IS ~1人連合艦隊ってすごくね~   作:シトリー

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ども、お久しぶりです。

コメントにて、入学が少し強引では無いか?
といただいたので、今回で少々補足させていただきます。


前話よりは重くはないとは思いますが、
それでも、少々お気をつけください



では、本編です。




1章
IS学園編~二次災害~


青年がIS学園に入学させられる丁度2週間前

 

 

青年は荷物の整理をしていた。

 

  「……………。」

 

体面上はいつもどおりを装っているが、精神面の傷は相当深く、日常会話は問題なくこなせるが良くも悪くもそこまでだった。

 

  「……………。」

 

何かから気を紛らわせるように常に何かしていた。暇があればPCをいじり。暇があれば料理をして雫に引かれたり。今は偶々ドイツからの配送品があったのでそれと、数少ない持って帰る事に成功した荷物の処理をしていた。ただただ淡々と無言で荷物を仕分けていく。そんな中、青年は不自然なボタンが付いた黒塗りのボールペンを見つけた。

 

  「……………。」

 

暫し考え捨てようとするも、ふと思い出す。このペンはどこかで見覚えがあった。そう、以前自分の服から出てきたペンと全く同じものだった。ドイツで凛が買ってくれたものだ。しかし、ボタンを押しても何も反応がなかった。

 

  「……………。」

 

青年はペンを暫く見続け、自身のペンと対にした状態で鍵付きの小さな箱にしまうことにした。それを見た少女が話しかけてくるのだった。

 

  『捨てないんですね。』

 

  「ああ。私と凛との最後の繋がりだ。それがあるからこそ、凛は私の中で生き続ける。」

 

  『そう、ですか。』

 

 

青年は自身の机の引き出しの奥に箱を仕舞った。すると、

 

ピンポーン

 

不意に家のチャイムが鳴った。

 

  『?誰ですかね。』

 

  「お迎えだ。」

 

  『はい?』

 

  「雫。暫く私は家を空けることになる。次は何時会えるかどうかもわからん。」

 

淡々と説明をする青年に少女が疑問をぶつける。

 

  『どういうことですか?詳細説明をお願いします。』

 

  「時間がないから端的に言うと、私怨で作戦行動中のISに対して通信妨害を行った。」

 

  『なにしてるんですか……。』

 

なんとも言えない顔の少女を見て青年は言う。

 

  「というわけで、何かあった時にために、音楽機器と予備の眼鏡を預けておくから、常に持ち歩いておいてね。」

 

  『常に、ですか?』

 

  「常に。」

 

ピンポーン 

 

  「さて、奴さんも我慢できなくなってきたみたいだ。行ってくるよ。」

 

  『はぁ…帰宅をお待ちしてます。』

 

青年は玄関へ向かい、その戸をあけた。

 

  『どうも、四十川渉さんですね。』

 

  「ええ、そうですが。それが何か?」

 

  『我々は政府直轄の研究機関のものです。こちらが名刺です。』

 

  「これはご丁寧に」

 

青年が受け取った名刺には確かに研究機関の名が記されていた。

 

  「で、その研究機関さんは何のご用件で?」

 

  『貴方には、数日前の”ラーイング578バイオテロ事件”における作戦行動妨害の疑いによる拘束礼状が出ています。ご同行願いますか?』

 

  「ええ。かまいませんよ。」

 

青年は特に抵抗するわけでも無く研究機関の人間が乗ってきたと思われる車に乗り込んだ。

 

  「……………。」

 

乗り込んだ青年は車内を見渡す。

 

  「(政府の人間数人と、服装が違う人物が1人か。リムジンには別の形で乗りたかったな。)」

 

最後の人物が乗り込んだ後、車は走り出した。青年は目の前の人物に話しかけた。

 

  「あんた誰?」

 

  『黙りなさい、現代表の前です。貴方如きでは一緒の空間にいることすら本来叶わない崇高な人物です。今回のことに感謝し、大人しくしていなさい。』

 

返答してきたのは別の女性だったが

 

  「……………。」

 

青年はそれ以後話すことなく。ただただ無言で施設に連れられて行った。

 

 

 

政府直轄の研究機関内

 

施設に着いた青年に待っていたのは、

 

  『ねぇ、貴方に聞いているのよ。何か反応してくれない?』

 

  「……………。」

 

  『意識が無いみたい。水を掛けてあげて。』  

 

  バシャン

 

  『おはよう。目が覚めたかしら?』

 

  「……………。」

 

お話し合いという名の拷問だった。

 

  『私たちが聞いているのよ?さっさと答えなさい! 何故貴方のような凡夫がISに干渉できたの?』

 

殴る、蹴る、刺す、抉る、焼く、爛れさせる、溺れさせる、その全てが拘束されいる青年に襲い掛かった。

 

  「語る言の葉は無いね。」

 

拷問が始まってから終始無言を貫いてきた青年だったが、初めて返した言葉により更に内容が過激になるのだった。

 

せめてもの救いは、殆どが身体に対して行われていて、腕、脚、首、顔などの末端にはそこまで大きな被害が無いので衣類等で隠しきれるかも知れないというところだった。

 

  『っ!まだ、無駄口を叩ける余裕があるのね。ならもっと過激にしてもいけそう、ね!』

 

ザグン

 

持っていた短剣のようなもので刺される青年。しかし、その後に待っていたのは電気とISだった。

 

 

 

 

ゴリゴリゴリゴリゴリ

 

  「っ――――――――!」

 

  『どう?生きたまま自分の骨を削られる感触は? 喜びなさい。この武器の体験者になれたのだから。アハハハハハハハハハハハ。』

 

青年はただ、ひたすらに耐えていた。自害することは許されず、内容を語ることもせず、声を上げるわけでもなく。

 

  『何なのよ。何なのよ、何なのよ何なのよ何なのよ!お前は!逃げるわけでもなく、抵抗するわけでもなく、弁明もせず、ただただ耐えている。何がお前をそこまで駆り立てる!そこまで憎いか!ISが!それを駆る女性が!』

 

全く反応を示さない青年に対し痺れを切らす女性。死なない程度に加減をしているとはいえIS用の対人兵装を使っているのだ。発狂しても何もおかしくなかった。しかし、

 

  「愚かだね。」

 

  『何?もう一度言ってみなさいよ!私たち女性はISに選ばれた優秀な人種なのよ!それを、動かすことが出来もしない男が「愚か」だと!?はっきり言ってやる。この世界では、男性よりも女性のほうが強くて、気高くて、誇り高いのよ!』

 

形振り構っていられなくなったのか、青年をやったらめったら殴打し始める。すると青年がゆっくりと顔を上げ部屋の一点を見て口のみを動かした。

 

 

  「……………。」

 

 

その後青年は意識を失い、このままだと生死の危険があるからと拷問も終了した。

 

 

 

 

 

………side

 

青年の光景を見ていた2人が顔をしかめる。拷問のシーンを見て喜ぶ趣味をしていないし、嬉々としてする趣味も無い。ただただ、胸糞が悪かった。

 

  「更識さん。彼をどう思います?」

 

更識と呼ばれた女性が男性の声に反応する。

 

  「このまま続けても吐くことは無いですね。あの類は力で屈服させるより信頼させてからのほうが効果的です。轡木さんはどうですか?」

 

女性の返答に轡木と呼ばれた男性は答える。

 

  「私も似たような意見です。彼は見た目以上に修羅場を潜っています。そうでないと今の彼は発狂しています。しかし、」

 

男性の回答を聞いた女性は首をかしげた。

 

  「しかし?」

 

男性は続ける

 

  「彼が最後にこちらを見て何かを言っていました。声は全く聞き取れていないので、口だけを動かしたものと思いますけど。」

 

  「つまり、我々以外の外部に向けたメッセージということですか?」

 

  「可能性は十分にありますね。」

 

意見を聞いた女性は周りのスタッフに連絡し、外部からのハッキングを受けていないか、その痕跡は残っているかどうかを確認させた。しかし、

 

  「該当なし。だそうです。」

 

  「そうですか。考えられるのは篠ノ之博士クラスのハッカーが彼の知り合いにいるか、それとも我々の考え過ぎか…」

 

  「今回は後者で考えてしまっても問題ないと思いますよ。どれだけ多くの資産を持っていようとも交友関係は広くないですから。」

 

女性の発言に男性は

 

  「そう、ですか。」

 

渋々ではあるが納得した。

 

  「それよりも、今後彼の処分についてどうします?」

 

  「このまま野放しは出来ないでしょうね。政府にとっても、我々にとっても。」

 

男性は困ったような顔で女性に対して答えていく。

 

  「でしたら、」

 

  「ええ。」

 

  「「学園で監視させるしかない。」わね。」

 

2人は全く同じ答えにたどり着き、それのための準備を開始した。しかし、そうそううまく事は運んでくれないのが世の常で。

 

  『なんで、あいつを学園に入れるのよ。IS使えない役立たずを入れても意味ないでしょ?私がここで飼っていくわ。』

 

反対意見が出てくるのだった。

 

  「しかし、貴方の仕事は彼を奴隷にすることではなく情報を引き出すことです。自分の仕事をできていない貴方に彼の生殺与奪権があるとでも?」

 

  「第一、万が一彼がISを使えた時この施設はどうなるかしら? 世界に追われて逃げきれる技術があなたには無いでしょ。」

 

2人の弁論に押されつつも反論する担当員

 

  『要は情報が引き出せればいいのよね? ならとっておきを使うわ。だからもう少し時間を頂戴。』

 

その言葉に2人は少し考え

 

  「判りました。では、今日を含めて1週間つまり後6日間、時間を差し上げます。そのときまでに情報が引き出せない場合は彼の処分について我々が処理します。更識さん、それでどうですか?」

 

  「ええ。私もそれでいいですよ。」

 

猶予期間を渡すのだった。

 

  『どうも。私が男なんかに負けるなんてあるはずが無いのに…。』

 

担当は悪態をつきながら明日の準備を始めた。

 

………side out

 

 

青年は疲弊していた。拷問や暴言が終わるのはいつも生死の間際で、尚且つ気を失うまで続けられたからである。陽の目を全く見ていないので、どれだけ時間が経過したのか判らない。いつも頼りになる相棒もいない。それでも折れる訳にはいかなかった。青年は交わした約束を守る為に、果てが無いように思える時間を過ごしていた。そんな中、

 

  「(何処だここ?)」

 

いつもと違う部屋で目を覚まし、疑問を持った。その直後部屋にアナウンスが流れ始めた。

 

  『あんたねー、いい加減に吐きなさいよ。あんたが吐かないせいで怒られたじゃない。というわけで、貴方にはとっておきをあげるわ。光栄に思いなさい。』

 

理不尽としか思えない言葉を聴きつつまた始まるのかと、心の中で溜息を付いた。

 

 

 

暫くすると、部屋の扉が開き、頭に紙袋を被せ車椅子に乗った人物とそれを押す女性が入ってきた。

 

  『あんたには絶望を感じてもらうわ。』

 

そういった女性は、車椅子に乗っている人物の紙袋を外した。すると、それを見た青年の目が見開かれ、驚きに染まった。

 

  「な…んで、ここにいるんだ。…………凛。」

 

そこには青年が愛した人物、黒岩凜が座っていた。しかし、その顔は赤黒く、腕は片方無く、目も見えていないのか開かれていなかった。

 

『そう、貴方が見殺しにした一番信頼が深い人物。彼女はひどく彼のことを恨んでいたわ、だってそうよね、助けると妄言しておきながら結局助けられなかったんですもの。』

 

女性は顔に満面の笑みを浮かべ青年に語っていく。しかし、青年には聞こえない。目の前の人物が顔を上げ、声を出したからだ。

 

  『如何して、助けてくれなかったんですか。どうして、ですか?』

 

青年は回答に困る。どう言い繕うと青年が少女を救えなかったのは事実なのだから。例え、過程で青年が救うことを決心していても、だ。女性が少女に銃を向け青年に問いかける。

 

  『最後のチャンスよ。貴方が情報を吐くなら、この子は殺さないであげる。どうする? 目の前にかつて救えなかった命がある。貴方の隠している情報はその子よりも価値がある物なの?』

 

  「……………。」

 

青年は黙る。それを見た少女は話しかけていく。

 

  『今度こそ助けてくれますよね。あの時のように見捨てたりしませんよね。渉先輩。』

 

  「…判った。」

 

青年がようやく決断した。それを見た女性はかつて無いほどの笑みを浮かべ、

 

  「情報は渡さない。」

 

青年の回答を聴いた後、顔を怒りに染め

 

ダァン!

 

引き金を引いた。

 

目の前で最愛の少女が息絶える。撃たれた直後は、身体が痙攣していたがそれも収まり、ぐったりとした。

 

青年はその後も女性による拷問を受け、結局口を割ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

青年が目を覚ますと、部屋には男女2人がいた。すると、男性が気づき

 

  『更識さん、目を覚ましましたよ。』

 

更識と呼ばれた青い髪の女性を呼び、青年の目の前に座った。

 

  『始めまして、四十川君。私はIS学園生徒会長 更識楯無よ。』

 

  『同じく始めまして、私はIS学園理事長の轡木十蔵です、以後お見知りおきを。』

 

2人が自己紹介をはじめ唖然とする青年、しかし女性は話を先に進めていく。

 

  『早速で悪いんだけど、貴方をIS学園に入学してもらいます。』

 

  「……………。はい?」

 

  『驚かれるのも無理はない、これは貴方に対する保護なんです。そうは思えないかもしれませんがね。』

 

轡木と名乗った男性が説明していく。

 

『貴方はどういった技術なのかは不明ですが、ISの通信機器に対して干渉することが出来ます。これが世界的にどれほどの混乱をもたらすか判りますか?』

 

  「…ある程度は。」

 

  『そうですか、自覚があるようで助かりました。しかし、その技術を持つ人間を世の中が野放しにしておくと思いますか?』

 

  「そういうことですか、判りました。指示に従います。」

 

  『理解が早くて助かります。そういうことです。』

 

青年は同意の意を示し、入学が決定した。

 

 

  『さて、入学するとしても学園は名目上超高倍率の学校です。周りを納得させるためにそれに見合った知識をつけて頂きます。詳細については更識さんから聞いてください。私は今後の事がありますので、ここで失礼させて頂きます。』

 

 

男性は言い終わると席を外し、部屋を退出した。

 

  『というわけで、これから貴方を1週間でISに関する知識を叩き込むわ。死ぬ気で付いてきてね。』

 

  「1週間という期限に理由はあるんですか?」

 

  『学園の入学式があるからよ。編入扱いとはいえ、遅れていいことはまったく無いわ。』

 

青年の疑問に答えつつ、教科書等を準備していく女性。その量を見て、青年は呟くのだった。

 

  「またするのか。」

 

 

 

結果的に、青年は青い髪の女性と時折来た黒いスーツの女性が指導した結果そこまで苦労することなく、達成したのだった。

 

 

そして、今に至る。

 

 

 

 

 

 

  『では、四十川は中央の最後尾だ。山田先生、彼は自分で動けないので移動を手伝ってあげてください。』

 

  『判りました。』

 

指示通り青年を最後尾の席に移動させるも、

 

  「(まぁ、そうなるな。)」

 

先ほどの彼同様クラス中の視線を受けることとなった。

 

  『では、SHRを終了する。1現は5分後に開始する、各々準備をしておくように。』

 

 

説明を終えた教師2人は教室を退出する。その後、意識をいつの間にか取り戻していた彼が青年に話しかけるのだった。

 

  『あんたが2人目の男性操縦者か? 俺は織斑一夏、気軽に一夏って呼んでくれ。少ない男同士だ、仲良くしていこうぜ。』

 

  「はじめまして、四十川です。織斑さん、今後もよろしくお願いしますね。」

 

  『何だよ、堅っ苦しいな。一夏って呼んでくれ。苗字だと、千冬姉と区別が付きにくいだろ?』

 

  「まぁ、癖みたいなものですから、気にしないほうがいいですよ。あと、担任の方にはちゃんと語尾に先生を入れるのでそこまでとは思いますが。」

 

  『言われて見ればそうか。』

 

彼が青年と会話していると、突如ロングポニーの少女が話しかけてきた。

 

  『すまない、ちょっといいか。』

 

  「すいません、どなたですか?」

 

  『ん、お前箒か? 久しぶりだな。小学校のとき以来か?』

 

  「箒?」

 

青年が首をかしげていると、何故か彼がフォローを始めた。

 

  『ああ、こいつは篠ノ之箒な。俺の幼馴染だ。』

 

  『一夏!』

 

  「篠ノ之…箒…。失礼ですがお伺いします。篠ノ之博士の血縁者か何かですか?」

 

  『ああ、箒は束さんの妹だ。』

 

  『一夏!ちょっとこっち来い! すまない、こいつを少々借りるぞ。』

 

少女に連れられ、廊下に移動した彼を見つつ返事をする青年。

 

  「いいですけど、って聞いてないか。」

 

青年は視線を戻すと、周りが小言で何かを話している。特に気にする必要も無いと判断し、青年は雫を呼んだ。

 

  「雫さん、今大丈夫ですか?」

 

  『ええ、問題ないですよ。突如貴方が入ってきたこと以外は…』

 

  「文句は他の輩に言っとくれ。こちとら、発言権すら怪しい場所でコネコネされてたんだから。」

 

  『大丈夫でした?』

 

  「生きているっていう点では、大丈夫だろ。見た目は察しろ。あと、眼鏡今持ってる?」

 

  『持ってるわけ無いでしょ。部屋にありますから、もう少し待っててください。次の休み時間に取ってきます。』

 

  「さいですか。」

 

感動の再開とはならず、いきなり毒の吐き合いから始まっていた。会話が一段落し、雫が席に戻ると、代わりに目の前に、何故か仁王立ちで蔑む様な目をした金髪縦ロールが来た。

 

  『貴方、ISも使えないのに入学してくるとはどういう了見ですの?』

 

  「さぁ? というか、あんた誰。」

 

  『私の名前も知らないとは、やはり男というのは最低の俗物ですわね。』

 

  「いや、自己紹介のとき。私居なかったし。」

 

青年が困り顔で返答すると、

 

  『お黙りなさい。この私は、貴方のような俗物が話し掛けていいような存在ではありません。会話を求めるのなら、まず頭でも下げてはいかがです? まぁ、今の貴方には出来ませんけどね。』

 

  「それだけ?」

 

  『何ですって?』

 

  「いや、態々自分から話し掛けてきて他人を貶めることに精を出すって。暇人なんだね。」

 

  『貴方、私を侮辱してますの?』

 

頬を引くつかせ、青年の胸倉をつかむ淑女

 

  「折角、数少ない英国貴族の立ち振る舞いを見てみたいと思っていたのに、その英国を代表する人物がこの体たらくじゃあな。少しがっかりだね。イギリス代表候補生セシリア・オルコットさん?」

 

淑女は顔を真っ赤にし、青年を車椅子ごと床に倒し、

 

ガシャン

 

  『私をコケにしたことを、後悔させてあげますわ。』

 

そう言って、青年の頭を踏みつけようとした瞬間、

 

キーンコーンカーンコーン

 

チャイムが鳴り、脚は寸でのところで止まっていた。

 

  『運がいいですわね。でも、今の貴方のように地べたに這い蹲っている姿は、大変お似合いですわよ。』

 

捨て台詞を残し、移動していた生徒たちが自身の席へ戻っていく。誰も青年に見向きもせず、最終的には、

 

  『四十川さんどうしたんですか!?』

 

  「こけました。起こしてもらえません?」

 

副担任に救出してもらい、彼とポニテ娘は遅刻し、担任からヘッドショットを貰っていた。

 

 

 

 

 

2現目

早速授業が行われていく、さすがに今は復習がメインとなってはいるが、それでも予備知識が無ければ相当きついものであることは、聞いているだけの青年の目にも明らかだった。

 

そんな中、最前列の彼が挙動不審に周りを見ては教科書を見るという行為を繰り返していて、青年は察した。

 

  「(あいつ、勉強してないな。)」

 

青年の予感は悲しくも的中しており、必読と書かれた広○苑クラスの参考書を電話帳と間違えて捨ててしまったらしい。

 

  『いやいや、四十川だってわからないよな。隠さなくたって大丈夫だって、俺も全くわからないから。』

 

非常にいい笑顔ではあるのだが、発言内容が最悪だった。

 

  「今の範囲程度でしたら、わかります。問題ありません。」

 

それを聞いた担任が質問をしてきた。

 

  『では、アラスカ条約の7条を要約して説明してみろ。』

 

  「ありとあらゆる国家、企業、組織・機関でのコアの取引はすべての状況下において禁止されている。ですよね。」

 

  『ああ、正解だ。それに引き換え貴様はどういうつもりだ。再発行するから1週間で覚えろ。』

 

  『千冬姉、あの』スパァン

 

  『織斑先生だ。』

 

  『織斑先生。あの分厚さはきついって。』

 

  『知らん。時間を貰えるだけありがたいと思え。後は自分でリカバリーするんだな。』

 

といった茶番があり、担任がなにやらご高説を述べていた。すると、

 

  『ついでだ、一時授業を中断し、クラス代表を決めてしまおう。』

 

  『クラス代表とは要するにクラスリーダーだ。選ばれたものは教職員とクラス間の中継役になってもらったり、作業を手伝ってもらったりと仕事量が増える。そして、決めたら1年間変わらないし、来週のクラス対抗戦に出場しないといけなくなる。しかし、メリットもある。訓練機の貸し出しについて優先させることが出来る。今はまだ無理だが、後々この差が大きくなってくる。自他推薦問わないぞ、誰がしたい?』

 

とんでもないことを言い始めた。しかし、場の空気は

 

 

  『はい! 織斑君を推薦します。』

 

  『私も!』

 

  『私も私も!』

 

 

そうでもなかった。彼はようやく気づき、反論しようするも

 

  『因みに、推薦されたものに拒否権は無い。諦めろ。』

 

即却下された。すると彼は何か思い浮かんだのか、突如挙手し、

 

  『なら、俺は四十川渉を推薦する。へへっ、良かったな。』

 

あいつ馬鹿じゃないのか?IS動かせない人間がクラスリーダーになってどうすればいいんだよ。

 

  「織斑先生、w『納得いきませんわ!!』…………。」

 

机をバシンとたたき起立する淑女、その顔は怒りに染まりうっすらと赤くなっている。

 

  『男がクラス代表なんてあなた方何を考えてらっしゃるの!良いですか?普通、現時点で専用機を持つ者がリーダーになるものです。つまり、実力もありイギリスの代表候補生であるこの私がクラス代表になるのは必然ですわ! それなのにあなた方は何も考えずに、ただ男だから珍しいという理由で男をクラス代表に選ばれるなんて困ります! このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!? 私はこのような島国までIS技術の学びに来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!』

 

このクラスは、爆弾を落とすのが好きなのかな?雫も目を覆って溜息付いてるし、

 

  『大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――

 

  『イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ』

 

  『なっ……!?』

 

  『…貴方は、私の祖国を侮辱しますの?それ相応の覚悟は出来てまして?』

 

  『そんなもんいつでも出来てる。』

 

  『よろしい。ならば、決闘ですわ!』

 

 

これどうなるの?私も入ってるの?あいつらはハンデがどうのとか言ってるけど、

 

  『俺たちはハンデ無しで戦ってやるよ。』

 

  「!? ちょっと待って、それって私も入ってるの?」

 

  『当たり前じゃん。俺が推薦したんだから。お前だって悔しいだろ! 日本を馬鹿にされたんだぞ!』

 

  「(呆れて声も出ん…。)」

 

『さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第1アリーナで行う。織斑と四十川とオルコットはそれぞれ用意をしておくように。四十川は後で話があるので、職員室に移動する準備をしておけ。それでは授業を再開する。』

 

どうしろと?

 




最後まで読んでいただいてありがとうございます。

最後のほうがかなり駆け足になってしまいました。

ひょっとしたら大きく改変するかもしれないです。


コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます。

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