「誠凛高校VS桐皇学園高校!
101対100で誠凛高校の勝利!!」
「「「「「「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」」」」」」
『ウィンターカップ』
三年生にとっては最後の大会。
その初戦、誠凛高校VS桐皇学園高校。
試合は高校生のレベルをはるかに超えていた。
お互いのエースが、選ばれたものだけが入れるゾーンに達し、どちらが勝ってもおかしくない試合。
それでも、勝利の女神は“全員で”戦った誠凛高校に微笑んだ。
「……。」
「ふぅ、終わったねー。いやぁ、見てるこっちが疲れてきちゃう試合だったねー。」
「そうだね。」
「……でも、なんで見に来たの?そうくん、ここの高校の偏差値知らないの??」
「……。」
二階席から見ていた二人の中学生。
一人はポニーテールにした黒髪に、ブレザーを可愛く着崩す女子生徒。
一人は自然な長さの茶色の髪に、ブレザーをきちっと着た男子生徒。
《誠凛高校VS桐皇学園高校》
その試合は、“天才と呼ばれたゆえの孤独な少年”と“気づかれずの天才だったゆえの孤独な少年”を出会わせる試合だった。
「雪、帰ろう。」
「いい息抜きになった?」
「……うん。誘ってくれてありがとう。」
いい高校見学になったよ。
「帰ってバスケしよっかなー。」
「そうくん、勉強は~!?」
「もーいいやー。」
「えぇぇぇ!?なんでーーー!?」
あんなの見たあとに勉強なんてする気になんないや。
それよりも……
「早くやってみたいなぁ。」
―――春―――
それぞれの学校から三年生が去り、
一年生は二年生へ、二年生は三年生へ。
新しい学校生活に心を踊らせる新一年生。
そして、始まる部活勧誘。
「もぉぉ!!大ちゃんっ!部活行くよー!」
「うっせぇなぁー、俺は今忙しいんだよ。」
「ダラダラしてるだけじゃないっ!!」
そんな初々しい空気から離れ、屋上で寝ているのはバスケ部エース青峰大輝。起こしに来ているのはマネージャーの桃井さつき。
「今日は新一年生が来るんだよー!!」
「俺と張り合えるヤツいんのかよ。」
「……さぁ?」
「…ったく、めんどくせーな。」
「じゃあ、大ちゃんの大事にしているグラビア雑誌は焼却炉いきね♡」
「ああ!?ざけんなっ!!」
なんやかんや言いながらも、体育館にやってきた青峰。
「おせぇぞ!青峰っ!!」
怒鳴るのは主将の若松孝輔。
「後はお前と桃井だけだ、早く自己紹介しろ。」
「はーい。二年マネージャー、桃井さつきです。よろしくね。」
「「「「「「「「よ、よろしくお願いしますっ!」」」」」」」」
顔を真っ赤にして答える一年生。
「あー、青峰大輝だ。」
「「「「「「「「よろしくお願いしますっ!」」」」」」」」
一年生も、順に自己紹介していった。
奇跡の世代を前にして、緊張気味の一年。
しかしその中に、一つも緊張していない一年生が一人いた。
「……。」
「東京都
「花崎第一!?あの屈指の進学校のっ?」
桃井がすかさず食いついた。
「そんなすげーとこなのか。」
「そうだよ、大ちゃんは死んでも行けないね。」
「どういうことだっ。」
「そのまーんまの意味よーだ!」
「うるせーぞ、そこー。
まぁ、一年はあったばかりかもしんねぇけど、実力も測りてぇしとりあえず、試合すんぞー。」
主将の若松が適当に一年を二つのチームに分ける。
「勝った方は、二年とやるからなー。青峰にももちろん出てもらうぞー。」
「はぁ!?ふざけんなよ、めんどくせー。」
「……。
今年の一年はお前の出身中学の帝光中が三人。
それ以外も名の知れた中学出身のやつばっかだ。
誰かかれかは強ぇだろ。」
「ちっ……。」
なんだかんだ言いつつ、ちゃっかりしてる。
―――ピーーっっ!!
一年の試合が始まった……が、
「あれ?大ちゃん??」
青峰の姿がなかった。
「……あの野郎っ!どこ行きやがった!!」
「あ、青峰さんなら!そ、その、見たらつまんなくなるからっ言って出て行きました……。」
「止めろや!桜井!!」
「すっ、すみませんっっ!!」
とりあえず、桃井が探しに行くことになった
しかし、青峰は意外とすぐに見つかった。
「なーんだ、結局試合見てんじゃない。」
青峰は体育館のロビーから見ていた。
「さつき。
花崎第一中のやつのデータとかねぇの?」
「んー?あるよー。あそこの中学には声かけてたから!」
「あいつのデータは?」
「真宮くん?あの子はー、、、試合出てないんじゃないかな?データは無いから……。」
―――そんなはずはない。
青峰にはわかっていた。あの動きは試合経験者の動きだと。
「花崎第一中の成績は?」
「最後の中体連、ベスト8で帝光とあたって負けてる。
……って、どうしたの?大ちゃんがデータを求めるなんて珍しい……??青峰くん?」
桃井は横で試合を見ている青峰の顔に、驚きを隠せなかった。
『テツっ!パスよこせっ!!』
まだ能力が開花してない、純粋に楽しんでいた時の顔に似ていた。
いや……それよりももっと前。
“黒子テツヤ”という素晴らしい相棒を見つけた時と……
同じ顔をしていたから。
「真宮……棕佑……。
さつきがデータを手に入れられなかった選手は二人目だな。」
「……??」
光は影がなければ、それは光とは言わない。
影があってこそ、その光は眩しく輝くものなのだ。