この素晴らしい世界に爆焔を! カズマのターン   作:ふじっぺ

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前回の前書きで「次回は短いと思います」とか言っておきながら過去最長を更新してしまったので、流石に2話に分割しました。のんびり読んでもらえたら嬉しいです。
 


魔剣使いの勇者候補 1

 

 世界最大のダンジョン。

 至る所からやって来る数多くの名のある冒険者達が挑み、それでもまだ攻略されていない、謎の多い場所。内部は魔素が濃く、深層部は地獄と繋がっていたりすることもある。

 

 そんなダンジョンの暗闇の中を、俺ともう一人は明かりも点けずに歩いている。

 

 しかも俺の格好は相変わらずの駆け出し冒険者のようなものだ。元々、あの勇者候補の目を欺く為の格好だったが、アイツが中々里から出て行かないので、もう普段着のようになってしまっている。いちいち着替えるのが面倒なのだ。

 本当はこういった危険な場所に来るのであれば、着慣れた紅魔族ローブの方がいいのだろう。特に俺が着てた物は、強力な魔力繊維を使い、軽量性と強度の両立に成功した特注品なのだが……まぁ、元々俺は極力モンスターとの接触は避けるスタイルだし、無いなら無いでも何とかなるだろう。

 

 隣からは少し考え込むような声で。

 

「うーん、めぐみんさん、ですか…………ごめんなさい、たぶんお会いしたことはないと思いますが……爆裂魔法を人に教えたこともありませんし……」

「そっかぁ、ひょっとしたらウィズなのかなと思ったんだけど……。じゃあアイツ、一体誰から爆裂魔法なんてもんを教わったんだろうな」

「それは分かりませんが……人間以外の方である可能性が高いですね。爆裂魔法というのは、長く生きてスキルポイントを余した魔族などが、酔狂で覚えるようなものですから」

「あれ、でもウィズって人間やめてからそんなに経ってないんだよな? まだスキルポイントが余るってことはないと思うんだけど、なんで爆裂魔法なんて覚えてんだ?」

「ふふ、大した理由ではありませんよ。以前、どれだけ上級魔法を撃ち込んでも倒せない大悪魔の方と戦う機会がありまして。その方が『我輩の残機を減らしたくば、爆裂魔法でも覚えるのだな』と言っていたので、覚えてみようかな、と」

「ウィズの上級魔法で倒せない奴なんているのかよ…………じゃあ、その大悪魔を爆殺する為だけに爆裂魔法を覚えたってことか? す、すげえ恨んでんだな、その悪魔のこと……」

「あ、い、いえ! 確かに当時は本当にイライラさせられましたけど、今では良い友人なんです。爆裂魔法も、規格外の強敵に備えて念の為に覚えただけで、決してその人に仕返しするつもりなんて…………ない、です……たぶん」

 

 俺と並んで歩いている連れ……ウィズは、歯切れ悪くそう言う。いつか仕返ししてやりたいとは思っているらしい。この様子を見るに、友人になった後も何かしらの嫌がらせは続いているのだろう。

 

 ウィズは駆け出しの街アクセルで魔道具店を営んでいる、元凄腕魔法使いで少し顔色の悪い美人店主さん…………ということになっているが、その正体は魔王軍幹部にしてアンデッドの王リッチーだ。

 

 このダンジョンに通い始めた頃、ひょんなことから知り合い、それからはこうしてたまに一緒に素材集めやらレベル上げを手伝ってもらうくらいに仲良くなった。

 魔王軍幹部だけあって、戦闘能力は俺の知り合いの中でもダントツだが、商売センスが絶望的になく、いつも赤字にヒーヒー言ってるポンコツ店主の側面も併せ持つ。

 

 俺は千里眼スキル、ウィズはリッチーとしての暗視能力で暗闇の中を歩きながら。

 

「そうだ、そのめぐみんに関係することなんだけどさ、今度、爆裂魔法を撮らせてもらえないか? 実はアイツを騎士団に入れようと思ってて向こうも結構ノリ気なんだけど、まだ一度もあの魔法を見たことがないって言うからさ」

「えぇ、もちろんいいですよ。ふふ、私もたまには使わないと詠唱を忘れてしまいそうですし」

「悪いな、助かるよ。お礼と言っちゃなんだけど、ウィズの店に置かせてもらってる俺の商品の利益、今月は全部持っていっていいからさ」

「い、いいんですか!? ありがとうございます、ありがとうございます!! 本当に助かります……何せウチで売れる物と言ったら、ほとんどがカズマさんの商品で……実は今月も新商品が全然売れず、また赤字になりそうだったので……」

 

 泣きそうな声でそんなことを言っているウィズ。

 俺は嫌な予感を覚えながら、あまり聞きたくはないが、一応聞いてみる。

 

「……ちなみに、その新商品ってどんな物なんだ?」

「巻き物です! 読み上げると、モンスターからは見えない特殊な明かりを点けられる、ダンジョン探索にはもってこいの魔道具です! 何故売れないのでしょう……」

「おいそれ、文字も見えないくらい真っ暗闇の中で読まないと効果がないとかいうオチじゃねえだろうな。知り合いのガラクタ職人がそんなもん作ってたんだが」

「あ、カズマさんもその商品を知っているのですね! 確かに発想はそこからです! でも、私なりの大きなアレンジを加えたもので、明かりの下で読み上げても問題なく効果は発揮されます。ですので、ダンジョンに潜る前に発動させておくのがいいでしょうね」

「なんだよ、普通に良い魔道具じゃねえか。俺は千里眼の暗視能力があるけど、これだって周りの輪郭が青白く見えるだけだしな。モンスターに気付かれない明かりを使えるなら、俺だって使うぞ。何で売れないんだ? 本当にただ巻き物を読み上げるだけなんだろ?」

「はい、本当に読み上げるだけでいいんです。ただ、大声で繰り返し読み上げ続けなければいけませんが……」

「そこだろ!!! 売れない理由、どう考えてもそこだろ!!! モンスターに気付かれない明かりを使ってても、大声出し続けてたら普通に明かりを使うよりも目立って気付かれるわ!!! こんな風に!!!!!」

 

 思わず大声でツッコんでしまい、周りからは獣の唸り声が聞こえてくる。

 それを見てウィズは感心したように。

 

「な、なるほど……盲点でした!」

「も、盲点というか、明らかに見えてる地雷というか…………あの、ウィズさん。俺が呼び寄せておいて悪いんですけど、何とかしてくれると助かります。これケルベロスだろ全部……」

「あ、ごめんなさい! …………『カースド・クリスタルプリズン』!」

 

 ウィズの凍結魔法が発動し、ケルベロス達が一斉に氷漬けにされる。いとも簡単にこんなことをやってのけてしまう辺り、流石はリッチーといったところだが、こういう所を見ているとやはり生き方を間違っているんじゃないかと思ってしまう。まぁ、本人が選んだ道だし、そこまで口を出すつもりはないが……。

 

 それにしても、あの爆裂狂といいガラクタ職人といい、どうも俺の周りでは、優れた才能を持っているのに変な道を行ってしまう人が多い気がする。

 俺も変な生き方をしてるとか言われることもあるが、この人達と比べたらまだ随分とマシだと思うんだけどなぁ……誰だって働かずに済むならそうしたいだろうし……。

 

 ウィズによって氷漬けにされたケルベロスに、俺が次々とトドメを刺していく。ウィズの方は、もうレベル上げにそれほど関心はないらしく、こうやっていつも経験値を譲ってくれる。

 そして俺は、流れ作業のようにケルベロスに刀を突き立てながら、ふと思い付く。

 

 今日ここに来たのは魔道具の素材集めの他に、ウィズに新しいスキルを教えてもらうという目的があった。スキル自体はもう教えてもらい、習得も済んでいるのだが、一度試してみるべきだろう。

 

 俺はケルベロスの死体に手をかざして。

 

「『カースド・ネクロマンシー』!」

 

 俺の声に反応するように、事切れていたはずのケルベロスがむくっと起き上がり、こちらを見つめる。よし、問題なさそうだ。魔力はかなり使うが、それに見合う働きはしてくれる……はずだ。

 

 そんな俺の様子を、ウィズは苦笑いを浮かべて見ながら。

 

「わ、私が教えておいて何ですけど、カズマさんはそのスキルに抵抗とかは一切ないのですね……死体を操るって、それなりに禍々しいというか、倫理的に危ういことですし……」

「あぁ、紅魔族はそこら辺緩いからな。なんせ子供の内から、学校で養殖なんてエグいレベル上げやったりするくらいだし。生物実験も大好きだしな。一応俺にも、養殖で抵抗できないモンスターにトドメだけ刺すってことに、少しは気後れしてた時期もあったよ。すぐに慣れたけど」

「な、なるほど……そうですね、冒険者としてはそちらの方が正しいですよね。どんな手段を用いても、少しでも生存率を上げるというのは真っ当な考え方です」

「そうそう、奪った命を生き残る為に使わせてもらうだけだ。ご飯として美味しくいただくのとそんなに変わんないだろ、たぶん。…………お、敵だな」

 

 敵感知で大体の位置を把握し、そちらへ向かうと、数匹のオーガを見つける。身の丈三メートルはあろうかという巨体だが、モンスターの格としてはケルベロスの方が上だ。

 俺は、近くでお座りの状態で待っているケルベロスに指示を出す。

 

「太郎丸、君に決めた! かみつく攻撃だ!」

「ガウッ!!」

「タ、タロウマル……? 変わった名前ですね、紅魔族の方は特殊なネーミングセンスを持っているというのは知っていますが……」

「えっ、い、いや、アイツらのセンスと比べたらまだマシだろ! まぁ、特に深く考えたわけでもなく、何となく頭に浮かんできた名前にしただけなんだけどさ……」

「うーん、確かに紅魔族の人のセンスというより、勇者候補の人の変わった名前に近いような…………あ、でも、アンデッド化させた子に名前とか付けちゃうと、うっかり情とか移っちゃって別れる時辛くなりますよ?」

「大丈夫だ、ウィズ。名前があろうとなかろうと、アンデッドの使い魔なら爆弾くわえさせて特攻だってさせられる男だ、俺は」

「ひ、酷い!」

 

 何やらウィズがドン引きしているが、今は敵に集中しなければいけない。

 と言っても、どうやら既に太郎丸が大体何とかしてくれたようだ。次々と足を噛まれたオーガは、うずくまって動けなくなっていた。ケルベロスのよだれには猛毒がある。そのよだれが垂れた地面からは強力な毒草が生え、怪しい魔道具に使われることも多い。

 

 俺は、よくやったと太郎丸の頭を撫で、オーガに刀を突き立てトドメを刺していく。

 

「やっぱ便利だなこのスキル。死体を戦わせて、自分は安全地帯から動かなくて済む。しかも死体だから多少無茶させても大丈夫だし、後々恨まれることもない。俺にピッタリなスキルだ。ありがとな、ウィズ!」

「そ、そういう言い方をされると、同じスキルを持つ私としては微妙な気持ちになるのですが! わ、私は、アンデッドでも無茶なことはさせませんよ!? 私自身もアンデッドですし、そもそも、そのスキルはあんまり使いませんし……」

「ふっ、正直になれよウィズ。本当は倒したモンスターを片っ端からアンデッド化させて、ノーライフキングっぽく大群を率いてふんぞり返っていたいと思ってるんだろ! 高笑いとかしちゃってさ!」

「そんなこと思ってません! 思ってませんから!!」

 

 それから俺達はしばらくダンジョンを探索し、目的の素材を集めていく。

 太郎丸のお陰もあり、モンスターはウィズの助けを借りなくても安全に素早く処理できていた。アンデッドとして操れる時間は限りがあるので、定期的に死霊術をかけ直す必要があるが、その為の魔力も途中のモンスターからドレインタッチで十分回収できる範囲内だ。

 

 そして、素材を集め終え、そろそろ帰ろうかと思い始めた頃。

 少し離れた所に、俺達以外のパーティーを発見した。

 

「なぁ、もう戻ろうぜ……? テレポートの巻き物(スクロール)なしで歩き回るのは流石に危険だって」

「だからあの巻き物盗んでったクソモンスターを探してとっちめるんだろ? あれだって安くねえんだぞ。大丈夫だろ、もうこのダンジョンにも大分慣れてきた頃だ。そんな酷いことにはならねえって」

「う、うん……そうよね! 今日は調子良くてお宝も結構手に入ったし、多少無理しても大丈夫よ!」

 

 俺はウィズを手で制止して、向こうの三人を指差す。

 するとウィズは一気に渋い表情になり。

 

「……あの、カズマさん。もしかして、またやるのですか……?」

「どうしたんだよ、そんな顔して。俺はただあのパーティーが心配だから、無事にここから出られるまで見守ってあげようと思ってるだけだぞ?」

「そ、それなら、今すぐテレポートであの人達を送ってあげればいいのでは……?」

「いや、あのパーティーだって、世界最大のダンジョンに挑戦してここまで来る程の冒険者達だ。そうやってすぐ手を貸すのは、あの人達の誇りを傷つけちまうかもしれない。向こうは自分達だけで何とか出来ると思ってるらしいし」

「それは……そう、かもしれないですが……」

「大丈夫だって。とりあえずしばらく様子を見て、何事もなければそれで良し、本当に危なくなったら助ける。それだけだ」

 

 俺の言葉に、ウィズはまだ納得しきれていない表情ながらも、小さく頷く。珍しく俺が人助けをしようと言っているのに、一体何が不満なのだろう。

 

 このダンジョンでは今まで何組ものパーティーを見てきたが、ああいった少し慣れてきたくらいの人達が一番危ない。本来、緊急用の脱出手段であるテレポートの巻き物がなくなったというのなら、大人しく撤退するべきだ。あの様子を見る限り、この辺のモンスターに遅れを取ることはないようだが、ダンジョンにて危険なのは何もモンスターだけではない。

 

 それから少しして、彼らが何度目かの戦闘を終えた後のことだった。

 

「ん……? 今何か踏んだような…………うおおおおおおおおおっ!?」

「えっ!? ちょっ、何よこれ……きゃあああああああああああああああああああ!!!」

「しまった罠だ!!! おい大丈夫か!!! おい……うわああああああああああああっ!!!」

 

 三人は、まるで地面に飲み込まれるようにして、姿を消してしまった。

 隣のウィズは口をぱくぱくとさせて。

 

「た、大変!! カカカカカズマさん、どうしましょう!!!!!」

「落ち着けウィズ、あそこの罠は俺も知ってる。ただ下の階層に落とされるだけだ、直接命に関わる罠じゃない」

「そ、そうなんですか……? え、あれ、カズマさん、あそこに罠があるって知ってて黙ってたんですか!?」

「……あー、いや、あの人達も当然気付いてるもんだと思って……ほ、本当だぞ?」

 

 ウィズが怪しむような様子でこちらを見ている。

 

 このレベルのダンジョン攻略において、罠対策は必須と言える。盗賊スキル『罠発見』や、アークウィザードの魔法『トラップ・サーチ』などだ。まぁ、ダンジョンに潜るならパーティーに盗賊を入れる事が一般的なので、大体その辺りは盗賊に任せてしまえばいい。

 

 あのパーティーも普段から何かしらの罠対策をしていたはずだが、脱出手段を奪われるというイレギュラーな状況に動揺し、スキルやアイテムを使うのを失念していたのだろう。

 

 ウィズは俺を引っ張って、先程三人組が飲み込まれた辺りまで連れて行く。

 

「すぐに彼らを追いましょう! この下の地下10層からはモンスターのレベルも上がりますし、放っておいたら危ないです!」

「大丈夫だって、ここでのアイツらの戦いっぷりを見る限り、この下の階層でもすぐにやられたりはしないって」

「でも、今あの人達は緊急用の脱出手段を持っていないのですから、万が一のことがあれば大変です! ここは何が起こるか分かりません。昔は、頭の足りない大悪魔が、地獄から度々迷い込んで来ていたなんていう事も聞いたことがあります! 最近では見なくなったようですが」

「あ、頭の足りない大悪魔……? 何だよその凄いのか凄くないのかよく分かんない奴は。悪魔ってのは上位になるほど、高い知性を持ってるんじゃないのか?」

「え、えぇ、そのはずなのですが……私の友人の大悪魔の方も、性格はアレですが、頭は良い人ですし…………と、とにかく! 行きますよ、カズマさん!」

「わ、分かった分かった!」

 

 ウィズの勢いに押されるように、俺は大人しく付いて行って、二人で罠にかかって下の階層に降りる。少し離れた所にはあの三人の姿が確認でき、まだ特にモンスターに襲われているということはないようだ。

 俺達は再びこそこそと前方のパーティーの後をつけ始めた……その時だった。

 

 ズンッ! と、体の芯にまで伝わるような震動が、ダンジョン内に響いた。

 

 俺は思わずごくりと喉を鳴らす。太郎丸もどこか警戒した様子を見せている。

 嫌な予感しかしない。この震動、どこかで感じた覚えがある。

 

「……おいウィズ。今の足音だよな」

「え、えぇ……これ、多分……」

 

 

「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!」」」

 

 

 先を進んでいた冒険者パーティーの悲鳴があがった!

 

 俺達は急いで走り出す。

 すぐに三人組がこちらに向かって逃げてくるのが見える……そして、その後ろには。

 

 

 メジャーもメジャーな強モンスター……ドラゴンがいたそうな。

 

 

 ダンジョンの高さ一杯、そこら辺の小屋より大きいと思われるそのドラゴンは、血走った目をして、口元からは炎を漏らしながら、元気に獲物を追いかけていたそうなー。

 

 ドラゴンさんは吠える。

 

「グゴァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」

 

 ビリビリと、全身が総毛立つ。何これこわい。

 俺は少し考え。

 

「よし逃げよう」

「ええっ!? ダメですよ、あの人達を助けるんじゃないんですか!!!」

「た、助けてください!! 助けてくださいお願いしますうううううううう!!!」

 

 俺達を見た三人組が、涙目で助けを求めてくる。

 正直、俺も一緒に逃げたいところなのだが、隣でウィズがジト目を向けてきているので、それは出来ないだろう。

 

 俺は諦めて溜息をつくと、相棒に告げる。

 

「太郎丸、かみつく攻撃だ!」

「ガウッ!!」

「なっ、ま、待ってください! ケルベロスじゃドラゴンには……」

 

 ウィズが何か言っているが、その間にも太郎丸は俺の指示で一直線にドラゴンへと向かって行く。俺はその間に魔法の詠唱を行う。

 

 太郎丸はドラゴンの足に噛みつき……牙が折れた。流石はドラゴンの鱗、とんでもなく硬いらしい。

 そして次の瞬間。

 

「ギャンッ!!」

「ああっ!!! タロウマルちゃんが!! タロウマルちゃんが踏み潰されちゃいましたよ!!!」

「太郎丸……お前の事は忘れない…………よし、太郎丸のお陰で詠唱の時間は稼げた。ウィズ、俺がドラゴンの動きを止めるから、その間に仕留めてくれ」

「軽くないですか!? もっと感傷に浸ってもいいのでは!?」

「甘い事言うなウィズ、ここで俺達までやられたら太郎丸の死……まぁ、元々死んでたけど……が無駄になるだろ!」

「何でしょう!! 確かにその通りなんですが何か釈然としません!!!」

 

 そう言いながらも、ウィズは上級魔法の詠唱を始める。

 俺は元々詠唱を済ませているので、ちゅんちゅん丸を抜き、こちらに向かって来るドラゴンに突きつけ、大量の魔力を込めて叫ぶ!

 

「『ボトムレス・スワンプ』ッッッ!!!」

 

 直後、ドラゴンの足元に巨大な泥沼が発生し、ドラゴンは足を沈めて動きを止めた。

 ドラゴンには麻痺や睡眠といった状態異常は効きにくい。だからこうして、物理的に動きを止める方が有効だ。

 

 とは言え、相手は強力なモンスターであるドラゴン。

 いくら大量の魔力を込めたとは言え、俺の魔法くらいでいつまでも動きを止められるなんて事があるはずもなく、もう既に沼から抜け出しかけている。あと数秒も保たない…………おい、なんかブレス体勢に入ってるんですが。

 

「ウィズー! やばい、ブレスがくる!! 早くうううううううううっっ!!!!!」

 

 俺は全身から嫌な汗を流しながら叫ぶ。

 隣ではウィズが詠唱を終え、掌を真っ直ぐドラゴンに向けていた。

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

 バチチッ! というスパーク音と共に、黒い稲妻がドラゴンへと飛んで行く!

 

 沼に足元を取られ、しかもブレス体勢に入っていたドラゴンはそれを避けることはできず、稲妻はその胸に大きな風穴を空けた。ドラゴンは、口から紅蓮の炎を天井に勢い良く吹き上げ、ぐらりと体をよろめかせた。

 そして、そのままドスン! とダンジョン内を揺さぶる震動と共に倒れ、動かなくなった。

 

 まだブレスの熱気が残る中、俺は緊張を解いて、軽く息をつく。

 

「流石はウィズ。ありがとう、助かったよ。敵を討ってくれて、太郎丸もきっと喜んでるよ」

「あ、いえ、お役に立てたのなら…………あの、カズマさん、タロウマルちゃんのことなんですけど、捨て駒としてわざと特攻させてませんでしたか?」

「あのー、そっちは大丈夫ですかー!」

 

 ウィズが何か言いたそうな顔でこちらを見ているが、まずはあの三人組の安否確認だ。

 俺の呼びかけに三人が応え、おそらくパーティーリーダーであろう男が、一歩前に出て深々と頭を下げた。

 

「本当にありがとう……俺達、もうダメかと…………あんた達は命の恩人だ……!!」

「ははは、いやいやそんな。人として当たり前のことをしただけですよ」

「…………」

 

 ウィズがすごーく何かを言いたそうにしているが、今はそれよりこの冒険者達だ。そう、彼らは脱出手段を失っており、このダンジョンから出るには地道に歩いて戻らなければいけない。しかし、今しがた凶暴なドラゴンに襲われたのだし、もう一刻も早くここから出たいだろう。

 

 俺は心配そうに言う。

 

「ここは今みたいなドラゴンに遭遇することもあります。すぐテレポートか何かで脱出した方がいいですよ」

「それが、テレポートの巻き物を上の層のモンスターに盗まれちまって……」

「それならご安心を! 実は俺達、ダンジョン出張中の転送屋なんです。ダンジョンを回って、あなた方のような今すぐ戻りたいと思っている方を、テレポートで地上に帰しているんですよ。まぁ、その、お値段は少し割高となっておりますが……」

「ほ、本当か!? ぜひ頼む! 少しくらい高くても構わねえさ!」

「ではお客様が今手にしているお宝全てで」

「えっ」

「な、何を言ってるんですかカズマさん!?」

 

 俺の言葉に顔を引きつらせる男、後ろのパーティーメンバー達も似たような顔をしている。

 ウィズも信じられないといった表情でこちらを見てくるが、今はビジネスの話が優先だ。

 

「ちょっと高いですかね?」

「あ、あぁ……それは流石に……」

「そうですか、残念です。それではお気をつけて」

「ちょっ!? ま、待ってくれ! その、もう少しまけてくれねえか!? いくら何でもこの宝全部ってのは……」

「こちらも命がけですので、価格を下げるのはちょっと……大丈夫ですよ、お客様の実力なら、きっと歩いてでも地上に辿り着けるでしょう。まぁ、この辺りになると魔素もかなり濃くなってきますので、地獄からとんでもないモノが迷い込んできたりもしますが……」

「じ、地獄……から……?」

「えぇ。例えば地獄ネロイド。普段は地獄に生息しているネロイドなんですが、かなりの速さでズルズル這ってきて獲物に食いつきます。冒険者が足を食われたまま、地獄に引きずり込まれたという例もあるそうです」

「ひぃぃ……!!」

 

 その話に、三人は真っ青になる。

 俺は畳み掛けるように。

 

「ネロイドなんてまだ可愛いものですよ。ここには、そのネロイドをペットにしている上位悪魔までやって来る事もあるんです。以前俺達が遭遇したのは、アマリリスという上位悪魔で。それはもう恐ろしいの何のって……なぁ、ウィズ?」

「えっ? あ、は、はい……そう、ですね……あれは、ちょっと……」

 

 急に話を振られたウィズが驚いた表情を浮かべるが、すぐに何か嫌なことを思い出したのか、怯えた表情に変わる。

 

 そして、ウィズのその反応を見て、三人はいよいよ震え上がってしまう。

 何せ、先程ドラゴンを一撃で倒したウィズが怯えているのだ。ヘタな言葉よりもずっと説得力があるだろう。

 

 まぁ、実際のところアマリリスという上位悪魔は、グロく恐ろしい姿で人を怖がらせて恐怖の悪感情を食らっていくのだが、直接人を襲い傷付けるようなことはしない。ただ、あの姿は本当にトラウマにもなりかねないので、たちが悪いというのは確かなんだが。

 

 俺は、身を寄せ合って震えている三人に背を向け。

 

「それでは皆さんお達者で。あなた方が無事このダンジョンから出られることを祈っています」

「わああああああああああ待ってくれ!!!!! 分かった、宝ならいくらでもやるから!! 頼むから見捨てないでくれえええええええええええ!!!!!」

「そうですかそうですか! ご利用ありがとうございます!! それではお宝の方をお願いします!!」

 

 そう言って手を出して笑いかけると、男は泣く泣くといった様子で、色々詰まっていそうな荷物をこちらに――――。

 

 

「『テレポート』!」

 

 

 ――渡そうとした時、急に光に包まれて三人ともいなくなってしまった。

 もちろん俺は何もやっていない。

 

「えっ……ちょ、おいウィズ!? 何してくれてんだよ、せっかくの金づるが!!!」

「カズマさんこそ何やってるんですか! 以前までは相場の何割増しかでしたので黙っていましたが、今回はいくら何でもぼったくりすぎです!!」

「こういうのは時価だから、価格なんて色々変わるんだって! いいじゃねえか、アイツらお宝結構持ってそうだったし! それにほら、今回はドラゴンまで倒したわけだし……」

「倒したの私ですけど!?」

「お、俺だって援護したじゃん! あ、もちろんウィズの分け前は半分以上にするつもりだったぞ!」

「いりません! 私まで共犯みたいになるじゃないですか!」

「きょ、共犯って……! 大体、アイツらは命が助かって嬉しい、俺も儲かって嬉しいで、どちらにも得があるウィンウィンな関係だと思うんだけど!」

「じゃあ何であの人達は泣きそうな顔してたんですか! 明らかに嬉し泣きとかじゃなかったですよ!! というか、やっぱりこれ、ほとんどマッチポンプみたいなものなんじゃ……」

「マ、マッチポンプじゃねーし! アイツらが勝手にピンチになっただけだし! 俺は何もやってねえし!!」

 

 そんな風に俺達はしばらく言い合い、音を聞きつけたモンスターに再び囲まれることになるのだった。

 

 

***

 

 

 ダンジョンでの用事を終えた俺は、テレポートで紅魔の里に帰ってくる。隣にはウィズもいる。何でも、ぜひ会って話がしたい魔道具職人がいるらしい。確かにここには優秀な魔道具職人が多く、外から商談にやってくる者も多い。でもウィズに限っては、なんか嫌な予感するんだよなぁ……。

 

「あー、なんつーか、大丈夫か? いや、ここの商人って結構クセのある奴も多いからさ……というか、紅魔族全体がそんな感じなんだけど……」

「ふふ、大丈夫ですよカズマさん。私も商人ですから、商談くらいはできますよ!」

「そ、そっか……じゃあ、その、頑張って……」

「はい! ここまで送っていただき、本当にありがとうございました!」

 

 そう言って深々と頭を下げるウィズ。

 

 本当に大丈夫なんだろうか。正直かなり心配だったが、他の商人の商談にあまり首を突っ込むというのも、褒められたことではないだろう。例え気の知れた間柄だとしても、だ。

 

 そんなわけで、俺は最後にウィズに軽く声をかけてから別れ、テレポートで王都に飛ぼうとして……魔力が心もとないことに気が付いた。ダンジョン帰りというのもあるし、つい先程テレポートを使ったばかりだ。

 別にあと一回テレポートを使えばぶっ倒れるという程ギリギリだというわけでもないが、それでも体がだるくなるのは間違いないだろう。

 

 しょうがない、少し森に入って適当なモンスターから吸ってくるか。

 そう思って歩き出した時。

 

 

「あ、そこの君、悪いんだけどちょっといいかな?」

 

 

 ぎくっと体が硬直した。

 どこかで聞いたようなその声に、恐る恐るそちらを向いてみると。

 

 爽やかスマイルを携えた、イケメン勇者候補サマがそこにいた。

 えーと、確かカツラギとか言ったか?

 

「少し聞きたいことがあって。“カズマ”という人を知らないかな? この里で教師をやっているみたいなんだけど」

「……いやー、ちょっと分からないな、力になれなくて悪いね。それじゃ」

 

 そう答え、そそくさと退散しようとした…………が。

 

「ま、待ってくれ! その、もし良ければ食事でもどうかな? もちろん、僕が奢るからさ。実はこの里に来てから、まだろくに観光も出来ていなくて……何だか君はこの里に慣れている様子だし、出来れば良いお店とか観光スポットとか教えてもらえたら嬉しいなって」

「…………えっ」

 

 何こいつ、本当にそっちの趣味があるのか?

 いつもは可愛い子を二人も連れてんのに……今はいないようだけど。

 

 すると、俺の若干引いた反応に気付いたのか、カツラギは慌てて。

 

「あ、いや、君、見たところ紅魔族ではなくて僕と同じ冒険者だよね? えっと、この里の人達は皆良い人達だというのは分かるんだけど、何というか、ほら、ちょっと特殊な感性を持っているだろう?」

「あー、つまり、ここの奴等の妙なノリにうんざりしてきたから、普通の人に話を聞きたいってことか」

「う、うんざりしているとまでは言ってないよ! ただ、よそ者の僕があまりズカズカ距離を詰めても迷惑かもしれないし……」

 

 なんか良い人ぶって回りくどいことを言っているが、言いたいことは大体分かった。紅魔族特有のセンスについていけないとかそんなことなんだろう。こいつ自身は、選ばれし勇者やら、強力な魔剣やら、この里の奴等が好きそうな属性を持っているのだが。

 

 でも、どうしたもんかね。

 正直、こいつと一緒に飯食いたいとかはあまり思わないが、あまり露骨に嫌がったりすると逆に怪しまれるかもしれない。こいつのことだ、そうやって人から邪険にされる経験もあまりないだろうしな。

 

 ただ、こいつと一緒にいて、知り合いから名前を呼ばれたらマズイしな…………しょうがない、さっさと飯食って退散するか。

 

 そんなわけで、俺は食事の誘いを承諾し、二人で少し歩いて紅魔族随一の喫茶店に入る。紅魔族随一とはいうが、単純にこの里に喫茶店が一つしかないという、ここではありがちなパターンなのだが。

 

 長居するつもりもないので、俺はメニューを開いてさっさと料理を決める。

 

「俺は『溶岩竜の吐息風カラシスパゲティ』にするけど、お前は?」

「えっ……じゃ、じゃあ僕は『暗黒神の加護を受けしシチュー』で…………あのさ、この溶岩竜や暗黒神がどうのこうのっていうのは……」

「ただ格好良いから付けてるだけだろ。他には特に意味はないと思う」

「そ、そっか……」

 

 色々ツッコミたい気持ちは分かる。しかし、この里でそういうことに対して律儀にいちいちツッコんでいたら疲れるだろう。

 この時間は特に繁盛しているわけでもないので、料理はすぐに運ばれてくる。ここの料理は名前はアレだが、味は確かだ。

 

 俺がカラシスパゲティを口に運んでいると、カツラギは改まった様子で。

 

「自己紹介が遅れたね。僕の名前はミツルギ。ミツルギキョウヤだ。職業はソードマスター、普段は王都でクエストを受けることが多いんだけど、人探しと仲間探しでここに来たんだ。よろしく」

 

 そう言って爽やかスマイルで手を差し出してくるカツラギ……もといミツルギ。そうだ、ミツルギだミツルギ。

 おそらくこの自然な動作だけでも、何人もの女達を落としてきたのだろう。思わずむかっとくるが、ここで事を荒立てるわけにもいかない。

 

 俺もまた営業スマイルでその手を握る。

 

「これは丁寧にどうも。俺は…………あー、オズマ! そう、オズマっていうんだ! 見た通り、お前と違って装備も貧弱な駆け出し冒険者で、職業も最弱職だ。よろしくな!」

 

 名前の最初の文字を一文字前にずらしただけという何とも安直な偽名だったが、ミツルギは特に疑問を覚えることもなく、にこやかに笑う。……なんかこの名前、どっかの球体の裏ボスっぽいな、何でそう思うのかは分からんが。

 

 首をひねる俺に、ミツルギはイケメンスマイルを崩さずに。

 

「よろしく、オズマ。あれ、でも駆け出し冒険者の君がどうやってここまで来たんだい? 僕はここに来るまでに、かなりの高レベルモンスターと出会って来たんだけど」

「あ、そ、それは……知り合いにテレポートが使える紅魔族がいるんだ! それで、紅魔の里に時々連れて来てもらえるってわけ!」

「なるほど。やっぱり便利そうだね、テレポートって。僕のパーティーは組んでから日が浅くて、まだ後衛職がいないんだ。魔法使いとプリーストの人が入ってくれればと思っているんだけど、真剣に魔王討伐を考えてくれる人が中々いなくてね」

 

 そう困ったように苦笑いを浮かべるミツルギ。

 当たり前だ、本気で魔王討伐なんかを考える冒険者なんてのはほんの一握り、しかもそんな意識高い奴等は、もうどこかのパーティーに入っていることがほとんどだろう。

 

 すると、ミツルギは目に期待の色を浮かべて。

 

「そういえば、オズマはもうパーティーは決まっているのかい? もしまだだと言うのなら、僕のパーティーはどうかな?」

「えっ、い、いや、でも俺、後衛職じゃないし……最弱職だし……」

「構わないさ! 後衛職がほしいとは言ったけど、もちろんやる気さえあれば誰でも大歓迎だよ! それに僕のパーティーって、他の二人はどちらも女の子でさ。少し肩身が狭く感じる時もあって、新しく入ってくれる人は出来れば同性の人がいいなと思っていたんだ」

「…………」

 

 あんな可愛い子を二人も連れてるくせに、肩身が狭いとか舐めてんのかコイツ。そこは他の仲間も女で固めて、ハーレム目指すとこだろう普通は。何なのイ○ポなの? それとも本当にあっちの趣味があるの?

 

 ミツルギは、そんなどんよりとした視線を送っている俺には気付かないようで、相変わらずの笑顔を浮かべたまま。

 

「オズマとはまだ会ったばかりだけど、君とならきっと上手くやっていけそうな気がするんだ。だから、ぜひ僕達と一緒に魔王を」

「お断りします」

「えっ…………あ、う、うん、ごめん、分かった……僕も無理にとは言わないよ……」

 

 俺が取り付く島もないくらいにハッキリと断ると、流石のミツルギも動揺したのか顔を強張らせる。

 

 自分は強いのに、こんな見るからに弱そうな俺をパーティーに入れてくれようとする辺り、このイケメンは取り繕っているわけではなく本当に心優しい性格をしているのだろう。

 しかし、残念ながら俺は魔王を倒そうだなんて、これっぽっちも考えていない。つまり、前提条件の“やる気さえあれば”というところからアウトなわけで、それならお互いの為にもパーティーなんか組まない方がいいはずだ。

 

 ミツルギは見るからに肩を落としてがっかりしている。

 流石にそんな姿を見せられると、俺も痛む心がないわけでもないので、一応フォローを入れておくことにする。

 

「悪いな、俺にもやる事があるんだ…………まぁ、お前くらい強くて良い奴なら、優秀な魔法使いやプリーストくらい、その内見つかるって」

「そ、そうかな、そう言ってもらえると嬉しいけど……うん、根気よく探すことにするよ。ありがとう、オズマ」

 

 そう言って朗らかに笑うミツルギ。

 何だろう、普通に良い奴だなこいつ。こうやって向かい合って話してみると、大分印象も違うものだ。こいつと話していると、まるで俺が汚れきった存在であるかのように思えてしまう。いや実際そうなんだろうけど。

 

 それから俺はミツルギに、適当に里のことについて色々話してやる。

 元々、良い店とか観光スポットを教えてくれってことだったしな。

 

「――とまぁ、こんな感じで、基本ここの観光スポットはろくなもんがない。あ、“選ばれし者だけが抜ける聖剣”はどうしても欲しいってんなら手はあるぞ。あれ、鍛冶屋のおっさんが魔法で抜けなくしてるだけだしな。腕の良いプリーストでも連れて来て、『ブレイクスペル』でもかければ抜けるかもしれん」

「な、なんか聞かない方が良かった気がするよそれは……僕はソードマスターだし、聖剣と言われて少し昂ぶっていたのに……」

「世の中そんなもんだ。あ、そうだ、山の頂上にある展望台は行ってみて損はないかもな。特にお前は。あそこには強力な遠見の魔法がかけられた魔道具があって、魔王城を覗けるようになってるんだ。まだ気の早い話かもしんないけど、魔王城攻略の下見にはいいんじゃないか?」

「それはいいね! 流石は力のある魔法使いばかりの紅魔族、いずれ訪れるであろう魔王との決戦に備えて、そうやって常に魔王城を監視できる状態にしてあるのか!」

「いや、ただ単に観光スポットに利用してるだけだな。オススメの監視スポットは魔王の娘の部屋だとか宣伝してるし」

「…………」

 

 何とも残念な表情を浮かべているミツルギ。気持ちは分かる。でも、紅魔族なんてこんなもんだと割り切ることが大事だ。

 と言っても、そういった何も知らない外の人間を狙った観光スポットの数々は、俺が関わっているものも多いのだが。まぁ、ミツルギには一応こうして飯まで奢ってもらってるわけだし、こいつまで騙そうとは思わない。

 

 するとミツルギは気を取り直した様子で、少し真面目な顔をして。

 

「あのさオズマ、観光スポットとかじゃないかもしれないけど、この地には女神様が封じられているという話を聞いてずっと気になっていたんだ。何か知っているかい?」

「え、なに、もしかして女神様までお前のハーレムに入れるつもりなのか?」

「ちちち違うよっ! そもそも僕はハーレムなんて作っていないし!」

 

 何やら珍しく動揺しているミツルギ。ははーん、実は結構図星だったのか?

 俺は口元をニヤニヤとさせながら。

 

「まぁ、残念だったな。確かにここには、信者が一人もいなくなって名前も忘れ去られた女神ってのが封じられてるらしいけど、何でもそれ、『傀儡と復讐を司る女神』とやらで、ほとんど邪神に近いらしいぞ」

「……そ、そうなのか……考えてみればそうか、封じられているということは、つまりは良くないモノということなんだろうね……」

「そんな落ち込むなって。女神様と仲良くなりたいなら、ほら、エリス祭の時にこっそり降臨してるって噂の、幸運を司る女神エリス様なんかを探せばいいんじゃないか? あ、言っとくけど、アクシズ教のアクアとかいう女神はやめとけよ。あれも邪神に近い奴だから」

「なっ……アクア様の事をそんな風に言わないでくれ!!!」

「うおっ!?」

 

 ミツルギは突然テーブルを叩き立ち上がった。び、びっくりした……。

 俺はこちらを睨んでいるミツルギに、慌てて。

 

「わ、悪かったよ。なんだよ、お前、アクシズ教徒だったのか?」

「……いや、そういうわけじゃないけど…………ごめん、僕も熱くなりすぎたよ」

 

 そう言って、ミツルギは大人しく席に座る。

 そういえば勇者候補っていうのは、神々から特殊な力を授けられたっていう話だし、どんな女神でも悪く言われるのは我慢ならないという事なのだろうか。いやでも、さっきこの里に封じられている女神のことを邪神とか言った時は怒らなかったしなぁ。

 

 俺は微妙な感じになってきた空気を何とかしようと、明るい笑みを作り。

 

「あー、観光スポットはアレだけどさ、店の方は期待してくれていいと思うぞ。魔道具店とかポーション屋なんかは、他の街と比べても断然良いもんが揃ってるよ。……一部の店を除いて。それに、鍛冶屋の鎧は上質だって有名でな、何でもどこかの大貴族からも注文がくるらしいぞ」

 

 ソードマスターであるミツルギにとっては、良い鎧というのはぜひ欲しいものだろうと思い言ってみたのだが、どうやらその予想は正しかったようだ。

 ミツルギは目を輝かせて身を乗り出し。

 

「へぇ、それは良い事を聞いたよ! ちょうど鎧を新調しようかと思っていたところでね。それなら明日にでも鍛冶屋に顔を出してみようかな」

「そうしてやれ、あのおっさんも、お前くらい羽振りが良さそうな相手が来てくれたら喜ぶぞ。あとやっぱりこの里で外せないのは占い屋だな。ほぼ百パーセントの的中率で、最寄り街のアルカンレティアの上層部だけじゃなく、王都のお偉いさんなんかも、そこの占いを頼りにしていたりするんだぜ」

「すごいな、そんな的中率の占い師なんて聞いたことが…………いや、そういえば魔王軍にも、ほぼ確実に未来を言い当てる預言者がいるとか聞いたな…………うん、それじゃあ、僕も里を出る前に一度は訪ねてみるよ」

「ちなみに、どんなことを占ってもらうつもりなんだ? まぁ、その凄腕占い師は里一番の美人だし、占い関係なく口説きに行くだけってのもアリだとは思うけど」

「く、口説いたりはしないよ…………そうだな、占ってもらうなら、やっぱり魔王討伐に関することだろうね。魔王討伐の為にどこで力をつけるべきなのかとか、どこで真の仲間と出会えるのか、とか」

「…………お前すげーなホント。そこまで真っ直ぐ、世界を救うことだけを考えてる奴とか初めて見たぞ。マジで根っからの勇者様なんだな」

 

 俺の言葉に、ミツルギは苦笑を浮かべて。

 

「別に、そんな大それた人間じゃないよ僕は。多くの人は、少しでも誰かの役に立ちたいと思っているものだと思う。僕はたまたま力を得ることができたというだけで、同じような気持ちは誰もが持っているものだと思うよ」

「……それはどうだかな。人間ってそこまで綺麗なもんじゃねえと思うけど。なぁミツルギ、お前いつも世界を救うことばかり考えてるけどさ、もし本当に魔王を倒したとして、そのあとはどうするんだ?」

「えっ……それは……」

 

 俺の質問が意外だったのか、ミツルギは意表を突かれた表情で固まる。

 それから、難しい顔になって顎に手を当てて。

 

「……考えたことがなかったな。魔王を倒したあと、か」

「お前アレだな、若い頃から大した趣味も持たずにただ働きまくって、歳とって仕事辞めたら何もすることが無くなって呆然とするってパターンだぞ」

「なっ……そ、そんなことは…………な、い…………と思う…………」

「自分でも否定しきれてねえじゃねーか。ったく、しょうがねえな」

 

 俺はやれやれと首を振ると、自分の分のジュースを一気に飲み干し、立ち上がる。

 ここは一つ、このクソ真面目な勇者様に教師らしく教育でもしてやるか。それでこいつの真面目さが少しでも減って、“カズマ”という男を探して仲間にするのを諦めてくれたら、なおいい。

 

 俺は、きょとんとこちらを見ているミツルギにニヤリと笑いかけ。

 

「もうすぐ日も落ちる頃だ。ちょうどいい、飲みに行くぞ。羽目をはずして騒ぐってことを教えてやる。お前のお仲間も呼んでこいよ、女の子いないと寂しいし」

 

 

***

 

 

 すっかり夜の闇に包まれ、静かになった紅魔の里。

 紅魔族随一の居酒屋はここからが稼ぎ時だ。俺達は、若干困ったような笑顔を浮かべる居酒屋の娘、ねりまきが持ってくる酒を呷りながら、アルコールによってほんのりと顔を紅潮させて騒いでいた。

 

 同じ席には、ミツルギのパーティー以外にも、俺が適当に連れて来てやった、ぷっちんやぶっころりーもいる。もちろん俺の正体は隠すように言ってあるが。

 クソニートのぶっころりーは上機嫌に言う。

 

「うんうん、誰かの金で飲む酒の旨さったらないよね! よし、じゃあお礼に、紅魔族随一の美人である、そけっとに関する情報をあげるよ! そけっとはね、毎日朝七時頃に起きて、朝食はうどんを食べて、その後お風呂に入るんだよ。ただ、ここで困ったことがあってさ、そけっとは洗濯物をすぐ洗濯してしまうんだ。何が困るんだって? それはもちろん――」

 

 そして、ぷっちんはとんでもなく緊張した様子で、ミツルギの仲間の女の子の方をちらちら見ながら。

 

「わ、我が名は……あ、いや、俺は…………ぼ、僕は、その、ぷぷぷぷぷっ、ぷっちんと、いいます…………きょ、教師をやややっていて……12歳の女の子達に色々教えています!!!」

 

 そんな俺の友人達……いや、知り合いを見て、引きつった笑顔を浮かべているミツルギ。こんな奴等相手でも一応笑みは崩さない辺り流石だ。

 しかし、仲間の女子達の方は見るからにドン引きの様子で。

 

「ね、ねぇ、キョウヤ、もうそろそろ帰らない? ほら、明日も人探しとか色々あるでしょ……?」

「う、うん、そうだよ。もう十分飲んだし楽しんだし……ね?」

 

 確か名前は、ランサーの子がクレメアで、盗賊の子がフィオだったか。なるほど、こんな男共と飲みたくないという気持ちはよく分かるが、ここで逃がすわけにはいかない。

 

 俺はジョッキの中身を一気に飲み干し、ミツルギにニヤリと笑いかけ。

 

「よーし……そんじゃあ、そろそろハッキリさせようじゃねえか……」

「えっと、大丈夫かい? 少し飲み過ぎなんじゃ……」

「んなこたぁねえよ! まだまだイケるぞ俺は!! それより俺の話を聞け!! そんで、正直に答えろ!!」

「わ、分かった、分かったよ。何でも聞いてくれ」

「言ったな? じゃあ聞くぞ」

 

 そして俺は、ミツルギの仲間の女の子二人を両手で指差し。

 

 

「結局、どっちの子が本命なわけ?」

 

 

 ミツルギ達の空気が凍った。

 俺達の間には重苦しい沈黙が…………いや、空気を読めないぷっちんとぶっころりーは、まだ勝手に自己紹介やらそけっとの話を続けている。俺が連れて来といてなんだが、もうこいつらは放置しよう。

 

 一方で、ミツルギ達の方は周りのバカ二人を気にしている余裕はないらしい。

 女の子二人は不安げにちらちらとミツルギを見ており、ミツルギの方は困ったように笑いながら。

 

「いや、その、二人はどちらも大切な仲間だけど、恋愛関係とかそういうのは……」

「つまり、そこの二人は仲間としては使えるが、女としては眼中にない、と」

「えっ!? ち、ちがっ……! そういうわけじゃなくて!!」

 

 俺の言葉を聞いてショックを受ける女の子二人に、一気に慌て出すミツルギ。何これ面白い、もっと言ってやろう。

 

「じゃあさ、仮定の話でいいよ。もし仮に、この二人から同時に告られたとして、お前はどっちを選ぶんだ?」

「なっ……そ、それは……」

「ま、待ってよ! ねぇ、そんなこと聞かなくていいじゃない!!」

「そ、そうよ!! それって聞いちゃったら色々ダメなやつだと思うんだけど!!! これからの関係とか、そういうの的にさ!!!」

「いやいや、俺はお前らの為を思って言ってやってるんだよ? どうせお前ら、今の関係を壊したくない~とか言って、このままずるずる仲間としてやっていくつもりなんだろ? 本当は今以上の関係になりたいのに」

「「うっ……」」

「で、そのくせ魔王との決戦前夜に、最後になるかもしれないからとか言って告白、玉砕。それを肝心の魔王戦にまで引きずって足手まといになり、庇ったミツルギが致命傷を」

「やめて! なんか妙にありそうな気がしてくるからホントやめて!!」

「そもそも、本当に私達の為を思って言ってるの!? 楽しんでるだけのように見えるんだけど!」

「失礼な、本当に心配してんだよ。男女関係でギクシャクするパーティーを外から眺めるのは楽しいなぁとか、もしこいつらのどっちかが振られたら傷心に付け込んでワンチャンあるかもとかは、少ししか思ってない」

「ちょっと待って! なんか最悪なこと言ってるんだけどこの人!!」

「キョウヤ、やっぱりもう帰ろう!? こんな人の言うことなんて聞かなくていいって!」

 

 ミツルギは先程から話についていけない様子で、おろおろと成り行きを見守っているだけだ。多分、この二人が自分のことが好きだということも分かっていない。そういう鈍感さは、ハーレム野郎の特性だ。

 

 ミツルギは二人の言葉を受けて少し考え込み、それから真っ直ぐ俺を見た。

 

「いや、オズマにはさっき『何でも聞いてくれ』と言ってしまった。前言を撤回するのはよくないことだと思う」

「お、流石は真面目な勇者様、分かってるじゃねえか」

 

 俺だったら「何でも聞くとは言ったが、答えるとは言っていない」とか言って逃げるところだろうが、そんなのは小悪党のやることであり、勇者様のやることではない。

 

 ミツルギは覚悟を決めた表情で。

 

「君の質問は『もしもこの二人から告白されたら、どちらを選ぶのか』でいいのかな?」

「あぁ、まぁ、それでいいよ」

「えっ、ま、待って! 本当に答えるの!?」

「そ、その、急に言われても、私達だって困るっていうか、こ、心の準備が……!」

「ははっ、そんなに構えるようなことじゃないって。あくまで仮定の話だよ。ここで僕が何と言おうが、僕達が大切な仲間同士であることには変わりはない、そうだろう?」

 

 そんなことを言いながらイケメンスマイルを向けられ、二人は何か言いたげな表情で口元をむにむにしている。この鈍感イケメンは一度ぶん殴られた方がいいと思う。

 

 でもいくら仮定の話だからって、ここでの答えはそのまま二人への好感度を表すことになり、そこに優劣を付けてしまえば、今まで通りとはいかなくなりそうなもんだが。

 

 と、そんな事を考えていると、ミツルギはハッキリとこう答えた。

 

 

「僕の答えは、『どちらも選ぶことはできない』、だ。僕には他に好きな人がいるんだ」

 

 

 …………なるほど。

 確かに“どちらも選ばない”ということは、二人の間に差を付けていることにはならず、これからの関係性には影響を及ぼさないのかもしれない。質問自体が仮定の話だしな。

 

 しかし、そんなのが通用するのは、この二人がミツルギのことを、あくまで仲間だと割り切っている場合だ。当然、この二人にはそんなのが当てはまるわけもない。というか、こんだけ好き好きオーラ出されて気付かないとか、わざとやっているとしか思えない。まぁ、コイツがそんな俺と同レベルのクズであるはずもないし、本当に分かってないんだろうけど……。

 

 案の定、女の子二人はとんでもなくショックを受けたようで、泣きそうな顔で呆然としている。

 これには流石の俺も罪悪感を覚え、フォローすることに。

 

「……あー、元気出せよ。世の中広いんだ、いい男なんて他にいくらでもいるって。例えば俺とか」

「早速傷心に付け込んできたんだけどこの人!! 信じらんない!!!」

「いくら何でも、振られて数秒で他の男に鞍替えするわけないでしょ! どれだけビッチなのよ私達!!」

 

 ちっ、ダメだったか。

 まぁ、そんだけ怒る元気があるなら大丈夫だろう。案外たくましい子達なのかもしれない。考えてみれば、この二人はミツルギが魔王を倒そうとしている事を知った上でパーティーにいるのだろうし、そんなにやわでもないのか。

 

 俺はミツルギに尋ねる。

 

「しっかし、お前に好きな人がいたなんて意外だな、魔王討伐にしか興味ないんじゃないかと思ってたわ。で、どんな人なん? 同じ冒険者?」

「僕の好きな人は…………いや、やめておこう。きっと言っても信じてもらえないだろうしね。それに、おそらくこの想いはあの人に届くことはないだろう。あの人は、僕とは違う世界にいる人だから……」

 

 そう言って、少し寂しげな表情で遠くを見るような目をするミツルギ。

 違う世界ってことは、相手は貴族か何かなのか? でもコイツならいくらでも功績を挙げられるだろうし、チャンスはあると思うけどなぁ。

 

 すると、そんなミツルギの言葉を聞いた女の子二人は、少し希望を取り戻したようで。

 

「そ、その……キョウヤ! 例えその人への想いは届かなくても、他にキョウヤのことを想ってくれる人はいるはずだって! 意外と近くに!!」

「うん、そうだよ! だから、えっと……その人のことは、あまり引きずらないようにして、もっと周りを見てみるのもいいんじゃないかな!」

「フィオ、クレメア…………ありがとう。僕は本当に良い仲間を持ったよ」

 

 そう言って笑いかけるミツルギと、“仲間”というワードに若干顔を引きつらせる二人。うん、もう勝手にやってろ。

 

 それよりも、俺には気になることがあった。

 

「なぁミツルギ、そのお前が好きな人ってのは、やっぱり身分が高い人なのか? 見た目はどんな感じ? かわいい?」

「あぁ、身分が高い……というか、もう存在としての格が違うというか……。それに、まさに女神と言えるくらい人間離れした美しさで、全てを失った僕を導いてくれた、心清らかな人だったよ」

 

 幸せそうに微笑み、そんなことを言うミツルギ。

 つまり、とんでもなく偉くて、とんでもなく綺麗で、とんでもなく性格が良い人か……。

 

 これは正妻候補としてチェックするしかない!

 

「おいもっとその人について詳しく。つか、もう全部言っちゃえよ。お前が諦めるってんなら、俺がありがたく貰うからさ」

「えっ!? い、いや、それは無理だと……」

「何だよそんなの分かんねえだろ。俺ならお前よりずっと上手くやれるはずだ。身分の差だって、俺なら何とか出来る。実績もあるからな」

 

 そう、俺は王女様とだって仲良くなれたんだ。今更身分の差なんかで怯んだりはしない。

 すると、ミツルギの取り巻き二人が、何故かイラッとした表情で。

 

「キョウヤでも無理って言う人が、あんたなんかにどうにか出来るわけないでしょ!」

「そうよそうよ! 身の程を知りなさい!!」

「はぁ!? つか何でお前らが怒ってんだよ、ミツルギの好きな人を俺がかっさらってやるって言ってんだから、むしろ喜ぶとこだろ!」

「それとこれは別よ! キョウヤがあんたに劣ってるみたいに言われて、黙っていられるわけないでしょ!!」

「キョウヤと比べたらあんたなんて、ゴブリン以下なんだから! 調子に乗らないでよね!」

「んだとこのクソアマ!!! 女だからって大目に見てもらえると思うなよ、すんごい事してやるぞ!!!!!」

「な、何よその手つき! 変なことしたら、ただじゃおかないんだからね!!」

「ひっ……こ、こっち来ないでよ変態!!!」

「み、みんな、少し酔いすぎだよ……ほら、他のお客さんにも迷惑だし……」

 

 それから何度も、ミツルギは必死に俺達の仲裁に入ることとなった。

 そして日付が変わる頃にはすっかり疲れきった表情で、ぎゃーぎゃー騒ぐ俺、ぷっちん、ぶっころりーの三人に一言声をかけてから、眠りこける仲間二人を抱えて帰っていった。

 

 そんな状態になっても、ちゃんと全員分の金は置いていく辺り、流石は勇者様だと思いました。

 


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