賑やか家族Diary♪   作:犬鼬

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32話 某姉妹の水着買い物録

「お姉ちゃん!」

「な、なによ」

 

休日のお昼過ぎ。いつも通り部屋でのんびりと本を読んでいたら、妹の美咲が扉を勢いよく開けて入ってきた。

部屋の扉は外開きだから壁が傷付く心配はないとはいえ、ビックリするからやめて欲しいな。ていうか勝手にベッドに座らない。

 

「それでどうしたの?」

「聞いたよ、今度梓兄(あずにい)さん達と海に行くって聞いたよ!」

「誰から?」

「黒愛ちゃん」

 

……うん? 今なんか聞き慣れない言葉が聞こえた気がしたんだけと……

 

「ねえ。さっきなんて言ったの?」

「え? 黒愛ちゃんから海に行く話を聞いたって」

「その前」

「……我、堕天の王なり?」

「いつの話よそれ。そうじゃなくて誰と行くって話」

「ああ梓兄さん達とって」

 

はいそこおかしい。あなた今まで梓のこと「梓さん」って言ってたじゃん。いつの間に梓兄さんとか呼んでんの?

 

「梓兄さんに直接許可もらったんだよ」

「くぅ……私だって名前で呼ぶのに数年かかったのに……」

「何言ってるのお姉ちゃん。知り合ったその場で名前で呼んでたって梓兄さんから聞いてんだからね?」

 

ちっ、なんだよバレてたのか。まぁその通りなんだけどね。にしても梓も私と初めて会った時のこと覚えてくれてるのかぁ〜、なんか嬉しいね。

 

「お姉ちゃん顔がにやけてる……てそうじゃなくて! なんで海に行くのに誘ってくれなかったの!」

「だって今年受験生じゃん。それにアンタ泳げないでしょ」

「お、泳げるもん! あれから練習して泳げるようになったもん!」

 

おーそうかそうか。じゃあちょいと黒愛ちゃんに確認とるからちょっと待ってね〜。

 

「お姉ちゃんなんで携帯取り出すの? どこに電話してるの?」

「あ、もしもし黒愛ちゃん? ちょいと確認したいことがあるんだけど」

「姉上殿! 後生でごさる! それだけは、それだけはぁ!」

「なぁ〜んてね」

 

必死に携帯を奪おうとした様子から、やっぱり泳げるようにはなってないみたいね。これは海で練習かな?

 

「それで? そんな泳げない受験生の妹さんは海に行きたい、と」

「だってせっかくの中三の夏なんだよ!? 思い出たくさん作りたいじゃん!」

「あーはい、そうですか。で、なんで私のところに来たの?」

「ふっふっふ。それはね」

「あ、やっぱり言わなくていいや」

「酷い!」

 

美咲が落ち込んでいるけどまぁアレだ、私だって学ぶんだよ。こういう時の美咲って何かと厄介ごとを運んでくるからね。先回りして断らないと

 

「せっかく新しい水着買いに行こって誘おうと思ったのに」

「よし行こう、今すぐ行こう、早く行こう」

「え、ちょ、お姉ちゃん!?」

 

美咲の言葉を聞いた瞬間体が動いていた。美咲の手を掴み財布と携帯を持って外へ出る。

さっきと言ってること違うじゃんって? いいのいいの。所詮人間なんてそんな生き物さ。それに美咲のことだから出かける準備は済んでいるだろう。あ、お金あったかな?

 

 

 

 

 

「で? なんでその流れで俺が巻き込まれてんの?」

「男性目線のアドバイスが欲しいからってお姉ちゃんが」

「まぁいいんだけどさ」

 

家でテレビを見ていたら突然美咲ちゃんから電話がきた。内容を聞く分には買い物に付き合って欲しいとの事。別にそのくらいならいつもの事だし、二言返事で了承したんだけど……まさか水着を買いに来ていたなんて……なんだろうすごい既視感を感じる。

あ、今俺達がいるのは黒愛と叶音ちゃんの水着を買いに来たショッピングモールだよ。今日は車を二台とも加奈姉と百斗が使ってるから、ここまではバスでの移動。

加奈姉は目的も言わずに出かけちゃったし、百斗は百斗で市民プールに行くって言ってた。あいつ一人でプールに行くとは思えないから飛鳥ちゃんと行ってんのかね。

 

「ねぇ梓兄さん、これどうかな?」

「ん? どれどれ」

 

試着室の前で周囲の視線に耐えながら二人の着替えを待っていると、先に美咲ちゃんの入った試着室のカーテンが開かれる。

そこにいたのは水着に着替え、こっちにVサインをしている美咲ちゃんがいた。

 

「これはね、タンキニって言って、タンクトップビキニの略称なんだって。それでね、セパレート型だから着やすいし、脱が」

「ゔゔん! 分かったからストップね」

 

なんか今社会的に死ぬところだった。とにかく周りの目が痛い。あ、そこの奥さん方小声で話さないで。携帯取り出さないで!

 

「変、ですか?」

「いや、似合ってて可愛いと思うよ? うん」

「ホント! じゃあこれにしよっかな〜」

 

嬉しそうにくるくる回る美咲ちゃん。回るのはいいけど試着室って狭いから、どこかぶつけないか心ぱ……あ、手を壁にぶつけてしゃがみこんだ。

 

「大丈夫?」

「な、なんとか……」

「とりあえず服に着替えよっか」

「……うん」

 

コクンと小さく頷くと、カーテンを閉めた。

そういえば遥はまだなのかな。いくつか持って入ったっきりだけど……

 

「ね、ねぇ梓」

「どうしたの?」

「……いや、なんでもない」

「そう?」

「うん」

 

遥のその声とともに、カーテンが開く。

 

「ど、どう……かな?」

 

カーテンを開けた遥は黒のビキニを着ていた。

ビキニ。古くは五世紀頃のローマ帝国時代のモザイクには、ビキニ似た服を着て運動する女性が描かれていた。また1946年にフランスで考案され、日本に輸入されたのは1950年、一般に着用されるようになったのは1970年代だとか。

マーシャル諸島のビキニ環礁でアメリカによって、第二次世界大戦後初の原爆実験が行われた。この実験の直後にルイ・レノアールが、その小ささと周囲に与える破壊的威力を原爆にたとえ("like the bomb, the bikini is small and devastating")ビキニと命名したのが由来であり、「水爆実験になぞらえた」というのは誤りで

 

「梓兄さんしっかり」

「ハッ、俺は今何を」

 

思考が飛んでいると、私服に戻った美咲ちゃんに肩を揺すられ現実に戻ってこれた。目の前では遥が試着室のカーテンで体を包んでいた。

 

「……美咲、それ取って」

「それ? どれ? これ?」

「そう!」

 

遥が視線だけで美咲ちゃんに取ってもらいたい物を指すと、美咲ちゃんは戸惑いながらも一枚の服を渡す。

これは俺でも知っている。確かラッシュガードっていう水着の一種で、日焼け防止とか体温の低下を防止するやつ……だった気がする。

遥はそれを奪うように取ると、再び試着室のカーテンを閉め、すぐに私服で現れた。……あっさり言ったけど、早着替えなんてもんじゃないぞ、今の早さ。

 

「お、お待たせ。梓、買ってくるから外で待ってて」

「あ〜うん、じゃあ出口で待ってるよ」

 

視線で付いてこないで、と背中を押されながら言われたので一人寂しく店から出る。

ここにきて改めて思う。今回、俺が来る意味はあったのか、と。

そんな考えを打ち消す為にポケットから携帯を取り出し、電話をかける。

 

「あ、もしもし民?」

『なんだよ、こんな時間に』

 

電話の相手は我らが部活の部長である沼白民。

こんな時間って言ったけど、時間はまだ夕方になったばかりの頃だから、そこまで非常識な時間ではない……はず。

 

「いや、なんか久し振りに声を聞きたくなってね」

『いや久し振りも何も先週会っただろ』

 

そうだっけ? なんか四ヶ月近く姿を見てない気がするんだけど。

 

『んで? どうしたんだよ』

「今度、皆で海に行く事になったんだ」

『…………うん。んで?』

「それだけ」

 

それだけ言ってから「じゃねー」と電話を切る。あ、すぐに折り返しが来た。

 

「もしもし?」

『だからなんだよ!』

「いや、民の分まで楽しんで来るねって」

『……もしかして俺以外の文研部全員集合なのか?』

「いやいやそんなわけないじゃん。ウチの家族プラスアルファで行くんだよ」

『あ、もしかしてお誘いの電話だったり……?』

「は? んなわけないでしょ」

 

何寝ぼけた事言ってるんだか。まさかこの時間まで寝てたんじゃなかろうか。

 

『なぁ、今日のお前なんか辛辣じゃね? 悪いことでもあったか?』

「特に何も。まあ強いて挙げるなら急に呼び出されたと思ったら超気まずい空気に晒される上に、危うく通報されかけただけ」

『お、おう、そっか。海楽しんでこいよ?』

「ん。お土産期待せずに待ってな」

 

そして電話を切る。切る直前「期待させろよ!」って叫びが聞こえたけど無視無視。ちょうど遥と美咲ちゃんが店から出て来るのが見えたからね。こっちの方が優先度は高いんよ。

 

「お待たせ」

「いやそんなに待ってないよ」

「あ、もしかして私お邪魔かな?」

 

まるでデートの待ち合わせみたいなやりとりをしたら、美咲ちゃんが口元に手を当てて言う。

うん、どちらかと言うと姉妹の買い物に俺が邪魔だよね。

 

「じゃあ美咲一人でこれから時間潰す?」

「じょ、冗談だよ? ホントだよ?」

「ほらほら。いつまでも店の前で話してると迷惑でしょ。行くよ」

 

「はーい」と返事を返す姉妹とともに、どこに行くでもないウィンドウショッピングを三人で楽しんだ。




【だいありー】
瑠「水着回、どこかで見たことあるような、ないような」
来「でもやっぱり俺らは出てないんだね」
瑠「まぁほら、私達は「瑠璃! なぜここに瑠璃が! まさか自力で脱出を!」枠だし」
来「その枠はちょっと嫌だなぁ」
瑠「もっと出番欲しいよね〜」
来「そうだよね〜」
瑠「誰か書いてくれないかな〜?」
来「さて、作者さん方にゴマをすったところで、何を話そうか」
瑠「何話そうね」
来「あ、そういえば闇鍋した話はいつ投稿されるのかな?」
瑠「あーいつになるのかな。暫く予定はないとか言ってたけど……まぁ待っていればいずれって感じかな?」
来「…………」
瑠「…………」
来「あれだね。作品でそんなに出番ない組は動きづらいね」
瑠「そうね。でも出てる組にしたらメンバー固定されそうじゃない?」
来「まぁそこは相談して決めるとするよ」
瑠「さて、話す人によって長さの変わるこのあとがき。今回はここまで」
来「次回以降、固定メンバーになるのかならないのか、お楽しみに?」
『バイバーイ』

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