IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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話的には2話目の投稿です。
本来ならばセシリアを登場させる予定だったのですが、ギャグに走りすぎました。次話に見送らせて頂きます。
どっちかと言うと千冬姉さん回です。頭の悪い彼女とセレニアとの愉快なトークをお楽しみいただけたら幸いです。


第2話「IS学園1年1組、血に染めて・・・(笑)」

「えーと・・・・・・、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 俺が登壇した瞬間から生じている、クラス内に満ちた気不味い沈黙を換気するため、敢えて余計な物を省いた儀礼的で無難な挨拶をして頭を下げる俺。

 

 1・・・2・・・3。

 頭を下げた後、三つ数えてから顔を俺を待っていたものとは・・・・・・。

 

 

 

 シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

 

 

 

(さっきよりもスゴく気不味い沈黙キタ━(・∀・)━!!!!)

 

 思わず義妹が見ていたから一緒に視聴した深夜アニメの主人公みたいな勢いで(心の中限定でだけど)悲鳴を上げてしまった俺。

 

 えー・・・普通に対応したら「空気読めない子」を見つめる瞳でクラス中から凝視されるってマジっすかぁー? 正しい行動を選んだ人間が排斥されて、よく分からないし理屈にもなっていない屁理屈で行動している人間が支持を集めてしまう女尊男卑時代の在り方は、やはり間違っている。

 

「えー・・・とー・・・・・・」

 

 未だ終わってくれない沈黙を打破するため、必死に無い知恵を振り絞る俺。

 考えろ! 考えるんだ織斑一夏! どんな危機的状況にあっても必ず可能性は残されているはずなんだ!

 

 そうやって俺が懸命に試行錯誤しながら、「いっそのこと普段から考えついてるウィットに飛んだジョークでも披露してみるか?」と、後々冷静になってから考えたら自爆特攻120パーセント以上なアイデアを本気で実行しようかどうしようか迷い始めていた、まさにその時! IS学園の廊下から救いの声が舞い降りてきてくれたんだ!

 

 おお! この声は紛れもなく俺の義妹! 毎回よく分からない窮地には必ず役に立つ(逆に言えば、窮地以外の時には窮地を招くことしかしてくれないが)非常の人! 織斑セレニア!

 

 今こそ、義妹の真の力が試されるときが来た!

 

 

 

 

『おい、セレニア・・・じゃなかった織斑。早くしないか、HRはもう始まっているんだぞ?』

『ちょっと、待ってください義姉さん・・・じゃなかった織斑先生。入学の件は今さらどうにもならないからいいとしても、この制服はちょっと・・・・・・。

 なんか未成年の前では名前を出しちゃいけないお店の従業員さんみたいになってますが? 本当にこれでよろしいので?』

『いかがわしい表現で喩えるな! 国が運営している国立高校なのだぞここは!? ・・・仕方がなかったのだ、その制服についてはな。

 一夏・・・じゃなかった、織斑の入学は特例として認められたし国からの支援も得られたからデザイナー雇って1から図面引かせて間に合わせることも出来はしたが、お前はあくまで織斑のオマケ扱い。

 予算は降りないし、国立校の制服はお値段高めだし、今後の織斑の大学受験とか考えると貯蓄はいくらあっても困らないから節約したかったと言う懐事情も関係している』

 

 ・・・・・・あの、千冬姉? 俺は去年の一年間を進学しないで就職して少しでも家計を楽にしようとバイトに明け暮れてたんですけども・・・?

 

『なによりお前のスモールサイズな身長と、アメリカンサイズな胸は日本人が多いIS学園の制服と相性が悪い。外国人用のは逆にデカいし、専用機持ち達のは特注品だから参考にならないし、色々と大人の事情という奴が絡んでいるんだ! 受け入れろ!』

『む、胸の話はしないでくださいと何度申し上げたら分かっていただけるのですか!? 義理とは言え、姉妹の仲でもいい加減訴えますよ!? そして勝ちますよ!?』

『ふ、実に愚かな発言だなセレニア・・・じゃなくて織斑。世界で唯一の機関に勤める高校教員を侮るな! 多少の権力差くらい、一夏の稼いできた端金と同じくブリュンヒルデの名前で蹴散らしてくれるわ!』

『・・・ツッコんであげるべきところ間違えてるかもしれませんけど、織斑がいっぱいで分かり辛いですよね・・・』

『いきなり冷静になるなよ!? 教室につくまでは姉妹のノリで緊張を和らげてやろうとしていた私がバカみたいに見えるではないか!!』

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 ・・・ごめん、千冬姉・・・。俺と俺のクラスメイト一同は今の会話で千冬姉のことバカには見えてないけど、「バカな会話しているバカがいるな」ぐらいに思って聞いてたわ・・・。

 

 

『ええい! そんな些事はどうでもいい! 教室前についたから気配を消せ! 潜入するぞ! HR中に堂々と入っていってしまうとタイミング最悪な場面に遭遇するかもしれなくて気不味い展開になるではないか!』

『はぁ。そう言われましてもねぇー。気配を消すも何も、そもそも気配って言うのがなんなのかよく分かりませんので無理です』

『惰弱な! 最近のユトリはまったく・・・。いいか? よく見ていろよ? 気配を消すとはこうやるものだ!』

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? ・・・???

 

 あ、あれ。本当に気配がって言うか音が消えた・・・? もしかしなくても、今既に教室の中にいたりするのか?

 誰かの後ろに回り込んでたりとかの可能性は・・・・・・パァンッ! 痛い!? 何かにいきなり後頭部を叩かれた!?

 

「いっーーー!?」

 

 思っただけでなく声にも出して「痛い」と言おうとしたところ、あることの方が俺のが頭をよぎっていた。

 

 この叩き方ーー威力といい、角度といい、速度といい、とある人物を思い出す。俺のよく知っている、とある人物が同じような行動をしていたような気が・・・・・・あれ、記憶がダンダンと曖昧に・・・・・・。

 

「記憶をいじくる壺を突いた。今あったことの中からお前にとって都合の悪いことは全て忘れる。まだ弱さと幼さを残した今のお前の精神力では私の持つ《武装色の覇気》を込めた突き技には対抗できまい。

 ましてや、生まれ持った適正に恵まれてたからと言うだけでエリートだなんだと自惚れられる小娘どもには尚更だ」

「どっかの海賊王さんみたいな能力ですね」

「世界最強の剣士だからな」

「なるほど。スゴく説得力のあるご説明です」

「お前には効いた試しがないので最近だと微妙になってきてるのだがな・・・。一応、実力的には国家代表レベルの山田君でさえ精神的には脆くて弱いから効果は抜群なはずなのに・・・」

「そこでうたた寝してる、ほんわか笑顔っぽい人にも効いてなさそうに見えますけど?」

「・・・・・・これが、新しい時代を創り出す新世代の力というものか・・・・・・」

 

 ーーーードコカ 遠イトコロカラ 千冬姉ノ声ガ聞コエル気ガスルーーーー

 

「そして、私が放つ覇気の効果範囲内にいる間は手術台に乗せられた患者も同様。整合性がとれる時間は短くとも、その時間内であるなら記憶も意識も思いのまま・・・・・・。

 1、2、3・・・・・・シャンブルス!」

「ジャンゴじゃないんですか・・・」

 

 パァンッ!

 

 

 

「いっーー!?」

 

 衝撃で脳細胞が5千個くらい死ぬかもしれないらしい痛みに覚えがあった俺は、おそるおそる後ろを振り向くと、そこでーーー鬼が、でた。

 

「げぇっ、土方!?」

 

 パアンッ!  また叩かれた。ちなみにすっげぇ痛い。まるで脳味噌が揺さぶられて直接刺激を受けさせられてるみたいに。

 

「誰が新撰組、鬼の副長か馬鹿者」

「・・・いや、今のは俺の口から咄嗟にでてきた固有名詞にしては珍しく最適回答だった気がしてるんだけど・・・」

 

 いや、しかし待て待て。なんで千冬姉がここにいる? しかもセレニアまで連れてきて何がしたいんだ? ここは高校で、子供の三者面談しにくる小学校じゃないんだぞ!?

 

「・・・ねぇ、義兄さん? 今たいへん失礼なことを思ったり、なさいませんでしたよね?」

「気のせいだ」

 

 俺は嘘偽りの無い、澄み渡った清流のごとき清らかさで満ち溢れた眼で、俺にジト目を向けてくるセレニアの青い瞳を見つめ返す。

 先ほどの言葉に嘘はない。真実しかない。なぜなら俺は心の底からコイツのことを『小学生みたいなもん』だと信じているから。

 本心から正しいと信じている思いを言葉にするのに嘘はいらない、必要ない。思いを込めて伝えさえすれば、セレニアだってきっと分かってくれるはずだから!!!

 

 

「ジーーーーーーーー・・・・・・・・・」

 

 兄の気持ち、妹知らず。うちの義妹は反抗期。

 

 まったく、一度でも自分で選んだ答えはリスクを負ってでも背負い続けようとする頑固さは、いったい誰に似たのやら・・・・・・って、ちと待てい。

 

「ーーおい、セレニア。確認までに聞きたいんだが・・・・・・『ソレ』はいったい何なんだ?」

「・・・何についてでしょう? 義兄さん、私の着ている服に何か問題が?」

「いや、お前今ピンポイントで問題点を自分から指摘して・・・ああ、いやスマン。俺が悪かった。悪いのは俺だから、涙目で見上げてくるのはやめろ。罪悪感が凄まじいから。

 お前も俺と同じくらいには理不尽な理由と待遇でこの学園に来させられたんだってことは、よく理解できたから涙流すな我慢しろ。な?(ポンポン:頭を軽く叩く音)」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 恥ずかしさで真っ赤になりながらプルプル震えている義妹の思いは、男の俺でも理解できるレベルだったので素直に同情できた。これはヒドいと。

 

 

 義妹に降りかかっている理不尽の主たる原因は、彼女の体格そのものにある。

 俺はコイツのことを昔から「子供だ」と信じて疑わずにきたけれど、一部ながら局所的に盛り上がっている部位については姉には劣れども余人の追随は許さず、と表現する程度にはまぁ・・・認めてやっていた。大人になってたんだなと。

 

 とはいえ身長は昔も今も変わらない、ちみっこいスモールサイズを維持してる。

 髪型だけは自分好みにするために伸ばしたらしいが、髪が長くなることと背が伸びることとは科学的に関連は実証されていない。たぶん。いや、俺も詳しくは知らんけど。

 

 

 逆にIS学園の制服については、初の男子生徒入学と言うことで特別製のが仕立てられていて、俺はメジャー持ったオッサンから小一時間ほど要望などを聞き出され、合間合間に話を入れてくるIS関連の話題に引き込まれて気づけばいなくなっていた。プロの仕事人、マジ怖ぇ。

 

 その中で聞いた話によると、IS学園の制服は基本的にカスタム自由ではあるのだけれど、大本となる制服本体それ自体は学園と契約を結んでいる業者さんから買うことを義務づけられているらしい。

 IS操縦者の情報はどんなことでも部外秘だけど、身体データは特に重要だとかでそうしているのだとか。

 

 まぁ、確かによく考えてみたら超エリート校だしな、IS学園って。

 その制服がカスタムOKでオリジナルかどうか判別できなくなったら、学園関係者はともかくIS学園に詳しくない人たちには区別できなくなる訳だし、見目麗しい美少女ばかりが集まると評判のIS学園生徒が着ていたと偽って売りに出されたりした場合・・・・・・これ以上は考えたくない。

 

 

 

 そんなこんなな理由によって、IS学園の制服は入学時にメーカーさんから派遣されてきた人に注文いって、カタログの中にあるサイズの中から選んでいく方式をとっているとのこと。そしてIS学園の所在地は日本だから、日本人の生徒が一番多いとも。

 

 数が多いから種類とサイズは幅広いけど、その代わりとして数が極端に少ない物は書いてあっても作れない場合があるのだと、苦笑いしながら教えてくれたオッサン。

 彼によるとIS学園の制服は標準服とも呼ばれていて、一般的な日本人の標準より少しだけ大きめのサイズを意図的に選んで指定しているらしい。

 

 大きいなら改造するときに調整だけで済むのに対して、小さいと使用自体が不可能になるからなんだと。勉強になるなー。

 

 

 長くなったが、現在セレニアが着ているのは胸の大きさに合わせて一番デカいサイズのXLだった。外国人用のはダメだったのかと言おうとしたら再びオッサンの声が記憶のなから蘇る。

 

 学園に外国人は意外と少ない。その内の半数以上が専用機持ちか否かは別として国家代表候補だ。国の威信に懸けて送り込まれた選手たちの着る服に日本産だけを用いてる国は多くはなく、大半が自国内で作ってから持ってくる。国内メーカーが用意している数とサイズは体裁という意味くらいしかない。

IS発祥の地、日本はIS関連の話題で攻められたりすると滅茶苦茶弱腰になる不思議。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハダカIS学園制服(ぼそり)」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(じーーーーーーーーーーーーっ)」

 

 

 睨まれた。冷たい瞳でめっちゃ睨まれた。だからこそ目を逸らした。

 人は人の黒い部分からは目を逸らして、綺麗なところだけ見ていたいのだと言っていた、セレニアと見ていた深夜アニメキャラの台詞を思い出す。

 

 

 ・・・・・・しかし、これは流石にヤバいのではないだろうか? 兄的な視点で見てもどうかと思うレベルだぞ?

 

 なんで、スカート履いてないように見えるのに風紀違反認定されないの?

 小学生みたいな見た目で(胸以外)スカート履いてないハダカIS学園制服姿・・・。

 

 

 ーーーふむ。

 

 

「・・・・・・懲役は五年くらいで済みそうだな」

「落ち着きなさい、バカ兄。これから実質女子校で三年間を送るというのに、この程度で正常な判断力を失ってどうするんですか」

 

 誠に持っておっしゃる通り、返す言葉も御座いません。

 

 

『ーーブバはッ!?』

 

 ・・・そして何故だか鼻血の海に沈む、これから一年間をクラスメイトとして過ごさなくてはならない女子生徒ども。女尊男卑のIS社会でも世の中は腐ってる。主に脳が。

 

 

 

 

 

(・・・・・・身内故の親しみパワーに圧倒されて介入できない入学初日で初対面ばかりの女子高生一同な私達・・・・・・byIS学園1年1組女子生徒一同)

 

つづく

 

 

小ネタ

 

冬「他にも、IS剣術の覇者のみが使える、「世界不敗流」なんかが私の特技だな」

セ「相変わらず、人間やめちゃってる人ですね~」

冬「違う! 断じて否だ! 私は人でありながら人を越えた存在! 人類の限界を超越した超人間、織斑千冬とは私のことだーっ!!!」

セ「語呂悪っ!?」


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