・・・」

「あ」

 

 

 

 

「ーーどうやらお前とはOHANASIする必要があるようだな、篠ノ之。ちょっとこっちに来てもらおうか。なぁに心配はいらん。

 試合内容はちゃんと見られるし、ピットにいる私との会話もちゃんと出来るよう設計された特別室だ。お前が見たがっているであろう一夏の勇姿を見逃すこと『だけ』はないと確約してやる(ズルズル)」

「い、いやあの、千冬さん? そんなオーバーテクノロジーの塊みたいな部屋は私みたいな一介の一般生徒にはもったいないと言いますか何というべきなのか・・・て言うか、そんな部屋パンフレットには一文字も記載されていませんでしたよね?」

「当然だろう? IS学園は現在世界が保有しているIS技術の結晶とも呼ぶべき場所なのだぞ?

 ーーオリジナルを作った本人を捕まえた時に逃げられないよう、あらゆる情報端末とは隔絶した造りにしてあるのだからな・・・・・・」

「ーーー!!!???」

「だから篠ノ之。安心していいんだぞ? お前は、あのバカ姉ではないのだからな? 代用品のサンドバック相手に本気などださん。・・・たとえ夢枕に立ち、弱っている私を背後からを刺してしまいましたと泣いて謝ってきたIS学園生と同一人物としか思えないお前であってもな・・・」

「い、一夏ーっ! 早く! 早く勝って強くなって戻ってきて私を助けてくれーーっ!

 お前の姉の被害妄想により私が殺されなくても、半殺しにされかかってしまっているのだぞーっ!?」

「もう遅い! 一度火を入れた拷問用IS室は生け贄を入れないと暴走する可能性だってある未完成品なんだぞ!? 覚悟を決めてあきらめるんだ! 武士らしく潔くな!」

「い・や・だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!

 私は・・・、私は・・・・・・、私はまだきえたくなーーーーーーっい(>ュ<。)ビェェン!!!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。