デュラハンがモミジに突撃した。剣で正面からモミジを切り捨てる。それを横に回避した。
「『クイックトレード』」
「むっ!」
デュラハンは頭をしまって両手に石ころを持った。直後、デュラハンの石と、モミジの石が入れ替わる。
「あっ」
「やはりな……。その技は座標の入れ替えがタネか。こんな時のために、石ころを馬鹿みたいに持って来た」
おそらくドヤ顔してるであろうデュラハンは、腰巾着に入った石を自慢げに見せ付けてきた。
「………おい。モミジ。あいつ全然中ボスキャラっぽくないぞ。それどころか、冒険者を倒すためにの技対策までしてきてるぞ」
隣に立ってる和真が呆れた声で声を掛けてきた。
「それな。それだけ前回に頭ボコボコにされたのトラウマになってるんだろ」
「余所見をするなぁッ‼︎」
続いて攻撃してくるデュラハン。それでもモミジは慌てなかった。
「クイックトレード」
直後、モミジの姿が消えて、ダクネスが現れた。
「プロテクトバーストレベル5」
硬さがアップしたダクネスが、デュラハンの一撃をガードした。
「だから貴様!仲間を盾に……!」
「余計なことをするなモミジ!」
「そうだ、お前からも言ってやれ!」
「余計な魔法をかけるな!魔法無しの方が気持ち良い!」
「そこじゃねぇだろ‼︎」
あいつはもうダメだな、といった目線を全員がダクネスに向ける中、デュラハンは手を上にかざした。
「ふん、貴様がそのつもりならいい。こちらもこうさせていただく」
そう言うと、掲げた右手を振り下ろした。直後、アンデッドナイトの大軍が出てきた。
「街の連中を。……皆殺しにせよ!」
アンデッドナイトの集団はワラワラと街の方に向かう。そこに、アクアが立ち塞がった。
「『ターンアンデッド』ー!」
アンデッドナイトの1匹に直撃した。かなり効いたように見えたが、アンデッドナイトは消滅しない。代わりに、全員がアクアを睨んだ。
「あっ」
そして、全員がアクアを追いかけ回した。
「わ、わああああーっ!なんで私ばっかり狙われるの⁉︎私、女神なのに!神様だから、日頃の行いもいいはずなのに!」
「ああっ⁉︎ずっ、ずるいっ!私は本当に日頃の行いは良いはずなのに、どうしてアクアの所ばかりアンデッドナイトが……っ!」
神様らしくないことを叫ぶアクアと、どうしようもないことを叫ぶダクネス。その様子を見ながら、モミジは和真に言った。
「カズマ、あっち任せた」
「いいのか?それだとあのデュラハンの思うツボなんじゃ……」
「大丈夫だろ。なんとかする」
言うと、モミジはデュラハンの前に立った。
「ふん、ようやく一対一の勝負が出来るな。貴様ごときを殺すのにどれだけの鍛錬を積んだか……」
「『マジックキャンセラー』『追加ダメージ』『対異常耐性強化』『微ダメージ無効化』『魔力ブースト』『スペル詠唱破棄』『パワースピードバーストレベル4』『オートリペア』『アンデッドキラー』」
「えっ?」
デュラハンが声を漏らす間に、その場にいたモミジ以外冒険者全員の足元に複数の魔法陣が現れ、光で体を包んでいく。「なんだこれ……?」「あれ、なんか力が湧き出てるような……」と、冒険者達が声を漏らす中、モミジが全員に言った。
「よーっし、お前ら。とりあえず全員チートだから。思う存分暴れろい」
「えっ」
聞き捨てならない一言に、デュラハンが声を漏らす。すると、冒険者達は邪悪に微笑んだ。
「掛かれェ〜ッ!」
冒険者のうちの一人が号令をかけ、全員が突撃した。それをもはや見ることもなく、モミジは街へ引き返す。そのモミジに和真は言った。
「お前人任せかよ……デュラハンとはタイマンしないのか?」
「しねーよ。面倒臭ぇ。つーか、お前の方はアンデッドナイト倒せたのか?」
その直後だ。「エクスプロージョン!」の声と共に爆発音が響いた。めぐみんの爆裂魔法が、アンデッドナイトを一掃した音だ。清々しい顔で倒れるめぐみんを、モミジがおんぶした。
「……大丈夫か?」
「は、はい……カズマのお陰で、気持ちよく撃てました……」
「そいつぁ、良かったな」
そのまま和真達はダクネスもアクアも合流し、帰ろうとした。その時だ。後ろから鋭い音が響き渡った。
「⁉︎」
「な、何⁉︎」
振り返ると、ボロボロのデュラハンが、倒れた冒険者達の真ん中に立っていた。
「舐めるなよ駆け出し冒険者風情どもが!貴様らがどれだけ魔法でドーピングしようが、俺の敵ではない‼︎」
そう言うと、デュラハンはボロボロの剣を和真達に向けた。