空気を読まずに自推しようとしたら、推薦されてしまった『如月あきらだ』
のほほんさんのインターセプトにより、俺の手は中途半端に止まってしまった。
やっべぇ、みんなが俺を見てるよ。すっごい見てるよ。
セシリアさんや一夏に、織斑先生と山田先生も見てるよ。
みんなの視線を一身に受け、俺は手を挙げようにも挙げれないし、下そうにも下せない。
すっごい恥ずかしい。顔が熱くなるってほんとなんだな・・・。
手を挙げようとしたのは俺だけど、そんなに見ないでください。
「そうか。
如月、推薦されたということで、
お前も織斑やオルコットと戦うことになるが、本当に良いんだな?」
千冬さんは俺の目を見ながら言ってきた。
まるで、最後の確認のように。
「ああ、もちろんだ。俺は言ったはずだ。
一夏を馬鹿にする奴を、俺は許さないってな!」
ニヤリと口元を歪め、セシリア・オルコットを見返す。
「それに、国の専用機持ちと戦えるんだ。
これはまたとないチャンスじゃん!
だったら、俺はそのチャンスをものにするつもりだぜ!」
俺の言葉に、セシリアは「あら?」と俺を面白そうに見てきた。
俺の言葉に思うところがあったのか、
千冬さんは「そうか、ならいい」と言った後、クラス代表を締め切った。
「なぁ、あきら、お前本当によかったのか?」
「何が?」
放課後になり、一夏が俺の所にやってきて、開口一番にそう言ってきた。
そんな俺の言葉に、一瞬呆けた一夏だが、すぐに真顔になった。
「なんか俺が巻き込んじまったような感じがして、
もしかしたら、本当は嫌なんじゃないか?って思ってさ。
もしそうなら、俺が千冬姉になんとか・・・」
「てい」
俺は一夏の言葉を遮ろうと、一夏の頭にチョップする。
「いきなり何するんだよ!」
「ばーか、お節介なんだよ。言っただろ、俺はお前を馬鹿にする奴を許さないって。
お前とライバルの俺が、強敵に立ち向かうってのも、悪くないだろ?」
俺の言葉に、一夏は苦笑いしながら「なんだよ、それ」と言ってくる。
「イギリス代表候補生とやり合えるなんて、凄い事じゃん。
いきなり世界のレベルを知られる、またとないチャンスってことだ。
それに」
俺は、一夏の顔に顔を近づけ、真顔で言う。
「千冬さんを守りたいんだったら、こんなことで躓いてる暇はないぜ」
俺の言葉に、一夏は顔を引き締め、「そうだな!」と答える。
うん、良い顔になったじゃないか。これで俺も頑張れるってもんだ。
「な、なにを二人で内緒話をしているんだ!もう少し距離をとれ!」
「え、いや内緒話って訳じゃ・・・」
顔を真っ赤にした箒ちゃんが、声を上げながら近づき、戸惑う一夏を引っ張る。
いや、そこまで気にすることでは無いでしょうに。
「箒ちゃんは可愛いなぁ」
「な、バ、バカにするなぁ!」
からかう俺に対し、まるで熟れたリンゴのような顔になった箒ちゃんに、
さっきの話を説明した。
「ま、まぁ、事情は解った。
ところで本当に二人はどうするつもりなんだ?
相手はイギリス代表候補生で、お前たちは素人同然だ。
普通に考えたら、万に一つも勝機はないぞ」
「ですよねー」
箒ちゃんの言葉を肯定する俺に、一夏が驚く。
「え、そんなにヤバいのか・・・?」
「例えるなら、国の代表アスリートに挑む、小学生ってレベルだ」
「いや、逆に分かりづらくないか?」
俺の説明にすぐさまツッコミを入れてくる一夏。
うん、調子が戻ってきて俺は嬉しく思うぞ。箒ちゃん、俺を睨まないでください。
「さて、問題が多過ぎて手の付けようがないのだが、
とりあえず目先のことに目を向けなきゃな」
「なんだよそれ」
俺の言葉に一夏が首を傾げる。箒ちゃんも頭に?が浮かぶのが見える。
「俺たち、ISに数回しか乗ってないから、どうにかしてISに慣れる必要がある」
その言葉に、二人はなるほど!と納得した顔をする。
取りあえず、一夏には「納得するな」と再びチョップを軽くした。
現状、ISに慣れている、慣れていないという差は、戦うに辺り大きな差になる。
それこそ、使い慣れた道具を使う職人と、道具を扱いなれていない素人ならば、
その使い方に差が出るのは当たり前だ。
況してや、相手は専用機を与えられ、訓練を受けている訳だ。
だったら戦うに辺り、最低でも俺たちも道具の使い方に慣れる必要がある。
というわけで、1つ目の目的は、『ISの訓練をしてISに慣れよう』だ。
ぶっちゃけ、使い方も知らない物を持たされて、戦うなんて、どうあっても無謀です。
それこそ、訓練もなしに実戦で大活躍!なんて、アニメやゲームの世界だ。
これライトノベルで、アニメ化やゲーム化もしたけどね!
ゲームの方はギャルゲーっぽいけどな!
話を戻すが、
原作では、箒ちゃんとの剣道と他生徒に追い付くための勉学だけで、
ISに触れたのは、決戦を含めて数回というね。
決戦にしたって、ちゃんとした処理もされてなくて、中途半端のままで戦うっていうね。
あのね、確かにゲームやアニメでは燃えそうな展開だけど、
リアルに考えたら、どう見ても問題だらけだよね?
そして、それに負けかけるイギリス代表候補生。
あれ?セシリアさんの株がどんどん落ちていくんですけど・・・。
うん、気にしない。なぜなら今の彼女は敵だから!
敵の心配をするとか、相手の侮辱になってしまうからね。
というか、自分たちの方が大変だから!
「というわけで、俺と一夏はIS操縦の訓練をする必要がある」
「え、俺、千冬ねぇから、俺の専用機が作られてるみたいだから、・・・」
「てい」
再び俺は一夏に手刀をするが、今度は受け止められた。
ふ、やるな一夏!
「一夏、お前はテストをする時、テストが制作中だからと、勉強をしないのか?」
俺の言葉に、一夏は首を振る。
「同じことだ。ISだって、性能は違えど大まかな機能は同じ。
動かす要領は、どんなISでも同じなはずだ。
だったら、訓練機で基礎を修得しておけば、それを専用機にも応用できる・・・と思う。
それに、一夏の訓練データなんて、開発側からすれば垂涎ものだよ」
それこそ、白式がパワーアップするんじゃないかな?と思えるほどに。
ぶっちゃけ、専用機と称して、搭乗者のデータも取ってないのに、
自分たちが作った機体を渡すのも問題だし、
素人にブレードオンリーの機体を渡す時点で頭がおかしいのに、
専用武装がEN馬鹿喰いでバリアー貫通とか、どうみても虐めとしか思えないんです。
開発者ぁ(原作者ぁ)!一夏を虐めて楽しいのかコンチクショー!
「というわけで、俺と一夏は今日からIS訓練を開始する・・・・と言いたいんだけど、
手続きを申請しないといけないから、今日は無理なんだよねー」
俺の言葉に胸を撫で下ろす一夏。
だが、安心するのはまだ早いんだな、これが。
「ところで一夏、勉強の方はどうだ?」
「あー・・・それなんだけどさ・・・」
「うん?どうしたんだ・・・?」
俺の言葉に、目を逸らす一夏。そしてそれを見つめる箒。
原作だと、一夏はうっかりで電話帳と間違えて、教本を捨てるというミスをしてしまい、
一週間(セシリアとの決戦まで)で、内容を把握するという苦行を強いられることになる。
いや、なんで間違えるんだろうか?表紙とか見ないのかな?
まぁ、教本を失くしたのなら、俺の物を貸してやらんでもないがな。
俺と箒の視線の中、一夏は頭を掻きながら、
「いやー、一応読んだんだけどさ、
専門用語が多すぎて、内容が入らないっていうか、正直半分くらいしか解らないんだ」
と答え、
「それでは授業に付いて行くのも大変ではないのか?」
「それが心配なんだよなぁ・・・」
箒の言葉に、一夏は苦笑いをする。
だが俺はその言葉で頭に衝撃が走った。
「なん・・・だと・・・?」
俺は混乱した。
一夏が教本を無くさない・・・だと?しかも一通り読んでいるだと?
い、一体何が起きたというんだ!?どういうことだ、原作と違うじゃないか!
いやそれを言ったら、既にめちゃクチャなんだけどね?
「どうしたんだよ、顔なんか強張らせて」
「いや、なんでもない。なんでもないのデス」
「?」
内心パニック状態の俺は、なんとかその場を取り繕うことが出来たと思う。
そんな状態な俺に、首を傾げる二人。
だが、直ぐに一夏の話に戻った。
「しかし、本当にどうするつもりだ一夏。このままでは授業に支障が出るぞ?」
「そうなんだよなぁ。
先生に教えて貰うにも、山田先生は忙しそうだし、千冬姉に頼るのはなぁ・・・」
山田先生、今すぐここに来てください。ここに困っている生徒がいますよ。
先生として大活躍が出来ますよ。先生と生徒の個人授業ですよ。
というか、山田先生なら寧ろバッチコーイ!だと思うぞ?
まぁ、千冬さんは、断わるだろうけど、内心では心配してると思うし。
「いや、山田先生なら多分だ「誰かに教えて貰うにしても、知り合いは箒とあきら位だし」
「私も教えてやりたいのだが、いかんせん、一夏と同じで専門用語が少し・・・」
「箒もそうなのか、なら俺と一緒かぁ。やっぱ俺と箒は通じ合う仲だなぁ」
「な、なななな!?一夏!お前は何を言っているのだ!?」
「あきら、箒はどうして慌てているんだ?」
「お前は自分のルックスと発言をもう少し考慮するべきと、俺は言っておく」
一夏、首を傾げるんじゃない。お前を殴りたくなるから。
「となると、やっぱ頼みの綱はアキラになるのか」
「ふむ、そうなるな」
「いや待て、何で俺が教えるのが決定してるの?」
「え、駄目?」
まるで想定外な風に驚く一夏。
「なんで俺が教えなきゃいけないんだよ。
大体、無条件で教えて貰おうとか、俺は都合の良い存在じゃないんだが。
それに、教えて貰うにしても、ちゃんとした態度があるだろ」
「よろしくお願いします!あきら教官!」
「!?」
「「「「!?」」」」
一夏の言葉に俺は満足げに頷く。
頼られるのは嫌いじゃないけど、自分から教わりたいと思わなければ、
教えている側だって熱が入らないと思うんだ。
「よろしい!では明日から、打倒イギリス代表に向けての特訓を行う!
では行くぞ、織斑一夏訓練生!今日から体力向上のためにランニングを行う!
終わったら明日に向けての予習を行う!覚悟しておきなさい!」
「了解しました!」
「ふ、二人とも、一体どうしたんだ!?」
俺と一夏の変貌に混乱する箒ちゃんを余所に、俺たちは続ける。
「では今からランニングだ!俺につづけぇ!」
「イエッサー!」
「騒がしいぞ馬鹿者共がぁぁぁぁ!」
織斑先生に絞られました。