ありがとうございます!!
その試合は、見てる人の視線を独り占めしていた。一人の少年によって……。
「……すごい…、どうして中学の時見つけられなかったんだろう……。」
圧倒的なドリブル力、ディフェンス力……。
どれをとっても周りより頭一つ分抜けていた。
特に……
「赤司くんみたいなパスだね……。」
マネージャーの桃井にわかるほど、真宮のパスセンスは常軌を逸していた。
どこにいても、どんな状態でも的確に正確なパスを出していた。
「……。」
誰もが真宮に目を奪われ、目を見開いている時にただ一人、青峰だけは違和感を感じていた。
―――何かが変だと
「さつき、真宮の得点なんぼだ。」
「そうくんの?……あれ?0点……?」
「!!」
青峰の違和感の招待が、解明された。
そう、あれだけのパスセンスとドリブル力を持ち合わせていながら、真宮は一つもシュートを入れていないのだ。
「ごめん、大ちゃんっ!どっかでつけ間違えたかも……、直してくる!」
「その必要はねぇよ、さつき。間違ってねぇよ、それ。」
「えっ??」
誰もが点数とっているのが当たり前だと思ってしまう。青峰自身も真宮は得点をとっていると思ってしまった。
それでも、実際は無得点。
それはある効果が発揮されているのだ。。
「存在感の問題か……。」
「……?」
「圧倒的な力を持つ相手が攻めてきた時、人が無意識にまず考えるのはシュートだ。
真宮のディフェンスは、1クォーターの間でそれを何回も経験して、自分の記憶にセーブされていく。だが、多分それが真宮の狙いだ。」
「……??」
青峰の話に理解が追いつかない桃井。
「あー、簡単に言うとだな、テツのが
シュート、シュートってずっと思ってるから、段々他のところに思考が回らなくなんだよ。
ディフェンスは真宮のシュートを止めようとする。でも実際は真宮はシュートはしてねぇ。全部パスしてるからな。にも関わらず、ディフェンスには、その記憶がセーブされねぇんだよ。シュートの記憶が強すぎてな。
加えて、得点も入ってるからな。」
と言っても、そんなことが出来ること自体が既にとんでもないことだった。
打ってもいないシュートの記憶を植え付けるほどのオフェンス力。
そして、すべてパスにまわすパスセンス。
「マジシャンズ・セレクト……。
聞いたことはあるけど、こんな所で使う人がいるなんて……。」
「とんでもねぇ、一年が入ってきたな……。」
それでもまだ引っかかる。
『どうして、真宮はシュートをしないのか。』
彼ほどの能力があれば、それは簡単なはずだった。
「だ、大ちゃんっ!!」
それは青峰が目を一瞬話した隙に起きた。
「あぁ?」
「テ……テツ………くん…………。」
「テツ??」
一階で見ていた若松らも、目の前で起こった出来事が信じられなかった。
「キャプテン、今のって……。」
「……まじかよ。」
「さつき、何が起こったんだ?」
「い、今……そうくんが……、、、。」
驚きの波紋はコート外だけでなく、コート内でも広がっていた。
「すみません、突然で……。」
「い、いや大丈夫だけどよ……。」
「では、本気で行きます。ボールから目を離さないでください。」
「お、おぅ。」
再開する試合。
青峰は、全員が驚く理由をすぐに理解することになる。
「なっ……!?」
真宮が、
フロントコートに入るとすぐに、待っていた真宮にパスをした。
―――シュッ
次に気づいた時には、ボールはゴール下の選手のもとにあり、ゴールのネットをくぐっていた。
いつ通ったのかもわからない。
ボールに触れてる時間を極端に短くして、パスの中継役となり、ゴールしたにいた選手に鮮やかにパスを出していた。
「今のは……テツと同じ……」
桐皇学園高校は、ウィンターカップで『ミスディレクションオーバーフロー』を使われており、その効果は薄かった。しかしその分、今目の前で起こっているとんでもない状況を理解することが出来てしまった。
「でもそれって、影が薄いテツくんだから出来たことじゃ……」
「……さっきのは、このための布石か。」
もともと説明が上手くない青峰は、苦そうな顔をしてる。
「あー、テツのミスディレクションは、自分の存在を消してボールに目を向ける。真宮のは、逆に自分の存在を強調して、ボールを消す。……んな感じだ。」
普通に言う青峰に対して、桃井はとても驚いていた。
それもそのはずである。
バスケットにおいて、何よりも誰よりも存在感を放つボールよりも強い存在感を出す。
それにはかなりのバスケセンスと、“人の心理状態を理解する”のようなテクニックが必要なのだ。
「まじで、すげぇな……。」
青峰の顔は、相変わらず新しいおもちゃを見つけた、無邪気な子どものようだった。
「くそっ!そいつはパスしかしねぇ!それよりもこっちダブルチームしろっ!!」
真宮のマークが点を半分以上とっている選手につく。
只今のスコア47対45。
真宮のチームが二点差で負けていた、残り時間は10秒。
どちらのチームも、青峰を含む二年生とやりたくて必死だった。
どんな選手でも熱くなっていた。
「真宮さん、すごいですね……。」
桜井が口を開いた。
「あぁ?」
「熱くなるべきこんな状況で、一人だけ冷めきってますよ。」
「……。」
「ぜってぇ止めるぞ!パスさせんなっ!」
「自分の胸にちゃんと聞いてみましたか?」
真宮が自分のマークをしていたディフェンスに言った。
「はっ!?……どういう、、、。」
「『自分のマークマンはパスしかしない』
それは本当に自分の考えですか?」
「なっ!?」
残り5秒。
シュートを打ったのは、スリーポイントラインに立っていた真宮。
「すみません、負けるわけにはいかないんです。」
《47対48》
後に、天才的プレイヤー青峰大輝にふさわしい、色の濃い黒い影となる真宮棕佑の高校初試合。
その試合は、光と影を結び付ける運命の試合。
次回にでも真宮くんのプロフィールを公開したいと思います!