俺、アークプリーストです   作:アリオス@反撃

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雪精

 

「金が欲しい!」

 

突然、和真が呻きながら立ち上がった。それに、モミジが冷たく返した。

 

「………何言ってんのお前」

 

「金だよ!お前がぶっ壊した門の弁償代の所為で毎回受けたクエスト報酬の大半が天引きされていくんだぞ⁉︎」

 

「そう」

 

「そろそろ冬だ!今朝なんて、馬小屋の中で目が覚めたらまつ毛が凍ってたんだ!」

 

「俺は宿暮らしだもーん」

 

「お前ッ……!そもそもなんでそんなにお前だけ金があるんだよ!」

 

「そりゃあお前、俺レベル47だし」

 

「…………はっ?よ、47?」

 

「うん。俺強いもん。デュラハンの時だってあれ本気で殴ってたらワンパンだったねあれ」

 

「マジかよ……」

 

「クエスト行かない日とかは一人で行ってテキトーな奴倒してるよ」

 

「………せこい、セコイぞ……」

 

悔しそうに唸る和真。

 

「なんでこんな奴のスペックが高いんだ」

 

「何、俺と戦争したいの?」

 

「とにかく!俺は何かしらクエストを受けたい」

 

「受けて来いよ。基本、何でも俺は手伝うぞ。あとめぐみんも強制で手伝わせる」

 

「ちょっと!なんで私も……」

 

「爆裂魔法撃ちたくないのか?」

 

「行きましょう」

 

と、いうわけでとりあえず何かクエストを受けることになった。掲示板に向かい、張り紙を見る。

 

「どれどれ。……報酬は良いのばかりだが、本気でロクなクエストが残って無いな……」

 

牧場を襲う白狼の群れの討伐百万エリス

冬眠から覚めてしまった一撃熊が畑に出没。二百万エリス

 

「モミジがいればなんとかなりそうなもんだが……さすがに頼りきりってのもなぁ……」

 

「それな。カズマとかめぐみんとかダクネスはともかく、アクアに顎で使われるのは絶対に嫌だ」

 

「ち、ちょっとどういう意味よモミジ!」

 

問い詰められるも、無視。

 

「……機動要塞デストロイヤー接近中につき、進路予測の為の偵察募集?……なんだよこれ。デストロイヤーってなんなんだよ」

 

「デストロイヤーはデストロイヤーだ。大きくて、高速機動する要塞だ」

 

「ワシャワシャ動いて全てを蹂躙する、子供達に妙に人気ある奴です」

 

「俺のアタックバーストレベル5の全力パンチでも壊しきれない奴」

 

ダクネス、めぐみん、モミジの説明を聞いても、さっぱり理解できなかった和真は聞き流して、別の張り紙を見ることにした。

 

「なぁ、この雪精討伐って何だ?名前からしてそんなに強そうに聞こえないんだけど」

 

一匹ごとに十万エリス。随分と高額な報酬だ。

 

「雪精は……まぁ雪の精霊だな。殴れば死ぬ」

 

「雪深い雪原に多くいると言われ、剣で斬れば簡単に四散できますよ。ですが……」

 

モミジとめぐみんの言葉を聞きつつ、和真はその張り紙を剥がし取った。それをアクアが後ろから覗き込んだ。

 

「雪精の討伐?雪精は特に人に危害を与えるモンスターって訳じゃなきけども、一匹倒すことに春が半日早く来るって言われてるモンスターよ。その仕事受けるなら、私も準備してくるわね」

 

アクアは「待ってて」と言い残してどこかに向かった。

 

「雪精か……」

 

ダクネスも特に異論なく、むしろちょっと嬉しそうに準備に向かった。

 

 

 

×××

 

 

 

街から離れたところにある平原地帯。そこはすでに一面真っ白に雪が積もっていて、宙に白くふわふわした雪精が漂っていた。

 

「『ヒートアップ』」

 

モミジがそう言うと、カズマ、アクア、めぐみん、ダクネスの下に魔法陣が出て、赤い仄かな光が体を包み込んだ。

 

「おお……あったけぇ……便利な魔法だなこれ……」

 

「おし、じゃあ始めるか……」

 

「おいモミジ!余計な事をするな!」

 

何故か怒ってるのはダクネスだ。

 

「私にとってはこの寒さも……!」

 

「『クールダウン』」

 

「ああ!そうだ!私をもっとその調子で冷やしてくれ!その分私の心は火照っていく!」

 

「『クイックトレード』」

 

ダクネスの真上に石を投げて、雪の塊と石を入れ替えた。当然、ダクネスの上に雪は落ちて来る。

 

「さて、始めるか」

 

「モミジ、あの人死にますよ」

 

「それはそれでラッキーだろ」

 

めぐみんの言葉を軽く受け流した。

一方、和真はアクアにジトーっとした目で言った。

 

「おい、お前その格好どうにかならんのか」

 

アクアの服装は、虫網に小さな瓶を抱えた真夏のわんぱく坊主のような格好だ。

 

「これで雪精を捕まえて、この小瓶に入れておくの!で、そのまま飲み物と一緒に箱にでも入れておけば、いつでもキンキンのネロイドが飲めるって考えよ!つまり、冷蔵庫を作ろってわけ!どう?頭いいでしょう!」

 

もう和真は何も言わなかった。

 

 


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