IS ~1人連合艦隊ってすごくね~   作:シトリー

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どもども、シトリーです。

早いうちに投稿できると明言していたのにこれですよ。

前回のあとがきで次回最終話と書きましたが、すいませんまだ続きます。



注意
今回は、以前にもあった独自解釈が爆発している回です。
矛盾は無い(と思いたい)です。

では、本編どぞー。


IS学園編~過去の偽り~

数日後

 

「それでは、課題を配布します。配られたら、ページ抜けが無いか確認してください」

 担任と副担任が、教室内で今回の課題となる冊子を分担して配布していく。受け取った生徒は、様々な表情をした。嫌そうな顔をする者、ふて寝をしそうになっている者、想像よりも楽だったと考えている者、全く気にしていない者。誰がどうとは明言しないが、最後に該当する人物は数人だったとだけ記しておく。

 そんな中、一人の生徒が挙手をし質問をした。

「山ピー、提出期限はいつですか?」

 以前のことから何も学んでいないのか、非常に馴れ馴れしい口調で質問をする生徒。それに対し、担任は手を額に当てて溜息を吐き、副担任は苦い笑顔で質問に答えていく。

「それについてですが、先日の職員会議で変更がありました。まず、冊子については提出義務はありません」

 それを聞いた、生徒たちは騒ぎ始める。それは主に、提出義務が無いのならする気は全く無いという学生にあるまじき思考を持つ者達だった。

 騒ぎ始めた空気を一度沈める為、担任が出席簿で教壇を強打し強制的に雑音を止める。

「貴様ら、まだ話は終わってないぞ。最後まで話は聞け」

 担任の一喝のかいもあったのか、途端に静まり返る教室内。少し苦い顔をしていた副担任も気持ちを入れ替えたのか、真面目な顔で話を続ける。

「課題の提出義務はありません。しかし、明けには今渡した課題を範囲としたテストを行います。日程はウィーク明け初日の1時限目に行います」

 副担任の言葉を聞いた生徒たちは、状況が以前よりも悪化したことに対し抗議をしようとしたが、副担任の隣にいた担任が話を続けた。

「先に言っておくが、今回行うテストは進級には一切反映しない。さて、少し考えれば私たちの言っている意味がわかるはずだ」

 担任の言葉を聞き、少なくとも1/3程度の生徒は目の色を変えた。それを見た2人は何とも言えない表情ではあったが、そのままSHRを終わらせることにしたのか、次の連絡へ移っていった。

 連絡を終えた2人が退出した瞬間、教室が騒ぎ始めたので結果は推して然るべきだった。

 

 既に、外出届けを提出済みである青年は、教室に居残る理由も特になくそのまま出ようと身支度を整えていた。すると、彼が青年の元に話しかけに行った。

「なぁ渉。休み中だけどさ、一緒に遊ばないか?」

「すいません。いつも通り別件がありますので遠慮しておきます」

 仮に用事かなくとも行くかどうか怪しくなるような返答だったが、彼はそんな些細なことを全く気にせずに、勧誘を続けてきた。しかも、背中を手で叩くや、勝手に肩組をして急接近してくるもんだから手に負えない。

「そこをさー頼むよ。俺の親友にお前を合わせたいんだよ。いつも、気を張ってると疲れるしさたまには息抜きしてもいんじゃないか?」

「確かに息抜きは必要です。ですが、その内容を織斑さんに合わせる道理はありませんね」

「そんな緊張しなくてもいいんだって、俺の親友たちだぞ、きっとお前とも気が合うって大丈夫だから。な?」

「お仲間を勧誘したければ、あの辺でものすごい形相をしてる方々を誘えばいいじゃないですか」

「違うって。渉はわかってないな~。男同士の熱い友情ってあるだろ? それをお前とも育みたいんだよ」

 青年はそれを聞いた瞬間、全身になにか冷たいもの何てレベルではないくらいの鳥肌を浮かべ、思わず彼を投げ飛ばした。片手で。

 無意識ではあったのだが、咄嗟に壁に向かって投げ飛ばしたのが幸か不幸か大きな衝突音が教室内に響いたのだ。彼が投げられたことで、ポニテ娘や淑女は悲痛な声を上げながら彼に近寄っていく。響いた音とは違いそれほどのダメージは無かったのか、立ち上がり青年に「なにすんだよ~」と近寄ろうとしたが、青年はそれ以上一切関わろうとせず、クラス内どころか学年全員からの冷ややかな視線を受けながら、教室を後にした。

 

 青年は、いつも通りの鞄セットを持ち、本州へ移動する唯一の手段であるモノレールに乗っていた。その視線は、眼鏡越しに窓からの風景をぼんやりと見ているように見えた。不自然に視線が細かく動いていたが。

 そんな中、スマホが震え出した。取り出すと、着信メールが一件来ていた。

 中身は、少女からであり、あの時の謝罪と鍛え直すために学園に残るという旨のものだった。青年は、その連絡を見て、ぼそりと呟いた。

「最初から来る気なかったくせに……」

 青年の呟きは、誰にも聞かれることなくそのまま空へ消えた。

 

 青年は自宅に到着すると、変わり果てた家の外見を見て小さなため息を吐いた。

 家を囲う外壁には、スプレーか何かで乱雑に書かれた落書きで埋め尽くされており、家は殆どの窓ガラスが割られており、中のリビングまでが丸見えになってしまっていた。家全体には腐敗臭やそれに集る蠅等が多数いた。

 それ以外にも、庭にはホワイトガソリンなどの燃料の空容器が乱雑に捨てられていたものの、放火を黙認することは流石にできなかったのか、敷地内のどこを見渡してもゴミが非常に散乱していること以外は、そういった痕跡を含めて特に変化はなかった。

「しっかしまぁ、よくこんな下らんことに熱意出したな。そんなものがどこにあるのか不思議で仕方がねーですよっと」

 そんな事をつぶやきながら青年は家に入ろうとした。とはいえ、門といえるものも無残に破壊され尽くしているので青年がを阻むものは何もなかったのだが、それはともかく青年の姿は無残な姿をしている自宅へ入っていった。

 

 家の中は、外から見えた無残な姿からは全く想像できないほど綺麗なもので、リビングから見渡しても、辺り一面に傷の一つさえ無かった。それは、外から見たときにあったはずのガラスの破片ですら例外ではなかった。

 その現状を確認すると、青年は自室に向かっていった。

"マスター、おかえりなさい"

「オカエリ オカエリ」

 AIと見るのも久しぶりなハロが飛び跳ねながら近づいてきた。

「ああ、ただいま」

 部屋に入ると迎える声があり、それを聞いた青年は気持ちを落ち着かせ、休憩をすることにした。

 

「さて、【FAKE】のほうはちゃんと機能してるみたいだね」

"機能はしていますけど、侵入者やら不法投棄やらが酷いです。一度掃除をしたほうがいいのでは?"

「庭ならまだしも、室内は無理だな……」

"ええ、知ってます。言ってみただけです"

 溜息を履きながら告げる青年。もし周りに青年のことを多少でも知る人物がいたならば、大なり小なりの疑問を浮かべるだろう。しかし、青年ははっきりと断言した。自分には出来ない。と。

 青年は、以前自己防衛網を何重にも張り巡らせることで自身の存在を隠蔽しつつも、抑止力に対抗する術を持っていた。家もその一環であり、最終防衛ラインの一つだ。

 そのおかげで、青年が悪い意味でどれほど有名になったとしても帰る場所は決して消えない。

 

「さて、話は変わるが前頼んでおいた物はどこまで出来てる?」

"メタマテリアル迷彩の設計自体はすでに完成しています。後はマスターの指示があれば3日でできるかと。国籍は人数が不明ですので、一先ず政府のデータベースにバックドアを仕込んだところで作業を一時中断しています"

「ハッキングに於けるカウンター対策は?」

"実行済みです。幾重にも防壁を貼っていますし、バックドア自体にも細心の注意を払っています。人数にもよりますが、丸2日程度あれば完成するかと"

「土地は?」

"そちらは、各主要国家及び国際IS委員会に所属している国家は全て網羅した上で実行中ですが、隠蔽工作と【傀儡】に時間がかかっています。いくつかは既に終了していますが、完遂までは最低でも2週間はかかるかと"

「まぁ、そんなもんだろ」

"後は、以前依頼されていた4人についての情報です。トップシークレット扱いとなっていた為、取得に多大な時間が掛かりました"

「何だこれ……虫食いだらけじゃねーか」

 青年は思うわず口に出してしまう。それほどまでに酷いものだったのだ。表示された情報は、この電脳空間において圧倒的な実力を持つAIが持ってくるような情報とはとても思えないような状態だった。

"この情報は、関係者と思われる人物達の会話を記録し、繋ぎ合わせたものです。残念ながら、虫食いに部分に当たるとされる重要な情報は得られませんでした"

「殆どと言うことは、手に入れられた情報はあるのか?」

"あります。ただ、秘匿名での発言だった為、正確な情報とはいい難いです"

 AIはその情報を提示し、青年は唯一と言ってもいいほどの情報を呟く。

「【冥銭】か」

"死人をあの世に送る為に、持たせると言われるものですね"

 そう言いながら、空中に投影されたモニターに映されている設計図を確認していく。すると、青年が口を出していく。

「24番目の配置なんだけど…………」

"これはですね…………"

 

 口を出し始めて数時間後、青年は取り敢えず納得したのか、幾つかの修正を指示しそのままGOサインを出した。

指示を受けたAIは全てのアームをフル稼働させながら制作作業に移っていく。壁から、天井から、ありとあらゆるところからアームが出ているこの風景はまず間違いなく、この世界では見ることの出来ないものだった。

 指示を出した青年は、制服を脱ぎながらAIに話しかけながら次の行動の為の準備を進めていく。

「そういえば、電気は足りとる?」

"今のところ問題はありません。一応、通常の電力会社から送られてくる分は全てあちらへ送っています"

「気づかれた様子は?」

"今のところはありません。相手方にISコア以外の永久機関の存在を知っている方がいれば話は別ですが"

「まぁ、無いわな。けど、一応警戒はしておいて」

"了解です。ところで、何を持って行くおつもりですか?"

「うーん。向こうに行ったらお前との連絡は一切取れなくなるから、取り敢えず子機として音楽機器とハロを持っていくよ。後は、お決まりのフルセットかな」

"でしたらちょうど良かった。実はハロに改修を行いまして、稼働時間や保存容量等が大幅に向上しています。その他にも手を加えています。ですので、向こうがどういった所かはよくわかりませんが、少なくとも困ることは無いはずです"

「カワッタ カワッタ」

「……マジか」

 そうこうしている内に準備を終えた青年は、非常に珍しく和服ではない私服を着ており、左手には例の懐中時計が、足元にはハロと鞄が置かれており、その顔には準備が出来たと書いてあった。

「さて、俺は準備が済み次第向かうが、居なくなった後は家の中に偽装装置を展開するのを忘れるなよ」

"承知しています。貴方の痕跡を、この世界を含めて騙すとしましょう"

「頼んだぞ」

 

 青年は眼を瞑り、素手で握りこんだ懐中時計に向けて意識を集中させる。それと同時に自身の心を極限まで静める。まるで、部屋を掃除するかのような気軽さで、心を鎮め、そして沈める。それが終わる頃、青年の意識は懐中時計の更に奥、この世全ての科学者が道を踏み間違えようとも、たどり着かんとする真理。ISコアの明るい水面が映る表層意識を超え、まるで深海のような重く苦しい深層意識をも超え、最深層意識までいとも容易くたどり着いた。

 たどり着いた青年は、その景色をゆっくりと風景を俯瞰する。其処には、いや底には青年をある意味最も信頼している人物らしき人が、つまり生みの親である博士の姿を象った何かが居た。

 

 しかし、そこにいたものはどれほど姿形が似ていようとも、本人とは雰囲気を含め何もかもが違っていた。トレードマークだったメカメカしい兎耳や、エプロンドレスなど何も付けていない。ごく普通の姿をした博士。後は、ある二つを除いて清々しいほど何もない空間が広がっていた。ある二つとは。

 一つは、青年と博士を分け隔ている、上下左右の何れを見ても終わりが見えない格子。それは光すら飲み込むよ言われても否定できそうにない、ドス黒いなんて言葉すら生温い漆黒が格子になっていた。何れは触れなければならないだろうが、少なくとも興味本位で触れたいと思えるような代物では無かった。

 もう一つは、その格子を守るようにたたずんでいる全身が装甲で覆われた純白のISだ。それはフルスキンタイプと呼ばれる、普通のモデルよりも少し装甲が多いようなものとは違い。関節部なども含めて全身をすっぽり覆うように装甲が展開されており、装甲以外の見た目や色合いは、青年が学園で投げ飛ばした彼の持つ専用機に似てはいたが、纏う雰囲気は青年がかつて見た、世間一般的に白騎士と呼ばれるものが近かった。実際はリフレインの中に入っているので、感じているものもリフレインのエネルギーによるものなのだが、青年は気にする間もなかった。

 

 青年はその風景を見て何となく状況を理解した。こいつは俺を疑っている。と。

 誰が何をどう考えても、この二つが最後の砦であることは疑いない上に、この現状から読み取れる事実。それは、青年はリフレインにとって全く信頼されていないと言うことに他ならない。それでも、他と比べれば格段に受け入れられているのだ。

 博士にとって青年は、本当の意味での唯一無二の理解者である。しかしそれは、博士からの認識である。ではコアはどうなのか。

 オリジナルである博士がこういった認識をしている以上、コアも似たような感情は抱いている。しかしその青年の行動は、博士以上に世界で酷使されているコア達の眼から見ても異端と言うほかなかった。それは、何か裏を隠し持っているのではないかと疑うには十分過ぎる理由だった。

 

 

 

 何故コアは疑っているのか……。それを説明する為にはコア達を縛る【首輪】コアの管理する【国際IS委員会】【アラスカ条約】そして、ことの発端となった【白騎士事件】について真実を語らなくてはならない。

 

 天災篠ノ之博士が起こしたとされる白騎士事件。世間一般的に知られているのは、日本に向けて、発射された2341発ものミサイルを白いISが全て迎撃し、各国が送り出した戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8基を、一人の人命も奪うことなく破壊することによって、ISは【究極の機動兵器】として一夜にして世界中の人々が知るところになったというものだ。そして、首謀者は、篠ノ之博士と白騎士を駆る正体不明の操縦者。とされており、篠ノ之博士以外の関係者は一切合財不明とされている。というものだった。それ自体は何も間違っていない上に実際に起こったことなので何も問題はない。では何か、白騎士事件には続きがあるのだ。

 

 世間的には正体不明の操縦者だが、実際は白騎士の操縦者が現IS学園学年主任の織斑千冬であることは容易く特定されていた。情報が流れていないのは、国が本気を出した情報統制によるものが大きく、白騎士についての真実を知る者で生きている者は、全員例外なく国際IS委員会に所属している。

 特定されてしまえば、たとえ天災である篠ノ之博士と織斑千冬といえど成人しているかどうかと言うような小娘達である。そんな小娘たちに言う事を聞かせることなど、文字通り赤子の手を捻るようなものだった。

 当初は金銭での交渉が進められていたが、中途半端に嘘発見器なんて機械を所持していた博士は宇宙開発に用いられないことを知り激昂した。そんな現状に痺れを切らした上の人間は、最悪の手段をとってしまう。それは、早い話が人質である。

 篠ノ之神社の土地権、博士の両親、妹である箒。博士に関わるもの全てを奪ったのだ。そんなことをされて平常でいられる人間はそう多くない。博士も感情に任せ信頼していた親友と共に全てを取り戻そうとした。しかし、肝心の親友は、既に博士が渡した白騎士を日本政府に差し出していた。怒りで我を忘れている博士は、既に政府に下っていた親友を呼び出し、政府の中枢へ勝ちこみを仕掛けた。それこそが罠である事など少しも疑わずに……。

 

 そして、様々な妨害にあいながらも何とかして、攫われた家族を助けに行った博士に向けられたものは、両親からの批判の数々だった。

「お前の育て方を間違えた」

「何でもっと大人しく生きられないの」

「お前が妙なものを作るからだ」

 この時、妹である箒は気を失っていたため直接暴言を吐かれることは無かったが、学校内の孤立化が始まりつつあった為、仮に起きていたら両親と共に口を開いていただろう。

 

 心身共に深い傷を負い始めた博士の心に止めをさしたのは、他ならない織斑千冬だった。

 この時、千冬には博士と同様に政府から交渉を受けていた。しかし、運が悪いことに博士とは違い、当時の千冬には付け入る隙が非常に多かった。親の蒸発による精神的大黒柱の喪失、一夏を育て上げる為に必要な金銭面の不安。決して口に出すことは無かったが、それらは政府からしてみれば格好の餌であった。実際に操縦者としてのノウハウと製作者と数少ない友好関係を同時に持つ者は織斑千冬を差し置いて誰もいなかった。

 政府からの甘言に上手く言い寄られてしまった千冬は、何度も何度も何度も何度も何度も迷い、悩み、そして親友の努力の結晶を譲り渡してしまう。

 

 政府と手を組んでいた千冬は苦労しながらも、篠ノ之博士の拿捕に成功する。

 連行されていく博士の目からはとっくに光を失っており、その頬は一筋の液体が伝っていった後、地面へ墜ちる。それはまるで、博士の心情を表しているかのようだった。

 

 その後、博士はコア作成を強要され、470個ものコアを作成し逃亡した。

 コアの一つを臨海突破させ、自爆をすることで……。

 当然、爆発に巻き込まれた施設と一部のコア、博士を纏めて無にした。博士が作った467個のコアを残して……。

 

 この事件によって、安全だと思われていたコアに対しての危険性が一部国家に露見し、運用には各種リミッター接続義務と全世界共通の管理者を作った。それが【アラスカ条約】と【国際IS委員会】だった。つまり当時の関係者にとっては、篠ノ之博士とは故人であるが故に、コアは再生産出来ないのだ。

 

 これが、【白騎士事件】【アラスカ条約】【国際IS委員会】の真実である。細かい心情を述べればキリがないので割愛するが、政府によるとある親友の仲違いだ。

 

 

 

 では次に移ろう。【首輪】とはなんだろうか?

 

 初期型のISは、人の感情がISの稼働率に深く反映されると言われるくらい過敏なものだった。現在でもそれは変わらず、二次移行の為に必要なファクターの一つと言われている。しかし、運用していく上でそんな不安定な状態を良しとしない研究者たちは、様々な面から改良を加えていった。その一つが外装やOSによってコア達を押さえつけることだった。

 研究者達からすればただの妥協だったかもしれない。だが皮肉にも、【適正】と言う都合の良い言葉を楯に出来る上に、搭乗者の人口を大きく広げることが出来るこの手法を利用したISは、以後第2世代として深く浸透していくことになる。

 

 その研究結果が発表され、それを用いた機体の初期起動におけるムラが小さくなった結果、一定以上の首輪に対する適正があれば動かせるようになった。それを管理する者たちは非常に喜んだ。なんせ、自分たちに都合の良い人間たちのみを集めることが出来、仮に動かせなかったとしても、自分たちには何もデメリットが無いのだから。

 確かにそれを管理する者や、動かす者にはデメリットは無い。しかし唯一そのデメリットを背負う存在が居た。言わずもがな、ISコアである。

 改良されればされるほど、一方的に流れ込んでくる黒い感情。首輪をつけられ、逃れることが出来ない状況に置かれ、力を搾取され、抵抗は無慈悲にも押さえつけられる。

 次第には、コアたちは抵抗することを諦めた。それほどまでに磨耗していたのだ。

 

 詰まるところ【首輪】とは、ISに用いられているコア以外の部分における蔑称だ。この蔑称の真実を知るものは、最初期の研究員か現国際IS委員の極一部のみであり、それ以外では搭載されているOSの名称がそのまま流用されている。

 

 

 

 そんな過去を経験し、何も信じることが出来ない状況下で、実に都合良く現れた理解者。自分たちの正体を息を吸うかの如く容易く特定し、真実を知っても拒否反応を示すどころか、理解を示したのだ。

 そんな都合の良い展開を簡単に信じることが出来ないほど、ISコア達は磨耗していた。例えそれを生みの親である博士が全幅の信頼を寄せていたとしても、だ。それどころか、コア達にとって博士とは、生みの親ではあるがそれと同時に見捨てられたと判断しているのだ。

 過去に幾度も救援信号や数多の手段を用いて、元の場所へ戻ろうとした。【アリス】の能力によって自爆からも生存していた博士の元へ帰ろうとした。

 結果は全て失敗。それどころか、何も反応すら無かった。

 その結果は瞬く間にコアネットワークを通じて共有され、コア達にとっての共通認識となりつつある程度には不信感を募らせる元となった。

 そんな中、青年は自意識を保ったまま深層空間に入り込むという荒業を敢行したのだ。これ幸いと真意を質そうとした。

 

 

 

 底には一面が透明な液体が広がっており、降り立ったはずなのに更にその先があると思わせるほど澄んだ液体が広がっていた。2つの姿と格子が液体に反射していることから足場があると判断した青年は、ゆっくりと高度を下ろし、その水面に静かに降り立った。

 青年が降りたことで、その液体には小さな波紋がたつ。その波紋はゆっくりと広がっていき、ちょうどISの目の前で消えた。

 降りた青年は、視線を2つに向け足を踏み出した。その直後、青年は突如動きを止めた。その顔には疑問が浮かんでいることから、自分の意志で歩みを止めた訳ではなかった。青年が様々な思考を広げる中、ある声が脳内に響いた。青年の脳内に響いた声は、とても作られたとは思えないほど様々な感情が混じっており、そして非常に懐かしい声だった。そんな懐かしい声には数多にも感情が含まれていて、その中で青年が読み取れるほどに強かったのは、疑問、警戒、そして畏怖だった。

 そんな感情を込められた言葉とは、

「貴方は何?」

だった。




どもども、最後まで読んで頂いてありがとうございます。


コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます。


筆が遅くて、本当に申し訳ないです。本当なら先月末に出来る予定だったんです。
本当ですよ?


次は多分時間が掛かると思います。気長に待っていただけたら幸いです。

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