今回は非情に難産でした。
ひょっとしたら書き換えるかもしれないです。
では本編へどぞー
“次の十字路を右です。”
「(全く、仕事を増やす馬鹿は死ねばいいのに。)」
“愚痴らないでください。次の角を左折です。”
青年はAIの指示の元、ポニテ娘を追いかけていた。青年が通る頃には隔壁は解除されたのかほとんどが半開き以上の状態となっており、一応人が通れる状態となっていた。青年が角を曲がると、廊下の突き当たりに放送室という標識が見え、その真下にあるドアのさらに奥にポニテ娘の後姿が見えた。
「(頼むから大人しくしとってくれよ!)」
青年は何も起こらないことを、いや。何かしでかす前にポニテ娘を回収したかったのだが、
「一夏あああぁぁぁぁあああぁぁぁあぁぁああ!!」
ポニテ娘の大声でその願いは無残にも壊されてしまった。だけならよかったのだが、状況はさらに悪化していく。
“高エネルギー反応検出、大型荷電粒子砲と判断。”
敵からの砲撃情報がAIから伝えられたのだ。その瞬間青年は強硬手段を決行することにした。
「(おいまじかよ。洒落にならんぞ!)」
青年が今いる場所からでは遠すぎて走っていては間に合わない。間に合わせることは出来るが、脱出までの時間を考慮すると怪我をする確率の方が高い。では、どうするのか。
「トランスプラントコード【悪魔の右腕】部位:右腕。」
青年は呟いた直後、足を止め右腕を前に伸ばした。まるで物を掴むかのように。しかし、青年の掌には何もない。ポニテ娘は遥か先で未だ叫び続けており、その周りには掴めるものなど何も無い。だが、青年は開いていた掌を閉じた。まるで何かを掴むように。そして、
「捕らえた。」
青年が発したそんな言葉の直後、勢いよく腕を引いた。青年の手には先程から何も無かったのだ。当然握ったところで掌には何もない。しかし、視界の先にはまるで何かに強引に引き寄せられたかのような不自然な格好でこちらに向かって飛んでくるポニテ娘の姿があった。
その姿を確認すると、青年は引いている腕とは逆の手を握りしめ、大きく振りかぶり、
「(頼むから大人しくしててくれ!)」
飛んでくるポニテ娘の頭めがけて振り下ろした。
青年の打撃音と、荷電粒子砲が放送室を破壊する音が同時に響いた。青年は手を振り落とした後、即座に身を下げ、外套で自分とポニテ娘を覆い隠した。衝撃波から身を守るためだ。
“脳震盪による気絶を確認。随分と手荒でしたね。ですが、その判断の早さお見事です。”
「(こちとら、手段なんぞ選んでられないっつーの。)」
青年は飛んでくる破片や欠片から身を守りつつ、体制を整えていく。
暫くして風が止み、立ち上がろうとした青年が右腕を動かそうとした。しかし、青年の腕は意思に反し全く動かなかった。
“マスター、腕は大丈夫ですか?”
「(左が激痛走りっぱなしだな。何をしても洒落にならんぐらい痛い。右はそもそも感覚が無いし、力も入らん。治りそうか?)」
青年が何とか立ち上がった時、青年の腕はだらんと力なく垂れており、特に右は指一つ動くことは無かった。
“休息を取れば一応。直死の魔眼と同じように腕全体に大きすぎる負担がかかったようです。”
「(じゃあ、いいや。帰るぞ。)」
“…了解。”
青年は確認が終わったあと、辛うじて動く左手を器用に使いポニテ娘と鞄を米俵のように背負い、その場をあとにした。その時、何かを叩きつける鈍い音が数回、どこかで聞いたことあるレーザースナイパーライフルの音が1回響き、その後まるで何かを突き破ろうとする独特な音が壁越しにアリーナから聞こえた。
………side アリーナ内部
「ぜぇ、ぜぇ。」
「はぁ、ったく。むかつくくらい上手い奴よね。こっちが攻撃しないと一切反撃しないどころか、回避以外は殆どしてこないし。」
俺は鈴と一緒に侵入者の撃退をしている。のだが、相手も相当強くどれだけ攻撃しても、後ろに目がついているかのように一切無駄のない回避をしてくる。
でも、俺はこんなところで負けちゃあいられないんだ。皆を守れるように、もっと強くならないといけない。こんなところでつまずいているようじゃいけないんだ。
「ぜぇ、鈴! まだ行けるか!」
「それはこっちの台詞よ! エネルギーも少ないんだからあんたは下がってなさい!」
「バカ言うな! 女を置いて男が尻尾まいて逃げろって言うのか! 俺はまだ戦える!」
「馬鹿はあんたでしょ! 自分の現状をよく見てから発言しなさい! エネルギーもない、攻撃は当てらんないならどうしようもないでしょう!」
それは事実だ、俺の機体は試合中だったというのもあるが、もう既に3割を割ってもうすぐ2割に食い込もうとしている。
でも、それでも俺は逃げるわけには行かない! 千冬姉もどんな困難があっても決して諦めることは無かった。なら、俺も逃げるわけには行かない。
見つけろ、突破口を。必ずあるはずだ。
「………。」
しかし、今まで動かなかった敵が初めてこちらに向けて動き始めた。その回避している時とは段違いの速さに一瞬姿を見失い、
「ぐぅうううう!」
「きゃぁあ!」
2人とも攻撃をくらった。その結果、エネルギーが2割を下回った。でも、一つ突破口は見えた。
咄嗟にだが、出した雪片改を敵は避けることなく突っ込んできた。つまり、不意打ちでなら勝機はある。それに、こちらは一撃必殺の零落白夜がある。
さっきヒットした攻撃も零落白夜状態だったから、敵のエネルギーは大きく減らしている。あと一回当てれば、やつを倒せる!
そう思って、鈴にも話してみたんだけど、あいつは賛成してくれなかった。それどころか、千冬姉も撤退命令を出してきた。
ここで逃げたら、俺達の苦労がすべて水の泡になってしまう。だから、撤退にはまだ早い、っていう意味で言ったのに、受け入れてもらえなかった。
あともう少しなんだ、あいつの攻撃に合わせることが出来たら!
そう思っていると、願いが通じたのか機転が訪れた。
『一夏あああぁぁぁぁああぁぁああ!!』
「箒!?」
「あんのバカ、何がしたいのよ!」
そう、箒が放送室から大声を上げていたのだ。
『男なら、男なら! その程度の敵に勝てなくてなんとする!!』
その声が大きくアリーナ内に響いている最中、敵の視線が箒の方へ向いた。俺は無意識に前へ出た。折角箒が頑張って作ってくれた隙だ。俺は無我夢中で敵を斬るためにブーストを吹かした。そんな中、目の前の敵が今まで撃ってこなかった大型の砲門を箒のいる放送室へ向けた。
「やめろぉぉぉおおおぉぉぉおお!」
それを見た瞬間俺は思わず叫んだ。それと同時に嫌な予感を感じていた。もしこれが撃たれたら、箒は…
違う! 俺は皆を守る為に戦うんだ! ここで幼馴染一人守れないようじゃ男じゃない!
俺の頭の中には、目の前の敵を斬って止める。それしか頭に無かった。自身の想いを全て乗せ俺は、雪片を振り下ろした。
ガギィンイイイィィィィイイイイン…
金属と金属がぶつかりあう鈍い音が周りに響く。俺は、
「そんな…」
相手を
「どうして…」
こちらを見ることなく片手で白刃取りした相手を見て、目の前が真っ白になっていた。
そんな俺を知らないかのように、構えていた砲口が火を噴いた。
腹の底に響く不快な感覚。しかし、そんなことすらまるで気にならない。雪片が相手に掴まれているから自分は動けない。万力の如き力で掴まれており、ピクリとも動かすことが出来ない。
そんな俺に出来たのは、まるで時間が止まったかのようにゆっくりと動く敵の荷電粒子砲を目で追い、箒の居る放送室が破壊されるのを見ることだけだった。
どおおぉぉぉおぉぉぉおおおぉん!
二度目の重く響く音、無残に破壊された放送室。
俺はそれを見た瞬間、頭の中が空っぽになった。
「おまええぇぇぇぇぇえええええ!!!!」
怒りで頭が沸騰しそうだった。それでも、せめて目の前にいる敵だけでも倒さないと! 箒が報われない! 折角勇気を出して俺を手助けしてくれてというのにこの仕打ちはあんまりだ!
俺は無我夢中で雪片を振り回した。
「うおおおぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉおおお!!!!」
このままじゃ相手に勝てない… ならもっとだ! もっと! もっと力を寄越せ! 明月! アイツを、あいつを倒す為に!
そんな願いを聞き届けてくれたのか、自分の機体のエネルギーが回復した。その量、瞬時加速ギリギリ1回分。多いか少ないかで言えば少ない。それもかなり少ない量だ。でも、これで行動が取れる。
でも、これだけじゃまだ足りない。後もう一押し…と思っていると、プライベートチャンネルで連絡が入った。相手は
『一夏さん! 鈴さん! 10秒後に隔壁が開放されます。ですので暫しの辛抱を。これからは私も援護いたしますわ!』
セシリアだった。
どうやら俺は仲間に恵まれているらしい。それを聴いた瞬間、鈴に確認を取った。
「鈴聞いたか!?」
「聞こえてたわよ! 一夏! 死ぬ気で耐えるわよ!」
「わかってる! でも鈴、さんきゅーな。」
「何よ急に…、って一夏!前!」
「え?」
鈴の声に驚き、視界を敵のいた場所に戻すとそこに敵は居らず、上から衝撃が走った。
どうやら、敵が強襲してきたらしい。しかし、敵がこちらに来てくれたのはラッキーだった。
「ぐっ! これでも、くらいやがれええぇえぇぇえええええ!」
俺は未だ掴まれている頭を持つ敵の腕めがけ雪片を突き刺した。
敵は混乱したのか俺を手放し、動きが一瞬止まった。そんな隙を見逃すほど俺達は馬鹿じゃない。
「セシリア!」
「ええ、一夏さん。此処はセシリア・オルコットの名にかけて外しませんわ! スターライトmk-Ⅲ 照射モード。果てなさい!」
隔壁の僅かな隙間から、一筋の青い光が放たれ吸い込まれるように敵に当たった。
その後、敵は俺達から距離を取り間もなく再びシールドエネルギーを突き破って逃走した。
それを皮切りに、俺達の役目は終わった。
Side out
アリーナ内部 管制室
青年が米俵のように背負っている荷物を預けるため管制室に移動していた。何とか片手で扉を開けるとそこには、怒り心頭といった表情の担任と副担任、そして非常に複雑な表情をした教員の方々、正座をさせられている彼という。どう見ても説教部屋状態になっていた。
彼は目から涙を流し何が言っていたが青年は特に気にならなかったので、近くにいた教員に気絶した荷物を受け渡そうとした。
しかし、その光景を彼に見られてしまい話が拗れ始めてしまった。
彼は、怪我を負っていたと思っていたポニテ娘が気絶しているとはいえほぼ外傷無しの状態で再会できたのだ。
感極まったのか、感謝の気持ちを述べ青年に抱きつこうとした。避けられていたが。
「どうして避けるんだよ。感謝のハグくらいさせてくれよ!」
とのことらしいが、青年はそっちのけも当然無いし、おまけに今の身体は下手に触られるだけで激痛が走る状態なのだ。
青年としては全く触らせる気がなかった。というより、拒否しても笑顔で
「そんなに照れるなよー。」
とかほざきながら迫ってくるのだ。正直、鳥肌が立ちぱなしだった。
しかし、そんな巫山戯た時間も、担任の出席簿で終了し、説教が再開された。
しかし、その瞬間彼の顔から疑問が浮かんでいた。それを見た青年は嫌な予感を感じ取っていた。そして、案の定それは的中してしまうのだった。
「なんで俺が怒られなくちゃいけないんだ?」
その瞬間、時間が止まった。
当然、各々が様々な表情をし始める。呆れ、苛立ち、唖然、確認できるだけでこれだけあり、少なくともこの空間においては彼に対し好意的な印象を持っている人物はいなかった。
幸か不幸か、チャイナ娘と淑女は席を外している。淑女が怪我をしているチャイナ娘に付き添っているのだ。
青年は厄介事の匂いしかしないこの状況下に居続けたいと思えるような神経は持ち合わせておらず。早々に立ち去ろうとする。
「なぁ、渉もさ可笑しいとは思わないか? 皆を助けるために頑張ったのに怒られるって。」
青年はそんな言葉を聞いた瞬間怒りが込み上げ、それと同時に呆れていた。
何かに期待するような眼差しを向けられるが、特に何も話すことがない青年はそのまま帰ろうとした
「織斑先生退出してもよろしいでしょうか?」
「ああ。貴様は良くやってくれた。ゆっくり休め。」
「解りました。失礼します。」
背後から悲痛な叫びが聞こえた気がしたが、青年は特に気にすることなく部屋に戻り、緑色のカプセルを飲んで寝た。
翌日
青年は重い体を動かし、両目で視界確保し、両腕が動くことを確認して安堵の息を漏らした。
「どうかしましたか?」
当然、ルームメイトも心配してくる。突然体の動きを確かめるような動作を神妙な顔でし始めたのだ。
疑うなというのも無理はない。特に彼女の場合は…
「昨日ちょっと腕を痛めましてね、痛みが引いたかどうかを確かめていたんですよ。」
「それにしては、随分深刻そうな顔をしていましたけど。」
「利き腕ですからね。もし使えないと流石に不便ですから。」
青年は咄嗟に嘘と真実を混ぜ合わせたもので誤魔化しに走った。
「そうでしたか… そういえば昨日は大変だったそうですね。」
あまり効果は見られなかったようだが。
「えぇ、まぁ。そちらもある程度知っていますよね?」
「少しだけですけど。」
「そういうことでしたよ。疲れました。」
「お疲れ様です。ただ、そちらの件でお嬢様が放課後に生徒会室に来て欲しいと言っていましたよ。」
「わかりました。お伺いしますと伝えておいてください。」
「はい、わかりました。」
そんなこんなで朝の準備を終え、教室へ移動をした。
教室内
教室へ入るとまたもや彼が神妙な顔で近づいてきた。
青年はあの時勝手に帰ったことについて文句を言われるのだろうと思っていた。しかし、実際はまた別の理由だった。
「なぁ渉。お前、箒を殴ったって本当か?」
鎮圧(物理)のほうだった。
「ええ。グーで一発。(これ以上余計なことをされても)普通に迷惑でしたし。」
「(箒の命を掛けた応援が)迷惑? 渉、お前箒の努力を無碍にするつもりか?」
「努力? (他人を散々振り回すあの行動の)何処が?」
「おまえなぁ…、もうちょっと周りを見ようぜ。動いてるのは自分たちだけじゃないんだぞ。」
「はぁ…。」
この時点で青年は、正確な返答は意図的に控えていた。それは何故か、青年は裏方という役割でしか事件に関わっておらず、当事者でありながら事件で得た情報が最も少ないのだ。
この状況で下手なことを言うと、取り返しの付かない事態になる可能性もありうる。と考えていたからだ。しかし、それは実際のところ殆どが杞憂であった。
彼は青年にポニテ娘の行動や、彼視点での事件について事細かに語られたのだが、聞いていくうちに青年は返答すらしなくなり、席へ移動を始めた。その際、一つだけ気になったことを質問していた。
「っておい! 聞いてるのか?」
「ええ、聞いていますよ。ところで、その情報は誰から聞きました?」
「そんなことどうでも良いだr「よくありません。」…目を覚ました本人から聞いたんだよ。フードで顔は見えなかったが、あの珍妙な格好をする奴はやつしかいない。ってな。」
「そうですか。授業が始まるのでそろそろ席に戻ったほうが良いですよ?」
「…まぁ、それでも箒を助けてくれたのは事実みたいだからな。ありがとな。でも、女子を殴るなんて事はもうしちゃあ駄目だぞ。俺との約束だ。」
「………。」
“意中察します。”
青年は一方的に押し付けられた約束を聞き、唖然としていた。AIからの通信が聞こえていない程度には。
これについてはこれで収まりを見せたかのように見えた。しかし、それは彼にとってはという話であり、青年にとっては、彼との会話から必要以上に悪評のみが尾鰭が付き独り歩きを始めるのだった。
SHR
チャイムと同時に担任副担任が教室に入ってきた。2人共その顔には若干だが疲れが見え、昨日の後始末があったことを容易に連想できた。そんな中でも普段と変わらないような口調で業務連絡を伝えていく。
「諸君。昨日はアクシデントがあったにも関わらず、非戦闘員における死傷者ゼロという結果で終わることが出来た。今後もこういったことが起こる可能性は有る。皆引き締めるように。」
そんな中、1人の生徒が質問を出した。それは、皆の目的とも言えることだった。
「先生、フリーパスはどうなったんですか?」
それを聞き、溜息を付く担任。それを見て苦笑いする副担任。
「それについてだが、今現時点でレポートが出せる生徒のみフリーパスを譲渡する。これは昨晩の緊急会議で決まったことであり、全クラス平等に行われる。どうだ、今出せる奴はいるか?」
「「えーーー!」」
「当然だ。寧ろアクシデントがあり、何故レポートが出せない? 我々は作業をする為に課題を出しているのではないのだぞ?」
レポートをしていない生徒が大多数だったようで、数人のみが提出しパスを受け取っていた。他の生徒はそれをうらやましそうな顔で見ていた。因みにレポートを提出した数人の中にダボ袖少女もしっかり含まれていた。内容はギリギリだったようだが。
「さて、提出できる奴は他にいないか?」
受け取り終え、担任が催促をしていく。そんな中、少女が音も無く立ち上がりレポートを数枚提出した。
「ほう、貴様らもか。うむ、キチンと直筆で書かれているものだな。良いだろう。持って行くが良い。」
そんな言葉の後、担任は2枚少女に対してフリーパスを渡した。
「え!?」
当然、教室は疑問に包まれる。少女は何食わぬ顔で、青年の下へ移動しパスを渡した。
「先生! 何でアイツの分までパスを渡しているんですか! 出場者でもなく、レポートを出していないのにどうしてですか!」
「レポートは先程受け取ったぞ。雫の奴が代理で渡しに来たがな。」
そういって、担任は先程受け取ったレポートを両手に一枚ずつ持ちクラスメイトに見せた。そこには、確かに青年と少女の直筆で自身の名前とレポートが綴られていた。
「今回は事情も理解しているのでこれで良しとしただけだ。これでも私の決定にまだ何か不満でもあるか?」
「い、いえ、ないで、す。」
担任の一声により、表面上は落ち着きを見せたものの、水面下での心境の変化はどうしようもなく、青年に関する噂の一つに【女をこき使う非情な奴】といったものが追加され、その件でまたクラス内でいざこざが起こるのだが、それはまた別のお話。
放課後
青年は、いつものように授業を右から左へ受け流し終えた後生徒会室へ向かって移動をしていた。
なんてことはない。ただの事情聴取だ。青年も理解しているし、事前連絡で了承しているものだから絶対に行かなくてはならない。
「(とはいえ、意図して行きたいかっつーとそうでもないんだよな。)」
“諦めてください。”
青年は非情にめんどくさがっていたが。
そんな青年にちょっとした転機が訪れる。
「あの、すいません。」
「はい?」
後ろから声を掛けられたのだ。青年は思わず振り向くとそこには大人しそうな女生徒がこちらを見ていた。それを見た瞬間青年の頭の中には疑問が浮かんだ。
目の前の生徒は見たことがない。つまりクラス外の生徒だった。只でさえ他人との交流が薄い青年だ。そんな青年にクラス外に知り合いなぞ居るはずも無く、声を掛けられる理由も思いつかなかったのだ。
「四十川さんですか?」
「ええ。確かに私は四十川です。それがどうしました?」
「昨日は助けに来てくれてありがとうございました!」
「はぁ…。」
青年は突如感謝の気持ちを告げられて、思わず返答に困る。全くそんなことになるとは思っていなかったのだ。
「私は何もしていませんよ。実際敵と戦っていたのは織斑さんと鳳さんですし、そちらにもお礼行ったほうが良いと思いますよ。」
「織斑君と鳳さんにはもう言って来ました。」
「おやそうでしたか。失礼しました。どうでした?」
「どうって、あまり大きな声で言いたくないけど、織斑君の言葉は綺麗過ぎる。心地の良い言葉を言っているだけ。」
「私は何も言っていませんよ?」
「四十川さんは何も言わない代わりに行動で表してくれた。その結果無傷で生徒の救出が出来た。」
「仕事ですからね。」
「仕事でも、あのままだったらどうなっていたかわかりません。だから感謝を伝えに来たんです。」
「そうですか。感謝の気持ちはありがたく受け取っておきます。ですが、あまり私に話しかけないほうが良い。」
「え?」
「私の評価を聞いたことあるでしょ? そういうことですよ。」
「納得できません。」
「客観評価に納得もクソもないですから。民主主義国家であることの弊害ですよ。」
「………。」
「では、私は用事があるのでこれで失礼しますね。」
青年は会話を終えると、女生徒に背を向け生徒会室へ再び向かうのだった。
ども、最後まで読んで頂いてありがとうございます。
これからものんびりと更新していきますので、
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