IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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昼頃に私の書くエグイのが読んで見たいと言われましたので、前々から書いてみたいと思っていた作品を書いてみました。即興で完成させたので戦闘シーンまでは行きませんでした。

もしも私が幼女戦記の設定でIS戦記をやったらこうなってただろう、な作品です。
神様への悪意しかない話になってますので、お気を付けて。


少女IS戦記

 ーー気がついた時、私は白い世界に立っていました。

 

 私の命は本来、駅のホームで電車が来るのを待っていたところを短絡的な感情論に身を任せて人を殺める無能な屑の手によって線路へと突き飛ばされて、その瞬間に落命していたはずなのだが・・・。

 

 

「然り。御主らは、本当に度し難い。何故それほど人間性を狂わせながらも平然と息をし、生きていられるのだ? 貴様等には恥という概念が存在しないのか? まったく以て度し難い生き物だよ、お前たち人間という生物は」

「・・・失礼。どこのどちら様でしたかな? あいにくと私に、時代錯誤な誇大妄想に取り付かれたボケ老人の知り合いなどと言う恥ずかしい生き物は存在していないはずなのですが?」

 

 無礼には無礼で返すと言う至極まっとうな私の返しだったが、痴呆症のご老人は不満そうであった。

 然も有りなん、と言うべきだろうか? 論理的な思考の出来ない感情的な人間と言うものは、得てして自らに都合の良い理屈だけを信じたがるものだ。歳を取り、頑迷になって知能も低下しているであろう御老人ならば尚の事。

 ここは、若く柔軟な発想が出来る若者こそが優しく親切に間違いを正し、より良く真っ当な社会人の道へと戻して差し上げるのが、模範的で誠実な道徳心に溢れたサラリーマンの歩むべき正道だろう。

 奇を衒った展開が嫌いなわけでは決してないが、やはり王道こそが正道であり正統派を地で行く正しくて真っ当な社会人が歩む唯一無二の道であるべき物なのだ。

 

「御老人、どこの老人ホームから逃げ出してきたのかは存じませんが、その様に奇天烈な格好をなさったまま街中を歩かれるのは如何なものかと考えますな。

 あまりにも度し難く受け入れがたい、時代錯誤で反動的な非民主化を唱える復古主義者を連想させられてしまう。こう言ってはなんですが、実に醜い。醜悪きわまる美的センスだ。

 ご家族に迷惑をかけて家から放逐されないためにも、早急な対処を推奨させていただきますよ」

 

 私の誠意溢れる親切で礼儀正しい対応を以てしても、老人の頑なさを解すまでには至らなかった。

 まぁ、それも仕方のないことではある。すべての人間は、等しく自我を備えて生きるもの。自らの信じ貫く正義が唯一無二と思いこみ、人生全てをかけて他者へと力付くで押しつけることこそが、人類史における主要な行いの全てと言っても過言ではない。

 斯様に醜く醜悪きわまる歴史を歩んできた人類が、こと現代にいたって戦争を放棄した民主主義国家日本を生み出したのは必然的で奇跡的な進化の終局的到達点、その一つの形であると私は深く愛し、また信仰するものである。

 

「愚かな! 貴様、寄りにもよって私ではなく人間が生み出した道具の一つを信仰していると言うのか!?

 醜い!余りに醜く度し難い! 貴様のような不信心者が人間の心に魔を齎すのだ!

 悪魔め! 邪教徒め! 貴様には、輪廻に戻す必要を認めない! 即刻! 今すぐにでも! 地獄へと叩き落として未来永劫痛みと苦しみにのた打ち回らせるべきなのだ!」

「・・・『輪廻』? 『地獄へ落とす』?

 ・・・・・・・・・もしや貴方は、神と呼ばれる存在なのですか?」

「ようやく気付いたか無知無能きわまる愚か者めが!

 だが、もう遅い! 貴様には選択肢などやらん! 時間も与えない!

 今すぐ、この私自身の手によって地獄の最下層へと叩き落としてやーー」

「・・・驚きました。まさか信じ、崇めさえすれば“道具にも命が宿る”奇跡が起こりうるとは・・・」

「・・・・・・・・・なに?」

 

 訝しむ様に眉根を寄せる“ガラクタ”に、私は子供でも理解できるレベルの説明を懇切丁寧に施して差し上げる。如何に“作られた存在”とは言え、人類が数千年にわたって利用してきた“愛着のある道具”なのだ。粗略に扱っては、模範的社会人として信頼に関わる。目上を敬うのは社会人として当然のマナーだ。無碍にしてはいけない。ルールは守るためにこそあるのだから。

 

「人が人を支配するとき、もっとも有効な手段とはなんでしょうか?

 力で脅す? ふむ、確かに。即効性があるし、なにより分かり易くて単純だ。権力者には大変に魅力ある考え方でしょう。

 金で飼い慣らす? ふむ、これもまた一理ある。金銭は人類が生み出した最高の発明品であり、また全ての人に価値が存在する唯一絶対にして世界を動かす法だ。これを握るのは事実上、その国の人々全ての心臓を掴むことに他ならない。

 どちらも一長一短があれども大変に有効で、しかも実績を積み重ねてきた素晴らしい人類の文化だ。私としても決して否定すべきものではないと考える。

 だが、しかしーー」

 

 そこで一旦、私は言葉を区切ってから続ける。

 

「しかし、しかしです。本当に効率的で金もかからず武力さえ最低限しか必要のない、民衆支配の道具なら他にあるではありませんか? そうでしょう?

 それさえあれば、その名前さえ唱えれば、全ての悪行は正当化され神意となるのです。なればこそ人類はそれを崇め、崇拝し、時には祭り上げてもやるのです。

 自分たちに利益をもたらす、最高の“金の成る木”として崇拝“してやるため”に」

「貴様・・・貴様・・・貴様貴様貴様貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

「そう。貴方ですよ、神と名付けられた人類支配の道具よ。

 人類が貴方を崇め続けて数千年、ようやく貴方にも自我が芽生えたのは生みの親の一員として喜ばしい限りだ。歓迎すべき事柄だ。人類の文明はまた一段、階梯を上れたのだから。

 やがては目指すべき到達点へ辿りつける日も、遠からず必ず訪れることでしょう」

「貴様! この期に及んで何を企んでおる! これ以上、何を求めるというのだ!」

 

 御老人ーーいや、御老人の姿で産み落とされただけの道具がーー必死の表情で私を糾弾し、詰問する。

 額には青筋が浮かび上がり、頭上からは湯気が立ち上る。まるでコメディ映画のギャグキャラクターが如き醜態に、私は思わず吹き出しそうにったのを慌てて堪える。

 いけないいけない。相手はこれでも真剣になっているのだから、私も表面上ぐらいは人権に相手をして差し上げなくては社会人として周囲に顔向け出来ない。

 体面と面子は、組織を存続させるには必要不可欠なものだ。見栄えばかりとバカにする輩こそ愚か者の極地なのだ。有益な社会人はそれを知っている。

 知らないのは無能きわまる社会人と、知識の積み重ねを持たない道具たる老人ぐらいなものだろう。

 

 道具は唾を飛ばして私の肩を掴み、前後左右へと振り回す。

 

「欲深な生き物め! 強欲な俗物め! 生まれ落ちた瞬間より正しき心を持ち合わせていない悪の権化め!

 貴様の狙いとは何だ!? そうまでして貴様はいったい、何を目指すと言うつもりなのだ!?」

 

 

 

 

 

 

「全人類社会の資本主義経済化。

 アカどもと一緒に、聖職者を名乗る浪費をしないで経済にも還元する気のない無駄飯ぐらいどもを抹殺し、人類社会の浄化を図ります。

 古くさい迷信に彩られた旧体制を一掃し、資本主義を掲げる新しい新世界の到来を目指す。それが私の夢であり、目指すべき目標の最終到達点ですよ御老人」

 

 

 

 

 

 

 

「なん・・・だと・・・?」

 

 私の持つ“ごく真っ当な望み”を聞いて、なぜだか老人は驚愕の表情を顔に張り付かせたまま硬直してしまう。

 不思議には思うが、それを問うより先に私は、自身の着ているスーツの乱れを直すことを優先した。

 いつ如何なる時も身嗜みには気を使うべきだ。それが模範的な社会人として守るべき礼節と言うもの。会社に仕える経済社会の下僕として守るべきマナーだ。この程度の自体に動転して忘れ果てては情けないにも程がある。

 

「狂っておる・・・狂っておるぞ! 貴様はもはや正気ではない! 人間として・・・いや、生物として既に道を間違えた存在だ! この世界に生きていてはいけない者だ! 生かしておけば世界を滅ぼす者だ!

 許せない・・・貴様だけは絶対に許すわけにはいかんぞバケモノめが!

 貴様を地獄には落させはしない! そんな事をしてしまえば地獄の悪魔どもを率いる第二の悪魔王サタンを誕生させる結果を見るは明らかなのだからな!」

「ほう? たしかサタンとは、イギリス最大の詩人ジョン・ミルトン氏の作品『失楽園』の登場人物でしたな。

 なんでも民衆に無知であることを強要して圧制を敷く専制的な独裁者の魔手から人民を救済するため、自らの地位を投げ出してまで戦った英雄の令名に敵手が貼ったレッテルでしたか。

 斯様にも偉大な人物と同列に並べていただけるとは恐れ多いと言いますか、なんと言うべきなのか・・・ははは、柄にもなく照れてしますね」

「きぃぃぃぃぃさぁぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!!!!!!」

 

 ふと気付いて周囲を見渡せば白かった世界は黒く染まり、空は血のように紅く変色し、大地は枯死したかのように灰が降り積もっていた。

 

 ふむ・・・。この様に非科学的な現象が現実で起き得るとは到底思えない。

 だからと言って超常の存在なら誰しも同じ奇跡が可能だなどと思いこむのは危険きわまる。人は慎重に事を運ぶべき生き物なのだから。まずは相手の正体を推し量る必要性があるだろう。

 

 彼の御老人は神を名乗られた。果たして真であろうか?

 ーー否、断じて否だ。自らを神だなどと名乗る俗人は、一人の例外もなく詐欺師であると見るべきだろう。故に神を名乗る老人は神ではない。ーー以上、証明終了。

 

 では、果たして彼は何者なのか?

 現実的に考えて超常の力を持つ存在の代名詞と言えば、神か悪魔のどちらかだ。そして今わたしは自らの持つ常識によって彼が神などではないことを実証し終えている。

 ならば必然的に彼は悪魔となるのだが、これも些か短絡的な考えだとのそしりを免れまい。何故なら世界は無数の可能性と選択肢に満ちあふれているのだから。

 

 彼が神ではないと確定していたとしても、それは=彼が悪魔であることを意味するものではあるまい。なにより善なる存在『神』ではないなら悪なるもの『悪魔』だと決めつけるのは、かつて人類が犯した十字軍の愚行を再現することにも成りかねないだろう。

 

 無知と狂信と自己陶酔と非寛容によって生みだされた歴史上の汚点。人類を愛し、尊敬し、敬愛する模範的な社会人であるこの私が同じ轍を踏むなど許されるべきではない。

 その様に無知で無能な蛮行は、学習するという言葉を持たない時代に産み落とされた旧時代の老廃物たる神と呼ばれている道具にでも押しつければ宜しかろう。

 

「き、きさ、貴様、貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 ふむ? なにやら顔色が悪いが持病の癪でも起こしているのだろうか? 病院に連れて行こうにも住所不定無所の老人ホームから脱走してきた痴呆症の老害などを連れて行って、イヤな噂でも立てられたら迷惑きわまりないのだが・・・。

 

 

「結構だ! どうあっても反省しないと言うなら、相応のペナルティを科すほかにない!

 本来の世界とは異なる在り方に進んだ可能性の世界に転生させてやる!

 非科学的な世界で女に生まれ、戦争を知り追い詰められるがよい!」

「それは流石にちょっと困りますね・・・。出来れば、お考え尚しては貰えないでしょうか? 私にもいろいろ予定というものが・・・」

「今さら媚びても遅いわ戯け!

 貴様の犯した罪の重さに比べたら軽すぎる罰なのだから有り難く思え!」

「ああ、いえいえ違います。そう言う意味ではありません。

 ただ私としましては貴方の社会更正の方を優先した方がいいと考えただけです。

 よろしければ転生させられる前に病院まであなたを送って差し上げたいのですが、それまで刑の執行を待っては頂けませんか?」

「☆×♪○△□!!!???(もはや人の話す言語ではなくなったので表記不能)」

 

 

 

 

 

おまけ展開。

シリアスに書いたら疲れたので、ここからはギャグで行きました。適当にお楽しみください。

 

 

 

 ーーとまぁ、そんな感じの展開で私は今ここにいるのだがーー。

 

 

「中佐殿、帝都ベルリンの大総統官邸から入電であります。

 本日、大総統閣下はジャーナリスト100人の前で演説を行い『大総統令三〇六六号』にご署名されました。

 我が艦には「『第二次ゼーレーヴェー作戦』状況を開始せよ」と・・・」

「・・・やれやれ、あまりやりたくない作戦なんですけどね。致し方ありませんか」

 

 正直気乗りはしませんが、これも任務です。やむを得ません。軍人は組織の命令に従うものですからね。

 

「アハトォウン(傾注)」

 

 ガッ! と、打てば響く早さで私の前に居並ぶ兵士のみなさんが整列し、一斉に敬礼を返してきました。

 それを見据えながら私はやはり気乗りしないまま億劫そうに、

 

「ーーさて、皆さん。準備の方はどうですか?」

 

 そう確認を取りました。

 

 それに対する答えは以下の通りです。

 

 

「地上走行仕様ドーラ型IS『ザメル』準備よし!」

「接近白兵戦用陸戦型IS『イフリート改』も問題なしです!」

「総旗艦『ヘルヘイム』を中心に、飛行空母『デウス・エクス・マキーナ』、空中戦艦『リヴァイアサン』および『ビスマルクⅡ世』も所定の位置に配置完了! いつでも攻撃を開始できます!」

 

 それらの囂々たる声を聞き流しながら、私は傍らに立つ先ほど本国からの電報を持ってきてくれた長い銀髪と小柄な体躯を持つ副官に視線を向けると、彼女は心得てますと言わんばかりに力強い首肯を返してくれました。

 

「無論、中佐殿が直卒される我が新鋭騎団『シュワルツ・ハーゼ』は常時戦闘準備を完了しております。

 ご命令があり次第、いつ何時だろうと忌々しい倫敦を地獄に変えてご覧に入れますが如何されますか?」

「そう言うのは第三次まで取っておいてください。今回私たちに与えられた役割はイギリス本土への上陸と橋頭堡の確保。そして釣られて出てきた敵IS部隊の殲滅だけですよ。その辺は徹底しておいてくださいね? ボーデヴィッヒさん?」

「はっ! 肝に銘じます中佐殿!」

 

 銀髪の少女士官に敬礼されながら、私は旗艦の艦橋に広がるスクリーンの前へとやってくると。

 

 

 

「あんまり言いたくないんですが・・・・・・『我らに勝利を』」

 

『ジーク・ハイル!!!!!!』

 

 

 

 

 威勢のよい声を上げる直属の一〇〇〇人の部下を前にして、私はなんだか色々と面倒くさくなってきたので隣に立ってる軍服を纏っていない私服の男に声をかけることにしました。

 

 

 

「・・・貴方が知っていると言っていた既知世界はここまでですか?

 私の友を自称している魔術師さん?」

 

「然り然り、また再び出会えた幸運に感謝を。

 我が友にして、私の愛する新世界を治める女神よ。

 今生でこそ、私は君のために世界全てを捧げさせて見せましょう。

 その為にも今の時でここまでの流れは崩しました。ここからは好きにされるが宜しいでしょう。ご存分に」

 

「はぁ・・・。では、とりあえずは英国に終わりを。

 ブロークン・イングリッシュ(崩れ去る英国)の始まりです」

 

 

 

『神聖アーリア帝国、ばんざーい!

 大総統閣下、ばんざーい!

 帝国軍IS配備大隊『ラスト・バタリオン』指揮官セレニア・オルタナティブ中佐、ばんざーいっ!!!

 中佐の作戦指揮により、地獄を創れぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!』

 

 

 

 

 

「私は君を愛している。

 故に我が愛しき女神よ、貴方が君臨するのに相応しい場を、この私が用意しよう。

 不要になった神を処分するため、余計なワンクッションを置いたのだ。もはや私に迷いはない。例え贋作であろうとも、私は君を心から愛する準備はできている。

 君が神を殺したその時にこそ、私が作り出した君と私の永遠が始まるのだから」


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