そんなわけで、ジャイアントトード狩りに出掛けた。
「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間が結構掛かります。準備が整うまで、あのカエルの足止めをお願いします」
めぐみんにそう言われ、3人はカエルの前に立った。
「カズマ、あのカエルと戦ってたんだろ?何か情報は?」
「打撃が効き辛い、けど飯を食ってる時は隙だらけだ。それで昨日二体倒せた」
「飯?」
「アクアが食われてた」
なるほど……と顎に手を当てるモミジ。ようやくまともな奴がパーティになった……と心の中で喜んでると、モミジがアクアの肩をつかんだ。
「何よ。ていうか気安く触らないでくれる?」
そう言うアクアを、モミジはカエルの前に思いっきり投げ付けた。
「フンッ!」
「いやあああああああああ‼︎」
「プロテクトバーストレベル1」
パクッと食べられたアクア。和真が唖然とする中、モミジはアクアに防御アップの魔法を掛けてやる。
「…………いや、お前エゲツナイのな」
「これで一体の足止めは完了した」
「てか、レベル1じゃなくて5くらいの掛けてやれよ」
「レベル1の方が効果の持続時間が長いんだよ」
「………なるほどな」
一応、和真が納得した時、禍々しいオーラが自分達の後ろから出た。めぐみんの杖からドス黒いオーラが流れ出ている。
「見ていて下さい。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段。……これこそが、究極の攻撃魔法です」
めぐみんの目がカッと見開かれた。
「『エクスプロージョン』ッ!」
赤黒い閃光が草原に走り、一匹のカエルに突き刺さり、爆発し、四散した。
「………おお。一撃だよ一撃」
「すっげー。これが魔法か……」
モミジ、和真と素直に感動してると、1匹のカエルが地中から這い出て来た。
「! マジかよ……!」
「めぐみん!一旦離れて、距離を取ってから攻撃を……!」
そこまで和真が言いかけて振り返るが、めぐみんはパタリとぶっ倒れたまま微動だにしない。
「ふ……。我が奥義である爆裂魔法は、その強大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。………要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。あっ、近くからカエルが湧き出すとか予想外です……。食われます……すいません、ちょ、助け……」
そうめぐみんが言いかけた直後、モミジがめぐみんの方に走った。
「! モミジ、無理だ!」
「スピードバーストレベル3!」
自分に魔法を掛けて、めぐみんがカエルに食われる前に回収した。
「! モミジ……!」
安堵したようにめぐみんが声を漏らす。
「助かりました……ありがとうございま……」
「ふんっ!」
直後、カエルの方にぶん投げられた。
「「えええええええええ⁉︎」」
「プロテクトバーストレベル2!」
めぐみんと和真が声を上げる中、モミジは魔法を使った。めぐみんを追い、パクッと捕食するカエル。唖然とする和真だが、その真下に赤い魔法陣が出る。
「パワーバーストレベル4!」
自分にも魔法を掛けるモミジ。
「お?なんか、力が……」
「カズマ、青いのは任せるぞ」
「……そういうことか、おう!」
和真はアクアを食べてるカエル、モミジはめぐみんを食べてるカエルを倒しに行った。
×××
「うっ……うぐっ……。ぐすっ……。生臭いよう……。生臭いよう…………」
めぐみんを背負ったモミジと和真の後ろからアクアが泣きながら付いてくる。
「カエルの体内って、臭いけど良い感じに温かいんですね……。知りたくもない知識が増えました……」
「良かったじゃねぇの、冬場はカエルと一緒にカエルの口の中で過ごせよ」
「誰の所為でいらない知識が増えたと思ってるんですか!」
「うごごごご!首を、絞めるなこのクソガキ!」
「モミジだってあまり歳変わらないでしょう‼︎」
背中の上で喧嘩するめぐみんに和真が言った。
「今後、爆裂魔法ら緊急の時以外は禁止だな。これからは他の魔法で頑張ってくれよ、めぐみん」
「………使えません」
「……………は?」
「私は爆裂魔法しか使えないです。他には、一切の魔法が使えません」
「……………まじか」
「……………まじです」
めぐみんがぽつりと呟く。
「……私は爆裂魔法をこよなく愛すアークウィザード。爆発系統の魔法なんか好きじゃないんです。爆裂魔法だけが好きなのです」
直後、めぐみんをモミジは近くに流れる川の中に落とした。
「ガボッ……⁉︎な、何するんですか!」
「悪い落とした。まぁそのギトギトネバネバの臭い汚い粘液も落とせるし、よかったじゃねぇか」
「何も良くありませんよ!」
直後、モミジの背中をアクアが蹴り飛ばした。
「うおっ⁉︎」
一緒に川に落ちるモミジ。
「ぶはははは‼︎モミジも落ちてるじゃないですかー‼︎」
「てめええええ‼︎何しやがんだポンコツプリースト‼︎」
「私はその子の非効率ながらもロマンを追い求める姿に感動したわ!あなたは敵よモミジ!」
「よろしい、ならば戦争だ」
直後、「パワーバーストレベル3、スピードバーストレベル2!」と叫んでアクアに襲い掛かるモミジ。
その様子を見ながら、和真は少なからずこいつらダメだと思った。
バカのアクア、サドのモミジ、これに加えて非効率爆裂魔法のめぐみん。これ以上問題児が増えるのはごめんだった。
(切り離し作業に掛かろう)
そう決めると、和真はめぐみんに言った。
「落ち着け。めぐみん、多分茨の道だろうけど、頑張れよ。お、そろそろ街が見えてきたな。それじゃあ、ギルドに着いたら今回の報酬を山分けにしよう。うん、まあ、また機会があればどこかで会うこともあるだろ」
「ふ……我が望みは爆裂魔法を放つ事。報酬などおまえにすぎず、なんなら山分けでなく、食事とお風呂とその他雑費を出してもらえるなら、我は無報酬でもいいと考えている。そう、アークウィザードである我が力が、今なら食費とちょっとだけ!これはもう長期契約を交わすしかないのではないだろうか!」
「いやいや、その強力な力は俺たちみたいな弱小パーティには宝の持ち腐れだ」
「見捨てないでください!もうどこのパーティも拾ってくれないのです!ダンジョン探索の際には、荷物持ちでもなんでもします!お願いです、私を捨てないでください!」
それでも渋る和真。だが、別の奴が反応した。
「ん?何でも?」
「えっ」
アクアの足を持って顔面だけを川の中に入れてるモミジだ。
「何でもって言ったよね今」
「い、いや……」
「言ったよね」
「そのっ、言葉の綾で……」
「言ったよね」
「…………言いました」
「よっし和真!こいつ俺が面倒見るから引き取ろうぜ!」
「ペット感覚ですか⁉︎」
「ちゃんと面倒見れるのか?散歩やトイレの世話もちゃんと最後まで見れるのか?」
「カズマまで酷いです!」
「余裕」
「………まぁ、モミジがそう言うなら」
そんなわけで、一応仲間になった。