IS ~1人連合艦隊ってすごくね~   作:シトリー

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どもども、めっさお久しぶりです。エタって無いですよ? めいびー

月2更新どころか、1ヶ月以上も空いてしまいました。

それもこれも全部ニーアオートマタって奴が悪いんだ!
此処最近で買ったゲームで一番の当たりだった。

どうでも良いですね。はい。


今回も長い長い事情聴取のお時間です。
なので会話文がかなり多めです。文才が欲しいです…

ではでは、本文どぞー


IS学園編~仕込み~

生徒会室前

 

  「はぁ…(入りたくねぇ。)。」

 

その後、特に何事も無く生徒会室前にたどり着いた青年から出たのは深い深い溜息だった。

とはいえ、事前了承をしている手前、下手に長引かせるのは非常によろしくない。青年は意を決して扉をノックし、中からの返答を確認してから入室した。

 

ガチャッ

 

  「失礼します。」

 

  「いらっしゃい。こちらの準備は出来ているわ。そこに座って頂戴。」

 

  「わかりました。」

 

部屋は前回に入ったときとは比べ物にならないほど整理整頓されており、以前の惨状を知っている青年からしてみれば驚きを隠しきれないものだった。

ふと意識を既に座っている生徒会長へ向ける。前には既に生徒会長が座っており、そこには空のティーカップとソーサーが2つ。生徒会長の前に1つと机をはさんで反対側に同じものがもう1つ。

青年は、指示された場所に座わり、その足元に鞄を置いた。

 

  「さて、呼び出した理由はわかっているわね?」

 

  「ええ。態々連絡していただいてありがとうございます。本来ならこちらからお伺いするべきことですのに。」

 

  「気にしなくても良いわよ。そこまで手間でもなかったしね。」

 

  「そうですか。」

 

2人は準備運動のように建前の口上を述べあって、本題へ指しかかろうとしたとき、

 

  「失礼します。お茶をお持ちしました。」

 

ルームメイトが台車にティーポットとこんがりと良い匂いを漂わせているアップルパイを載せ現れたのだ。

 

  「折角ね、紅茶でも飲んで一息つきましょう。事情聴取はそれからでも十分間に合うわ。虚ちゃん、彼にもお願いね。」

 

  「畏まりました。会長。」

 

指示されたルームメイトは、静かに正確に、手早く準備を進めていき、先に生徒会長のティーカップに注ぎ、そのままの足で青年の目の前にあった空のティーカップに紅茶特有の橙赤色の液体が独特な香りと共に注がれていった。

 

  「………。」

 

それをじっと眼鏡越しに見つめる青年。傍から見れば異様な光景である。確かに上等な茶葉を使用しているであろうその紅茶は、青年がどれほど見つめたところで、紅茶でしかないのだ。

緑茶ほどではないが日本でも飲み親しまれた飲み物の1つであり、見た目、香り、その何れを取っても、他より上品であるという点以外で違いは無いのだ。

 

  「………。」

 

  「あの、どうかしましたか?」

 

心配になったのか、ルームメイトがこちらの顔を覗き込むようにして声を掛けてきた。

 

  「いえ、何もありませんよ。では、頂きますね。」

 

  「どうぞ。」

 

青年はそういって、ティーカップを自身の口へ近づけ、火傷をしないように静かにカップを傾けた。

 

こくりと、静かにだが青年の咽が動いた。

 

その姿をその場にいた2人は決して相手に感づかれないように、でも凝視することなく極めて自然体でその行為を確認した。

 

 

 

  「じゃあ、そろそろ本題に入りましょうか。」

 

その後出されたアップルパイと共に、束の間の休息を満喫したところで生徒会長が話を元の路線に戻そうとし始めた。

 

  「そうですね。あ、虚さん。アップルパイ美味しかったです。これ手作りですよね?」

 

  「喜んでいただけてよかったです。今回は時間が無かったので市販の生地を使いました。でもそれ以外は手作りですよ。」

 

  「そうでしたか…、これは次の茶会が楽しみですね。」

 

  「ふふっ、私もですよ。でも、会長の機嫌が悪くなる前に本題に入ったほうが良いですよ。」

 

  「………。」じとーー

 

ルームメイトの助言どおりに視線を戻してみると、そこにはジト目でこちらを見てくる生徒会長の姿があった。顔には「私不機嫌です。」でかでかと書かれてあるように見えた。

 

  「なーんで虚ちゃんにはきちんと気持ちが篭っているのかな? おねーさんの気のせいかな?」

 

  「さぁ、気のせいじゃないんですか? 話が逸れてしまいましたね、本題に入りましょう。」

 

  「むー。」

 

青年はサラリと流すがその顔には不満たっぷりと書かれており、従者であるルームメイトも本心なのか偽りなのか若干区別がつけられずにいた。

 

  「まーいいわよ。流石にそろそろ本題に入りたいしね。」

 

そんな言葉と共に、空気が変わった。

 

生徒会長は何もしていない。青年も何もしていない。ルームメイトも当然何もしていない。

 

しかし生徒会室は、まるでこの空間だけ切り離されたかのように静かな空間が広がっていた。

そんな空気の中、

 

  「それじゃあ、お話を始めましょうか。」

 

  「お手柔らかに。」

 

3人での事情聴取が開始された。

 

 

 

  「さて、まずは貴方の迅速な行動のおかげでこの事件は被害ゼロで終わることが出来ました。その点について、IS学園生徒会長として、また学園の全生徒を代表してお礼を言わせて頂くわ。」

 

突如頭を下げてお礼を言い始める生徒会長の姿を見て、思わず驚く青年。

 

  「はぁ…。え?」

 

  「そんなに驚くところかしら? 私たちは今回助けてもらった側だもの。全容を理解している生徒は殆ど居ないけれど、少なくともこの部屋に居る私と虚ちゃんは貴方に対して感謝しているわ。ありがとうね。」

 

先程の口上とはまるで違う、心の篭った感謝の言葉に思わず青年は思考停止状態に陥りかけるも、何とか戻す。

 

  「…あ、はい。」

 

  「で、話が急に変わって悪いんだけど、どうして殺したの?」

 

  「殺した? 殺せたではなく?」

 

  「ええ。君ほどの実力を持つのであれば、殺さずに無力化するという手段も取れたはず。にも拘らず、貴方は一番リスクのある殺害という方法を取った。その理由を聞きたいのよ。」

 

  「相手が強敵だった。ではだめですかね?」

 

  「他の人だったらそれでも良いかもしれないけど、私はその言葉では絶対納得しないわ。幾ら条件付とはいえ、あの3人と試合をして生き残った人物だもの。」

 

  「うーん。(正直なところただただ面倒臭かったってだけなんだよなぁ。どうしよ…。)」

 

青年は視線を下げ、親指で軽く唇を弄りながら考え込んでしまった。

 

  「状況と人数的不利による二次災害を考慮した結果、手早く処理を済ませなければならなくなり、無力化するつもりであったが相手の抵抗もあり止む無く殺害した。ではどうでしょう?」

 

  「あなたねぇ。都合の良い言い訳を聞いているのではないのよ?」

 

  「これでも本人の証言ですよ?」

 

  「確かに、現場には君しか居なかったし、君の発言を完全否定する材料を私は持っていないわ。でも、この写真を見て頂戴。」

 

そういって、何処からとも無く取り出したA4サイズの茶封筒から多数の写真を取り出した。

そこには、様々な角度から撮られた事件跡の、つまり死体が写っていた。

 

  「これは…、余り気分が良いものではないですね。」

 

  「ええ。私もよ。そもそも意図してこんなものを見たがる人はスプラッタ映画好きでも早々居ないわ。」

 

全く表情を変えずに写真を見ていく2人。横に居たルームメイトは無表情を装っているが、前で組んでいる手が僅かに強くなっているところを見ると、あまり慣れていないらしい。

とはいえ、慣れたところで全く良いことなんて無いのだが。

 

  「で、これがどうかしましたか?」

 

  「これらの写真に写っているものにはある共通点があるの。何だか解るわよね?」

 

  「えーっと、死体しか映っていない?」

 

  「確かにそうね。でも違うわ。もっと正確に言うならば、その死体全てに共通する点かしら。」

 

  「?」

 

  「全く白々しいわね。今回死亡した4人の死亡鑑定を行ったところ、全員即死だったそうよ。そして、全員死亡後に刀剣類で付けたと思われる刺傷が頭部付近で見られたわ。」

 

  「? それがどうかしました?」

 

  「念入り過ぎるのよ。仮に止むを得ず殺害をしてしまったのなら、頭部への攻撃を付け加える必要は無いわ。」

 

  「何故付け加えたと思うのですか?」

 

  「死体を調べれば、どの順番で斬られたか程度なら予測できるのよ。それに、地面への刺し傷もあったしね。」

 

  「………。」

 

  「一方的な意見を言わせて貰えば、今回の事件。君が首謀者である可能性は限り無く少ないわ。でも、君は自己防衛以上の明確な殺意を持って4人を殺害した。少なくとも今の私はそう結論付けるわ。」

 

  「ふむ。」

 

  「さて、これが私の知る、全ての情報を前提にした上での考察なのだけれど、何か反論はあるのかしら?」

 

  「うーん。そうですねぇ。…まぁそんなところで良いんじゃないのでしょうか。」

 

  「はぁ…。」

 

青年の投げ遣りともとれるような返答に、思わず溜息をついてしまう生徒会長。

名目上これは事情聴取であり、ここでの返答は責任者を含めて多数の人物に渡り、今後の関係にも大きく関わるものである。

仮に、全てとは言わないまでも可能な範囲内で暴露してしまえば教師陣や青年に対する対応が変わる可能性があるのだ。しかし、青年はそれを知っていてなお情報の提出を拒んだ。

 

  「どうなっても知らないわよ。」

 

  「まー、今に始まった事でもないでしょうに。何を今更。」

 

  「そう…。なら、この質問は此処で終わりましょう。次よ。」

 

  「何でしょう。」

 

  「今回襲撃し、撃退した人物はISを装着していたことが事件後の調査によって判明しています。どうやって、シールドエネルギーを貫いたの?」

 

  「どうって、普通に(直死の魔眼を併用して)斬ったら貫きました。」

 

  「それだけなら話は随分楽なんだけどね。この話もそこで収まらないのよ。これも死体を調べた結果刀剣類で付けたと思われる切傷が多数見つかったわ。でも、切られた断面を調べてみるとそのいずれもシールドエネルギーを貫けるほどの威力を持った斬撃跡ではなかった。どちらかといえば複数回斬ることを目的としたスピード重視の斬撃だったわ。」

 

  「シールドエネルギーを貫くことを目的とした攻撃と、相手を仕留めることを目的とした攻撃の2種類を使い分けていた。ではどうでしょう。」

 

  「もし、素の攻撃で貫けるならそのまま攻撃してしまえばいいじゃない。わざわざ攻撃工程を増やすメリットはないわ。特に今回のような多対一の場合、如何に効率よく敵の人数を減らせるかが重要なポイントの一つよ。」

 

  「酷い言い方になってしまうけれど、君の言い分は余りにも不自然すぎる。」

 

  「考え過ぎですよ。私は唯の弱い方の男性操縦者です。」

 

  「私がそれを信じると思う?」

 

  「私が嘘を言っているとでも?」

 

  「ええ。私は君とまだ会って間もないといっても差支えがない部類の人間よ。でも、私はほかの人達とは違う。私は君と1度だけ。たった1度だけ試合をしたことがある。実際に君の実力を体験した身としてはどうにも信じられないのよ。」

 

  「(正直、割と事実なんだけどなぁ。直死の魔眼と次元斬を使い分けていただけだし、強ち間違いでもないと思うんだけどな~。まぁ、勝手に疑ってくれるならそれはそれでいいや。) そうですか。なら、こちらとしてはこれ以上語ることはありません。」

 

  「これでいいのかしら?」

 

  「ええ。」

 

  「わかったわ。じゃあ、最後の質問よ。」

 

  「何でしょう?」

 

  「どこまで知っているの?」

 

  「?」

 

生徒会長の問いに思わず首を傾げてしまう青年。何に対して知り得たのかという単語が抜け落ちているため、こちらで考察をするしかない。

その為、青年が思考を巡らせていると、生徒会長から話の続きが来た。

 

  「ごめんなさい。言葉が少なすぎたわね。今回の事件について、何処まで調べ、情報を持っているの? が正しいわね。」

 

  「…言っている意味が良くわかりませんが。どういうことでしょうか?」

 

実際問題、青年は事件についてAIに調べさせてはいるが、まだその処理が終わっていないので殆どが知らないというのが現状だった。

どこまで調べたかと聞かれたところで、青年自身はまだ何も調べていないというの現状だった。

 

  「そう。なら良いわ。」

 

そういって、生徒会長は姿勢を崩し、紅茶を一口飲み、再度青年のほうを向いた。

 

  「話は変わるけど、スペードの模様が刻まれたコインを探しているのだけれど、何か知らない?」

 

  「どんなものですか?」

 

  「そうね、こんな模様よ」

 

青年に質問された生徒会長は、茶封筒の中から小さな写真を取り出した。そこには、青年が事件のときに回収したコインと全く同じものが映っていた。

 

  「これがどうかしました?」

 

  「このコインはとある事件における証拠品として集めているの。何か知らない?」

 

  「知らないわけではないです。」

 

そういって、青年は自身の傍においてあった鞄の中からコインを4つ取り出し、掌に乗せ、見せる様に手を開いた。

 

  「これですよね?」

 

  「ええ。持っているのなら話は早いわ。それをこちらに頂戴。君が持っていても、役に立たないだろうし、私が有効活用させてもらうわ。」

 

生徒会長は、青年の掌に乗っているコインを取ろうとして、身を乗り出し、手を伸ばした。しかし、

 

  「どういうことかな?」

 

青年は、生徒会長に取られないよう手を腕ごと動かしたのだ。

当然、辺りには不穏な空気が流れ始める。

 

  「いやー、流石にこちらも はい、そうですか。で渡したくは無いんですよね。」

 

  「それで?」

 

  「確かに、私が持っていたところでコイントス位にしか役に立たないことは明白です。私が持っているより、生徒会長が持っていたほうが有効活用できるであることは容易に予想が出来ます(何に使うかは知りませんが。)。ただ、」

 

  「ただ?」

 

  「今回のことで幾つか疑問点がありましてね、それについてお伺いしたいのです。」

 

  「一つ確認しておきたいのだけれど、もしその質問を受けなかったときは、そのコインをどうするつもり?」

 

  「いえ別に、何もしませんよ。これは必ずお渡しします。あくまでも、話を聞いて貰うためのきっかけとして引いただけですから。(話の内容を逸らされたくない。が一番正確なんだよなぁ。この人と話するときは主導権を全て握るつもりで立ち回らんとどうなるか全く解らん。まぁ、それも全部ばれているだろうけどね。)」

 

この要求を出すにあたって、青年が一番避けたいことは、事情聴取が終わり事件に関することについて有耶無耶にされたまま、この場を去ることである。

ただ、今回青年が取った行動は余りメリットのある行動とは言えない。確かに、情報を入手することが出来、今後のことについての思考する幅が広がる可能性がある。しかし、それだけしかない上に、情報収集をするだけならAIに任せれば恐らく何処よりも正確な情報を入手することが出来る。

それに、話術により青年がボロを出す可能性もある。

余りにも、メリットデメリットの釣り合いが取れていないのだ。そんなことを知ってか知らずか、生徒会長は会話を続けていく。

 

  「そんなことをしなくても、話くらい幾らでも聞いてあげるのに。」

 

  「そうでしたか。それは杞憂でしたね。」

 

 

  「以前、私に対して暴行行為を行い強制退学となった4人は知っていますか?」

 

  「知っているわよ。」

 

  「では話が早いです。本州への強制送還後、彼女たちはどうなりましたか?」

 

  「それはこの事件に関係することなの?」

 

  「私としては無関係であって欲しいと願っていますよ。」

 

  「そう。学園上層部に伝わっている情報としては、彼女たちは裁判の後、無期懲役が言い渡されたわ。」

 

  「その無期懲役は、相対的の方ですか?」

 

  「いいえ。絶対的の方よ。」

 

青年は、この言葉を聞いた瞬間ある仮説を立てた。しかし、関与するには余りにも準備不足なので、これ以上の考察は後ほどにすることにした。

 

  「そうですか…。この情報はいつごろ世間に公表されるのですか?」

 

  「それは知らないわ。きっと折り合いを見て発表するのでしょう。」

 

  「なるほど。」

 

青年はその言葉を最後に、手に持っていたコインを静かに机の上に置いた。

 

  「あら、もう質問は良いのかしら?」

 

  「ええ。これ以上踏み込んだところで得られるものはないでしょうし、気の弱い私はこの辺りで身を引くとしましょう。」

 

  「気の弱い…ねぇ…。」

 

怪訝な眼差しを全く隠そうともしない生徒会長をスルーし、席を立つ青年。その手には鞄が握られており、そのまま出て行くのかと誰もが思っていた。しかし、

 

  「あ、そうだ。」

 

ふと思い出したかのように、青年が歩みを止め、生徒会長の方へ振り返り指を指した。

 

  「それを用意した人はどっちですか?」

 

青年が指を指した先には、すっかり冷めてしまった紅茶が入ったティーカップがあった。

 

  「君が最初から見ていたじゃない。」

 

  「中身はね。問題はティーカップの方ですよ。で、それを用意したのはどっちですか?」

 

  「私だけど? どうかした?」

 

  「無色透明、無味無臭。」

 

  「…ふぅん。」

 

  「内側か、底か、縁は…ないでしょう。」

 

  「なるほど。で?」

 

その瞬間、青年の纏う空気が一瞬で重くなり始めた。そして一拍置き、

 

  「次はありませんよ。」

 

普段からは全く考えられないような、青年の立ち振る舞いに生徒会長は一瞬たじろいでしまう。

 

  「…そう。肝に銘じておくわ。」

 

  「理解していただいた様で助かります。では、これで失礼しますね。」

 

青年は、再び生徒会長に背を向けると、扉を開け生徒会室を後にした。

 

バタンッ

 

青年が退出した後、生徒会室には静寂が訪れた。聞こえるのは、無機質な時計の音や外から聞こえる生徒たちの声。

そんな中、2人は一歩も動かず、口を開かず、冷や汗を流していた。

 

  「…ばれていましたね。」

 

  「何なのよあの子わあぁぁぁぁ…。」

 

ルームメイトからの声を皮切りに、机につっぷくす様に倒れる生徒会長。渋い顔をしながら両手で頭をガシガシと掻きまくっている辺り、相当なものだったらしい。

それもそうだ、自身の考えていた策の殆どが見抜かれた上に、それを知っていて尚こちらに乗ってきたのだから。

 

  「お嬢様、今回使用したのは確か…。」

 

  「そうよ、家が開発した新作よ。ていうか、無色透明無味無臭の液体をどうやって判別したのよ。あの子は犬か何かなの?」

 

  「協力者のおかげでしょうか?」

 

  「それは無いわ。だってこれ今朝完成したものだし、デジタル媒体どころか紙媒体にすらまともな記録が無いのよ。仮に協力者が居ても判別は流石に無理よ。」

 

ルームメイトの質問に対し明確に否定する生徒会長。いかに協力者のハッキング能力が優れていようとも、ネットワークに繋がっていなければ干渉できない。

なので、限り無く痕跡を残さない指示の元作成させたのだ。もしこれでもばれていたのなら、家の中に内通者がいることになってしまう。

 

  「…それなら、いっそのこと前世の記憶を持った人とかなら納得できそうですね。」

 

  「それって輪廻転生のこと?」

 

身体を起こす事無く、顔だけをそちらへ向ける。

 

  「そうです。だって、この世界で起こったことを全て知っているなら対策が出来るじゃないですか。」

 

  「ふふっ、相変わらず不思議なことを言うわね~虚ちゃんは。」

 

  「そうでも思わないと余りにも納得できない点が多すぎますよ。」

 

  「それもそうね。でも、もし記憶を持っているなら態々拷問を受けたり、厄介事を引き受けたりすることは無いわ。面白い仮説だけれど、その可能性は無いでしょうね。」

 

  「ええ。言い出しておいて何ですけど、私もそう思います。幾らなんでも現実的ではないですから。」

 

  「さて、虚ちゃん。お仕事の続きをしましょうか。」

 

  「かしこまりました。」

 

お互いに、片付けをしつつコインを回収し、今後のことを含め(珍しく)仕事をしていた。

 

 

 

  “という事らしいですけど、何か言いたい事はありますか?”

 

  「(布仏さんの直感こえーな。)」

 

青年は、退出後部屋の様子をAIによるハッキングで盗聴していた。

 

  “しかし、更識の技術も馬鹿に出来ませんね。”

 

  「(全くだよ。AIにサーチさせなければ全く解らんかったっつーの。で、何が入っていたの?)」

 

  “不明です。会話のとおり、新種の為データベースに該当するものはありませんでした。予想としては、睡眠薬か自白剤か…どちらも余りよろしいものではないのは確かですけど。”

 

  「(飲まなくて正解だったな。)」

 

青年は、紅茶をじっと見ていたあのときにAIに必死に調べさせており、判別不能というそれだけの理由で、紅茶を飲むフリをし唾で誤魔化した。

実際にはどのような効果だったのかは定かではない。しかし、起こってからでは全てが遅い為、怪しいものは全て拒否することにした。

因みに、アップルパイには何も入っていなかった為素直に頂いた。普通に美味しかったらしい。

 

  「(しっかし、カップに入った紅茶の濃淡のみで危険察知できるなんてな。正直助かった。)」

 

  “おや、マスターから感謝の言葉が来るとは明日は雪が降りますね。”

 

  「(喧しい。)」

 

  “まぁ、極僅かですけど明確な違いがありましたからね。ただ、はっきり言って肉眼では判別不可能ですし、成分検査も温度が高過ぎて正確に判別できませんでした。今後もっとクオリティの高いものが出て来る可能性も十二分にありえます。気を付けて下さい。”

 

  「(了解。引き続き任せたぞ。)」

 

  “了解。”

 

青年は、歩きながらAIとの会話を終えると中庭に出ていた。

青年はガラケーを取り出し一応監視カメラの死角に前半身だけ入り込むように調整すると、手早く電話を掛け始めた。電話の相手は数コール後には出てきたらしく、会話が始まった。

 

  「どもお久しぶりです。」

 

  「あーいや、そっちの方はまた今度。今日はですね、また別件なんです。」

 

  「どうして、襲撃したんですか?」

 

その直後、青年の背中を捉えている監視カメラが動きを止めた。

 

 




どもども、最後まで読んで頂いてありがとうございます。

さて、今後のことなんですが、作者のリアルのほうが立場的に割と危険でデンジャーで危なっかしい状態にあります。具体的には月末も怪しいです。

更新は出来る限り続けていくつもりですし、エタるつもりはありません。(今のところ)

スローペースな作品ではありますが、今後も読んで頂けるようであれば幸いです。

コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます。

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