IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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何から書いていいかよくわかんなかったんで、とりあえずは義妹ルートから。
それと、序章で終わらずに1話目まで書けましたのでシリーズとして正式に章分けしました。


第1話「織斑一夏のシスターズ(実姉と義妹)」

『ーーお昼のニュースをお送りします。先月、政府が発表した世界初の男性IS操縦者「織斑一夏君」のIS学園入学が先ほど午前中に行われ、彼は今日から晴れて国を代表するエリートしか入学を許されないIS学園生徒となりました』

 

 ポリ。

 ニュースを見ながらソファーに座り、お菓子を食べる自堕落な姿勢。一人でお留守番をしている子供にとって至福の瞬間です。この一時のために普段の規則正しい生活があると言っても過言ではないくらいに。・・・いや、大いに過言だな。まぁいいです。次行きましょう次。

 

 世間から絶賛注目されまくり中の我が義兄『織斑一夏さん』が、困ったような笑顔を浮かべながらテレビに映りギコチナい笑顔で花束を贈呈されてらっしゃいます。

 ○○大臣とかの偉そうな肩書きの割に、どっちが上でどっちが地位は下なのかさえ判然としない政界の大先生さんたちから次々と手渡しで握手と共に。・・・何の拷問なんでしょう、これ・・・。

 

『では、ここで女尊男卑時代のニューヒーロー、男と女の架け橋となってくれることを期待されている未来の大英雄のプロフィールを紹介しましょう。

 ーー織斑一夏君は小学生の時、第一回モンド・グロッソ優勝者でもある姉の織斑千冬さんによってIS適正の素養を見いだされ自分と同門の剣術道場へ。

 中学生の時、正義感に燃える一夏君は幼馴染みの少女を反女尊男卑主義者たちによる暴行から救い出し、学校からもお姉さんからも勇気と正義感を褒め称えられたことで自分の将来の行くべき道を見いだしました。「自分は世界の全てを守るため、悪を絶つ剣になるのだ!」と。

 その時の誓いを胸に抱き続けた彼が、日本の国土と国民と世界の調和を象徴するIS学園に入学したのはまさに運命としか言いようがありませんね』

 

 

 ーー義兄は『特別』です。なぜなら世界で唯一だから。

 世界に一人だけの織斑一夏君が大切にされるのは当然で、他に代わりも代理も後継ぎもいないから幾ら褒め称えても問題ありません。お金もかけ放題です。ルーデルさんがもらってた黄金柏葉剣付ダイヤモンド騎士鉄十字勲章は無理でも、国民栄誉賞ぐらいだったらポンと出せそうな気がします。安そうですからねアレは。

 

 世界でたった一人しかいないからこそ持ち上げる価値があり、持ち上げたところで彼以外の男性は頭数にしかならず、女性を幾ら侍らせようとも一人が君臨できるのは一国のみ。

 仮に義兄の元から同類さんが多く輩出されて大量生産してしまうようなら特別性は失われ、男女ともに“元”特別を生み出すだけの平凡な道場か何かにまで成り下がる。女性が持つ一方的な優位性は失われようとも、IS登場以前のような戦力面での一方的不利を被る心配はない。

 

 世は全てことも無し。平和が一番。

 女性だけしか入れない超名門エリート校に男性が受験もなしで入学させてもらえるような特権は、特別な人にだけ与えておけばいいんですよーだ。

 

 

 

「・・・・・・ですので特別な一夏義兄さんがIS学園に入学させられるには当然なこととしても、どうして私まで一緒のクラスに入れさせられなくてはならないのでしょうか? 千冬義姉さん・・・。私の適正値はたしかEだったはずでしたのに・・・・・・」

「一夏を特例として学園寮に入寮させるときに使ったお題目が『自宅にいるままだと警備がし辛く、他国に害されるかもしれない』だからだ。

 本人だけ安全な場所に移送しても、家族を残していったのでは安全保障もなにもあるかたわけ」

「・・・ぎゅむぅ・・・」

 

 家族を人質として本国の豪邸に住まわせたりするのは外交の定番です。一民間人としては非常に反論しづらい。

 

「それに何より、うちの学校の教員どもはエリート校らしく純粋培養された箱庭世界の住人たちばかりでな・・・。

 入寮が決定した一夏のために急遽増設中の個室が完成するまでの間は、女子との相部屋になるよう政府特命が下されたことを不思議に思わんバカばかりなのだ。・・・国立の高校で、しかも他国のVIPが大量に共同生活している学生寮に、年頃の思春期男子を一人だけだぞ?

 誰がどう考えたって、飢えたライオンを羊で満ちた牧場に放り込むようなもんじゃないか・・・・・・」

「あなた、ご自分の血を分けた弟さんをどういう目で見てらっしゃったんですか?」

 

 エロ本一冊隠し持ってたことのない、姉に対して“だけは”素直な良い弟さんではないですか、貴女にとっては非常にね。

 

 

「・・・アイツはな、未熟者のくせにどうしてか、妙に女を刺激するのだ。油断してると惚れてしまう、とでも表現すればいいのかな? 要するに・・・・・・」

 

 フッと、軽く息を吐いてから長い髪をかき上げ、切れ長の瞳で私の目を一閃すると。

 

「タラシだ。天然のな。今はまだ自覚してないし、性欲なんかも私の教育のおかげで上手く制御できているようだが、あの年頃は油断ができん。

 男子高校生などサカリのついた雌猫同然の生き物。性欲ダダ漏れでサルのようにしつこく女の尻を追いかけ回すのが定番の存在だ。そんな下劣な輩に私の一夏を貶めすことだけは誰がなんと言おうと絶対に許さん・・・・・・! 断固として殺す! 絶対にだ!!」

「貴女が一番お下劣な感情を弟さんに向けて貶めてる気がしますけどね・・・」

 

 嘆息しながら私が思い出すのは、義兄に代わって掃除をしていたときに偶然見つけてしまった義姉のマル秘ノート。

 

“小さい頃からテレビよりも運動の方に力を入れさせて、色恋沙汰や下ネタからは遠ざけながらも男らしくて優しい仕草や女性への労り、困っている人を見ると助けずにはいられない心。どんな悪にも立ち向かう勇気!

 そして何より大事な姉を敬い愛する気持ちを重点的に鍛えること!(この部分が一番重要だぞ!?)

 織斑千冬による理想の弟育成方針”

 

 

「・・・美人なんですから、女の妄想を弟で体現しなくても良かったでしょうに・・・」

「女が腐っていて何が悪い!? どこがいけない!? 弟は姉と結ばれてナンボの生き物だと旧世紀の薄い本にも書いてあっただろう!?」

 

 知らんし、わからん。赤の他人にんなこと聞くな。私は織斑家の養子になった覚えはあっても、変態兄妹のドロドロ愛情劇に組み込まれた覚えはねぇ。

 

「だいたい弟は姉のものだろう!? ならば、姉の物は姉の物、弟の物も姉の物。弟の存在そのものが姉の所有物だと言い切っても過言ではないのではありはすまいか!?」

「落ち着いてください、千冬義姉さん。声が大きすぎて外に漏れかかってますから」

 

 プリンセスメーカーの攻略本みたいなメモ書きを見つけたときと同じような勢いでしたね。「一夏に言ったら死ぬような目に遭わせる・・・っ!!」ーーあのときは怖かったな~、「殺す」ではなかった辺りに家族故の妥協を感じて余計にリアリティが増してしまう結果になったのは良かったのか悪かったのか。

 

 

「コホン。ーーまぁ、そんなわけだセレニア。お前もIS学園に来い。戸籍上、兄妹と言うことになってるお前らなら同じ部屋でも誰一人として反論に説得力はもたせられん。

 お前は・・・・・・兄の貞操を色気付いた乳臭い女どもから守り抜くのだ! いいな!?」

「・・・・・・そんなブラコン台詞を王様みたいな口調で言われましてもね・・・・・・」

 

 いやまぁ、結局最後は引き受けるんですけどね? 法律が云々いうよりも先に私自身が恩を感じている姉弟二人への恩返しになるわけですから喜んでと言ったところです。

 

 とは言え、自信なんて欠片ほどもあり得ないんですけどねー。

 

 

「大丈夫だ、問題ない、安心しろ。信じる者は救われるのだからな!」

「・・・・・・私が救って守る側じゃなかったんですかい・・・」

 

 いまいち頼りにならない世界最強の姉と共にIS学園へ。

 

 

 次回、「小さくてショボい攻防戦(仮題)」に続く

 

 

しょうもないサブタイトルネタ候補

 

「束姉の嘲笑」

「光るメガネ」

「俺は同世代の男友達が一人しかいない」

「青じゃなくて黄色くて陽気な騎士パイルバンガー」


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