俺、アークプリーストです   作:アリオス@反撃

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スティール

ジャイアントトード3日以内に5匹討伐を達成し、和真とモミジはギルドの椅子に座った。アクアとめぐみんは粘液まみれで、男二人に変な誤解が掛かる恐れがあったので、大衆浴場へ行っている。

 

「あ、レベル上がってる」

 

「マジで?」

 

「冒険者レベル4だってよ」

 

「やったじゃん」

 

「まぁそれはいいんだけどよ……。あのでかいカエル移送費込みで1匹5千円買い取り、クエスト報酬で11万……それを四人で3万か……割に合わねー」

 

「そんなもんだろ。でも実際前衛が一人欲しいよな」

 

「ああ。今のパーティじゃ正直キツイ」

 

二人して、ため息をついた。

 

「あ、そういえばモミジ」

 

「何?」

 

「なんでお前は俺たちみたいな弱小パーティに来たんだ?」

 

「?」

 

「性格はともかく、魔法はお前ハンパないじゃん。攻撃防御速度全強化出来るアークプリーストなんてそういないんじゃないの?」

 

「いや、大した理由はないよ。ただ……」

 

言いにくいことなのか、顔を背ける。それでも、決心したのか言い切った。

 

「女の子がいないから」

 

「……………はっ?」

 

「だってお前、パーティに紅一点とも呼べる奴がいないなんてどう思うよ」

 

「ないな」

 

言い切る和真。

 

「だろ?なら抜けるしかねぇよ。何が悲しくて男だらけのむさいパーティに入らなきゃいけねーんだ」

 

「その点、俺たちは女の子二人に男二人の合コンみたいにバランス取れたパーティだ。………まぁアホな女ばかりだから、一人くらいまともな女の子いてもいいけど」

 

「それな。できれば巨乳の金髪女騎士」

 

で、二人して馬鹿みたいに笑ったときだ。

 

「すまない。ちょっといいだろうか?」

 

女性の声がして、二人してビクビクゥッと跳ね上がった。男特有の最低の会話が聞かれたと思っておそるおそる振り返ると、二人はギギギとぎこちない笑顔になる。

立っていたのは、金髪美人の女騎士だったからだ。直後、二人して土下座した。

 

「「………すいませんした」」

 

「…………な、何がだ?」

 

何故か謝られ、困惑する女騎士。

 

「あ、もしかしてもう募集はしてないのか……?」

 

「いや、募集はしてますよ」

 

「ただ、あまりお勧めはできませんが……」

 

「なら、是非私を!この私をパーティに!」

 

突然、目を輝かせた女騎士に和真は手を掴まれた。この反応、もしかしてさっきの会話は聞かれてなかったのか?と二人は思った。

 

「先程、ヌメヌメの女性二人はあなた達の仲間だろう!いったい何があったらあんな目に……!わ、私も……私もあんな風に………!」

 

「「はっ?」」

 

「いや違う!あんな年端もいかない二人の少女、それがあんな目に遭うなんて騎士として見過ごせない。どうだろう、この私はクルセイダーというナイトの上級職だ。募集要項にも当てはまると思うのだが」

 

「……………」

 

しばらくモミジと和真は顔を見合わせると、お互いに額に汗を貯めて頷いた。

 

((この人もヤバい人だ……))

 

そう思いながらも、前衛の人が足りないのも事実、特にクルセイダーなど願っても無い職業だ。

 

「どうする?」

 

「俺はいいと思うよ。性癖無視すれば」

 

「…………」

 

一応、頷いておいた。

 

 

 

×××

 

 

 

翌日、ギルド内の酒場で、モミジがめぐみんを連れてやって来た。

 

「どーもー」

 

「……………」

 

「よう、モミジ……とめぐみん?どうしたんだ?」

 

「…………もうお嫁に行けないです……」

 

俯きながらめぐみんがそう呟くと、アクアが虫を見る目でモミジを見た。

 

「ちょっとモミジ、あんた何したのよ」

 

「宿屋に連れてってとりあえず飯を食おうとしたわけだけど、そいつ俺の言う事なんでも聞くみたいだから飯の準備させたらコーラ走って持ってきて炭酸飛び出してビビってひっくり返って机に後頭部ブツけて気絶したからベッドに寝かせたんだけど、俺の寝る所がなくなったからなるべく距離をとって同じベッドで寝たら翌日襲われたとそいつが勝手に勘違いしてるだけだよ」

 

「……本当に?」

 

「ガチだっつの」

 

「嘘です絶対嘘です!モミジくらいの年齢の人が私が寝てるのを見て放っておくわけないです!」

 

「いや、お前自分のプロポーションにどんだけ自信持ってんだよ。まだお子様もいいとこだろ。せめてそこの青いのくらいになってから言え」

 

「うう〜………!」

 

「唸るな、野生動物か」

 

「おい二人とも、落ち着けよ」

 

和真が割って入った。

 

「とりあえず、飯にしようぜ」

 

和真の提案で、四人は飯を注文する。ガツガツと口の中に食べ物を突っ込むアクアとめぐみんを前に、モミジも飲み物を飲みながら思った。

 

(色気の欠片もねぇな……)

 

可愛いけど両方ともまるでダメな女の子だ。思わずため息をつく。すると、隣の和真が聞いてきた。

 

「なあ、スキルの習得ってどうやるんだ?」

 

「あ?ああ……カズマって職業冒険者だっけ?」

 

「おう」

 

「なら、誰かにスキルを教えてもらえるよ。そのスキルを目で見て、使用方法を教えて貰えば、習得可能スキルの項目が出るから、あとはポイントを使ってそれを選べばいい」

 

「………なるほど。つまり、俺もお前のエンハンススキルやめぐみんの爆裂魔法が使えるようになるわけだ」

 

「その通りです!」

 

「「うおっ!」」

 

急にめぐみんが割り込んできた。

 

「その通りですよ!まあ、習得に必要なポイントはバカみたいに食いますが……」

 

「じゃあお前もバカみたいに飯食ってろ」

 

モミジが口からご飯粒を飛ばしながらしゃべるめぐみんの口の中にカエルの肉を突っ込んで黙らせると、説明した。

 

「高位の魔法ならそれだけスキルポイントを食う。お前が爆裂魔法を覚えようとしたら、10年間くらいレベリング、その上一切スキルポイントを使わないで貯める必要がある」

 

「モミジのエンハンス魔法はどれくらいだ?」

 

「俺のも爆裂魔法ほどじゃないけどスキルポイント食うよ。何せ、5段階に分けて使い分けが可能な上に他のステータスと併用して使えるんだ」

 

「…………やっぱお前、俺たちのパーティにはもったいない気もするんだが……」

 

「ふざけろバーカ。何で俺がむさい男と組まなきゃいけねんだ」

 

そんな話をしてると、今度はアクアが話に入ってきた。

 

「ね、ね、カズマ。なら私の魔法教えてあげよっか?」

 

「……あー確かにお前、便利そうな魔法持ってそうだもんな。この際だから見せてくれよ」

 

「じゃ、よーく見ておきなさいよ。まずはこのコップを見ててね。この水の入ったコップを自分の頭の上に乗せる」

 

「誰が宴会芸スキル教えろっつったこの駄女神!」

 

「ええーーーーー⁉︎」

 

しょぼんとするアクア、カエルの肉を喉に詰まらせるめぐみん。すると、陽気な声が聞こえた。

 

「あっはっはっ!面白いねキミ!ねえ、キミがダクネスの入りたがってるパーティーの人?有用なスキルが欲しいんだろ?盗賊スキルなんてどうかな?」

 

そっちを見ると、二人の女性がいた。片方は昨日の金髪騎士、もう片方はサバサバした明るい子。

 

「えっと、盗賊スキル?どんなのがあるんでしょう?」

 

「よくぞ聞いてくれました。盗賊スキルは使えるよー。罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗。キミ、初期職業の冒険者なんだろ?盗賊のスキルは習得にかかるポイントも少ないしお得だよ。どう?今なら、クリムゾンビア一杯でいいよ」

 

「すんませーん、こっちの人に冷えたクリムゾンビア一つ!」

 

即決だった。

 

 

 

×××

 

 

 

ギルドから出て、盗賊の女の子は言った。

 

「まずは自己紹介しとこうか。あたしはクリス。見ての通り盗賊だよ。で、こっちの無愛想なのがダクネス」

 

「ウス!俺はカズマって言います!クリスさん、よろしくお願いします!」

 

「一応、俺はモミジ。アークプリーストだ」

 

とりあえず潜伏と敵感知を教わった。途中、ダクネスに石を投げつけてキレられるというアクシデントがあったが、それは置いておく。

 

「さて、それじゃあたしの一押しスキル、窃盗をやってみようか。相手の持ち物をなんでも一つランダムで奪い取るスキルだよ。じゃ、君に使ってみるからね?」

 

言うと、クリスは和真に手を伸ばして叫んだ。

 

「『スティール』!」

 

直後、クリスの手の中には財布が握られていた。

 

「あっ!俺の財布!」

 

「おっ!当たりだね!まあ、こんな感じで使うわけさ」

 

言うと、クリスはにんまりと微笑む。

 

「ねぇ、あたしと勝負しない?」

 

「勝負?」

 

「君の窃盗スキルで私から一つ奪ってみなよ。どんなものを奪ったとしても、君はこの財布とあたしから奪ったものと引き換え、どう?」

 

「………いいぜ、やってやるよ。何盗られても泣くんじゃねーぞ?」

 

「いいね君!そういうノリのいい人って好きだよ!さあ、何が取れるかな。当たりはこのダガーだよ!そして残念賞は、この石だ」

 

「あ、きったねぇ!そんなのアリかよ!」

 

クリスの手元には10個の石があった。

 

「これは授業料だよ。どんなスキルも万能じゃない。ちゃんと対抗策があるのさ」

 

確かにセコイが、さすがと言わざるを得ない。

 

「よし、やってやるよ!俺は昔から運だけはいいんだ!」

 

そして、和真は手を前に突き出した。

 

「『スティール』ッ!」

 

和真の手が輝き出す。すると、クリスの手から石がこぼれ落ちた。どうやら、石ということはなさそうだ。

 

「……って、あら?何だこれ」

 

手から出てきたのはパンツだった。

 

「ヒャッハー!当たりも当たり、大当たりだああああああ!」

 

「いやああああああ!ぱ、パンツ返してえええええええええええ‼︎」

 

「カズマ!もっかい!もっかいスティール!」

 

モミジが言うと、ニヤリと笑う和真。

 

「スティイイイイイイル‼︎」

 

続いて、今度は緑色のマントのようなもの。

 

「きゃああああああああああ‼︎」

 

「大当ったりぃいいいいいいい‼︎」

 

「もう一回いけえええええええ‼︎」

 

「スティイイイイイイイイイル‼︎」

 

「いい加減にしてえええええ‼︎」

 

見事な回し蹴りが二人に決まった。

 

 


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