前話において、コメントが大量に削除されるという事件がありました。
作者の弁明を活動報告に記載しましたので、もしよろしければご覧ください。
現時点でコメントを頂いた
ただの通りすがり様、魁(さきがけ)様、E46様
個別返信が仕様の問題で出来なかったのでこの場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
さて、今回の話ですが、ちょっと残酷なシーンがありますが
作者の文才の無さのせいで、あんまり怖くありません。
でももし気になる人がいましたらお気をつけください。
では本編どぞー。
クラス対抗リーグマッチ当日 自室
青年はいつも通り、ルームメイトに叩き起こされてからの朝風呂といういつものお決まりコースで準備をしていた。ルームメイトも同様に、寝癖を取る為にヘアアイロンやらドライヤーやらで苦労していた。普段であれば、主に青年が暗病反を零しつつおかしなところがないか確認作業を行うのだが、今日は青年にとっても、管理する側としても一大イベントなので、つい話題がそこに行き着いてしまう。
「そういえば、今日は毎年恒例のリーグマッチの日ですよね?」
「そうですね。彼は是非とも優勝して欲しいですね。…なんですか?その鳩がアヴェンジャー食らったような顔は。そんなに意外でした?」
青年のセリフを聞いたルームメイトは思わず手を止め、口を半開きにして、ありえないものを見るような表情で青年を見ていた。
「え、えぇ。これまでの話を聞く限りでは、貴方が一夏君を応援するとは思っていなかったので。」
「他の方がどう思っているかは知りませんけど、別に彼のことは嫌いってわけではありませんよ?」
「へぇ、意外です。」
「まぁ、全く興味もありませんがね。」
「あ、あはは。」
はっきりと、現時点での心境を告げる青年に対し乾いた顔で笑うしかないルームメイト。青年の言葉を要約すると、眼中にすら無いという。嫌いよりも性質が悪い状況下に有ることを察し、彼と青年が理解しあうことは無いと思えるほどに、感情がなかった。
「では、何故応援するんですか? クラス内の輪を乱さないようにするためですか?」
「いや、学食のパスが欲しいんです。無くても問題は無いですけど、あると懐が非常に助かります。」
「実は私もあれが欲しくて、情報収集頑張ったことがあるんですよ。」
「おや、これは意外。布仏先輩も甘味はお好きですか?」
「ええ。大好きです。」
「どうやら、私は最高のルームメイトに出会えたようです。念のためですがはっきりと断言しておきます。甘味を無碍にする奴は敵です。」
握りこぶしを作ってまで断言する青年を見て、意地悪そうな表情を浮かべたルームメイト。
「おや? そういえば、生徒会室に来たとき私が出したスコーン。口につけませんでしたよね? あの時少し悲しかったんですよ?」
ルームメイトが言うとおり、青年は一度出されたスコーンに見向きもせず、そのまま退出したことがある。正直、気分ではなかったというのと、優先順位があったのでそれが終わるまで気を抜けなかったというのが大きい。しかし、
「実はですね、あの後物凄く後悔してました。具体的には夢に出る程度には。」
青年自身も非常に後悔していたようで、申し訳なさそうな顔をしていた。そんな傍から見ても珍しい表情を見れたルームメイトは、満足そうな顔をしていた。
「では、今度茶会を開くのですが、来ますか?」
「是非。」
「ふふっ、わかりましたよ。」
最終的には、次にきちんとご馳走になるということで会話が終わり、
「では、今日も一日お互いに頑張りましょう。」
「まぁ、私は発破掛けるだけですけどね。」
「ふふっ、そうでしたね。」
その会話を最後に、お互いの教室へ向かっていった。
さて、何度も記述があるようだが、今日は概ね全員が楽しみにしているリーグマッチの日である。丸一日を使用し、1年生の各クラス代表がトーナメント形式で戦っていくというものだ。皆は、授業が休みになる上に優勝すればフリーパスまでもらえるという一種のお祭りのようなものと考えていたようだ。しかし、此処は学校である。誰か1人にのみ仕事をさせるなんて不条理を許すはずも無く。
「さて、今日は皆が待ちに待ったリーグマッチ当日だ。このクラスからは織斑が代表として試合を行うわけだが、以前私はこういったはずだ。実際に戦うのは代表だが、代表ではない人物にも出来ることはあると。というわけで、今日のリーグマッチに出場しない残りの生徒全員にレポートの提出を義務づける。そのレポートの提出を持って出席扱いとするので、仮に試合観戦をしていたとしても、提出できなければ欠席扱いとなるので注意するように。」
「「「「えーーーーーーーーー!」」」」
朝のSHRにて担任から受けた通告に、クラス内で声が大きく上がる。時間差で他からも聞こえてきたところを考えると、他クラスも同じことを通告されているらしい。
「(欠席扱いでも、パスさえもらえれば良いや。)」
青年としては、目的がそもそも違うので適当なところで暇を潰そうとしていたようだったが…
「尚、フリーパスは出席者のみ与えられるので気をつけるように。」
「(oh,sh○t!)」
現実はそう甘くは無かった。
青年は準備の為一足早く教室を去った彼を全く見ることなく、窓から無駄に天気の良い空を眺めていた。
「(めんどくせぇ。)」
“律儀に行くあたり、根は善人ですね。”
「(喧しい。)」
AIに煽られながら。
暫くし、1年生がアリーナへ移動を開始した。青年も、それに釣られて移動していくのだが、如何せん周りからの扱いが酷く、
「ちょっと、近付かないでよ!」
「半径10メートル以内に近寄らないでくれる?」
「もう呼吸しないでくれる?」
「へーへー、すいませんでしたっと。」
青年自身もいちいち対応するのが面倒になったのか、明後日の方向へ顔を向け、頭を掻きながら適当な返答をしていた。
第一アリーナ 観客席
「それにしても、すっかすかだね。」
「しょうがないじゃないですか。高だか120人前後が数万人収容できるアリーナに入ったところで知れてますよ。」
青年が周りを見渡して、思わず率直な感想を漏らす。返答をした少女も同じことを思っていたようで、すかさず突っ込まれたものの、観客席には非常にと言うよりも殆どの席が空いていた。一応クラス別に分けようとはしたのだろうが、他クラスの生徒も混じっていた。
因みに、青年と少女以外の生徒は全員最前席で試合の開始を待っていた。
暫くすると、
『あー、あー、マイクテス。マイクテス。皆待たせてしまってすまなかった。多少遅くなってしまったが、これよりクラス代表リーグマッチを開始する。』
担任よりアナウンスが放送され、空中投影式ディスプレイにトーナメント表が出された。それを見た青年は
「これってどうなんでしょう?」
思わず、首を傾げ始める。同じく首を傾げていた少女も
「シードだとは思いますけど、決勝が此処まで想像が容易なトーナメントも珍しいとは思います。」
なんともいえない微妙な表情をして答えていた。
そのトーナメントとは
第一試合
一組代表 織斑一夏 対 三組代表 エイダ・アルバーン
第二試合
二組代表 鳳 鈴音 対 四組代表 マーリア・ルスコ
こうだった。
正直、専用機持ち同士が決勝戦に出ることは安易に予想が付いてしまうのだ。これが、上級生ともなれば話は変わってくるのであろうが、今の時期に専用機持ちと真正面から当たって勝てる人物は早々いない。事実この組み合わせを見て、クラスメイトの優勝を諦める生徒もいた。
「(エイダ・アルバーンとマーリア・ルスコについて何か特記事項はあるか?)」
“いえ特にありません。エイダ・アルバーンはアメリカ出身、マーリア・ルスコはフィンランド出身で双方共代表候補性ではありません。適正ランクはアルバーンがB-、マーリアはB+です。”
「(これ無理じゃね?)」
“客観的に判断したところ、彼女らの勝率は10%未満です。”
青年がAIと脳内会話をしている間に試合の準備が整ったようで、第一試合に出場する2人がアリーナ内に現れた。どうやら彼女はラファールで挑むらしく、ラファールを身に纏い強張った表情でアリーナ内に着地した。2人が着地し暫くすると試合開始を伝えるブザーがアリーナ内に鳴り響いた。
当然、試合が開始されたわけだが…
「雫さん、雫さん。試合が始まっているにも関わらず会話しているのは何故でしょう?」
そう。彼は、一歩も動かずに相手と会話をしていたのだ。会話の内容を聞く限りでは一応試合に関することではあるのだが…、如何せんタイミングが全くあっていないのだ。
「彼の頭の中には相手に一言言わないといけない。何ていう身勝手な決まりでもあるんじゃないですか? こっちからしてみれば只のカモですけどね。」
「ですよねー。」
そうこうしているうちに漸く動き始め、各々が武器を取り出した。彼は雪片改を。彼女はアサルトライフルを。それを皮切りに、既に始まっていた試合の火蓋がやっと落とされた。
数分後
『頼むから降参してくれ!』
『い、嫌です!』
そんなことを呟きながら、既に満身創痍となっている彼女。そして多少の自爆と零落白夜の影響と被弾によりエネルギーが半分以下にまでなっている彼。
やはりというか案の定彼女には荷が重かったらしく。残弾数は残り少なくなり、残りシールドエネルギーも1/5を割ってしまっている。もう結果としては目に見えてしまっているといっても過言ではない。寧ろ此処から逆転できるほどの技量があるのであれば此処まで追い詰められていない。にも拘らず、彼女は諦めていない。
『俺はか弱い女の子を斬りたくないんだ!』
『嫌です!』
どれほどの勧告を受けようとも、ひたすらそれを拒否していく。彼女の内にあるのは意思かそれとも意地かはわからない。しかし、その何気ない行動が、青年の眼に留まった。
「(リグ、あの子の警戒度を上げておいて。)」
“何故です?”
「(いや、ただの勘。でも、この世界において歪な信念を持つ人物は、厄介な人物って相場は決まっているからね。)」
“了解です。”
最終的には、彼が彼女のシールドエネルギーを斬る事でゼロにし、試合に勝利した。その際に行った最後の決め台詞が
『痛かったらごめん!』
なのだったのだが、周りには相手のことを気遣っているということで頗る好評だった。青年と少女を除いて。
「いやー、駄目でしょ。アレ。」
「理解不能です。」
正直な感想をお互いに零し、第二試合の開始を待つ2人。
「あ、そうだ雫さん。エイダ・アルバーンについての情報を集めておいてもらっていい?」
「特に問題無いですけど…。彼女がどうかしましたか?」
「いや特に、強いてあげるなら、目に付いた。かな?」
「はぁ、それは急ぎですか?」
「いや、全く急いでない。寧ろ何かの合間にしておく位でいいさ。」
「わかりました。」
一先ずそこで会話が途切れ、2人とも次の試合の開始を待った。
数分後
参加者である2人がアリーナ内に現れた。どうやら彼女もラファールで出場するらしく、ラファールを纏って現れた。訓練機枠が二人揃ってラファールを選んでいるという事実から、青年は打鉄の人気の無さに疑問を持ち始めた。
「打鉄人気ねーな。」
「今のトレンドは高機動弾幕らしいですからね。防御型の打鉄ではあわないんですよ。」
横でルーズリーフに情報を書きながら少女が答え始める。
「何処情報?」
ファッションか何かのように、ISにもブームがある発言に、青年は情報源が正しいのか不安になり、思わず聞いてしまった。
「【インフィニット・ストライプス】という雑誌は知っていますか?」
「名前だけは。」
「アレはISを主観に置いた雑誌ですからね。ブームやらトレンドやらを調べるにはもってこいですよ。一度は見てみることをお勧めします。」
「なるほどね。わかったよ。」
一応、世間的にも公表されている情報だったので青年は納得することにした。
そうこうしている内に、試合開始のブザーが鳴り響き試合が開始された。
こちらは試合開始と同時に双方が動き始めた。そこで、青年はチャイナ娘側の機体に違和感を感じ取った。
「おい、アレなんだ。」
「アレとは?」
青年が違和感を感じ取った部分。それは、チャイナ娘のISの背後から伸びている2門の肩部キャノン砲だった。その付近に非固定型武装が2つ浮いていることから、あのキャノン砲が龍砲ではないことは明白だった。それを理解した青年は内心溜息を付いた。
「(ちょっと待ってくれよ、ここでも原作乖離か? 止めてくれよ。)」
そう、本来ではありえないはずの物理砲撃を、今目の前でチャイナ娘が行っているのだ。
「(スキャン開始。)」
“了解。”
暫くすると、情報が順次映されていく。
機体名:甲龍
搭乗者:凰 鈴音
世代:試作型第三世代機
武装:双天牙月
詳細 高周波ブレードで構築された青龍刀。連結機能あり。
武装:龍砲(肩部非固定型武装)
詳細 空間に圧力をかけ、目視不可な砲身を形成しその際生まれる余剰エネルギーを砲弾化し、射出する。そのため砲身砲弾共に目視不可であり、射角制限が殆どない。
武装:崩山(肩部固定型武装)
詳細 七十口径特殊弾を押し出す。内部機構に火薬を使用しておらず、形状記憶合金と特殊合金で構成された機構により火薬を用いた時と同レベルの初速を維持しつつ、発射音も限りなく小さくなった。なお、両肩から背中にかけて小型の龍砲と同じシステムを搭載しているため、龍砲と同じく不可視の砲撃も可能。ただし、こちらは砲身と同じ向きにしか発射できないので、射角制限が存在する。
ワンオフアビリティ:なし
青年のメガネには情報が映し出されたわけだが、正直目を覆いたくなった。
「(何この強化…。相手にするのめんどくせぇ。あの時攻撃されなくてよかった。)」
青年がそんなことを考えているうちに、試合終了のブザーが鳴り響いた。予想通り、チャイナ娘の勝ちでだった。被弾もあったが三分の一も減っていなかった。周りからの会話を盗み聞きすると途中から相手は逃げに徹し始めたようだが、1対1でしかも専用機から逃げ切れるはずもなく、あえなく堕ちてしまったようだった。
周りは、その結果が予想できていたようで、負けた人物を貶すことはしなかったもののいい感情は持っていないようだった。
試合が終了して、暫くするとまた担任によるアナウンスが流れ始めた。
『これより、決勝出場者の最終メンテナンスと、アリーナの整備を行う。終了するまで大人しく待つように。』
そのアナウンスが流れたあと、彼が勝つかチャイナ娘が勝つかで談義をしている者もいれば、少女のようにひたすらルーズリーフに何かを書き綴っている人物もいた。そんな中青年はひたすらチャイナ娘対策について考えていた。
数十分後
『長らく待たせてしまって済まない。これより決勝戦を開始する。』
「織斑くーん、頑張ってー!」
「鳳さんも負けないでー!」
様々な者からのエールを貰い、それに伴い会場のボルテージが上がっていく。実際は会場はスカスカなのだが…。
選手も双方現れ、試合開始のブザーが鳴り響いた。しかし、案の定2人して普通に会話していた。
『よう! 鈴待たせちまったか?』
『アンタこそ、逃げなかったことだけは評価してあげるわ。どうする? 何があたしにいうことがあるんじゃない?』
『ああ! 勝つのは俺だ!』
『は?』
『言うことってこういう事だろ?』
『ちっがーう! アンタが私に対して言ったことに対する謝罪とかそういうものがないとかを聞いてんのよ!』
『話しかけようにもお前ずっと俺のこと避けてたじゃねーか!』
『それでも追いかけてくるのが男としての甲斐性でしょう!? アンタ女がほっといてって言ったらほっとくの!?』
『おう!』
『信じらんない! 乙女の心を踏みにじった挙句泣いた女をほっとくなんて!』
『放っといて言ったのは鈴じゃないか!』
『もう許さない。アンタの口からゴメンナサイって聞くまでボコボコにしてやるわ!』
『おう! 四の五の言うよりそっちの方がわかり易くて良い! 鈴! 手加減はしねーぞ!』
『うっさい! 唐変木は馬に蹴られて死んでしまえ!』
『何でだよ! わかりやすいじゃんか!』
2人の会話がこちらにもダダ漏れであり、クラスメイトは応援をしているもののその実全く動いておらず、ただの水掛け論状態になってしまっているのだ。唯でさえ乗り気ではない青年がため息とともに愚痴を零すのは時間の問題であった。
「飽きた。」
案の定、何時までたっても全く動く気配のない2人に見切りをつけたのか、自分の鞄を持ちアリーナを後にした。抜かりなく、適当に書いたレポートを少女に託してから出ているあたりちゃっかりしている。
アリーナ外周付近
青年はどこかで暇を潰そうと、どこかいい穴場がないか探していたところ、厄介な情報が紛れ込んできた。
“緊急です。 急速に接近するUPE反応を検出。数6。”
『(なんでこんなに厄介事に巻き込まれてんだ?)』
“知りません。6機の内5機は北北東から。1機は南西から来ています。接触まであと2分です。”
「redey. リグ、コード【A.C.T.I.S.】起動。」
青年はそれを聞いた瞬間、いつもの3点セットを装着し、戦闘態勢に入れるように準備をした。しかし、不運というのは連続で来るということを、青年は頭から抜けていた。
“接触まで後30b…う。”
不意に、AIからの通信にノイズが入った。
「(リグ、どうした。)」
“…ISy…nジャm…でs。t…しn…をいz…出来…n。r……リー…m…どへ…k……sまs。”
そんな通信を最後にAIからの通信が途切れた。当然、本来行うはずだった戦闘モードもAIからの通信が前提となっている。この瞬間、普段通りの戦闘が行えないことが確定し、その後目視出来る程度にまで見える5つの飛行物体を確認するのだった。
「(やばい、やばい、やばいぞっと。)」
青年は数少ない原作知識を総動員し、単一飛行物体のほうは予想が付いた。しかし、5つのほうは全く予想が付いていなかった。原作にも裏話という扱いであったのかもしれないが、青年自身は原作者でもなければ神でもない。正直、かなりピンチな状況下ではあった。
「(携帯、音楽機器、博士との連絡、オール全滅かよ。)」
連絡手段が無いか試行錯誤してみたものの、結果は全滅だった。他には物理的に呼びにいくという方法もあるが、恐らくアリーナへの出入り口は全て封鎖されているだろう。破壊自体は可能だが、その行動が混乱を招く可能性すらある。本館への移動は距離がありすぎて、IS相手には余りにも分が悪過ぎる賭けだった。
そんな中青年がたどり着いた結論は。
「(めんどくせぇ、敵を全員始末すりゃちったぁ状況が改善すんだろ。)」
皆殺しだった。
戦闘装備を整え、最早ただの伊達眼鏡となった眼鏡をかけ、物陰に隠れ敵の到着を待つ。その直後、飛行音とは違う、急速に接近する音が聞こえとっさにその場を離れた。その瞬間
ドドドンッ
青年が先ほどまで居た場所をレーザー兵器が打ち抜いた。とっさに回避した為、見渡しの良い場所へ咄嗟に出てしまい、
「あハ、みィツけた。」
頬が痩せこけ、目の下に酷い隈を作った女性が居た。見た目がヤバそうな人物が4人とそいつらの監視役なのか後ろに腕組み状態で4人と青年を観察している奴がいた。
「どうスる?」
「コロス。」
「どウヤって?」
「たノシく、みんチ。」
「サンせイ。」
「だれガ、いク?」
「わタシ。あいツ、ころス、ころす、コろス、コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス。」
「おいおい、えらく物騒じゃねーの。」
後ろにいる人物以外が、目の前にいる青年に対して物騒なことを発言していることに思わず突っ込んだ。
「すべテ、おマえのセイ。」
「そウだ!」
「おまエさえ、イなケレば!」
「ソウだ!」
「ダカラ、このセカいかラきえロ!」
その言葉の後、一番槍を明言していた(と思われる)女性が急速にブーストを吹かし、ブレードで攻撃を試みた。
距離にして、目視で30メートル位。ISにはあってないような距離だ。青年は相手の行動を見てから、呟いた。
「コード【閻魔刀】、トランスプラントコード【直死の魔眼】部位:右眼」
その言葉の後、接近してきた敵を避けるように真上に跳んだ。ISの補助を使ってはいるが3メートル程度だった。が、青年にしてみればそれで全く問題なかった。
真下にこちらを見ている敵がおり、青年の左手には全体的に蒼い鞘に収まった日本刀が握られており、右眼は淡い藍と紅で構成された眼に変わっていた。
「堕ちろ。」
その言葉を皮切りに、一切無駄の無い動作であるはずの無い線に沿って流れるように敵の首を切り落とした。
その光景を見て一番反応を見せたのは、4人ではなくその後ろにいた1人だった。前の4人は認識できているのかどうかすら怪しくなっており、虚ろな目をこちらに向けていた。
青年は、真下にもう一度刀を突き刺しながら3人から眼を一切離していなかった。
ズキンッ
「(あぁ、わかってはいたけど。痛いな。)」
右眼と自身の脳から告げられる悲鳴という名の痛みに耐えながら。それでも、顔には一切出さない。隙を見せればこちらが一瞬で食われてしまうからだ。
ようやく、殺されたことを認識したのか壊れたブリキのようにケタケタと笑いながら口を不気味に歪めていく。
「あはハハ、あいツ、シンじゃった。」
「ひトりじゃ、カてなイ。」
「ジャア、3ニンなラ!?」
そんな言葉と共に一斉に青年に向かってくる3人。
「変わらないよ。お前らが死ぬだけだ。」
青年は、突き刺していた刀を抜き、付いていた血を振り払い納刀した。そして、左足を一歩下げ中腰から居合いの構えを取り、そして鞘に戻したはずの刀を何故かもう一度戻した。
「あレ? なンで? からダがウゴかな…イ。」
「わたシの、ウでは? わたしノウデはどこ?」
「アレ? なんデ、わたシオちてルの?」
青年の不可解な行動の後、3人にはそれぞれ異変が現れた。腕ごと身体を斬られた者、首を飛ばされた者、腰辺りで斬られた者、しかしその中で共通しているのは全員ISを装着したまま堕ちている。という点だった。
「(次元斬、直死の魔眼の併用可能を確認。)」
青年は構えた直後、即座に次元斬を発動していた。3人からしてみたら余りにも高速だった為二度納刀しているような光景に見えたらしい。後ろの人物は青年自身が何かしたことは認識しているものの原因はわかっては居ないようだった。
その後青年は、文字通り無様な姿で地面に転がっている4人に眼もくれず後ろにいた人物のことを視ていた。
「素晴らしい。素晴らしいわ!」
どうやら、後ろの人物は何かに非常に興奮したようで悦に入った表情をしていた。
「お気に召していただいた用で何よりです。で、どうします?」
「どうもしないわよ。このまま帰るわ。個人的には貴方を持ち帰って隅から隅まで解剖したいけど。貴方抵抗するでしょ?」
「まぁ、そうなりますね。」
「もし、まだ疑うというのならこれでどうかしら。」
すると、女性が拡張領域から何かを取り出し、それを手で破壊した。その直後、
“……通信回復を確認。エクストラコードを緊急展開します。ご無事ですか。”
「(………。)」
青年の通信機能が復活した。その後、機械を破壊した女性は静かに地上へ下りISを解除した。
「これが、今の私に戦闘意思がないということの証明よ。不足かしら?」
「戦闘意思がないことは理解しました。でも、貴方の目的は4つのISコアの回収でしょう? いいですよ、私は貴方から眼を離しません。それでもよければ自由に行動してください。」
「ふふふあははは! 随分と優しいのね。もう1人の操縦者さんは。」
「心外ですね。」
「あら、ブリュンヒルデの弟君より評価しているのよ? これでも。」
会話しているうちに、回収が終わったのか再度ISを展開し撤退の準備を始めた。
「そうだ、貴方に一つ質問がある。」
「なにかしら? 私の命を見逃してくれた礼よ。可能な範囲内で答えるわ。」
「なーに、そんな難しいことじゃない。貴方は【世界の敵】か? それとも【俺の敵】か?」
「時と場合によるという答えが一番楽だけど、貴方はそういう答えを求めていなさそうね。現時点でという条件下なら【世界の敵】よ。」
「なるほど、引き止めて悪かったな。あんたが敵に回らないことを祈っているよ。」
「嬉しいわね。私もよ。」
女性が言い終わると同時に飛び立ち、学園の領空圏内から離脱した。
ども、最後まで読んで頂いてありがとうございます。
これからものんびりと更新していきますので、
気長にお待ちください!
コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます