俺、アークプリーストです   作:アリオス@反撃

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武器を新調した

 

 

モミジとめぐみんが冒険者ギルドに向かってると、何人かの冒険者が待ち伏せていた。

 

「………お」

 

「おい、来たぜ」

 

二人の姿を見るなり、冒険者達はニヤリと笑った。

 

「も、モミジ……?」

 

若干、怯えるようにモミジの背中に隠れるめぐみん。囲んだ冒険者達はモミジに言った。

 

「なぁ、頼む。俺たちのギルドに来る気はないか?」

 

「…………へっ?」

 

ぽかんとするめぐみん。

 

「報酬の山分けはお前が一番多く取っていい。だから……!」

 

「お前ほどのアークプリーストはそういない。だから……!」

 

懇願され、めぐみんは不安そうにモミジを見た。が、当のモミジは無表情で聞き返した。

 

「女は?」

 

「………いや、いないが」

 

「じゃあ論外」

 

「ま、待ってくれ!」

 

「今度やるクエストはお前の力が必要なんだ!」

 

「何度も言わせるな。俺はもうパーティを組んでる」

 

「女はいないが……金なら出せる!」

 

「いや、しつけぇ。明後日の方向に殴りとばすぞ」

 

そう言うと、男達は怯んだ。明らかに自分達より上のレベルの奴らの誘いを「もうパーティを組んでる」の理由で断るモミジに少しめぐみんは感動した。それだけ、自分達を大切に思ってくれてるのかと思ったくらいだ。が、

 

「こうなったら、奥の手だ……おい!」

 

「おう!これでもか!」

 

男の一人が鞄から出したのは、ハードなエロ本だった。直後、モミジが固まる。

 

「…………ッ⁉︎」

 

「プレミア物の高級品だぜ。これでも断るか?」

 

「良いだろう。行こう……」

 

男前な顔でそう言いかけた時、後ろからめぐみんがモミジを殴った。

 

「ハッ!しまった……危うく女のいないパーティに参加するところだったぜ……」

 

「チィッ……!」

 

「仕方ねぇ……なら、この袋とじは俺たちが開けちまっていいんだな⁉︎」

 

「なっ……⁉︎ふ、袋とじだと⁉︎」

 

「モミジ」

 

「ああ、言ったろ?プレミアモンだってな」

 

「クッ……!袋とじ付きなんて……汚ねぇぞ!」

 

「モミジ」

 

「ふはははは!この無限の可能性が秘められた袋を貴様は諦められるか⁉︎」

 

「た、確かにエロ本の袋とじは無限の可能性を秘めている……まるで可能性の獣だ……!」

 

「モミジ」

 

「今なら、こいつをお前にくれてやる。どうだ?悪い話じゃねぇだろ?」

 

「いいぜ。乗っt……」

 

「『エクスプロー……」

 

「やっぱ無理、じゃ」

 

回避した。

 

 

 

×××

 

 

 

「はぁ⁉︎他のパーティーに誘われてた⁉︎」

 

さっきの出来事を全員に話したら、アクアが声を上げた。

 

「そうです。しかも、危うく行きそうになったんですよ。しかもエロ本に釣られて」

 

「うわあ……最低ね」

 

「るっせーよ。ちゃんと断ったんだからいいだろうが」

 

「そういうことって、よくあるのか?」

 

ダクネスが真面目な表情で聞いた。

 

「たまにな。まぁ、可愛い女の子いないし入んないけど」

 

「………と、いうことは私達のパーティは可愛い女の子がいるということか?」

 

「そうなるな」

 

サラッと答えられ、アクアもダクネスもめぐみんも若干照れたように頬を染めた。

 

「外見だけはまともだしなお前ら」

 

「だけとは何ですか!」

 

「中身だってまともよ!」

 

「そんな言葉責めしなくても!」

 

「お前ら、一回カウンセリングしてもらえよ」

 

呆れ声でモミジが言った。

 

 

 

×××

 

 

 

キャベツ狩りから数日、冒険者達に報酬が支払われた。

 

「カズマ、見てくれ。報酬がよかったから、修理を頼んでおいた鎧を少し強化してみた。……どう思う?」

 

嬉々とした様子でダクネスが和真に自分の鎧を見せる。

 

「なんか、成金趣味の貴族のボンボンがつけてる鎧みたい」

 

「……カズマはどんな時でも容赦ないな。私だって素直に褒められたい時もあるのだが……」

 

ショボンと肩を落とすダクネス。

 

「今はお前より酷いのがいるから、構ってやれる余裕はないぞ。お前を超えそうな勢いの変態をなんとかしろよ」

 

「ハァ……ハァ……。た、たまらない、たまらないです!魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色艶……。ハァ……ハァ……ッ!」

 

めぐみんが新調した杖を抱きかかえて頬ずりしていた。ダクネスがキャベツを引きつけ、めぐみんがそれを一掃することでかなり報酬を得ることができた。

 

「モミジはぶきかえなかったのか?」

 

「金ほとんど取れなかったしな」

 

モミジとアクアはほとんどもらえなかった。モミジは他の冒険者からキャベツを奪ったことがバレだから。アクアは、その理由について今まさにギルドの受付カウンターに文句を付けていた。

 

「なんですってえええええ⁉︎ちょっとあんたどういう事よっ!」

 

和真、めぐみん、ダクネス、モミジの四人は揃ってため息をついた。嫌々ながらも、そっちを見ると、アクアがギルド受け付けのお姉さんの胸ぐらを掴み、いちゃもんをつけている。

 

「何で五万ぽっちなのよ!どれだけキャベツ捕まえたと思ってんの⁉︎十や二十じゃないはずよ!」

 

「そそ、それが、申し上げにくいのですが……」

 

「何よ!」

 

「………アクアさんが捕まえてきたのは、ほとんどがレタスで……」

 

「………………なんでレタスが交じってるのよー!」

 

「わ、私に言われましてもっ!」

 

どうやら、今回の報酬と自分の働きに納得がいかないようだ。すると、アクアはにこやかな笑みで和真に近付いた。

 

「カーズマさん!今回のクエストの、報酬はおいくら万円?」

 

「百万ちょい」

 

「「「「ひゃっ⁉︎」」」」

 

アクアだけでなく、めぐみん、ダクネス、モミジも声を漏らした。今回、和真が収穫したキャベツは、たくさん経験値の詰まったものが多かったようだ。

 

「カズマ様ー!前から思ってたんだけど、あなたってその、そこはかとなくいい感じよね!」

 

「特に褒めるところが思い浮かばないなら無理するな。言っとくが、この金は使い道決めてるからな、分けんぞ」

 

「カズマさあああああああん!私、クエスト報酬が相当な額になるってふんで、この数日で持ってたお金、全部使っちゃったんですけど!ていうか、大金入ってくるって見込んで、ここの酒場に十万近いツケがあるんですけど!今回の報酬じゃ足りないんですけど!」

 

半泣きになって和真にしがみつくアクア。

 

「知るか、そもそも今回の報酬は『それぞれが手に入れた報酬をそのままに』って言い出したのはお前だろ。と言うか、いい加減拠点を手に入れたいんだよ。いつまでも馬小屋暮らしじゃ落ち着かないだろ?」

 

ぶっちゃけ、和真は魔王討伐をほぼ諦めていた。モミジがいるとはいえ、攻撃の当たらない前衛に役に立たない女神、魔法を一発しか放てないアークウィザードに最弱職の自分、どう足掻いても無理ゲーだ。

 

「そんなああああああ!カズマ、お願いよ、お金貸して!ツケ払う分だけでいいからぁ!そりゃあカズマも男の子だし、馬小屋でたまに夜中ゴソゴソしてるのは知ってるから、早くプライベートな空間欲しいのはわかるけど!五万!五万でいいの!お願いよおおおおお!」

 

「よしわかった、五万でも十万でもお安いもんだ!分かったから黙ろうか!」

 

 

 

×××

 

 

 

そんなわけで、クエストに行くことになった。

 

「カズマ、早速討伐に行きましょう!それも、沢山の雑魚モンスターがあるヤツです!新調した杖の威力を試すのです!」

 

「いいえ、お金になるクエストをやりましょう!ツケを払ったから今日のご飯代もないの!」

 

「いや、ここは強敵を狙うべきだ!一撃が重くて気持ちいい、凄い強いモンスターを……!」

 

「それより大富豪やろうぜ」

 

まとまりがねぇー……と、和真は思うしかなかった。最後に至っては冒険するつもりすらない。

 

「とりあえず、掲示板の依頼を見てから決めようぜ」

 

その提案で全員がゾロゾロと掲示板に向かう。が、掲示板の依頼はほとんど来てなかった。

 

「あれ、なんだこれ、依頼がほとんどないじゃん」

 

「ええと……申し訳ありません。最近、魔王の幹部らしき者が、街の近くの古城に住みつきまして、その魔王の幹部の影響か、ここら近辺の弱いモンスターは隠れてしまい、仕事が激減しております。来月には、国の首都から幹部討伐のための騎士団が派遣されるので、それまではそこに残っている高難易度のお仕事しか……」

 

と、いうわけで、まさかのモミジの案の大富豪になった。

 

 


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