百斗にイベントがあったようにもう一人イベントがあったみたいです!!
流石バレンタイン!!
チョコレートの味
「おはよ、理咲」
「あ、光樹。おはよ」
「あ、おい……」
いつも通りの学校生活。でもなんか今日は違った。
なんか理咲が冷たい。
いつもならもっと話すのに挨拶しただけでどっかに行っちゃった。
授業中、いつもとは様子が違う理咲をついつい見てしまう。
なんか俺理咲に悪いことしたか……?
いや、でも理咲の性格から考えて嫌ならその場ではっきり言ってくるはずだし、そのあと倍以上になって仕返しが返ってくるから多分その線じゃないと思う。
じゃあなんだろう……
嫌われたなんてことはそれこそ心当たりがないんだけど……
もしそうだとしたらどうしよう……
頭の中はぐるぐるしまくっててもうほかのことは何も考えられないようなそんな状態。
それだからか……
「いてっ」
なんか結構固いもので頭をたたかれた。
「何度も呼んでいるのに返事しないとはいい度胸だなぁ、おい?」
「あ、え~っと……」
この学校で一位二位を争う怖さだと言われる織原先生に出席簿の角でたたかれたらしい。
「すみませんでしたぁ!」
「呼んだら返事をせんかこのバカタレが」
えっと、あのところでいつの間に一コマ授業終わって二コマ目に入ってるんですか?
何もノート取ってないし。
はぁ、あとで前の授業のノートはキヨ君に見せてもらうとして。
何でかなぁ、理咲……
何となく理咲の背中に目を向けると理咲と目が合った。
あった瞬間すごい勢いで目を背けられたけど。
がっくりと首を下げたくなった、というか下げた俺は結局この後3、4回出席簿の角で頭をたたかれた。
織原先生、出席簿は生徒を叩くものではないと思います!
そして放課後、いつも一緒のお昼すら今日は一緒に食べてくれなかった理咲は何も言わずに先に教室を出ていった。
「ねえ、なんかあったの?」
「キヨ君、さっきはノートありがとね。うん、なんか朝からずっとあんな感じなんだよね……俺がなんかしたのかもしれないけど心当たりがなくて……」
「なんだろうね?」
いつも結構一緒にいるのに、いきなりここまで何もないとさすがに気になるよね。
一緒に過ごした時間が長いからこそ逆にわからないのかな。
時々自分でもわからなくなる。幼馴染の彼女っていう設定はアニメとかゲームではよくあるし、王道キャラだけど実際は結構難しいと思うんだ。一緒に過ごした時間が長いってことは友達という関係でいた時間も長いっていうことなわけで、そこから一歩踏み込んだ関係に進むのって本当に難しいと思う。
この友達よりは近いけど恋人までにはいかない、みたいな関係に慣れちゃってるし、この距離感がちょうどいいとも思う。それにもし、それでこの関係が崩れてしまったら、そう考えるとなかなかうまく言い出せなくて。
「とりあえず、ごめん、俺も先帰るわ」
こんなこと考えても仕方ない。とりあえずまずは理咲に話を聞かなきゃ。
それからじゃないと何もできない。
困ってるなら助けてあげたいしね。
さてと、そう思って学校から出てきたはいいものの、どこにいるかな……
校舎にはいなかったから多分外にいるはず。
理咲が教室を出てそれなりに時間は経ってるけどまだそんなに遠くには行ってないはずだし……
とにかく理咲の家までたどってみるか。
走って理咲の家までの最短ルートを探しても見つからず、途中の道とかもいろいろさがしたけどどこにもいなくて。
あいつ、本当にどこ行ったんだよ……
まさか……
いそうな場所に心当たりを見つけた俺はそこまで全力で走る。日はだんだん落ち始めて空が朱くなり始めていた。
「はぁはぁ、やっぱりここだったか」
寂しそうにブランコに乗ってる女の子に声をかける。
「理咲」
「光樹……」
俺が探していた女の子はなんだかとても辛そうだった。
「なありs「光樹!」
「これ、毎年のだけど」
小さな紙袋を渡された。
「これって……」
「バレンタインデーでしょ? だから」
「ありがとう。開けても、いい?」
「もちろん」
中に入ってたのはかわいらしい小さな箱。その箱の中から出てきたのは小さなパイと可愛くデコレーションされたムース、だよね、このカップのやつは多分。
「そっちのムースはついでよ。余った材料で適当に作っただけだから」
「そうなのか、やっぱりすごいな、理咲は」
チョコパイにチョコムース。俺の中でトップを競うお菓子。
「食べていい?」
「え、うん、もちろん……」
許可をもらってからチョコパイを一口食べる。
「うん、おいしい!」
「ありがと、光樹」
やっぱりいつもと雰囲気が違う。
俺と話してても何か違うことを考えてるみたいでなんかちょっと嫌だった。
「ねえ、光樹、ここ、覚えてる?」
「もちろん、理咲と初めてあった場所だからね」
俺と理咲は家が近所というわけじゃなくてたまたま幼稚園が一緒だっただけ。まあ学区も一緒だったしそこからずっと同じ学校に通ってるんだけど。
実は幼稚園に入る前に一度この公園に偶然遊びに来たことがあって、その時に理咲とあってるんだ。
「あの頃はずいぶん大きな遊具だと思ったのに今じゃみんな小さく見えるね」
「私たちが大きくなったからね。光樹、来てくれてありがとう。今日一日ごめんね、なんだか光樹とうまく話せなくってさ」
「え……?」
突然目の前が明るくなった気がした。
真っ赤に染まった空に照らされた理咲がなんだか直視できない感じがして、でもなぜか目をそらすことはできなくて。
「光樹、わたし、わたしね……」
ここまで来たらさすがにわかった。
でもなんでか俺は動けなかった。
「私! 光樹のこと、好き! だから……」
「私と、付き合ってください!」
言葉よりも先に体が動いた。
気づけば俺は理咲を抱きしめていた。
「え、え……?」
「理咲、俺も理咲のこと好きだ」
「……!」
理咲が息をのんだことが抱きしめた体から伝わってくる。
「今日一日ずっと不安だった。嫌われたんじゃないかって……」
「ごめんね、光樹に告ろうって決めたはいいんだけど、いざ顔合わせたらうまく話せなくってさ……」
俺は一度理咲を離して向き合う。
「改めて言うよ。俺も理咲が好きだ。ずっと好きだった。
だから、俺からもお願いする」
「俺と付き合ってください!」
「光樹、顔あげて?」
理咲にそう言われて俺は下げていた顔を上げていって……
「……!」
唇に柔らかいものが触れた。
キス、されたんだ……
あはは、ファーストキスは甘酸っぱいってよく言うけどあれ、嘘じゃん。
ファーストキスはチョコの味だよ。
すごく長いように思えたけどたぶんほんの何秒かでしかなかったのだと思う。
唇が離れた後俺はつい理咲の形のいいぷっくりとした唇を意識してしまう。
「今のが私の答え……私のファーストキスなんだから……」
「あ、ああ俺も……」
「ふふっ、お互い様だね」
なんだかふわふわしてる。
脳の処理が追いついてない感じ。
それでも理咲と付き合える、それだけはちゃんと理解していた。
いつの間にか日は暮れて真っ暗になっていた。
「さすがにそろそろここにいるのも寒いね。帰ろっか」
「うん、そうだね……」
公園を照らす頼りない街灯に照らされた俺たちは自然に手をつないで公園を後にした。
「ほらこんなに手を冷たくして」
「光樹だって変わらないじゃん! でもあったかい」
「……よかった」
今のこの瞬間が何よりも幸せ、そんな気がした。
というわけでこのお二人さんがくっついちゃいました!
うらやましいですな~
今回のバレンタインはこれで終了です!!
ポケモン回に関しましてはただいま後編を鋭意執筆中です。
出来次第挿入投稿をし、Twitterでも報告するのでお楽しみにですよ!!
ではでは!!