俺、アークプリーストです   作:アリオス@反撃

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共同墓地へ

 

「……ううっ、ひぐっ……ぐすっ……。上空5000メートルからスカイダイビング……この世界は綺麗だった……」

 

泣きながら素直に感想を漏らすアクア。今は街から外れた丘の上の共同墓地に向かっている。

 

「良かったじゃねぇか、滅多にできない体験だぞ」

 

「もう少しで死ぬところだったわよ!」

 

「だから守ってやったろ」

 

落下前にプロテクトバーストを掛けてもらいら何とか生き残ったのだった。

 

「うるさいわよ!あんた寝てるところいきなりぶん投げられてスカイダイビングした人の気持ちが分かるわけ⁉︎」

 

「これからの方針を決めてる最中に泣きながら途中でこっちの様子を把握して気が付いたら寝てましたなんて奴の気持ちなんてわかりたかない」

 

「ぬぐっ……!」

 

「おい馬鹿ども。着いたぞ」

 

今回受けたクエストは共同墓地のアンデッドモンスターの討伐。時刻はそろそろ夕方。

 

「じゃ焼くか」

 

そんなわけで、仕事前のバーベキュー大会。鉄板を敷いて、肉を焼く。

 

「あい、この肉OKな」

 

肉を焼いてるモミジが言うと、めぐみんがお皿と箸を持って来た。

 

「おら」

 

「ありがとうございます。あむっ……!超美味しいです!焼き加減最高です!」

 

「あ、これもおk」

 

「あ、私も欲しい」

 

ダクネスが手を挙げたので、モミジが肉を摘んで運ぶ。

 

「……おお!確かに美味い」

 

「あとこれとこれもOK」

 

「わーい、いただきまーす!」

 

アクアも続いて肉を取った。すると、別の机では和真がマグカップにコーヒーの粉を入れ、『クリエイト・ウォーター』と『ティンダー』でコーヒーを入れた。

 

「おーい、コーヒー入ったぞー」

 

「………この二人は食事の時も抜群のコンビネーションよね」

 

「というか、モミジが料理できるのが意外だな」

 

「いや、このくらい一般技量だろ」

 

「カズマも魔法使いより魔法使いこなしてますよ。初級魔法なんてほとんど誰も使わないものなのですが……なんか便利そうです」

 

「いや元々こういった使い方するもんだろ」

 

すると、「あ、そうそう」と和真は声を漏らした。

 

「『クリエイト・アース』ってこれ何に使うんだ?」

 

「あーそれは土を作る魔法で……まぁ畑とかに使うと良い作物が作れるらしい」

 

モミジが説明すると、アクアが吹き出した。

 

「なになに、カズマさん畑作るんですか!農家に転向ですか!土も作れるし水も撒ける!カズマさん、天職じゃないですかやだー!ぷーくすくす!」

 

「パワーバーストレベル1」

 

「ウィンドブレス」

 

「きゃああああ!目、目があああっ!」

 

モミジの魔法で威力を上げた和真の魔法が、土煙を巻き起こして小さな竜巻となってアクアを襲う。

 

「………攻撃する時も完璧なコンビネーションですね……」

 

「あの二人、ある意味最強なんじゃないか?」

 

 

 

×××

 

 

 

月が昇り、すでに日付が変わろうとしている。

 

「……冷えてきたわね。ねぇカズマ、引き受けたクエストってゾンビメーカー討伐よね?私、そんな小物じゃなくて大物のアンデッドが出そうな予感がするんですけど」

 

「バッカお前ほんとバカッ。それフラグになんだろ。今日はゾンビメーカーを一体討伐。そして取り巻きのゾンビもちゃんと土に還す。そしてとっとと帰って馬小屋で寝る。計画以外のイレギュラーが起こったら即刻帰る。いいな?」

 

その言葉にパーティメンバー全員が頷いた。敵感知を持つ和真を先頭に、全員が後に続いた。

 

「……!何だろう、ピリピリ感じる。敵感知に引っかかったな。モミジ」

 

「了解。『フルバーストレベル1』」

 

直後、五人の足元に魔法陣が現れ、全員の全ステータスが上がった。

 

「よし……。って、あら?なんか……多いぞ。一体、二体、三体……四体?」

 

取り巻きのゾンビは精々二〜三体と聞いていたのに、少し多い。まぁその程度なら誤差の範囲内……そう思った時だ。墓場の中央で青白い光が走った。

それが大きく魔法陣を作る。モミジの魔法陣とは違った感じのものだ。その魔法陣の隣に、黒いローブの人影が見えた。

 

「……あれ?ゾンビメーカー……ではない……気が…するのですが……」

 

めぐみんが自信なさげに呟いた。

 

「ちょっと、様子見てくるわ、アクアが。なんかあったら先帰ってようぜ」

 

「へ?わ、私が?」

 

直後、モミジは石を魔法陣に投げた。その後にアクアの肩に触れる。

 

「『クイックトレード』」

 

直後、アクアの姿が消え、代わりにさっき投げた石が出て来た。

 

「へっ?」

 

間抜けな声を漏らしながら、アクアは人影の上にワープ。そのまま頭突きをかました。

 

「よし、帰ろうぜ」

 

「お前鬼かよ……。さすがにほっとけるか。おい、行くぞ」

 

四人は立ち上がってその魔方陣に近づいた。その時だ。

 

「あーーー!リッチーがノコノコこんなとこに現れるなんて、なんでここにいるのよッ!」

 

自分を囮にして逃げられそうになった事も忘れて、アクアが人影を指差して叫んだ。

「は?リッチーって……」

 

「ノーライフキングと呼ばれてるアンデッドの王のことか……?」

 

モミジと和真が声を漏らした。その間に、アクアがでっかい魔法陣を踏みつける。

 

「や、やめやめ、やめてえええええ!誰なの⁉︎いきなりヘッドパットかまして、なぜ私の魔方陣を壊そうとするの⁉︎やめて!やめてください!」

 

「うっさい、黙りなさいアンデッド!どうせ怪しげな魔法陣でロクでもないこと企んでるんでしょ、なによ、こんな物!こんな物‼︎」

 

そのアクアの腰に、泣きながらしがみついて止めようとするリッチー。

 

「やめてー!やめてー‼︎この魔方陣は、未だ成仏できない迷える魂達を、天に還してあげるための物です!ほら、たくさんの魂達が魔法陣から空に昇っていくでしょう⁉︎」

 

「リッチーのくせに生意気よ!そんな善行はアークプリーストの私がやるから、あんたは引っ込んでなさい!見てなさい、そんなちんたらやってないで、この共同墓地ごとまとめて浄化してあげるわ!」

 

「ええむ⁉︎ちょ、やめっ⁉︎」

 

「『ターンアンデッド』!」

 

アクアがリッチーの制止を無視して魔法をかける。直後、ゾンビ達はかききえるように消失していく。それは、もちろんリッチーにも及び、

 

「きゃー!か、身体が消えるっ⁉︎止めて止めて、私の身体がなくなっちゃう!成仏しちゃう!」

 

「あははは、愚かなるリッチーよ!自然の摂理に反する存在、神の意に背くアンデッドよ!さあ、私の力で欠片も残さず……!」

 

「おい。やめてやれ」

 

後ろからアクアを殴る和真。そして、うずくまるリッチーに声を掛けた。

 

「お、おい大丈夫か?えっと、リッチーでいいのか?」

 

「だ、だ、大丈夫です……。危ないところを助けていただき、ありがとうございました……。おっしゃる通り、リッチーのウィズと申します」

 

フードを取って頭をさげるウィズ。

 

「えっと……ウィズ?あんた、ここで何してるんだ?魂を天に還すとか言ってたけど……」

 

「ちょっとカズマ!こんな腐ったみかんみたいなのと喋ったら……」

 

「『クイックトレード』」

 

遠くに石を投げたモミジが魔法を使って、アクアと入れ替えた。悲鳴を上げながら遠くに飛んで行くアクアを無視して、話は進む。

 

「そ、その……私は見ての通りのリッチー、ノーライフキングやってます。私には迷える魂達の話が聞けるんです。ここは共同墓地ですから、ロクにお金もなくて葬式すら出してもらえないで、毎晩ここを彷徨っています。ですから、私は定期的にここを訪れて天に還してあげているんです……」

 

………感動した。飛んでったバカを除く四人がほろりと泣きそうになった。

 

「ま、それなら仕方ない。でも、ゾンビを呼び起こすのはどうにかならないか?俺たちがここに来たのはゾンビメーカーを討伐してくれってクエストを受けたからなんだ」

 

その言葉に、ウィズは困った表情を浮かべる。

 

「あ……そうでしたか……。その、呼び起してるわけじゃなく、私がここに来ると、まだ形が残っている死体は私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです。私としては、この墓場に埋葬される人たちが迷わず天に還ってくれれば、ここに来る理由もなくなるんですが……。えっと、どうしましょうか」

 

結局、見逃すことになり、クエストは失敗となった。

 


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