織斑一夏は、現実を受け入れることに必死だった。
当たり前だ、今起きていること自体が、本人からしたらなぜ!?なのだから。
藍越学園に向けて、あきらや弾等と勉強会を重ね、
「オールオッケー!合格してこいやぁー!」と皆に背中を押されて、
自信をもって試験会場に向かっていったのだ。
何度も試験会場を確認し、わざわざ試験時間に間に合うよう、時刻表までも用いた。
試験に関しては、勉強会の賜物だったのか、気負いすることなくすらすらと解けたと思う。
そして休憩時間の際、
たまたま同じ会場で行われていたIS学園の試験会場になぜか足を運び、
たまたま休憩時間だったのか、会場に置かれていたISを目を留め、
なぜか興味本位に手を触れた瞬間、なぜかISが起動してしまったのである。
その後は、必死にISを解除しようともがくも、
その際に止めようとした試験官を避けてしまい、偶然にも試験官を再起不能にし、
エネルギー切れでようやく止まった後は、もみくちゃにされながらも取り押さえられた。
ISから降ろされて取り押さえられた後、千冬姉が「一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と、
絶叫しながら走り込んで来たのは覚えているが。
その後、自分がISを動かしたということを知らされ、
「あの兎め・・・今度は何をたくらんでいるんだ・・・」と聞こえたが、
とりあえず考えるのは止めにした。
その後は、女性しか動かせないISを動かしたことで、
日本政府に連れて良かれて色々と事情を聴かれ、インタビューやら記者会見やらと、
しばらく自分の名前がニュースや新聞に載りまくったのである。
初の男性IS操縦者ということと、千冬姉がブリュンヒルデであったことも、
新聞やニュースが目を付けたというのも相まっているのだろう。
当の自分は全く混乱の渦中であった故に、
何を聴かれ、何を答えたのかすら曖昧だったのだが。
また、一夏がISを動かせたということで、全世界ので男性のIS起動調査が行われたという。
そして、IS男性操縦者ということだが、これがあまりにもヤバいという。
何故ならば、ISは女性しか乗れないという事実が覆されたからだ。
これはISを傘に女性の権利を主張していた団体や、女尊男卑を促進させた人々にとっては、
ひじょーに面白くないという。
ISは女性しか使えないという特権に罅が入ってしまったからだ。
下手をすると、一夏を調査することで、後々男性もISを動かせる可能性が生まれたのだ。
結果、もしかすると不慮の事故に巻き込まれてしまうかも、と言われた時、
一夏は半笑いをしながら、内心では泣いた。
日本政府、いや世界各国の判断なのだろうか、
初の男性操縦者であり、貴重なサンプ・・・もといモルモ・・・、
貴重な存在であるため、特例として一夏はIS学園に入学することになった。
そうした報道が落ち着き、ようやく自分の時間が出来た一夏は、
こういった理不尽の愚痴を、弾の家に遊びに行った際に零した。
「IS学園って女の子の園じゃねぇか!いいなぁ、この野郎」と言って来たので、
「だったら代わるか?俺の胃は助かるけど」と言ってやった。
弾の家に行く際に、あきらを誘ってみたが、生憎あいつは家にいなかった。
あきらの母親によると引っ越しをする準備だとか。
言ってくれれば手伝うのに、内心悲しくなったが、
何か手伝えることがあったら呼んでください、と伝えておいた。
その後、あきらと会うこともなく、IS学園に入学式となった。
IS学園はアラスカ条約によって創られた、IS関連を学ぶ国立高校である。
操縦者だけではなく、メカニックなどの人材がここで育成されてると言ってもいい。
もちろん、一夏をのぞいて生徒は全て女性である。
施設に関しては、アリーナや食堂に寮など、一通りが揃っている。
さて、入学式に出たものの、はやくも一夏の胃は痛みだしていた。
当たり前だ。
IS学園へ足を運ぶ間から、ずーっと何かしらの視線を感じているからだ。
まぁ、一夏自体が半ば有名人であるため、好奇心の視線やら、
男性に対する警戒心を持った視線やら、千冬姉の弟という嫉妬の視線やらと、
360度から常に視線に晒されているのだ。
弾のように女性の園だー!モテモテヒャッホーイ!と喜べるわけがない。
そうした中、入学式を終え、クラス分けの教室に移動し、自分の席に腰を下ろす。
どんなクラスメイトか視線を移動すると、意外な人物が目に留まった、箒だ。
去年、運悪く全国大会へ応援に行けなかったが、事前に電話で応援のエールを送り、
優勝した際には、同じく電話で長話をした。
箒は中2の剣道大会で出会ったころよりも、すこし綺麗に見え、
時間があったら声をかけようと思った。
その後、副担任の山田先生が入り、生徒の反応に半ば心を折られかける姿を見せながら、
順調に自己紹介が行われていく。
気付けば一夏の番であり、
「織斑一夏です!以上です!」と言ったら、千冬ね・・・千冬先生にチョップを喰らった。
内心、(千冬姉が担任だって!?あ、俺は生き残れないかもしれん)と考えたら、
まぜかまた千冬チョップを喰らった。
二度によるチョップの痛みに耐えていると、予想外の声を聞くことになった。
「俺の名は如月あきらだ!趣味は粘土工作からお菓子作りまで1通りやれるぞ!
そして、俺はそこにいる織斑一夏のライバルだ!
一夏を馬鹿にする奴は俺を馬鹿にすると言ってもいい!
もしもそんなことを考えている奴がいるというのなら素直に言え!
俺たちが全力をもって迎え撃つ!
そしてアキリンと呼んだ奴は、すべて煉獄に落とす!以上!」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
気が付けば、一夏は箒と一緒に叫びながら後ろを振り向く。
そこには、「どうやら、運命は俺とお前をライバルと認めたようだな!」
二人に笑顔で仁王立ちをしているあきらがおり、その後、千冬先生に教職簿チョップされた。
もう両方書いてもいいんじゃないかな、と思う私がいる。