「グッドモォォォォォォニングイチカァァァァァ!!特訓の時間だぁぁぁ!」
俺は、一夏が寝ているであろう寝室の扉を、叫びながら思いっきり開けた。
「アキラは昔と変わらないなぁ」
俺の開口に相変わらず平然としている一夏。
扉を開けると、既にジャージに着替えていた一夏が立っていた。
その顔は、俺の姿に懐かしさと苦笑を浮かべてやがる。
くそ、俺の早朝ドッキリは見事に見透かされていたわけか。
俺の大声で飛び起きる、おねむな一夏の顔を見て大爆笑してやろうと思ったのに。
そして、携帯電話のカメラで、その様を写真におさめる算段もあったのに。
もちろん、一夏を弄るためだけになぁ!
おのれ一夏!俺の作戦を回避しやがって!
やっぱ、こういう時のフラグ回避は厄介すぎるんだよ!
まぁ、スーパーワンサマー計画(俺考案)の際に、毎日早朝ランニングやったからなぁ。
始めの時は、一夏にも冗談だと思われていたが、翌朝からの俺の出迎えに、
「え、あれ本気だったのか!?」と驚いていたっけか。
時には、寝不足の千冬さんと遭遇して、アイアンクローの洗礼を受けたっけなぁ。
いかん、思い出したら頭が痛くなってきた。
「?どうしたんだ、アキラ。頭を抱えて」
「なんでもないナンデモナイノデス。古傷が痛むだけナノデス」
「?」
俺の言葉に、頭からクエッションマークを浮かべるように訝しむ一夏。
「そんなことはどうでもいい、重要な事じゃない。
さて、決戦まであと6日。それに向けて徹底的にやるぞ、一夏二等兵!」
「了解しました!如月教官!」
一夏の言葉に、俺は満足げに頷くと、二人で特訓のためにグランドへ向かおうとし、
「ちょっと待て!」
呼び止められた。
「うん?」
俺と一夏が振り向くと、俺たちを睨んでいる箒ちゃんがそこに立っていた。
あ、そういえば原作だと一緒にいたんだっけか。
やべぇ、あの時のノリでやったせいで起こしちゃったみたいだ。
「すまん箒ちゃん!俺のせいで起こしちゃったみたいでさ。
今度からは静かに侵入して、一夏にだけドッキリ起床をするから!
だから今日のことは、昼食の奢りで勘弁してくれないか・・・?」
「毎回ドッキリをする前提なのかよ」
俺の謝罪に、一夏がすかさずツッコミをいれる。
何を言うんだ、一夏君。
常日頃から物事に対処できる第六感を鍛えようと、俺は心を鬼にして・・・。
「それ絶対嘘だろ」
「やっぱ騙されんか」
少しジト目で睨まれたので、流石に白状する。
うん、引き際は大事ですよ。これ、友達の関係を維持するには重要だよ?
そんな俺と一夏のボケとツッコミに半ばポカンとしていた箒ちゃんだが、直ぐに真顔に戻った。
「お前たち二人は、今からどこに行くつもりなんだ!?」
「校庭でマラソン」
「右に同じく」
俺と一夏の一言に、箒ちゃんは面食らったようだ。
「なぜ!?」
「来るべき戦いに向けて」
「取りあえず鍛えようかなってさ」
箒ちゃんが膝から崩れ落ちた。あれ?変な事言ったか?
俺は一夏と顔を合わせて首を傾げる中、箒ちゃんがすくっと立ち上がり、叫んだ。
「わ、私も参加する!」
おはよう諸君!
ただ今来るべき決戦に向けて、
我がライバルにして原作の主人公、一夏と共に特訓をしている『如月あきら』だ。
何故かヒロインの箒ちゃんも一緒にいるんですけどね!
俺たちは今、校庭を走っている最中なわけだ。
なんでって?
だってISを使うにも、朝っぱらから練習機を使わせてもらえるわけないし、
かと言って座学の方は、下手に予習をすると、授業との差で余計に混乱するだろう。
だから、今は肉体を鍛え上げることにしたという訳なのです。
まぁ、いくらISで戦うとは言え、人間は身体が資本。
ISが強くても、乗り手がそれに追い付けられないなら、それは宝の持ち腐れ。
逆を言えば、肉体が丈夫ならば、多少の無茶は出来るってことだ。
そういえば、一夏とかけっこして病院に運ばれたなぁ・・・。
とはいえ、無茶をするのも限度があるってことだ。
思いにふけっている俺と同じように、何かを考えていた一夏が懐かしむように呟く。
「そういえば思い出すなぁ。前も同じように、あきらとマラソンしてたっけ」
「なんだよいきなり。
まぁ、情けないお前を鍛え上げるために、俺が誘ったわけだけどな」
「なん・・・だと・・・?」
来たるべき原作に向けて、俺が一夏を鍛え上げるためにやっておいたわけだ。
一夏がへぼいと、ライバルの俺も情けなくなるからな。
だから、あの時(と言っても去年だが)は、俺も必死になってた。
正直、自分勝手だったと反省するが、それでもついてきた一夏には感心した。
やっぱ一夏は凄い、ってな。
「まさか、またこんなことをやるとは思いも寄らなかったけどな。
しかも、あきらまで一緒とか、まんま去年と同じだろ」
「それはこっちの台詞だ。腐れ縁もここまで来ると笑い話になるぜ。
あーっと、箒ちゃん大丈夫?
なんか顔が赤いけど無理してない?あと少しだけど、休んでも良いよ?」
「む、無理などしていない!
それよりもだ、去年も同じとはどういうことだ!?説明しろ!」
なんか不機嫌な箒ちゃんに、俺たちは困惑しながらも、朝のマラソンをやり遂げた。
その後、去年に俺たちが特訓をしていたという説明を受けた箒ちゃんは、
俺をキッ!と睨みつけながらも、しばらく考え事をした後に、
なんか自己完結したようにうんうんと頷き、どうにか納得してくれたようだ。
ところで俺、箒ちゃんに睨まれる、
いや、怒らせるようなことをした記憶が全く無いんですが・・・。
だって、大会の応援とかにしても、箒ちゃんに変なことはしてないし。
というか、仲良くなりたいヒロインの一人なのに、変なことする訳ないでしょ?
ほんと、まったく理由が解らないんだけど。
「なあ一夏、俺、何か箒ちゃんに怒られるようなことした?」
「うーん、俺もさっぱり」
「二人とも何をしている!?早くしないと授業が始まるぞ!」
俺と一夏が互いに疑問の顔で見合わすと、箒ちゃんの声が響いた。
学園の時計を見ると、時計の針はかなり進んでいたらしく、
着替えやら朝食などの時間を含めて、HRにギリギリな感じだ。
「拙い!遅れたら織斑先生に怒られる(地獄を見る)!
じゃあな一夏!また教室で会おう!」
「おう!」
俺は一夏と共に、先を行く箒ちゃんを追いかけるように走ったのだった。
放置気味になって申し訳ありません。
スランプな感じになってしまい、
不定期ですが、少しずつですが進めていきたいと思っています。