ディアベルが死の運命を覆そうと奮闘するようです 作:導く眼鏡
ディアベル「引き籠ろう」
軍「税金納めろ」
ディアベル「まぁ落ち着こうか」
軍「誰だお前は!?」
ディアベル「俺はディアベル、職業は気持ちナイト『やってました』」
「お、覚えてろぉおおおおおおおおおおお!!」
やぁ、俺はディアベル。職業はナイトやってました。
突然だけど、俺はついさっき噂に聞く軍の連中を追い払った所だ。
彼等は俺達下層のプレイヤーから搾るだけ搾り取って何がしたいんだろうね?
下層中層のプレイヤーが攻略組に貢ぐのは当然の事? 意味が分からないよね!
当然、俺も分からない。それはそうと話が突然変わるけど、軍の連中を撃退した俺は、この日教会の子供達と一緒に夕食を食べる事になった。
「兄ちゃんかっけー! 俺もディアベルの兄ちゃんみたいになるんだい!」
「本当にありがとうございます、ディアベルさんには何とお礼を言ったらいいか……」
「いや、気にしなくていいよ。俺が勝手にやった事だからね」
「ですが、あの騒動でディアベルさんは……」
「確かに、軍の連中に目をつけられるだろうけど心配はいらないよ。なんと言ったって俺はナイトやってたから!」
「ふふ、SAOにジョブシステムはありませんよ?」
「知ってるよ。これは俺なりのこだわりだからね」
確かに、今回の騒ぎで軍の連中を追い払った俺は間違いなく軍に目をつけられるだろう。
しばらくははじまりの街から離れて中層で活動した方が身の為だし、活動の拠点を中層に移そう。
サーシャさん達の事が心配だから、ちょくちょく様子を見に戻るつもりだけどね。
「本当に、行ってしまうんですね……」
「あぁ、どこかの層で落ち着ける所を探す予定だよ。時々子供達の様子を見に来てもいいかな?」
「あ、その……是非来てください! 待ってますから!!」
「ディアベル兄ちゃん、また来てくれるよね?」
「お兄ちゃん、いかないでー!」
「もう……皆、そうやって泣きついたらディアベルさんが困っちゃうわよ」
「いいんだ。子供達にも元気に育って欲しいし、これだけ懐かれているなら俺としても嬉しいからさ。それじゃあ、行ってくる!」
「はい……いってらっしゃい、ディアベルさん」
「「「「「いってらっしゃーい!」」」」」
という訳で、俺ははじまりの街を離れてどこか別の層で落ち着ける場所を探す旅に出た。
色々な層で様々な物件を見て回りつつ、軍らしき連中からは隠れる日々だったけど寂しくはないぞ。
寂しくない寂しくない、それより物件探しだ。本当なら一人暮らし用の小さな部屋でもいいんだろうけど、やっぱりマイホームが欲しい。
どこか静かな所でのんびりと暮らせる所に家があったらいいんだけど……と、知り合いの鍛冶屋に相談しているとこんな話を聞いた。
「それなら、22層とかどうなの? あそこは迷宮区にでも行かない限りほとんどモンスターが出ないし、結構のどかな所よ」
そのアドバイスを元に、俺は自分が求めるマイホームを探し続けた。そして、見つけた。
「これだ……この家だ!」
今、俺の目の前にあるのは22層の森の中、湖のすぐ近くに建っている一軒のログハウスだ。
景色もいいし、中もかなりのものだ。落ち着けるし、何より気に入った。
値段を見てみるとやはりいい物件なのか物凄く高い。そこで俺は、この家を買う為にひたすらクエストをこなしたり狩りを行ってコルを貯める事にした。
装備の新調とか、消費アイテムの補充、食事等でもコルは消費されてしまう為収入はそれを軽く上回る位はないと話にならない。
当然、下層では効率が悪いので安全マージンを確保できる範囲で出来るだけ上層のフィールドで稼ぐ、という事を続けた。
そうして、貯金を続ける事約3ヶ月近く。中層プレイヤーとしては、相当なレベルになっていた俺は迷いの森と呼ばれる所に来ていた。勿論ソロでだ。
この森は地形が変わっていくらしく(情報屋に聞いただけで、今まで深入りしていなかった為詳しくは知らない)迷えば最後、街に戻るのには一苦労するらしい。全然最後じゃないとか言わないでくれ。
いきなりこんな話を何故しているのかと言うと、それは俺が珍しく深入りしすぎて迷ってしまったからだ。
うん、安全マージンを充分とかいうレベルじゃない位確保しているからって調子に乗りすぎたよ。
ビーターの噂が流れているキリト君はレベルが70を超えていてぶっちぎりだとか言われているから彼ら攻略組には遠く及ばないけどね。
ちなみに今の俺のレベルは59だ。貯金の為にレべリングをしていたら、気付けばこんなレベルになってしまったよ。
お金も大分貯まって来て、今受けているクエストを終えればマイホームを買える金額に達する。
目的のアイテムは未だ見つからず。このまま帰る訳にはいかないからとマイホームの購入を焦ってもロクな事にならない。現に俺は今、哀しい事に迷子だからね!
さて、そんな状況の俺だけど目的のモンスターを探して森を彷徨っていると話し声が聞こえて来たので様子を見る事にした。
「……、……!」
「…、………」
「…………!!」
さて、話の内容はよく聞こえないが(これ以上近づくと索敵に引っかかってしまいそうだから迂闊には近寄れないよ)見た所、パーティ内で揉め事が発生しているようだ。
おばさんらしき女性と、教会の子供達と大差無い年齢らしき少女が揉め事の中心らしい。
よく見えないが、少女の傍を小さなモンスターが飛んでいる。もしかして、噂に聞くビーストテイマーという奴なのだろうか?
おっと、少女の方がパーティを離れて行ってしまったようだ。
パーティはおろおろするだけで、彼女の事を追いかけようとしない。
揉めていたおばさんの方は感じが悪い、というより前回味わった人の闇に近い感じがするので個人的に近づきたくない。
それより、少女の方が心配だ。この森の危険度はソロで絶賛迷子中の俺ならよく分かる。
自分で言うのもなんだけど、生半可な実力ではソロ攻略は難しいと断言できる。
だからこそ、このまま少女を放っておいたらとんでもない事になる気がする。
そう思った俺は少女の方を追いかけた。
まぁ、元々距離が大分あったから途中見失ってしまった訳だけど。
危なくなったら転移結晶で帰ってくれればそれはそれでいいのだが、27層では結晶無効化エリアなるものがあったらしい。
そんなものが発動してしまえば無事に帰れる保証はどこにもない。
責めて彼女が無事街に帰るまでは見守っていたいと考えて探していた時だった。
「ピナぁあああああああああああああああ!!」
少女の悲鳴が聞こえた。
方向は向こう、ここから結構近い。
「くっ、間に合ってくれ!!」
……side シリカ……
迂闊だった。迷いの森探索途中でパーティを抜けたあたしは、迷った挙句3匹のドランクエイプと戦っていた。
ドランクエイプは迷いの森の中でも特に強いモンスターだが、安全マージンを確保していればなんとかなると思っていた。
だけど、ドランクエイプのHPを削れば別のドランクエイプが襲ってきて、その間に攻撃していたドランクエイプが回復してしまう。
そんな消耗戦を繰り広げ続け、回復アイテムが底をついてしまった。
HPの消費も激しく、後一撃か二撃攻撃を受けてしまえば死んでしまう程に追い詰められていた。
こんな事なら、責めて街に戻るまでパーティを抜けるんじゃなかった。
そう後悔するが、もう遅い。
ドランクエイプの攻撃があたしを襲い、その攻撃からピナが身を挺して庇った。
必死にピナの元へ行き、死なないでと叫ぶが……ピナは、その場でポリゴンと化して砕け散ってしまった。
あたしのせいだ。 あたしのせいで、ピナは……
ピナは、あたしにとって何よりも大切な存在だった。ピナが一緒にいてくれて、とても心強かった。楽しかった。
なのに、そのピナは私の目の前で死んでしまった。
ピナと共にフィールドに出るようになって、竜使いのシリカなんて呼ばれ出して舞い上がっていた。
その慢心が、ピナを死なせてしまった。
目の前では、ドランクエイプがあたしめがけて武器を振り下ろそうとしている。
あれをまともに受ければ、あたしのHPはすぐにでも0になって、死んでしまう。
逃げなきゃいけない、けれど体が動かない。
このまま死んで、ピナの後を追う事になるのだろうか……それも悪くないかもしれない。
そんな事を思う自分が、心のどこかにいた。そのままあたしは、目を瞑って訪れるであろう最期を待った。
…………何時まで経っても、あたしを襲うであろう衝撃はやってこない。
もう、死んでしまったのだろうか? 周囲は先程までと違ってやけに静かだ。
不思議に思ってあたしは目をゆっくりと開ける。するとそこには……
「大丈夫かい、君?」
青い髪の、騎士みたいな人が目の前に立っていた。
ディアベルが第一層の攻略に参加していない、この時点でキバオウ達がディアベルの意志を引き継いでいなかったりキリトが第一層でディアベルの遺言で心を動かされる事もなかったので大分原作からはずれてくる。
バタフライエフェクトって真剣に考えると恐ろしいものですね。