IS 一夏は俺のライバルだ!   作:SINSOU

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長らく置いてしまい、申し訳ありませんでした。
また不定期になってしまうことを、先に謝罪します。


俺の特訓+ライバル+α part2

「いっちにっ!いっちにっ!」

 

俺の動きに合わせて、軋む音が聞こえる。

 

「いっちにっ!いっちにっ!」

 

俺の動きに合わせて、砂煙が舞う。

 

「いっちにっ!いっちにっ!」

 

俺の動きに合わせて、それが俺に呼応する気がした。

 

 

 

「あー、つっかれたぁー!」

 

俺は滝のような汗をかきながら、その場で大の字になった。

地面から見た景色は、真っ青な空と白い雲、うむ、快晴快晴!

そんなことを思ってはみたものの、俺の身体は疲労に伏していた。

 

やっぱ、実際にやってみないとわかんねぇな。

俺は自分の状態を省みて思い知らされる。

小説だとなんか軽くやれそうだったけど、やっぱ現実は違うぜ。

思ってたよりもきっつい。

あー、それにしても地面がひんやりして・・・・・・ねぇじゃねぇか!

あっつ!焼けちゃう!こんがり焼けてステーキになっちゃうだろうが!

俺は慌てて身体を起こすと、一目散に休憩室へと転がり込んだ。

 

 

よっす、『如月あきら』だぜ。今、何してたかって?

ISに乗ってたんだよ、きたるセシリア・オルコットさんとの試合に向けてな。

肉体というか、体力をつけるための特訓は、

俺と一夏、それに飛び入りの箒ちゃんと共に、毎朝のランニングなどで頑張ってるわけだけどな。

やっぱ、それだけじゃ駄目だと思ったんだよ。

 

ちなみに、山田先生に頼み込んで、俺と一夏の訓練機を確保して貰った。

決定戦までは、データ収集も兼ねて、俺と一夏の専用機になってもらった。

訓練機は、搭乗者に合わせるために、毎回データをリセットされている。

試合に向けてデータをとったのにリセットされてありません、なんてのは流石に酷いからな。

 

そう、そもそもIS、インフィニット・ストラトスで試合をするのに、

ISに触ってない時点でおかしいじゃん!という訳だ。

一夏にも言ったが、道具に触れてないで試合に出ようなんてのは、

テスト勉強をせずにテストで満点を取ろうとすることだ。

はっきり言って無理。

それに、これはテストじゃなくて試合、相手のいる戦いなんだから、更に無謀が追加される。

その上、相手は性格が螺子曲がっているが、実力は代表候補、うん、無理ゲー。

 

と、言うわけで、少なくとも基盤だけは整えたいと思い、俺は山田先生の許可を貰い、

ISの訓練機を借りて、特訓しているわけだ。

ちなみに、さっきのはISに乗って、アリーナを走ってた。

 

あ、俺のライバルは、箒ちゃんに引っ張られて剣道場に引き摺られていったよ。

 

「一夏!肉体面だけでは駄目だ!精神面も鍛える必要がある!」とかなんとか言って。

 

まぁ、精神統一とかは武道でもやってることだから、強ち間違いじゃないんだけどさ。

 

「終わったらこっち(訓練場)に来いよー。来なかったら迎えに行くからなー」

 

「いや止めてくれよ!俺はあきらと訓練す・・・って、箒!待った!襟が千切れるから!」

 

そんな感じ。

今頃一夏の奴、箒ちゃんと剣道をしてるんだろうなぁ・・・。

取りあえず、彼奴のために飲み物でも買っといてやるか。

 

そう思いながら、俺は休憩室で涼んでいると、扉が開いた。おう、噂をすればって奴か。

 

「おい一夏、これから飲み物買って来るけど、何を飲・・・」

 

「お生憎様、ワタクシですわ」

 

その声に、俺は目を細めて振り返った。

 

そこにいたのは、金髪の縦ロールが特徴的な、お嬢様が立っていたのだった。

 

 

 

 

 

「で、何しに来たんですか、セシリア・オルコットさん?あ、もしかして視察ですか?」

 

「いいえ、個人的な事でお話をしたかっただけですわ。

 山田先生にお伺いしたところ、ここで訓練をしているとお聞きしまして」

 

「そうですか。それで俺に何を訊きにわざわざここまで?」

 

俺は目を更に細めた。

要するに、視察する必要もないということですか。

解ってはいたけれど、その事実に、右手の拳に力が籠る。

その姿を知ってか知らずか、セシリア・オルコットは俺の目を見ながら口を開いた。

 

 

「なぜ、織斑一夏を助けるのですか?」

 

「・・・はぁ?」

 

俺はその言葉に口を開けてしまった。

セシリア・オルコットの言っている意味が分からない。

俺が一夏を助けている?違うな、俺は一夏を助けてなんかしていない。

 

「あの代表戦が決まった後、ワタクシは織斑一夏とあなたを見ていました。

 ええ、不思議なほどにあなたは織斑一夏と共にいます。

 それこそ、特訓と称して織斑一夏を鍛えているではありませんか」

 

え、ずっと見ていたんですか。それってスト・・・

 

「今、とても失礼なことを考えませんでしたか?」

 

セシリア・オルコットの視線が痛いです。

取りあえず、仕切り直しとして咳払いを一つ。

 

「それのどこがおかしいんだよ」

 

セシリアは溜息を吐き、俺を見た。

 

 

「ワタクシから見て、あなたの実力は素人ながらも、なかなかなものと見ました。

 まぁ、ワタクシには遠く及びませんが」

 

「それ、褒めているんですか?」

 

「もちろんです」

 

セシリアの顔は、まるで子供を諭す教師のような表情をしている。

その表情が少し歪む。

 

「ですが、織斑一夏は違います。

 多少なりと素質はあるようですが、あなたと比較すれば差は見えます。

 ですから、ワタクシは不思議なのです。なぜ、あなたは織斑一夏を助けるのか」

 

「そんなのは俺の勝手だろ」

 

なんだろ、セシリアの言葉に、俺の何かがピリピリと感じる。

なんだろ、言葉に出来ねぇ。

 

「それこそワタクシには理解できませんわ。そもそも織斑一夏は・・・」

 

「おい」

 

駄目だ、なんかムカついた。

 

「お前に・・・一夏の何が解る?」 

 

いかん、すっげぇ腹が立った。

 

「!?」

 

セシリアが驚く顔をするが、構うもんか。

もう取り繕う気もない。

 

「確かにアンタの言う通りかもな。あいつは見た目がイケメンなだけかもしれねぇ。

 何も知らないアンタからすれば、わかんねぇだろうな」

 

俺はセシリアをまっすぐ見つめる。

 

「でもな、俺は知ってる。あいつはすげぇ奴だってな。

 それこそ、料理・洗濯・炊事なんて出来て、お嫁さん候補に挙がるんだぜ?

 勉強だって、基礎さえ覚えりゃ普通に出来る。剣道をやってたから体力だってあるんだよ。

 俺が教えたし、鍛えもしたからな。

 素人?は!誰だって初めは素人だろ!素質があれば十分だ。一夏は絶対にすげぇ奴になる!

 それにな」

 

俺は笑う。

 

「あいつは俺が認めたライバルだ。それで十分なんだよ」

 

「」

 

「うん?どうしたセシリア・オルコットさん?」

 

 

俺の呼びかけに、セシリアははっとして我を取り戻したのか、俺を見据えてと笑った。

 

「良いでしょう。そこまで言うのであれば、ワタクシもお相手しなければなりませんね。

 試合、楽しみですわ!」

 

「おう、全力で立ち向かってやるからな!」

 

俺の言葉を背に、セシリアは扉から出て行った。

あれ、もしかして俺、すっごい拙いこと言ったのか?

俺は自分の発言を思い出そうとするが、さっぱり出てこない。

うーん?うーん?と頭を捻っていると、また扉が開く。

 

「悪い、あきら。箒と試合してたら時間を忘れて・・・ってどうしたんだよ?」

 

見ると、一夏が息吐きながら入ってきた。

 

「あ、なんでもねぇよ。それより剣道はどうだったよ?」

 

「あー、やっぱ久々にやると感覚がズレててさ、箒にボロボロ」

 

どうやら俺の予感は的中したみたいだ。

いや、加減してあげてよ箒ちゃん・・・。

 

「おいおい、大丈夫か?試合前に怪我で棄権しました、なんて笑えねぇぞ」

 

「まぁ、それは大丈夫・・・じゃないかな。取りあえず、後で箒と話すし。

 それで、お前の方はどうんだよ?」

 

俺は一夏に、先ほどの訓練で思ったことを話す。

 

「やっぱ思ってたよりもキツイ。こりゃ、貸出時間ぎりぎりまでやらなきゃ駄目だわ」

 

「マジか。やっぱISって大変なんだな」

 

「阿呆、それに乗って俺たちは戦うんだから、バカな事言ってんじゃねぇ。

 さっさと訓練を始めるぞ・・・とその前に、飲み物買ってくるから。何か飲むか?」

 

「ありがとな。じゃあ、スポーツドリンクがあればそれで。お金は後で渡すわ」

 

「おう、取りあえず準備しておけよ」

 

俺は扉から休憩室を出て、自販機へと足を運ぶ。

そして、一夏のお望みのスポーツドリンクとミネラルウォーターを購入。

 

さて、飲んだらもういっちょ頑張りますか!

そういって俺は、自分に活を入れ、休憩室へと走るのであった。

 

 

「よっしゃぁいちかぁぁぁぁ!これからISを来てアリーナを走り回るぞぉぉぉ!」

 

「サーイエッサー!」

 

 

 

「取りあえずエネルギー消費の計算するぞぉぉぉぉ!今から俺がお前を殴る!」

 

「ちょっと待て!いきなり何を言いだすんだよおまえは!」

 

「あきらぁ!一体何をしているんだぁぁぁぁ!?」

 

 

 

「山田先生、俺たちの特訓を見て貰ってもいいですか?」

 

「よろしくお願いします!」

 

「え?え、ええ!私は先生ですからね!生徒の頼みはしっかりと聞いてあげませんと!」

 

 

 

「大分データが溜まって来たな。でもまだまだ行くぞ一夏!」

 

「おう!」

 

 

 

そんなこんなで、俺は一夏と共に訓練に明け暮れた。

それがたとえ付け焼刃だとしてもだ。

そして時間は過ぎていき、クラス代表選の日がやって来たのだった。  


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