俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~ 作:GJ0083
自分が納得できるまでこだわっていると読専に戻りそうなので(><)
残暑も過ぎ去り肌寒さを感じる秋の夜。
周囲に街灯はなく、月明かりを頼りに夜道を歩く。
今回は千冬さんをハロウィンパーティーに参加させるために、俺と束さんはバイト帰りの千冬さんを待ち伏せしていた。
待ち伏せは見事成功し、まぁ歩きながら話しましょうと言う事になり。
「うさみみが最強。それが真理なんだよ」
「ケモみみに上下はない。大事なのはその人物にどれだけ似合うかです」
俺と束さんはどちらが千冬さんのハロウィン衣装を決めるかで争っていた。
「へー? ならばちーちゃんにうさみみが似合わないと?」
「それは似合うと思います。千冬さんはスタイルが良いですから、バニーなど最高でしょう」
「なら――」
「ですが、千冬さんに似合うのはそれだけでしょうか?」
「やれやれ、往生際が悪いんだから。でも一応聞いてあげるよ」
「いぬみみです。それも可愛い系ではなく、シェパードみたいな凛々しいのが良いですね」
「う~ん。似合うと思うけど、うさみみに比べたら……」
「想像してみてください。千冬さんの頭に生える黒く立派なみみ、そのキリッとしたみみが、『コラ! 千冬!』と怒鳴られた時に、しゅんとして、へたっとなった時のそのみみと千冬さんの表情を」
「――――悪くはないね(ぽたぽた)」
「はいティッシュ。鼻血拭こうぜ」
「ありがとしー君」
「いぬみみの良さがわかってもらえましたか?」
「一考の余地があるのは認めるよ」
「ならば」
「後は」
「「本人に決めてもらおう」」
後ろを振り返り、我関せずの姿勢をとっている千冬さんに意見を求めてみる。
「千冬さんは、『セーラー服&いぬみみ』と」
「『バニーガール』どちらが良いかな? もちろん、うさみみは私とお揃いだよ」
「頼むから黙ってろ」
千冬さんにゴミ虫を見るような目で見られた。
酷い話だ。
こっちは本気で考えてるというのに。
「そもそも、私は参加するとは言ってない」
千冬さんは疲れた顔でため息をついた。
今日もお疲れのご様子。
これは是非ともハロウィンパーティーで美味しいものを沢山食べて欲しいね。
「参加しません?」
「あぁ、と言いたいところだが、どうせ逃げられないよう手を打っているんだろ?」
「もちろん」
素直じゃない千冬さんの為にも言い訳の準備はばっちりです。
「はぁ……まぁいい、毎度の事だ。しかし、仮装はもう少しなんとかならんのか?」
結構良心的な衣装を選んだつもりなんだけど。
まぁ、初めてのコスプレは誰しも恥ずかしいものだしな。
ここは乗り気にさせる方向で。
「束さん、アピールタイムです。それぞれの衣装の素晴らしさを語って、千冬さんに選んでもらいましょう」
「ならば先手は貰った! ちーちゃん! バニーにするとエッチな感じで私が大喜びなんだよ!」
束さん、それアピール違う。
「さらに! 親友の私とお揃いのうさみみ! これはバニーしかないよね!」
鼻息荒く千冬さんに絡みつく姿はもはやセクハラオヤジ。
あ、さりげなくお尻触ってる。
オチは見えたな。
「束……」
千冬さんは束さんの顔を両手で優しく掴む。
「ちーちゃん……」
まさかの百合展開!?
束さんはうっとり顔で千冬さんを見つめている。
その姿はどう見ても――
「飛んでこい」
「ほえ?」
千冬さんは顔を持ったまま、勢い良く回り始めた。
どう見ても――首投げです。
「もげる! ちーちゃん! 私の大事な部分がもげちゃう!?」
「お前ならもげても大丈夫だ」
ブオンブオンと風を切りながら、束さんがグルグルと回る。
「い~や~! し~ちゃ~ん!」
「そら、飛べ」
千冬さんが手を離すと。
「へにゃぁぁぁぁ!?」
束さんはそのまま10m近く空を飛んでいき、
べシャ!
そのまま顔面から地面に落ちた。
潰れたカエルの様になったままピクリとも動かないが、生きてるのだろうか……。
「神一郎」
「はい!」
思わず直立不動で返事をする。
「お前はもう少しまともな意見だよな?」
髪が影になっていて顔が良く見えないが、不機嫌なのはわかる。
そして下手したら俺も首投げされるのもわかる。
「Sir! 女子高生には一般的なセーラー服に、みみと尻尾を付けるだけなので、初心者向けです! そして一夏にも同じ物を付ける予定であります! コンセプトは『人狼姉弟』となっております!」
「一夏とお揃いか……悪くないな」
「ありがとうございます!」
すかさず頭を下げる。
男としてのプライド?
そんなのは死んだ時に三途の川に落として来たよ。
「それと一応聞いておく、今回はどんな手を使った?」
「今回は千冬さんが働いてる間に、一夏に千冬さんがハロウィンパーティーに参加すると言ってあります。ついでにハロウィンの料理特集の本もあげました。今頃は『千冬姉はどんな料理だと喜ぶかな~』と考えながら眠りについてるかと」
「つまり、不参加になれば一夏が悲しむか」
「『千冬姉が働いてるのに、俺だけが楽しむなんてできない!』なんて暗い気持ちで参加する事になるか、一夏も不参加になるでしょうね。その場合、今度は箒が悲しみます」
「……お前も飛ぶか?」
「千冬ちゃんがもう少し素直だと、お兄ちゃんもこんな事しなくてすむんだけどなぁ~」
つい言ってしまった。
だって、毎度毎度、いかに千冬さんに断られないように考えるの少しめんどくさくなってきてたから。
「ちゃん付けは止めろ、そして兄ヅラするな(蹴り)」
お尻を蹴られ体が宙に浮かぶ。
この、ブワッと浮く瞬間が気持ちいい。
思ったよりお尻に痛みはなく、千冬さんの優しさを感じた。
眼下には地面に張り付いたままの束さんがいる。
このままだと束さんにぶつかってしまうが、俺は空気を読めるオタク。
ISを使えばどうとでもなるけど、お約束は守る。
束さん、俺達、ズッ友だよ?
「「ぐぇっ!?」」
秋の夜、虫の声に混ざって、踏まれたカエルの様な声が夜空に響いた。
◇◇ ◇◇
女性は男性より早熟と言われている。
一夏という好きな男がいるせいか、箒の女としての成長は早い。
あどけない笑顔の中に女の顔を見せながら、レンズの先では箒がハニカミながら微笑んでいる――巫女服に猫耳を付けて。
俺、生まれ変わって良かったと思う。
本当に、心から。
自宅で小学生のコスプレ写真撮影とか、前世だったら逮捕待ったなし。
でも今は俺も小学生。
道徳的に問題はあっても、法律的にはセーフ。
やましい気持ちは一切ないしな!
「可愛いよ箒! 次は床に座って――そうだね、足を伸ばしてみようか、太もも――は流石に止めておいて、膝小僧辺りまで見せる感じで――そうそう!」
ひらすらシャッターを切る。
箒は恥ずかしがりながらもまんざらではない様子。
私見だが、束さんにコンプレックスを持っている箒は、誰かに褒められたり、求められたりする事を強く望んでいる気がする。
少女の心の隙を突くようで罪悪感があるが……いや、箒の可愛さの前ではそんな感情吹っ飛ぶな。
「次は上から撮るね。上目遣いを意識して、首をかしげてみようか」
恥ずかしながら首をかしげる様子がもうたまらん!
黒く綺麗な髪に丸い瞳。
あぁ、可愛いよ箒。
膝の上に乗せてひたすらなでなでしたい!
たっぷり箒の可愛さを堪能した後、それらのデータをパソコンに取り込み、今日撮った写真一覧を表示する。
画面は箒の素晴らしい写真で埋め尽くされた。
ミイラ女(ビキニタイプの水着の上から包帯を巻いた)
小悪魔(角付きカチューシャと黒のキャミソールに短めのスカート)
魔女(トンガリ帽子に黒とオレンジのドレス風の衣装に黒ストッキング)
赤ずきん(童話の赤ずきんそのままの王道)
猫耳巫女(猫耳+巫女服)
正直、趣味に走りすぎた気がしない訳でもない。
「さて、箒はどれがいいと思う?」
隣でパソコン画面を見て、また顔を赤くしている箒に判断を委てみる。
「神一郎さん、ハロウィンって本当にこんな格好しなければならないんですか?」
「絶対ではないけどね。でもせっかくの機会だし、一夏に違う自分を見せるチャンスだよ?」
「それは……そうなんですが、この姿を一夏に見られるのは恥ずかしすぎます」
今にも顔から火が出そうだ。
少し落ち着かせた方がいいかな?
一夏の写真の一部を切り取り箒の写真に貼り付ける。
「ほらほら箒、猫耳巫女いちか~」
「ぶっ!?」
ただ箒の写真に一夏の顔を貼り付けただけのもの、加工などもしていないので、コラ画像、などと言うにはおこがましい出来だが、箒の笑いはとれたみたいだ。
「神一郎さん、や、止めてください。そんな一夏を見せないでください」
などと言いながらも、箒はクスクスと笑いながら写真を見ている。
「やっぱり露出が高いのは恥ずかしいかな?」
「そ、そうですね。ちょっと恥ずかしいです。くくっ」
「どれも可愛いと思うんだけど。う~ん、それじゃあ、赤ずきんか猫耳巫女にする?」
「プッ、ゴホン! 猫耳もちょっと」
「それなら赤ずきんだね」
「はいそれにシマス!?」
「箒、ちゃんと写真見て決めてる? 客観的に見るために写真を撮ったんだよ? ちゃんと自分に似合ってるのを決めないと」
「ちゃんと見ました。赤ずきんで良いですから――お願いですから、もう」
箒は口を押さえながら必死に笑いを堪えている。
今の会話の間に、セクシー包帯いちか、小悪魔いちか、魔女いちかを作ってみたが、なにげに気に入ったか箒よ。
「ちょっと休憩しようか。箒は一夏の写真でも見ててくれ」
「見ません!」
「普通の写真だよ?」
「……ありがたく見させてもらいます」
素直な箒は可愛いなぁ。
一夏の写真を見て頬を緩ませてる箒の頭をひとなでして、静かに寝室へのドアを開ける。
ドアを開けた瞬間、寝室から鉄の匂いが漏れ出した。
箒にその匂いが届かないよう、素早く部屋に入りドアを閉める。
寝室のベッドは血で真っ赤に染まっていた。
「しー君、箒ちゃんのピンク色だったよ……」
どこから持って来たのか、輸血パックで輸血中の変態の血で。
「束さん、落ち着いた?」
この変態、箒がミイラ女の衣装に着替えているのを覗いていたらしい。
それで鼻血を吹き出してから現在隔離されている。
箒の情操教育のために。
「うん、箒ちゃんの匂いを嗅いでるととても落ち着くんだよ」
束さんが手に握っているナニカをクンクン嗅いでいる。
落ち着くのは良い事だが、鼻血がいっこうに止まる気配がないのはなぜだ?
「束さん、それは?」
「これ? 箒ちゃんの使用済み水着」
「死ねよ変態」
思わず男友達と話す時と同じノリで言ってしまった。
仮にも女の子に暴言を吐いてしまったよ。
気を付けなければ。
「そうだね、このまま死ぬのも悪くないかも」
束さんを水着を鼻に当てたまま恍惚の表情をしている。
確かに、俺と違って、そのまま逝けたら幸せかもしれない。
けど、篠ノ之束が死んだら、原作ブレイクどころの話じゃないんで止めてくれ。
もうそろそろパーティーの準備を始めたいし、しょうがない、少し荒療治するか。
「束さん」
「なにかな? 私はこのまま「姉さんなんか大嫌い」……え?」
できるだけ箒の声を意識して。
「姉さんは洗濯しないし」
「え? ちょっ」
「姉さんはお風呂入らないし」
「あの」
「姉さんはいい歳して恥ずかしい格好してるし」
「いやこれは……」
「足臭いし」
「臭くないもん!」
「息臭いし」
「臭く……ないよね?」
「なんか服も臭うし」
「……グス」
あ、泣き出した。
鼻血出したり涙出したり忙しい人だ。
「ほら、ちーんしてちーん」
「ちーん」
「はい、顔拭くよ」
「むぎゅ」
テンションも下がり、落ち着いた所で束さんの顔を拭いて身支度させる。
服にも血がべっとり付いていたのに、どうやったのかあっという間に綺麗な服に戻った。
その技術でちょっとした殺人現場になっている俺のベッドも綺麗にして欲しいよ。
「束さん、そろそろ準備始めるよ?」
「オッケーだよしー君。しー君のおかげで落ち着いたしね。ホントしー君のおかげで……」
ちょっと根に持ってるみたいだが、俺は悪くない。
居間に移動してパソコンに釘付けの箒を呼び、三人でパーティーの準備を始める。
束さんに飾り付けを任せ、俺と箒で料理を作る。
とは言っても、簡単な料理はすでに冷蔵庫の中だ。
今作ってるのは目玉のパンプキンケーキ。
俺もデザート系は得意ではないが、ネットを見ながら箒のサポートに徹する。
「一夏は喜んでくれるでしょうか?」
パンプキンケーキが焼かれているオーブンを見ながら、箒がポツリと呟いた。
「大丈夫だよ箒ちゃん。箒ちゃんが作ったんだもん。いっくんは大喜び間違いなしだよ」
飾り付けが終わったのか、いつの間にか束さんが後ろに立っていた。
「姉さん……そうですね。料理は愛情と言いますし、きっと喜んでくれますよね」
愛情か、俺と束さんがいるのに口に出すとは、箒も成長したな……ちょっと一夏が羨ましいよ。
「束さん、飾り付け終わったの?」
「終わったよん。そして後3分でちーちゃんといっくんが到着するよ」
なぜわかるのか。それは気にしない方向で。
「それじゃあお出迎えしましょうか、箒は先に着替えてて」
「わかりました」
箒を着替えに行かせ、束さんと二人で玄関で待機する。
「束さん、はいコレ被って」
束さんにかぼちゃの被り物(うさみみ穴付き)を渡す。
「合体!」
スポッとそれを被ると、うさみみが頭から生えている珍妙なジャックオーランタンが出来上がった。
手抜きと言うなかれ、俺はもっと簡単だ。
上下黒一色の服に黒いマントを羽織るだけ。
バンパイアの格好のつもりです。
作り物の牙さえ無しのお手軽コス。
ピンポーン
チャイムの音を聞き、束さんと頷き合う。
ガチャ
ドアが開いて。
「「トリック オア トリート!」」
パーティーの始まりだ!
箒のハロウィン衣装の参考に
ハロウィン コスプレ 小学生
で検索かけたら……うん。
検索履歴を誰かに見られたらと思う恐怖((((;゚Д゚))))