IS ~1人連合艦隊ってすごくね~   作:シトリー

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お待たせしました。

本当は、次で原作合流する予定だったのですが
色々事情がありまして、


もう少し続きます。


高校生編~過去~

男性操縦者が発見されたことで、世間は良くも悪くも大騒ぎとなった。その被害は

 

  「えー、我が高校も男子生徒限定でISの適性試験を実施します。」

 

  「はぁああああああああ!!!?」

 

ここにもきていた。

 

  「なお、これは政府からの指示ですので全員受けてください。体調不良等で欠席した場合は後日行います。皆さん、絶・対、休まないでくださいね。」

 

 

 

 

  「(これどうなるの?)」

 

順番待ちをしている青年は心で冷や汗をかいていた。

 

  「(博士が言ってたよな。”限りなく理想に近い形で運用できている。”って、やめてくれよめんどくさい。)」

 

周りが、騒ぎながら次々と試験を受けている。

 

  「(特に何も反応がないことを見ると、まだ出てないよな。)」

 

適性試験といっても実際は待機状態のISに触れるだけなので、一度に掛かる時間は非常に少ない。故に、

 

  「(心の準備が……)」

 

  「次の人、入ってください。」

 

  「はい。失礼します。」

 

すぐに青年の順番が来てしまうのだった。

 

 

 

  「何処でもいいから、早くそれに触って。どうせ出るわけないのに。」

 

面倒そうにしている女性が言ったとおり

 

  「こうですか?」ぴとっ。

 

青年が触れた。その結果、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「はい、適性なし。」

 

  「!?」

 

反応しなかった。不思議そうな顔をしている青年に女性が、

 

  「ほら、終わったんだからとっとと出て行く。邪魔だから。」

 

不機嫌そうに言い、

 

  「あ、はい。」

 

青年の適性試験はある意味、何事も無く終わった。

 

 

 

結局、第二の男性操縦者は発見されず、世間の男性たちは少し落胆し、女性たちは安堵した。

 

 

 

 

 

時は流れ、卒業式

 

 

青年は、少々の妨害には遭ったが無事に卒業した。

 

別件がまだ残っている青年は、さっさと帰ろうとし、

 

  「せーんぱい。卒業おめでとうございます。」

 

後輩に、背後から抱きつかれた。

 

  「おう。どった?」

 

何事も無かったかのように返答され、

 

  「先輩覚えてます? 旅行のこと。」

 

後輩は、青年の隣に移動した。

 

  「あー、ドイツだっけ? 結局ゲルマン語は習得できたのか?」

 

  「読みなら、できる様になりました。書きは使いません!」

 

  「聞き取れるの?」

 

  「に、日常会話レベルならギリギリ…」

 

  「ふーん。じゃあ、テスト。」

 

  「ファッ! そんなの聞いてないですよ。」

 

突然のことに、驚く後輩

 

  「当然も何も、本当に読み取れるのかだけでも確かめないと。向こうで困るのは君のほうだよ。」

 

  「うーーーーー」

 

正論を返され、いつもの脛蹴りをする後輩。

 

  「だから、困ったらすぐに脛蹴りする癖をやめろ。痛いから。」

 

そういいながら、鞄の中を漁り、メモに何か書き出した。

 

  「これの日本語訳が明日の昼までにできたら、つれてってやる。」

 

差し出された紙には、

 

  【Warten Sie, und hoffen Sie auch.】

 

と、書かれており。それを見た後輩が

 

  「約束ですよ?」

 

と、目をキラ付かせて言うのだった。

 

 

 

 

自宅

 

  「おーい、帰りましたよーっと。」

 

  「お帰りなさい。卒業おめでとうございます。」

 

  「おう、さんきゅ。」

 

そんな会話をしながら、青年は居間に移動する。そこで、

 

 

  「おーい、ちょっと話があるからこっち来て。」

 

  「何なんですか、改まって。」

 

  「まぁ、座れ。」

 

青年に促され、椅子に座る少女。

 

  「で、なんなんですか? 就職先を首にでもなりましたか?」

 

  「ちげーよ、お前のことだ。」

 

  「?」

 

青年は突如語りだした。

 

  「私は、君のことを保護すると豪語しておきながら、ただ匿っているだけだった。だが、今日で私は卒業し、法律上大人になった。なので、正式に君を養子として迎え入れたいと思うんだ。」

 

  「………」

 

  「そのための、戸籍の取得の準備もある。」

 

  「どうして、其処までしてくれるのですか?」

 

  「君は、今迄たくさんの苦労をした。自分を変えるために、勇気振り絞り、覚悟をぶつけ、その後の行動もきちんとこなした。なら、それに見合う分の報酬を、私は出さなくちゃいけない。それが今回の話だ。」

 

  「私が、裏切る可能性は?」

 

  「それの確認期間が君を家に入れてから、今日までだったんだよ。私は君に対して、この約二年誰とも連絡を取らせず、外出もさせず、まるで奴隷のような生活を強いてきた。私は、約束を破った時点で君を殺すつもりだった。にも拘らず君は、私の言うことを正確に守り通した。もし、ここまでが作戦の内だっていうなら、私は完全に敵の掌で踊らされていただけってことで諦めるよ。」

 

  「………」

 

俯いたままの少女は何も語らない。

 

  「ただ、これはあくまで報酬だ。当然拒否もできる。が、もしこの話を受けてくれるのであれば、新しい人生を私と供に歩んでみないか?」

 

少女は、

 

  「はい。」

 

 

ようやく、青年と家族になることができた。

 

 

  「さて、家族になったからには名前も考えないといけない。どうする?」

 

  「あなたに、お任せします。」

 

青年は、

 

  「じゃあ、これからは雫だ。【四十川 雫】と名乗れ。

 

少女の人生をやっと作り変えた。

 

  「…わかりました。…ありがとう…ございます。」

 

瞳に涙を溜め感謝する少女。しかし、

 

  「何言ってるんだ。これで終わりじゃないぞ?」

 

  「?」

 

  「これからが、始まりだ。今までお疲れ様。」

 

  「ーーーーーーーーーー」

 

少女は崩れ落ち、静かに号泣した。

 

 

青年が、少女の頭をなでながら泣き止むのを待つ。

 

 

 

 

 

  「お待たせしました。お見苦しいところを、見せてしまいましたね。」

 

目を真っ赤に充血させ、それでも溢れる涙を必死にこらえながら顔を上げる少女。

 

  「いや、予想の範囲内だ。もっと泣いてもいいよ。」

 

  「いえ、今はこれで十分です。続きは後でもできます。」

 

  「さいですか。じゃあ、話の続きだ。」

 

  「はい。」

 

青年と少女は気持ちを切り替え、話に戻っていく。

 

  「国籍を持ち、国の庇護下に入ったからには国民としての義務を果たさないといけない。」

 

  「義務教育。ですね。」

 

  「その通り。」

 

  「確認を取ったところ、完全な孤児で年齢の判別すら不可能な場合、一度テストを受けそれに見合った学力で進学を決める。らしい。向こうの組織では何かやったか?」

 

  「簡単な、四則演算、一般常識、電子機器の取り扱い、ピッキング、簡易的なハッキング、一通りの個人携行武器の取り扱い、それのメンテナンス、サバイバル訓練、CQC。位です。」

 

  「偏りすぎだろ。仕方ないちゃあ、仕方がないんだが、とりあえず、四則演算以外のことを聞かれても答えるなよ。職質どころじゃすまないぞ。」

 

  「わかってますよ。」

 

  「とりあえず、こちらの意向としては高校あたりに突っ込みたいから、死ぬ気で覚えろ。」

 

  「テストはいつですか?」

 

  「書類を出した次の日。」

 

  「………まだ、出してませんよね?」

 

  「あたりまえじゃん。本人の確認とサインが必要なんだから。」

 

安堵のため息を出す少女

 

  「少し、焦りましたよ。」

 

  「え? 今日、これより凄いニュースあるんですけど。」

 

こめかみを押さえて再び頭を下げる少女

 

  「急ぎ案件ですか?」

 

  「全然。」

 

ため息を出す少女。

 

  「まぁ、別に今じゃなくてもいいからな。気にするな。」

 

ケタケタと笑いながら話す青年を

 

  「そうします。今はやめてください。脳がパンクします。」

 

ジト目で見る少女

 

  「とりあえず、勉強はリグに見てもらえ。」

 

  「はい?」

 

少女が思わず聞き返す。

 

  「はい?って、あれ一応量子コンピューター複合式AIだぞ。」

 

  「!?」

 

  「作ったの私だけど。」

 

  「!!!?」

 

突然の暴露に絶句する少女。

 

  「どうy「どうやってかは秘密。てか、聞くな。」…はい。」

 

  「とりあえず、勉強からはじめて行きます。」

 

  「おう、でも急いでおけよ。今週中なら、何処の高校でも途中編入扱いで転校生扱いされないぞ。」

 

  「わかりました。」

 

そういって、席を立つ青年

 

  「じゃあ、私は仕事が残ってるから部屋に篭る。飯が出来たら呼んで。」

 

  「わかりました。」

 

そういって、部屋を出る寸前に青年が

 

  「あ、そうだ」

 

思い出したかのごとく、

 

  「お前の血から遺伝子情報を調べた結果」

 

笑顔で、

 

  「織斑千冬と織斑一夏との間に出来た子供らしいぞ。」

 

爆弾を落としていくのだった。

 

  「………………」

 

目と口を開けてフリーズする少女を放置し自室に篭った結果、夕飯が青年の分だけ出なかったのだった。

 

 

 

 

翌日 昼

 

 

青年は問題の答え合わせを行うため、凜の自宅に乗り込むところだった。

 

  「(あ、アポとるの忘れてた。ま、いいや。めんどくさいし。)」

 

 

ピンポーン

 

 

青年が呼び鈴を鳴らし、待つこと数十秒。

 

ガチャ  キィィィィィ

 

  「あの、どちらさまですか?」

 

年配の女性が現れた。

 

 

  「はじめまして、四十川というものですけど。凜さんは今、いらっしゃいますか?」

 

  「四十川? そう、貴方があの子の言っていた子なのね。」

 

  「彼女が私のことをどう言っているのかは知りませんが、恐らくそうかと。」

 

  「あの子は今、美容院に行ってるわ。後、30分もすれば帰ってくると思うし、家の中で待ちます?」

 

  「それでは、お言葉に甘えるとしましょう。」

 

青年は、初めて彼女の親と顔を合わせた。

 

  「失礼しまーす。」

 

  「好きなところに座って待ってて、今お茶を出すわ。」

 

青年はリビングに通され、適当に選んだ椅子に座る。

 

  「麦茶でいいかしら。」

 

  「あ、お願いします。」

 

コト  コト

 

氷の入った麦茶が出され

 

 

  「私も、貴方と一度お話してみたかったの。」

 

机を挟んで座った女性が、唐突に話を始めた。

 

 

 

 

 

 

  「私も、貴方と一度お話してみたかったの。」

 

  「私とですか?」

 

  「ええ。」

 

  「特に思い当たる節が無いのですが、何か彼女にしてしまいましたかね。」

 

  「ええ。といっても、悪い意味じゃないの。とてもいい意味よ。」

 

  「と、いいますと?」

 

  「貴方は普段あの子をどう見てる?」

 

  「今は、ボーイッシュで、猫みたいに気まぐれで、素直な子です。」

 

  「今は?」

 

  「彼女に会った当初は、もう少し違いました。」

 

  「どんな感じだったの?」

 

  「異性に対して、非常に強い拒否反応を示していました。私に対しては見た目と口調のせいで、そこまで強い拒否反応を出しませんでしたが、事実を知った直後は硬直していました。」

 

  「そう。」

 

  「何か知っているんですね。」

 

  「あの子の親ですもの、知ってるわ。」

 

  「なるほど。」

 

青年は会話を区切るように麦茶を飲む。

 

  「聞かないの?」

 

  「興味はあります。でも、それは貴方からではなく、彼女の口から直接聞きたいです。今話せない、話したくない。どちらにせよ、何らかの理由があります。それを含めて、いずれ、彼女から聞きたいと思います。」

 

  「慎重なのね。」

 

  「向う見ずよりはマシかと。」

 

  「でも、言葉を変えれば臆病者よ。それ。」

 

  「否定はしません。が、他人の心にずかずか入り込む行為を善意とは言いたくないです。少なくとも、私はね。」

 

  「あの子が言うまでずっと待つつもり?」

 

  「彼女にはもう伝えてあります。【私は個人の事情には一切干渉しない。してほしければ、意思をはっきりと伝えろ。】と。」

 

  「そう。あの子が信頼を置くわけだわ。」

 

  「そりゃどうも。」

 

  「その理屈だと、私が意思を伝えれば干渉してくれるのね?」

 

  「貴方に関することであれば、ですけどね。」

 

  「じゃあ、私からお願いするわ。」

 

  「何でしょう。」

 

  「あの子の過去のことよ。貴方には知っていて欲しいのよ。」

 

  「わかりました。でも、そのことは彼女には一切話しません。今まで通り接します。それでも?」

 

  「判断は任せるわ。」

 

  「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

  「今は、私とあの子の2人しかいないけど、昔は、私たち2人を含めて4人家族だったのよ。私と、夫と、あの子と、あの子の兄がいたの。」

 

  「いた……んですね。」

 

  「そうよ。いたの。」

 

  「特別裕福なわけでもなく、特別貧しいわけでもなかった。欲しいものを誕生日に貰って喜んだり。手伝いをしてお金をためたり。いけないことをして、私や夫に怒られて部屋に引きこもったり。言ってしまえば、極普通だった。ありふれた家庭の中に私たちはいたの。」

 

  「………」

 

「そんな中、偶然あの子は家の中で空き巣と遭遇してしまったの。」

 

「空き巣ですか。」

  

「そう。皆で外食に行った帰りだったの。いつも夫が先に家に入るのだけれど、この時はあの子が先に入っていったの。」

 

  「入ってすぐの悲鳴に皆慌てて家に入ったの。でも、もうその時は、あの子が人質に取られている所だったわ。こめかみに銃を突きつけられて。」

 

  「咄嗟に、夫と上の子が空き巣を取り押さえようと取っ組み合いになったの。私は急いで警察を呼んだわ。でも、運悪く夫も上の子も相手に殺されてしまったの、あの子の目の前で。その後結局犯人を取り逃がし、今も捕まっていないわ。」

 

  「………」

 

  「あの子は目の前で親族を殺され、犯人の目を見てしまったの。」

 

  「目…ですか?」

 

  「そう。欲望に駆られ、とても濁った瞳。私は一瞬しか見ていないけど、それでもゾッとする様な目だった。それをあの子は至近距離でずっと見ていた。全てが終わった後も、ずっと部屋で震えていたの。眠らず、飲まず、食わず、休まず。最後には栄養失調で倒れて、病院に緊急搬送されたの。」

 

  「………」

 

  「その時からよ、あの子の顔から笑顔が抜け落ちたのは。誰とも深く関わらず、能面のような顔になってしまったの。その後、カウンセリングや薬、医学、科学問わずあらゆる方法を試したわ。でも、私には隠したような笑顔を浮かべさせることが限界だったの。」

 

  「そのときが、高校入学時ですか?」

 

  「ええ。そうよ。あの子自身も努力をしなかったわけじゃないの。それどころか私以上に苦しんで、それでも尚抜け出そうと、自分を変わろうと、努力を続けていたの。でも、報われること無く、時間だけが過ぎて行った。」

 

  「でも、あるとき、あの子から話しかけてくれたのよ。」

 

  「それが、私との関わりの始めた時期ですね。」

 

  「そう。私自身すごく驚いていたし、何より事件の時以来始めて、事件以外の話だったの。」

 

  「ちなみに、どのようなことを?」

 

  「要約すると、【変人だけど凄くいい人】と言っていたわ。ちょっと失礼、」

 

女性が、休憩を挟むように半分以上氷の解けている麦茶を飲んだ。

 

  「あの子は、貴方との事を話す時はとても楽しそうに、話してくれていたし、なにより自然な笑顔が出来ていたのよ。」

 

  「始めて話を聞いた時は、正直、凄く嫉妬してしまったの。」

 

  「………」

 

  「私があらゆる手を使っても出来なかったことを、貴方はいとも簡単に成し遂げてしまった。ねぇ、私には何が足りなかったの?何をすればよかったの?」

 

  「…もし本当にそう思っているのであれば、それは大きな見当違いです。」

 

青年が、突如女性の言葉を否定する。

 

  「どういうことよ。」

 

女性が少々の怒気を含ませて青年にかける

 

  「失礼しました。貴方自身の行動は決して間違っていませんし、努力によって彼女は報われています。実際問題、絶望の中から彼女を救い上げ、自身を見失わず導いてきました。救済において、一番難しいのが心の修復です。それを、成し遂げたのは他ではない貴方自身です。そこに私は関与していません。そもそも、今の今まで事情を知らなかった私に関与することは出来ません。」

 

  「確かに…。でも、貴方と関わってからあの子は確実に、それも大きく変わった。あの子に対して私が取るべき行動はなんだったの?」

 

  「此処から先は私一個人の予想でしかありません。仮に聞いたところで、貴方では恐らく出来なかったかと思われます。それでも、お聞きになりますか?」

 

  「…話して頂戴。」

 

  「シンプルな答えですよ。貴方自身も当事者だからですよ。」

 

  「? それにどんな関係が?」

 

  「あの優しい彼女が、当事者の一人である貴方を差し置いて救われたいと、願うような子と思いますか?」

 

  「!」

 

  「貴方は彼女の苦労を間近で見て知っています。しかしそれは彼女も、貴方の苦労を知っているということに他なりません。何故なら、彼女が負ったダメージ以上のものを背負っているのは、他でもない貴方なんですから。」

 

  「………。」

 

  「貴方は、自身が親であるという立場から、心の救済を自分ではなく彼女を優先した。それが彼女にとって、戻るための足がかりであり、完全に戻るための足枷でもあったのです。」

 

  「………。」

 

  「ただ、勘違いしないで頂きたい。私は何もしていません。彼女の心を救ったのは、私ではなく、他の誰でもない貴方自身です。貴方がいなければ、今の彼女は居なかったでしょうし、仮に私と会ったところで、あの出来事は起こらなかったでしょう。」

 

話を聞いた女性は顔を伏せ、

 

  「差し出がましいとは思っています。が、そろそろ自身の心を癒してはどうです? 彼女の救いはもう十分です。今度は貴方の番です。」

 

自身の問題と始めて向き合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「あの子には、ちょっともったいないくらいのいい子よね。貴方。」

 

吹っ切れたのか、声に色が付き始めた女性。

 

  「いきなり、何言ってるんですか。」

 

  「初めての会話で、ここまで言われると思ってなかったもの。」

 

  「それはそれは、失礼しました。高校を出たばかりの若輩者が烏滸がましいことを。」

 

  「気にしなくていいわよ。悔しいけど、貴方の言葉は事実だったもの。なら、しっかりと認めないと。」

 

  「そうですか。」

 

女性はふと壁に掛かっている時計を見て、予定の時間が迫っていることを悟る。

 

  「そろそろ、あの子が帰ってくるわ。今日はあの子に用があったのでしょ?」

 

  「ええ。ちょっと、ドイツ語翻訳の答え合わせをね。」

 

  「それで、あの子が急にドイツ語の勉強を始めたのね。やっと、点と点が繋がったわ。」

 

  「本人もやる気があるようなので、ちょっと意訳問題を出してみました。」

 

  「解けそうなの?」

 

  「さぁ?それはどうでしょう。 そもそも、それを確認しに来たわけですから。」

 

  「それもそうね。」

 

青年と女性がちょうど話を終えた直後

 

ガチャ

 

ドアが開く音がし、

 

  「ただいまー。 誰かお客さんでもいるの?」

 

  「お帰りなさい。 いるわよ。 貴方の大事な人がね。」

 

彼女が帰ってきた。

 

  「え? 誰? って、先輩じゃん。何でここにいるの?」

 

  「昨日出した、問題の答え合わせをしに来たんだよ。さて、答えを聞くとしようか。」

 

青年が彼女に聞き、

 

  「先輩、ひどいよね。」

 

ふくれっつらで、答えるのだった。

 




はい、最後まで読んでいただいてありがとうございます。

過去編でした。


かなり難産でした。主人公以外の設定がガバガバ過ぎて作るのが難しかったですね。

コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます。

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