俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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ガルパンの映画見ました!
戦闘シーンが気合入ってて最高だった!

Huluでこのすばの映画も見た!
ゆいゆいと結婚したいだけの人生だった!


モンド・グロッソ最終日 日本VSイギリス

二回戦が始める少し前に目を覚まし、ストレッチなどを済ませアリーナに出る。

 私を出迎えたのは最近知り合いになった相手。

 悪いとは思うが―

 

「まさかお前が相手になるとは思わなかったよ」

「失礼……とは思いませんわ。わたくしはあくまで競技者、単純な身体能力や戦闘能力は国家代表の中でも最下位でしょうから」

「だいぶ無茶したようだな。機体の損傷は直っているようだが、身体の方のダメージは隠しきれてないぞ?」

「この程度の傷、千冬様と戦う為の必要経費ですわ」

 

 白く綺麗な頬に絆創膏を貼ったエラが、普段では見せないような獰猛な笑みを見せる。

 二回戦の対戦相手はイギリス代表。

 特技は狙撃や射撃。

 本人の発言通り、兵士ではなく選手タイプ。

 国家代表の中である意味一番真っ当な参加選手だろう。

 近接格闘などは不得手に見えるが、何かしらの格闘技は修めてるらしい。

 殴り合う手足ではないので、柔術、サンボ、システマなどの技を使う可能性がある。

 機体はスピード重視で軽武装。

 基本武器は狙撃ライフル。

 背中に隠し腕を持つ。

 技術スタッフの人達が『まるで四妖拳みたい』と言っていたので調べてみたが、確かに某大作マンガに出て来るものと似たものだった。

 隠し腕の精度は低くいので、殴ったりはしてこないだろう。

 

 ――3

 

「見せてくださいませ。貴女の本気をっ――!」

 

 ――2

 

「もちろんだ」

 

 アリーナの中央で互いに身構える。

 初手から全力で行く。

 

 ――1

 

 真っ直ぐ進んで叩き切る!

 

 ――0

 

「ふっ!」

 

 姿勢を低く、抜刀の構えの状態で地面を擦る様に飛ぶ。

 視線の先ではエラが狙撃の態勢に入っていた。

 迎撃を選んだか!

 

 むずむずと身体の一部が疼く……狙いは額か。

 遠慮のない良い選択だ。

 だが無意味だ。

 エラの意識が私に集中し、その狙いが鋭くなればなるほど私には避けやすい。

 姿が見えない市街戦などならともかく、アリーナという視界の開けた場所ではエラの本領は発揮できない。

 

 額に飛び込んでくる銃弾を紙一重で避ける。

 続いて膝と腕。

 こちらの姿勢を崩そうとする攻撃。

 それらを避けながらエラに肉薄する。

 エラは腰を落とし、足を地面に着けたままだ。

 狙撃ライフルの銃口だけを向けて私を待ち構えてる。

 あくまで自分の技と心中するつもりか? それとも何かあるのか――

 考えても仕方がない事だ。

 このまま斬るッ!

 

「おいでませっ!」

 

 ブレードが狙撃ライフルで受け止められる。

 まさか愛用の武器を捨てるとは。

 だが突進力を味方にした斬撃の勢いは止まらない。

 エラの武器をへし折りながら刃をその身に届ける――

 

「受け止めました……わっ!」

 

 刃から伝わってくる感触が想像と違う……。

 装甲が厚い?

 よくよく見ると昨日までの機体ではない。

 ほんの僅かだが、装甲が厚くなっている。

 近くで見なければ気付かない範囲で機体をいじってきたか!

 

「取りましたわっ!」

 

 ひしゃげた狙撃ライフルを捨てたエラが私の腕を掴んだ。

 腕を捻り、ブレードを落とそうとする。

 私の重心を動かそうとするこの動き――

 

「やはり接近戦の心得はしっかりあるようだな!」

「これがキャッチ・アズ・キャッチ・キャンですわ!」

 

 掴まれた手首を捻られ、ブレードを落としてしまう。

 

「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン? すまないが知らない名前だ」

「レスリングの源流の一つですわ! 日本式で言えば古武術でしょうか?」

 

 まさかのレスリングだった。

 これは意外だ。

 まてよ、古武術と言えば実戦の中で培われてきた殺し技が多いはず。

 柔術の原型も、武器がない状態でも合戦などで敵を倒す為の技だと聞いたことがある。

 ヨーロッパでも同じだろう。

 重い鎧を着けた相手を無効化……しかしそこにルールはなく剝き身の武術……

 

「関節破壊が目的か!?」

「正解ですわ! 関節技と締め技が得意技ですの!」

 

 腕を引っ張られ、それに合わせ捻る力も加えられる。

 反射的に逆らって腕を引っ張りそうになるが、それはしてはいけない。

 したらその瞬間に関節が壊されるだろう。

 だから流れに逆らわず、むしろ流れに乗る。

 身体を捻り半回転して地面に着地。

 無事な左手で殴ろうと構えるが、その前にエラが動いた。

 

「捕まえましたわ!」

 

 脇の下に手を差し込まれる。

 ここを押さえられると腕を自由に動かせなくなるのだ。

 右腕は手首を、左腕は根本から押さえられた。

 そして向けられる隠し腕が握るハンドガンの銃口。

 なるほど、これがエラの戦術か。

 

「ゼロ距離なら避けられませんわ!」

 

 首を捻り銃弾を避ける。

 だがエラの隠し腕は二本。

 もう一本はエラの脇の下から銃口を覗かせており、そこから放たれた銃弾は私の脇腹の装甲にくっきりと食い込んでいた。

 隠し腕は人間と同じ様に関節が存在する。

 だからこの様な撃ち方もできるのか。

 避けられる可能性がほとんどない状態だが、それでも初撃で顔を狙う事で私の注意を逸らし、確実性を上げたうえで二発目を撃ってきた。

 随分と慎重な事だ。

 ダメージは軽微、ならば行くしかあるまい。

 

「動きをを止めてからの射撃! これが私の必勝法ですわ! いくら千冬様でもそう簡単には逃げだせ――キャァー!?」

 

 エラに組まれたまま瞬時加速を使用。

 目指す先はアリーナの壁だ。

 舌をかまない様に気を付けろよ。

 

「ガッ!」

「ッ!?」

 

 二人そろって壁に激突する。

 本来ならエラだけにダメージを与えたい所だが、衝撃で私の腕が壊されそうなので仲良く激突する結果となった。

 右腕は掴まれたままだが、左手は自由になった。

 

「こんな方法で――ッ!?」

 

 まずはボディーブロー、顎が下がったのでアッパー。

 エラの脳から“掴む”と言う動作を忘れさせろ!

 

「こんのぉーォォォ!」

 

 アッパーを喰らって顎が上がった状態を生かした頭突き。

 意外と逞しいお嬢様だな!

 

「右腕は絶対に自由にさせませんわっ!」

 

 再度私の左手を封じようと手を伸ばしてくる。

 私だって少しは心得があるんだぞ?

 そう易々と同じ手は食わんさ。

 

「なっ……」

 

 エラの右手の指に自分の左手を合わせる。

 

「なぜこのタイミングで恋人握りを……?」

 

 私がこの技を使った時はお前も居たはずだが?

 指取りという立派な技だよ。

 

「え? 外れない――」

 

 ここで少し捻る。

 

「いっっ!?」

 

 エラの顔に苦痛の表情が現れた。

 関節技は痛いよな。

 分かるさ。

 

「ならこうですわっ!」

 

 エラが脚で私の胴体を挟む。

 蟹挟だ。

 がっしりと組まれそう簡単には引き剝がせそうにない。

 だがこれは攻撃のチャンスでもある。

 我慢比べと行こうか!

 

「このままハチの巣に――ぐふっ!?」

 

 私に抱き着いてる姿勢のエラをアリーナの壁に叩き付けた。

 肺の空気を吐き出しながらエラが喘ぐ。

 隠し腕が動き銃口が私を狙う。

 密着状態なので正面から撃たれないのが幸いだ。

 この位置取りなら撃たれるのは脇腹や肩だろう。

 致命傷になる前にその背中の装備を叩き潰す!

 

「狙いは背中ですわねっ!?」

 

 互いにもつれ合いながらアリーナの中を駆け巡る。

 エラは地面や壁に気を付けつつも、私の右手を自由にしないようにしながら左手の開放を狙う。

 片や私はエラを壁や地面に叩き付けるタイミングを計りつつ右手の開放を狙い、左手でエラの妨害を計る。

 なんとまぁ忙しい接近戦だ。

 

 エラが私を挟んだまま空中に逃げようとする。

 遮蔽物のない空を目指すエラと、それを阻止する私は錐揉み状態になりながら飛ぶ。

 攻防が続いてるように見えるが、この状態でもエラの隠し腕は撃ち続けている。

 ダメージを一方的に与えられてる状況だ。

 地面が近くなった瞬間、エラの右腕を潰す勢いで握力をかける。

 痛みで一瞬動きが鈍ったスキを見逃さず、エラの背中が地面に向かうように体制を整えたら力尽くでエラの身体を地面に押し込んだ。

 上からかかる力に隠し腕からメキメキと音がなる。

 これで二発目。

 思ったより頑丈だな。 

 だが後ほんの一押しで止めを刺せるだろう。

 

「ぐっ――!」 

 

 まるで押し倒してる様な姿勢の私を、エラが必死に跳ね除けようとしている。

 そんなエラを押し倒しながら前に進む。

 エラの背中は地面で擦れ、ガリガリと金属と地面が擦れる音と火花が見えた。

 

 バキッ!

 

 破砕音と共に折れた隠し腕が地面に転がる。

 これで少しは楽に――なんだとッ!?

 

「こうなる事は予測済みですわっ!」

 

 掴まれていた右腕が開放される。

 隠し腕を折って安心した僅かな隙、そこをエラが狙っていたのだ。

 右腕が開放されたにも拘わらず、まさかエラが手を放すとは考えてもなかった私の手は動かない。

 思考だけが間延びする。

 そんな中、エラは自分の左手にロケットランチャーを出現させた。

 イギリスのロケットランチャー、LAW80をIS用に改造した物だと思われる。

 片手撃ちが可能な大きさだ。

 

「力も技も勝てないなら……気合で勝つしかありませんわっ!」

 

 爆音と光りで意識が空白となる。

 それと同時に胸部に感じる痛み。

 これは効くなッ!

 

「っつ~! 流石にこの距離ではわたくしにもダメージがありますわね」

 

 衝撃でエラを捕まえていた左手の指取りが外れてしまった。

 煙の先では薄焦げたエラが立っている。

 アダムズといいエラといい、平然と自爆を選択肢に入れすぎだろう。

 しかし効いた。

 束の右ストレートを鳩尾に食らったくらいのダメージがある。

 もう一発は勘弁して欲しいな。

 

「ここからは自分の戦い方でやらせてもらいますわっ!」

 

 二丁のアサルトライフルを構えたエラが後ろに下がりながら射撃を開始する。

 捕まってからのゼロ距離射撃とロケットランチャーの着弾。

 与えられたダメージ量は私が上だな。

 エラの隠し腕は破壊できたが、本体へのダメージは軽微だろう。

 

 ブレードで銃弾を防ぎながらエラを追う。

 こうも弾幕を貼られるとなかなか距離を詰められない。

 限られたフィールドで戦うのだ、壁に追い詰めてしまえばいい。

 だが向こうもそれを理解してるので、そう思い通りには動いてはくれない。

 厄介な戦いになりそうだ。

 しかしこの感覚、懐かしい。

 

 私と束は昔はよく殴り合っていた。

 いや、少し語弊があるか。

 詳しくは“束にじゃられていた”だ。

 本気で殴れる相手を見つけた束は、それはもう嬉しそうに襲ってきた。

 私はもちろん本気で戦った。

 一回適当に相手してたら投げ飛ばされ、倒れた私に覆いかぶさって頬を舐めてきた事があるので、それ以降は手を抜く選択肢はなくなったのだ。

 そんな束との戦いだが、基本は束が攻める事が多い。

 いや、攻めると言うか、掌底で胸を狙ったり尻を触ろうとしたりとセクハラ攻撃が多いのだ。

 なので私が怒るとあいつは守りに入る。

 そしてその時の束だが……しつこい。

 攻撃は当たらないし、掴んだりも出来ない。

 悔しいが、先読みの技術は一生追い付かないだろう。

 束相手に戦ってきた経験は……今思えば良い経験だったな。

 正面からの戦いだけでなく、奇策、妙策と呼ばれるような、正道ではない戦いの存在を知ったのだ。

 言葉や知識ではなく、経験した事があるというのは大きい。

 今の所、追うのがエラで逃げるのが私というのが良くないな。

 なんとか攻守を逆転させなければならない。

 一度逃げに回ればエラの手数は落ちるはずだ。

 ――多少の無茶が必要だな。

 

 ブレードは邪魔になるので一度拡張領域にしまう。

 盾にしながら進む手もあるが、速度が落ちるし弾丸の集中で折れる可能性がある。

 だから防御は素手で行う。

 被弾は覚悟済みだ。

 

「……行くぞ」

 

 瞬時加速を使用。

 エラに向かって真っ直ぐ進む。

 もちろんただ進むだけの私は良い的だ。

 両手を前に。

 肩、腰、装甲が厚い部分に被弾する銃弾は無視。

 逆に顔などに当たる銃弾だけ防ぐ。

 

「ダメージ覚悟で間合いを詰める気ですのっ!?」

 

 手へのダメージを最小限にする為、手の甲部分で銃弾を側面から叩く。

 あるいは手の平で受け流す。

 正面から受け止めない様に注意しながらも手を動かす。

 エラが瞬時加速を使用して逃げた。

 だが瞬時加速を使用してはアサルトライフルの類は撃てない。

 仮に撃てたとしても弾丸は広く散らばるだろう。

 攻守が変わり逃げるエラと追う私。

 一度高速で逃げ始めればそこから攻撃に転ずるのは難しい。

 エラの顔に焦りが見える。

 

 右、下、左――

 

 瞬時加速の連続使用は機体に負担を掛け、エネルギーを急速に消費する。

 追いかけっこに時間を掛けては負けるのは私だ。

 エラを追って地面に近付いた瞬間、エラの視線が私から外れた隙を見て落ちていた金属片を拾う。

 隠し腕の部品だ。

 大きさは親指ほど。

 弾丸代わりに丁度良い。

 

 エラが真上に飛んだ。

 私もその背中を追う。

 進む先にあるのはアリーナを覆うバリアだけだ。

 ここからどう動くは先読みしなければならない。

 私は束の様に相手の思考を読むなんて事はできない。

 だが手はある。

 思考は無理でも、肉体の動きを読めば良い。

 集中しろ……動きの起点を見逃すな。

 例えISというスーツを纏っていても、中身は生身だ。

 必ずサインがあるはず。

 

 右か左か、それとも斜めか。

 空中戦では生身の肉体ではあり得ない選択肢がある。

 単純に左右の動きだけに注視しては駄目だ。

 

 ――見えた!

 

「きゃっ!?」

 

 親指で弾いた金属片がエラの首筋に命中する。

 指弾と呼ばれる技だ。

 私は一部の競技以外で銃を使用していない。

 だから油断があったのだろう。

 最初から銃を持っていたら警戒されるし、拡張領域から取り出して狙いを定めるのは時間の無駄だ。

 その点この指弾は便利である。

 束に使った時は砂粒を目に当ててやった。

 何事も経験だな。

 

「間合いに入ったぞ」

「しくじりましたわっ!」

 

 エラが怯んだ瞬間に一気に距離を詰める。

 ブレードを取り出し――

 

「なにクソですわっ!」

「おっ?」

 

 エラが私に突進してきた。

 タックルと呼ぶには崩れた姿勢。

 ただがむしゃらに体をぶつけてきた感じだな。

 だが私を弾き飛ばすには力不足だ。

 膝蹴りをエラの腹に打ち込み、硬直した瞬間に殴り飛ばす。 

 

「もう一度……捕まえましたわ」

 

 後ろに吹き飛びかけたエラの身体が途中でとまる。

 殴った私の左手の手首をエラが掴んでいた。

 

「そう簡単に斬られてあげませんわよ?」

 

 鼻から血を流しながらエラがほくそ笑む。

 まぁ、殴った衝撃で後ろに下がった事で間合いができたから問題ないな。

 

「このまま折りますわっ!」

 

 エラが左手を捻り上げる。

 関節が悲鳴を上げ、痛みから逃げようとする本能を無理矢理押さえつけた。

 左手はくれてやる。

 

「まさか――ッ!?」

 

 エラはここから関節の取り合い、そんな近接戦をしたかったのだう。

 だがそろそろ試合を決めたいのでここは無視させてもらう。

 

「普通なら痛みで反射的に動いてしまうはずですわっ!」

 

 無理すると言っても流石に骨を折られてはこちらも困る。

 だから力の掛かり具合を自分で調節して……

 

 ゴキッ!

 

 よし、肩が外れたか。

 骨が折れてないだけマシだ。

 痛みを無視し、私は掲げたブレードでエラを斬りつけた。

 装甲が厚くしてるなら手加減はなしだ。

 

「あうっ!」

 

 エラに肩から腰まで斜めに亀裂が走る。

 だがまだだ。

 まだエラのISは活動を停止していない。

 運良くエラが私の左手を開放してくれた。

 手を繋いだ状態では斬りづらかったので嬉しい誤算だ。

  

「まだ……ですわっ!」

 

 エラは拡張領域から先ほど見せたロケットランチャーを取り出した。 

 爆発が起こり煙と火が視界を隠した。

 振ったブレードが爆炎を切り裂くが、手応えはない。

 

「まさか斬撃に砲弾を合わせるとはな」

 

 気合の入った緊急回避方法だ。

 おかげでブレードの長さが三分の一程度になってしまった。

 エラは健在だが、衝撃によって体勢を崩し未だ直せていない。

 煙をまき散らしながら地面に向かって落ちていく。 

 

「その程度では逃げたとは言えんぞッ!」

 

 落ちるエラを追う。

 ここで逃げてはまた追い掛けっこが始まる。

 なんとしてでもここで仕留めるッ!

 

 エラが上半身を起こし、こちらに二丁のアサルトライフルを向けた。

 逃げる選択を捨てて迎撃を選んだようだ。

 放たれる銃弾の雨。

 それらを正面から受け止める。

 

「取ったッ!」

 

 突き出したブレードの先端がエラを捉えた。

 落下速度を利用した突きは勢いを失わず、エラを地面に縫い付ける。

 

「ハァァァァッ!」

「アァァァァッ!」

 

 ブレードが突き刺さったエラの胸部からは火花が舞い散り、私の腹部にエラのアサルトライフルから撃たれた銃弾が集中する。

 共に引く気はない。

 互いにダメージ覚悟で相手を攻撃し、そして――

 

「……あ」

 

 エラの両腕からだらんと力が抜け、ISから色が抜け落ちていった。

 

「ふぅ……」

 

 ブレードを握る手から力を抜く。

 機体ダメージは……銃弾が集中した腹部がヤバいな。

 

「……負けましたのね」

「そうだな。私の勝ちだ」

「……実力差は明白。こうなると予想してたのですが……意外と悔しいですわね」

 

 エラの目から涙がこぼれる。

 あくまで予測であって、勝つ気で戦ったのだからその涙は当然だ。

 誇っていい涙だよそれは。

 

「立てるか?」

「指一本動きませんの。わたくしのこと放置でいいですわ。そのうち運営スタッフが回収にきますので、千冬様は先にお戻りください」

 

 ここで放置しろとは無理な話しだ。

 少なくて私は本気で戦った相手に対して敬意を払うぞ?

 

「ISを解除しろ」

「千冬様?」

「いいから」

「……了解しましたわ」

 

 疑問を持ちながらもエラは大人しくISを解除してくれた。

 さて、少しばかり痛むが仕方がない。

 ぶらりと垂れ下がる左手を地面に着ける。

 手の平を地面に当てて――

 

「ふんっ!」

「なにをしてますのっ!?」

「よしハマった」

 

 私の行動を目撃して飛び起きるエラを尻目に肩を回して調子を確かめる。

 問題は……ないな。

 一応後で冷やしておくか。 

 

「無茶しますわね」

「両手が空かないと運べないからな」

「運ぶですか? ――あえ?」

 

 エラの腕を取り、ふわりと持ち上げる。

 

「お、おひめ……これ、おひめ――」

「すまないがファンサービスは頼んでいいか? 私はこういったのが苦手でな」

「おおおおおおお任せくださいませですわ」

 

 顔が赤い上に嚙みまくりだが大丈夫か?

 エラから微妙に束と同じ匂いが……気のせいだよな?

 アレと同類が何人もいるとか想像もしたくない。

 エラを抱いた状態で空に浮かぶ。

 アリーナの中心まで来ると、観客の歓声が四方から浴びせられる。

 

「では頼む」

「は、はい!」

 

 エラが若干固くなりながら観客に向かって手を振る。

 もしかしてこういったのは慣れてないのだろうか?

 観客慣れしてると思ったので頼んだのだが、意外とそうでもないのか?

 

「アリーナ内を一周してから戻ろうと思うが、大丈夫か? 無理ならこのまま戻るが――」

「大丈夫ですわ! 例え骨が折れようと手を振ってみせますわよ!」

 

 エラが慌てて大声をあげる。

 プロ根性に火でも点いたか?

 まぁ本人がやる気になってるなら問題ないだろう。

 

「今日は人生最高の一日ですわ~っ!」

 

 ……負けたのにか?

 

 

 




モンド・グロッソ表

イギリス代表「我が世の春ですわっ~!(絶頂)」
日本代表「楽しい戦いだった(ご満悦)」

モンド・グロッソ裏

た「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!????(まさかの展開に発狂)」
し「なにしとんじゃわれぇぇぇ!!!!????(この後の展開を想像し発狂)」

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