俺、アークプリーストです   作:アリオス@反撃

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決着がついた

 

 

デュラハンが膝をガクガクさせながら、ズタボロの剣を向けてるのを見て、和真が指差してモミジに言った。

 

「おい、あいつボロボロだぞ。足ガックガクだぞ」

 

「生まれたての小鹿みたいになってんな」

 

「プップー!ちょーバテバテなんですけどー!あのデュラハン、良いのは威勢だけなんですけどー‼︎」

 

「そりゃお前だ。『クイックトレード』」

 

言いながらモミジはアクアをデュラハンの前に出した。

 

「だ、だからそれやめてよー!心臓に悪いのよ!」

 

「そうだ!やめろ!お前自身がかかって来い‼︎」

 

「ほいよ、そんじゃスタート。『クイックトレード』!」

 

「えっ?まじっ?」

 

「フルバーストレベル5」

 

アクアと自分を入れ替えて自分をドーピングさせて殴り掛かった。それを慌ててガードするデュラハン。

 

「きっきさきさきさ……貴様!仲間をドーピングさせて盾にした後、今度は不意打ち⁉︎お前本当に人間か!」

 

「『クイックトレード』」

 

無視して上空に石を投げ、デュラハンと入れ替えた。

 

「うおっはああああああああああ‼︎⁉︎」

 

急に空中に投げ出され、悲鳴をあげるデュラハン。それを追撃するモミジ。

 

「ッフゥウウウウウウォァアアッッ‼︎」

 

気持ち良さそうな奇声を上げながらデュラハンの肩に拳を減り込ませた。

 

「ヒィイイイイヤァアアッ‼︎」

 

デュラハンは奇声をあげ、街の門に突っ込んだ。門は大きくブッ壊れ、街の外壁の一部が崩壊する。

 

「なにこれっ!フルバースト初めてやったけど楽しい‼︎」

 

「うーわお前いいな!俺もやりたい!やらせろよ!」

 

「バーカ断る!フルバーストは馬鹿みたいに魔力食うし、俺の特権……‼︎」

 

と、言いかけた所でモミジは急に脱力したように身体をダラケさせ、地面に落下した。

 

「って、何やってんのお前?」

 

「…………わっかんね。なんか身体に力が入らん……。バーストレベル5でも3分は持つはずなんだけど……」

 

「………お前、フルバースト初めて使うって言ってたな」

 

「……………うん」

 

「……なんか名前の感じ的に攻撃、防御、速度全部あげる技っぽいけど、その分その制限時間も短くなるもんなんじゃないのか?」

 

「………………」

 

「………………」

 

「………ま、マジかよ……………」

 

「ま、まぁ倒せたんだからさ。そう落ち込むなよ」

 

その直後だ。崩壊した門から、フラフラと何かが立ち上がった。

 

「…………だ、誰を倒せたって……?」

 

そう言うデュラハンの右肩は吹き飛んでいて、右腕の剣は最早粉々だった。

 

「………いや、もう瀕死じゃん。倒れる寸前じゃん。もう無理すんなよ」

 

和真が半ば本気で心配してるように言った。

 

「ふざけるな!俺は魔王軍の平和のためにも、そこの男を仕留めなければならない‼︎」

 

「おいおい、勇者みてーなこと言ってるぞあいつ」

 

だが、モミジが倒れた今、こちらに攻撃手段はない。攻撃の当たらないダクネスに倒れためぐみん、他の冒険者もやられている。というか、おそらくモミジの魔法ドーピングの所為で倒れたんだろう。攻撃手段は最早自分しかない。

 

「なぁ、お前としてももう戦えないだろ?そんななりじゃ」

 

「ナメるな!俺はまだ……!」

 

「もう剣もないんだし、ここはお互いに身を引かないか?その方がお互いのためだ」

 

「し、しかしこのままでは……」

 

「自爆とはいえ、モミジも倒れちまってるし、ある意味倒せたようなもんだろ。だから、ここはお互いに……な?」

 

「……………」

 

少しデュラハンは考え込んだ。そして、渋々言った。

 

「分かった……。ここは退こう。そこの奴に伝えておけ。次会った時が貴様の最期……」

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」

 

「「えっ」」

 

和真、デュラハンの声がハモった。直後、デュラハンの周りに光が差し掛かる。

 

「うおああああああああ‼︎」

 

大きく悲鳴をあげ、からだは薄くなっていく。

 

「ち、畜生ォオオオオ‼︎ハメやがったなァアアアア‼︎」

 

消えて行った。濁りきった目で声の主を和真が見ると、そこにはアクアがいた。

 

「やったわ!この私が魔王の幹部の一人を倒したわ!」

 

「……………」

 

「ま、当然よね!私は女神だもんね!たかだか魔王軍の幹部ごとき、私の敵じゃないわ!さ、帰りましょう、カズマ?」

 

「………お前、モミジ以上の鬼だな」

 

「はぁ⁉︎一緒にしないでくれる⁉︎」

 

とりあえず、めぐみんとモミジを背負って街に引き返した。

 

 

 

×××

 

 

 

翌日、和真がギルドに入ると、中は魔王幹部討伐ということで宴会をしていた。

 

「あっ!ちょっとカズマ、遅かったじゃないの!もう既に、みんな出来上がってるわよ!」

 

上機嫌のアクアが笑いかけてくる。

 

「ねぇカズマ、お金受け取って来なさいよ!もう、ギルド内の冒険者たちのほとんどは魔王の幹部討伐の報奨金貰ったわよ。もちろん私も!でも見ての通り、もう結構飲んじゃったんだけどね!」

 

報酬の入った袋を見せつけるアクア。アクアは和真を連れて、一つの席に連れて行った。そこにはすでに、ダクネスとめぐみんもいる。

 

「来たか、カズマ。ほら、お前も報酬を受け取ってこい」

 

「待ってましたよカズマ。聞いてください、ダクネスが私とモミジにはにはお酒は早いと、どケチなことを……」

 

「いや待て、ケチとは何だ。そうではなく……」

 

ちなみにモミジは他の冒険者の所に行って腕相撲(もちろんバースト込み)をしていた。

すると、受け付けのお姉さんが微妙な表情で、やって来た。

 

「ああ、その……。サトウカズマさん、ですね?お待ちしておりました」

 

なぜか気まずそうな顔で、お姉さんは言った。

 

「……あの……ですね。実は、カズマさんのパーティには特別報酬が出ています」

 

「え、なんで俺たちだけが?」

 

すると、別のところから声が飛んだ。

 

「おいおいMVP!お前らがいなきゃ、デュラハンなんて倒せなかったんだからな!」

 

そう言われ、この世界に来て久々の優しさにジンと来たものの、なんとか抑えた。

 

「えー。サトウカズマさんのパーティには、魔王幹部ベルディアを見事打ち取った功績を称えて、金三億エリスを与えます」

 

「「「「さっ⁉︎」」」」

 

五人は思わず絶句した。お陰でモミジは腕相撲負けた。が、そんなこと気にせずに和真の元に駆け寄った。

 

「さ、三億⁉︎」

 

「おいおい、三億ってなんだ、奢れよカズマー!」

 

「うひょー!なんか奢ってカズマサマー!」

 

周りからそんな声が飛び交う中、和真は言った。

 

「よし、これからは俺はのんびりと安全に暮らして行こうと思う!こんな大金が手に入った今、もう魔王討伐なんてどうでもいい!」

 

「あの、それなんですが……」

 

そこで、申し訳なさそうに受け付けのお姉さんがが口を挟んだ。

 

「今回、カズマさん一行が……というか、モミジさんの壊した門の修理費ということで……まぁ、魔王の幹部を倒してくれたということで全額とは言いませんから、一部お支払いを、ということで……」

 

請求書だけ渡して、そそくさと立ち去る受付のお姉さん。四人全員がモミジを睨んだ。

 

「報酬が三億……そして、弁償金額が三億四千万か……」

 

ふっとモミジは微笑むと、言った。

 

「スピードバーストレベル5」

 

逃げた。

 

 


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