俺、アークプリーストです   作:アリオス@反撃

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トイレに籠城

 

 

「モミジ!無事か⁉︎」

 

和真がモミジの元へ駆け寄ろうとした。

 

「和真ぁああああ‼︎」

 

スピードバーストでタックル気味に脱出するモミジ。グボッと和真は断末魔をあげたが、まぁ今回ばかりはモミジにも悪気はなかったのでスルーした。

 

「逃げますよ!」

 

めぐみんの一言で、3人とも走って逃げた。廊下を曲がり、和真を先頭に逃げ回った。着いたのはトイレの中。しっかりと鍵を閉めた。

 

「ふぅ……助かった……」

 

「なんだよあれ……なんであんなんいんだよ〜……」

 

「情けない声を出さないでください、モミジ」

 

和真、モミジ、めぐみんと声を出した。

 

「アクアとダクネスのどっちかはこっちに残しときゃ良かったぜ」

 

「そうは言っても、二人とも勝手にいなくなってしまったんだから仕方ないでしょう。それより、ここからどうするかですよ」

 

「とりあえず、ここでアクアとダクネスか朝を待とう。それしか方法はない。いいか?なるべく全員静かに……」

 

「うおアァアアア‼︎気絶しろ俺!」

 

和真が言ったそばから、モミジは頭を壁に打ち付けた。

 

「おいいいい!静かにって言ってんだろ!」

 

「クソッ!クソッ!クソッ!なんで気絶しねぇんだ俺のバカ‼︎」

 

「いい加減にしてくださいモミジ!爆裂魔法撃ちますよ!」

 

「撃てばいいじゃん!てか撃って俺を気絶させて眠らせて下さい!」

 

「いや眠るじゃ済まないから!屋敷もろとも永遠の眠りについちゃうから!」

 

モミジの脇の下から手を伸ばし、なんとか押さえつける和真。その時だ、ブルッとめぐみんが震えた。

 

「………か、かずま……」

 

「なんだよめぐみん!というかお前もモミジ止めるの手伝え!」

 

「そ、その……おっ……おしっこ(←ここだけ小声)………したい……んですが……」

 

和真とモミジの表情が消えた。

 

「いやいやいやいや!我慢しろ!」

 

「仮にも女の子になんてこと言うんですかモミジ!」

 

「わーった。じゃあ、俺とカズマは耳塞いであっち向いてるから、さっさと済ませろ」

 

「ふざけないで下さい!もう一度言いますけど私これでも女子ですよ⁉︎」

 

「これでもって自分で言っちゃうんだ」

 

「ていうかもう無理です!黙ってましたけどさっきから我慢してたんですから!」

 

「だったらお前廊下でして来いよ」

 

「だから女の子ですよ私⁉︎はいこれ3回目!」

 

ぐぬぬっ……と二人して睨み合ってると、さっきから和真が黙ってることに気づいた。二人はヒヤリと嫌な予感がした。

 

「………あの、カズマ?」

 

「さっきからなんで黙ってるんですか……?」

 

聞くと、和真はキリッとした顔で答えた。

 

「安心しろ。俺は別に小便したいわけじゃない」

 

その言葉に二人がホッとすると、和真は続きを言った。

 

「…………ウンコだ」

 

二人の廻し蹴りが和真の腹と顎に直撃する。

 

「いっだぁぁぁぁ‼︎てかお前ら何すんだよ!ケツから出るぞ!腹に刺激を与えんな!つーか出てけ!もう無理!出る!」

 

「ダメです!女の子優先です!」

 

「お前らが出て行けば解決だろうが!俺を巻き込むな!」

 

そのまま睨み合う三人。そして、拳を引いた。

 

「古今東西」

 

「こういう場合は」

 

「ジャンケンですね」

 

「勝った奴以外は出て行く、それでいいな?」

 

「最初はグーだからな……」

 

そして、3人は拳を引いた。

 

「「「最っ初はグー!」」」

 

言いながら、繰り出される五つの手の平。

 

「おい待てお前ら!最初はグーって言ったろうが!」

 

「そう言うあんたもですよカズマ!」

 

「ああもうっ!いいから出てけよお前らよォッ‼︎」

 

ギャーギャーやってると、カタカタという音が聞こえた。それに3人とも固まった。震えてるのはトイレのドアだ。

 

「……お、おい」

 

「これって……」

 

「奴ら、ですよね……」

 

3人揃って唾を飲み込む。モミジが覚悟したように言った。

 

「………こうなったら、もうここで籠城は無理だ。一気に突破する」

 

「チョッ……トイレは⁉︎」

 

「お前らは肛門もしくはま☆こと命どっちが大事なんだよッ‼︎」

 

「「い、命です!」」

 

「よし、行くぞ……」

 

3人は扉の前に立ち、構えた。未だカタカタと震えている扉にモミジが手を掛け、二人の方を見た。二人とも、唾を飲み込んでコクッと小さく頷き返した。

 

「突撃ィイイイイ‼︎」

 

「「うおおおおおおおおおお‼︎」」

 

扉を開け放った直後、ガンッ!と何かに直撃した。3人ともトイレから出て逃げようとした。が、扉で吹き飛ばしたのはアクアだった。

 

「………あれ?アクア?」

 

和真が声を漏らした。辺りを見回すと、人形達は屍のように倒れていて、トイレの横にはダクネスが立っていた。

 

「さ、3人とも……そんな所で何してるんだ?」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

黙り込む3人。が、とりあえず聞くべき事を和真が聞いた。

 

「あの、悪霊は?」

 

「なんとか全部片付けた。多少手こずったがな」

 

「そっか……」

 

ホッとモミジが息をついた時だ。「あっ……」というめぐみんの切なそうな声が聞こえた。なんだよまだなんかあんのかよと思いつつ振り返ると、めぐみんのパジャマの股間の部分が若干湿っていた。

 

「だ、大丈夫です……こんなの、子供の頃は毎日でしたし……」

 

「めっ、めぐみんーーーー‼︎落ち着け傷は浅いぞおおおおおおお‼︎」

 

モミジがめぐみんをトイレの中に叩き込んだ。ちなみに和真は漏らさずに済んだ。

ちなみに翌日、この悪霊が全てアクアの所為であることが判明したため、依頼人である不動産屋から報酬は受け取らず、代わりに墓の手入れと冒険者話に花を咲かせるという条件で屋敷を手に入れた。

 

 


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