俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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天災をからかうには覚悟が必要

 薄暗い地下室、そこは異質な部屋だった。

 四方は剥き出しのコンクリートに囲まれ、中央には簡素なベッドが一つ。その上には子供が一人横になっている。

 その子供は小学生くらいの男の子だった。手術着の様な服を着て、四肢を鎖でベッドに繋がれいる。

 少年が鎖から抜け出そうと藻掻くたびにジャラジャラと音が鳴る。

 その側には白衣を来た女が楽しそうにその少年を見下ろしていた。

 

「そろそろ覚悟できたかな?」

 

 女は、今から自分のする行為が楽しみでしょうがない。そんな様子だった。

 

「くっ……殺せ!」

 

 少年はそんな女を睨み付ける。その顔に恐怖はない。あるのは怒りの表情である。お前を喜ばせるくらいなら死を選ぶ。そんな覚悟を持った顔だ。 

 

「往生際が悪いね。殺さないし、死なせない。君の体は私のモノだ。諦めるんだね」

 

 見せつける様に手にゴム手袋を着ける女。

 そしてその手を少年に伸ばす。

 

「よせ! やめろ! 俺にはまだ無理だと言っているだろう!?」

 

 鎖を激しく鳴らしながら少年を身を捻ってその手から逃げようとする。

 

「無理かどうかを確かめる為の実験だよ? 人間やってみなくちゃ分からないじゃない?」

 

 少年の怒りの声を聞き、女の笑はさらに深くなる。

 恐怖を煽るかのように、ゆっくりと女の手が少年に触れる。

 

「これが人間のやることかよぉぉぉぉぉ」

 

 

 

 

 

 つぷっ

 

「アッーーーーーーー!!!!」

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 話は少し巻き戻る。

 

 

「それではこれから、しー君の健康診断を始めます」

 

 前に会ってから数日後、まだまだ忙しいはずの束さんに呼び出されたいた。

 すっかり元気になったみたいで、いつものエプロンドレスに白衣を着てメガネを掛けている。

 完全武装だな。後で一枚お願いしよう。

 それよりも。

 

「健康診断もいいですが、そんな事やってる暇あるんですか? 白騎士事件からそう時間は経ってないんですから、今が大事な時期なんですよ? その辺わかってますよね?」

 

 何しろこれからISコアの製作や、IS関連の知識を広めるなど色々やる事があるはずだ。こんな事している暇なんてないだろうに。

 

「それではこれから、希少実験動物“転生者”の解剖実験を始めます」

「束さんの白衣姿って素敵ですね。メガネも良く似合ってますよ」

「しー君のそうゆう性格嫌いじゃないぜ」

 

 一瞬感じた殺気は嘘だと思いたい。

 

「しー君、束さんは最近色々やってました」

「はい?」

 

 急にどうした?

 

「具体的には、自称科学者(笑)にISの事を教えたり。ISを独占しようとする馬鹿共を制裁したりしてました」

 

 ふむふむ。

 

「ふふふ……アイツ等はね、やれ日本語じゃなくて英語で話せとか、やれISの技術を提供しないと家族に手を出すぞとか……」

 

 束さんの目から光が失われていく。

 

「ふっざけんな~! 教わりに来たんだろ? なら相手の母国語くらい覚えて来いや! 箒ちゃんに手を出す? 社会的に殺してやるから掛かって来いや!」

 

 ふんがーと叫ぶ束さん。

 色々溜まってるんだね。

 

「しー君、束さんはね、やりたい事しかやりたくない派なんだよ」

 

 うん。そうだろうね。

 

「だからね、最近ストレスが半端ないのさ……なので、ストレス解消の為にも、やりたい事をやろうと思います!」

「それが健康診断なんですか?」

 

 解剖されなきゃ別にいいけど。

 

「しー君の身体を調べたい! その欲求をもう我慢出来ないんだよ!」

 

 テンション高いなぁ、楽しそうでなによりです。

 

「契約ですからね。了解です。くれぐれも常識の範囲内でお願いしますね?」

「いやっほ~! まずは血を頂くぜ~!」

 

 人の話聞こうぜ先生。

 

 

 

 

 血を抜かれた後、病院の手術着の様な服に着替えさせられベッドに寝かされる。

 体にはペタペタとコードを付けられ、ベッドの周りは見たことのない用途不明の機械に囲まれてる。

 

「さてさて、手は忙しいけど口は暇だからね。お喋りしよーぜしー君」

 

 束さんはベッドの横に立ちながら空中にディスプレイを出しせわしなく手を動かす。

 

「俺も横になってるだけで暇ですからね。賛成です」

 

 思いの外良心的な検査で気が緩み、眠くなってきたし丁度いい。

 

「よろしいならば尋問だ! しー君の秘密を全部暴いてやるぜ~」

 

 今日の束さんは本当にテンション高いな。

 

「ばっちこーい」

「しー君の好きな食べ物、嫌いな食べ物は?」

「好きなものは多いですね。甘いのも辛いのも好き、肉も魚も好き。てか食べるのが好き。嫌いなものはホヤ」

「しー君の好きなタイプは? 逆に嫌いなタイプは?」

「綺麗系より可愛い系、年齢はあまり気にしません。できれば趣味が合う人がいいな。嫌いなタイプは、アウトドアにヒール系を履いてくる人とマナーを守らない人」

「しー君てオタク趣味だよね? PCの中身もそんな感じだし。なのにアウトドアも好きって珍しいよね?」

「オタクのPCの中身は女子供が見て良いものじゃないぜお嬢さん」

 

 体が子供だから性欲がない、だからそんなにエグいのは入ってないが、後数年もすれば……うん、年頃の女の子に性癖モロバレとか死にたくなるな。

 

「それとアウトドア趣味とオタク趣味は一緒に楽しめるんですよ」

「そうなの?」

「例えば近くの山にキャンプをしに行くとしましょう」

「うんうん」

「自転車にテントとキャンプ道具を積みアニソンを聞きながら山を登ります。キャンプ場に着いたらテントを張り、湖に釣り糸を垂らしながらゲームをします。夜は釣った魚を焚き火で串焼きにして食べます。最後に寝袋に入りランタンの灯りでラノベを読んで就寝します」

 

 語っていたら行きたくなってきた、子供には夏休みと冬休みがあるからな。今から楽しみだぜ。ビバ義務教育。

 

「しー君も結構変わってるね」

 

 束さんの顔は少し呆れ気味だ。

 

「マイノリティなのは理解してますよ」

 

 今は時代が追い付いてないだけさ。

 十年後にはそれなりに同好の士がいるはず。

 

「そういえばしー君の口調戻ったね? 呼び捨てじゃなくなってるし」

 

 今更じゃない?

 

「アレはあの時だけの特別サービスです」

 

 オタクは女性にタメ口とか難しい生き物なんや。

 

「別に束さん的にはあのままでも構わないけど?」

「残念好感度が足りない」

 

 前世でもタメ口で話す女性なんて片手で足りる程度だったからな~。

 全員オタ友の女子だったけど。

 

「ふ~ん束さんはまだ好感度足りないんだ?」

 

 なぜか束さんの目付きが怖い。

 

「えーと、なんで怒ってるんです?」

「べっつに~、怒ってないし~」

 

 白地(あからさま)に不機嫌なんだが、これはまさか……。

 

「束さん、束さんにとって俺ってなんです?」

「ん? 急にどうしたの?」

「いいから教えて下さい」

「実験動物に決まってるんじゃん」

 

 フンッと顔を背ける束さん。

 やはりこれはアレか?

 

「そうなんですか。俺は束さんと友達になりたいと思ってたんですが……」

 

 寂しそうな顔をしてみる。

 

「そ、そうなんだ? まあ? しー君がどうしてもって言うなら考えてもいいけど?」

 

 落ち着き無く自分の髪を触る束さん。

 なんだろうこれ、心がホッコリしてきた。

 

「よくよく考えれば自分達はただの契約関係、IS貰ったら二度と会うこともないでしょうし、無理して仲良くする必要ないですね」

 

 少し意地悪なこと言ってチラリと横目で様子を観察する。

 そこには涙目で何かを我慢する女の子がいた。

 こうして見ると年相応の可愛い子だな。

 

「束さんはそんなに俺と友達になりたいの?」

「なっ!?」

 

 からかう様に問いかける。

 束さんは顔を赤くして口をパクパクさせてる。

 切っ掛けは前回の篠ノ之家での出来事だろうな。あの時、束さんの中で俺の立ち位置が変わったに違いない。

 それにしたって。

 

「ちょっと優しくされたくらいで簡単に心を許すなんてチョロ過ぎだろ。お兄さんは束ちゃんの将来が心配だよ」

 

 いやホント、俺がハーレム系転生者なら美味しく頂いてる所だよ。

 

「しー君?」

 

 ニヤニヤと笑っていたら、束さんの冷たい目がこちらを射抜く。

 

「血液の他に体液も欲しんだけどいいかな?」

 

 体液ってなんだろ。汗? 唾?

 俺の疑問顔を見ながら天災が笑う。

 

「精液だよしー君。精神的には大人なんだし、体は早熟だと思うんだよね」

 

 こいつは何を言っているんだろう?

 

「流石にまだ精通してないよ?」

 

 残念ながらまだお子ちゃまなんだよ俺は。

 

「う~ん、とりあえず前立腺刺激してみようか? それでイケルかもしれないし」

 

 可愛いお口から漏れる言葉が呪詛に聞こえるのは疲れてるからかな?

 ジッと束さんと見つめ合う。

 うん、こいつ本気だ。

 

 ダッ(ベッドから飛び起きて逃げる音)

 ガシッ(その肩を掴む音)    

 

「前にも言ったよね? 魔王からは逃げられないんだよ?」

 

 その言葉を耳に届くと同時に意識が薄れる。

 

「くそっ……たれ」

 

 そうして俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後、俺は部屋の角で体育座りしていた。

 夢だと思いたいがお尻の痛みがそれを否定する。

 久しぶりに泣いたよ。男として大事な何かを失ってしまったよ。

 

「しー君、ごめん、束さんが悪かったよ。だから機嫌直してよ」

 

 悪いと思ってるなら、さっきの俺の記憶を消してください。

 

「束さん、本当に悪いと思ってます? 束さんから見れば一夏に浣腸されたようなもんですよ?」

 

 束さんは頬に手を当て考えている。

 頬が紅く染まる。

 そのうち頬に手を当てたまま体をクネクネさせ始めた。

 駄目だこいつ早くなんとかしないと。

 

「篠ノ之さん、少しは反省してくださいね?」

「しー君?」

「何でしょう箒のお姉さん?」

「なんで名前呼んでくれないのかな~って」

「はっはっはっ。人の尻の穴を狙う変態と仲良くなりたくないからだよ」

「うわぁ~ん、しー君ごめんてば~」

 

 束さんが抱きついてくる。

 頭に当たる柔らかい感触に全てを許しそうになるのはしょうがないと思う。

 

「束さん、反省してます?」

「うん。流石の束さんも悪乗りが過ぎたよ。お詫びに近いうちにISを作ってあげるから許して?」

 

  いきなりの提案で驚いた。

  

「流石にそこまでしなくていいですよ? 反省してくれてるならそれでいいですから」

 

 気持ちは嬉しいけど、約束は約束だ。いくら親しくなったとは言えそこは破るべきではない。

 

「理由があるんだよしー君。なんでしー君がISに乗れるのか。それを調べるには身体データだけじゃなくて起動データなんかも欲しいんだよ」

 

 それは……わからないでもない理由だな。

 

「しー君、頬が緩んでるよ?」

 

 束さんがニマニマとしながらホッペをつついてくる。

 どうやら俺は笑っているらしい。

 

「さっきから束さんのおっぱいが当たってて気持ちいいからです」

 

 素直にお礼が言えないのはこの人が悪いと思う。

 束さんはゆっくりと俺から離れてにっこり笑った。

 

「少し頭冷やそうか?」

「ライディン!?」

 

 名言と共に電撃も貰う。

 桃色レーザーじゃないだけましか。

 電撃喰らいながら笑っている自分に苦笑しながらゆっくり意識を手放した。




友人A:プロローグとかと今だと書き方違いすぎない?
作者:最初はあんな感じで書きたかったんだけど、書きづらくて今の感じに落ち着いた。
友人A:習作だからって適当すぎね?
作者:ごめんなさい。

 少し直しました。m(_ _)m

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