俺、アークプリーストです   作:アリオス@反撃

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冬将軍

雪精狩り始まり。

 

「めぐみん、ダクネス!そっちに逃げたの頼む!クソ、チョロチョロと!」

 

雪精を追いかけ回す和真。

 

「カズマ、私とダクネスで追い回してもすばしっこくて当てられません……。爆裂魔法で辺り一面ぶっ飛ばしていいですか?」

 

「おい、頼むよめぐみん。まとめて一掃してくれ」

 

そう言われ、めぐみんは嬉々として呪文を唱え始めた。

 

「『エクスプロージョン』ッッ‼︎」

 

1日1度の大魔法が雪原に放たれ、雪の下の土もろとも抉って大きなクレーターを作り上げた。

魔力を使い果たしためぐみんはその場でパタリとぶっ倒れた。

 

「8匹!8匹やりましたよ。レベルも一つ上がりました!」

 

「おーし、やったな!」

 

そう嬉々として答えつつも、和真は腑に落ちなかった。何故こんな美味すぎるクエストを誰もやらないのか。その問いは、すぐに答えられた。

 

「……ん、出たな!」

 

ダクネスが嬉しそうにほくそ笑む。突如出てきたそれは、白くて重厚な鎧兜を装備した男のようなものだ。

先ほどまで勝ち誇っていためぐみんはうつ伏せのまま、死んだふりをしている。モミジは首をコキコキと鳴らしながら準備体操をしていた。

すると、アクアが口を開いた。

 

「……カズマ。何故冬になると、冒険者たちがクエストを受けられなくなるのか。その理由を教えてあげるわ。あなたも日本に住んでいたんだし、昔からこの時期になると天気予報やニュースで名前くらいは聞いたでしょう?」

 

そいつは説明しているアクアや和真に殺気を隠すこともなく向けている。

 

「雪精達の主にして、冬の風物詩とも言われている……。そう、冬将軍よ!」

 

「バカッ!このクソッタレな世界の連中は、人も食い物もモンスターも、みんな揃って大バカだ!」

 

冬将軍は刀を抜いて和真達に襲い掛かった。その前に、剣を持って立ち塞がるダクネス。が、冬将軍が刀を一撃振り下ろしただけで、ダクネスの剣は真っ二つに折られた。

 

「ああっ⁉︎わ、私の剣がっ……⁉︎」

 

ダクネスがそう呟いた直後、クイックトレードでモミジと入れ替わった。

 

「フルバーストレベル3」

 

前回の経験を活かしてか、レベル5まで上げることはしなかった。自分の魔法の杖で冬将軍の一撃をガードしつつ、いなして顔面に蹴りを入れて後ろに下がらせた。

 

「冬将軍。国から高額賞金をかけられている特別指定モンスターの一体よ。冬将軍は冬の精霊……。精霊は、元々決まった実態は持たない。出会った人たちの無意識に思い描く思念を受け、その姿へと実体化するの。その中でも、冬の場合はちょっと特殊でね。危険なモンスターが蔓延る冬は、街の人間どころか冒険者たちですら出歩かないから、冬の精霊に出会うこと自体が稀だったのよ。……そう、日本から来たチート持ち連中以外はね」

 

「……つまり、こいつは日本からこの世界に来たどっかのアホが、冬といえば冬将軍みたいなノリで連想したから生まれたのか?なんて迷惑な話だよ……どうすんだこれ。モミジで勝てるのか?」

 

「さぁ?元々、アークプリーストはあんな近接で殴り合うステータスじゃないし、バーストの制限時間が終わったらお終いね」

 

「お終いね、じゃねぇだろ‼︎どうすんだよこれ!」

 

「逃げるわよ、今のうちに!」

 

「お前本当に女神?悪魔の間違いだろマジで」

 

そんな事を話してる時だ。モミジの下に魔法陣が現れた。

 

「『フルバーストチューニング、パワー5、スピード3、プロテクト1』」

 

そう言った直後、モミジの杖が冬将軍の腕を殴り飛ばした。それを見て、和真もアクアもダクネスも黙り込む。

 

「……………」

 

「………なんか俺もうあいつにタメ語使えねーわ」

 

「これからはモミジ様とお呼びしましょう」

 

ぽつりと呟く和真と、とても神様とは思えないことを言うアクアだった。が、その直後だ。ポトッとモミジの杖が落ちた。いや、正確には杖の半分上が、だ。直後、足元の魔法陣が霧散する。

 

「……………」

 

「……………」

 

全員黙り込んだ。モミジの顔には大量の汗が浮かんでる。冬将軍の腕が、シュウゥウ……と音を立てて再生していった。

 

「すいませんした」

 

直後、土下座するモミジ。

 

「よっわっ‼︎お前よっわ‼︎さっきまでの最強オーラどこいったんだよ‼︎」

 

「いいえカズマ。あれは正しい行動よ。冬将軍はとても寛大よ。きちんと礼を尽くして謝れば見逃してくれるわ」

 

アクアは言うと、武器を捨ててモミジの右斜め後ろあたりで土下座した。

 

「………再生したとはいえ、片腕吹っ飛ばされて許してくれる奴なんているのか……?」

 

そう呟きながらも、和真もモミジの左斜め後ろで土下座。ダクネスも3人の後ろに来た。が、突っ立ったままだ。

 

「おい何やってんだ、早くお前も頭を下げろ!」

 

「くっ……!私にだって、聖騎士であるプライドがある!誰も見ていないとはいえ、騎士たる私が、怖いからとモンスターに頭をさげるわけには……!」

 

言いかけたダクネスの頭をモミジが伸縮魔法で腕を伸ばして掴み、全力で頭を地面に叩きつけた。ダクネスの頭はめり込み、地上には足しか出ていない。

本当に寛大なのか、冬将軍は刀を鞘に収めている。

 

「カズマ、武器武器!早く手に持ってる剣を置いて!」

 

アクアに言われ、慌てて和真は剣を投げ捨てた。慌てたためか、頭を上げてしまった。直後、冬将軍は刀に左手を添える。そして、和真の首に向かって刀が振るわれた。

 

「カズマッ……‼︎『クイックトレード』!」

 

モミジが魔法を使おうとするも、杖がない。その直後、ポトッと、目と鼻と口の耳の付いた何かが落ちた。

 

 

 

×××

 

 

 

数分後、アクアによって和真は生き返った。死んだ後に和真はエリスと会った。

 

「……ズマ……!カズマっ!カズマ、起きてくださいっ!カズマッ!」

 

めぐみんが涙声で言った。ダクネスが和真の右手を両手で包み込むように握っている。

 

「……あ、やっと起きた?ったくあの子は、相変わらず頭固いんだからまったく」

 

アクアが膝枕していたらしい。

 

「ちょっとカズマ、照れてないで何とか言いなさいよ。私達に何かいうことあるでしょう?」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべるアクア。それに和真は呟いた。

 

「チェンジ」

 

「上等よこのクソニート!そんなにあの子に会いたいなら、今すぐ合わせてあげようじゃないの!」

 

「や、やめろお!死に戻った人間に乱暴するなよ暴力女神!」

 

「大丈夫?うっかり首落ちたりしない?」

 

「うっかり首落ちるって……?どういうことだよ、モミジ」

 

「お前の頭すっ飛んだよ。綺麗に」

 

「マジで……?」

 

「おう」

 

不安そうに自分の首を撫でる和真。が、傷跡など残っていない。

 

「………今日は帰ろう」

 

「そだね」

 

帰ることにした。

 

 


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