ではどうぞ!
「ふわあぁぁ~」
「眠そうですね、民さん」
「まぁね」
部室の奥の椅子であくびを零すと、ソファに座ってパソコンで作業している二年生の
「それで? 曜子はどうしてここに?」
「今日が期限のレポートを忘れてて今やってるんです」
「へぇ曜子が課題遅れそうになるなんて珍しいな」
「一体誰のせいなんでしょうね」
いやそんなジト目で見られても、基本締め切りは前もって伝えてるわけだし、レポートがギリギリなのは俺のせいじゃないし。
「こんにちは~」
「おはようございます」
曜子と少し話していると二年生の
「二人が揃って来るとは。明日は雨かな?」
「今日は次の話を書きに来たんですよ。あと少しなのに家だと色々と邪魔が入りますから」
「それにさっきの講義が同じだったんです。なので別に珍しくとも何ともないですよ」
そうだっけか? まぁ興味ないしなんとなく聞いただけだから、正直どうでもよかったりする。あと来てないのは七人か。今日は休日だと言うのに全部員揃うんかね。ほら噂をすればなんとやら。早速部室の扉が開くよ。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「おー海里に春一も来たか。暇潰し? それとも執筆?」
背もたれに寄りかかりながら一年生の
それにしてもこいつらいつも一緒に来るイメージがあるんだが、なんでだ?
「いつも近くで会うんですよ」
「なんで分かるんだよ」
「エスパーですから」
「エスパーってお前……」
「冗談です。女の勘ってやつですよ」
海里が冗談っぽく言ってるが内容の読み取り正確なんだよなぁ。しかも今回だけじゃなくて前にも何回か経験あるし。
「あの、僕は次の講義までの時間を潰しに来ました」
「私は今日は講義ないからね、暇潰しだよ。帰りに春と買い物行く予定だし」
「相変わらず仲がいいこって」
「仲良きことは良いこと也、ですよ。民さん」
「それを言うなら、仲良きことは美しきかな、だぞ。曜子」
仲良し姉弟といえば今日は梓来てないのか? 確かあいつも今日講義があったはず。
「梓なら今日は講義が終わってさっさと帰ったぞ」
「ん? 今日って何かあったっけ?」
梓がさっさと帰るってことは近くのスーパーで特売か何かあるのか? それとも姉弟の誰か、梓が帰るってことは加奈さん辺りか、が風邪でもひいたのか?
「あ、今日は小澤サンはバイトで来れないって言ってましたね」
「梨歌もか……てか秋太と夏生はいつ来たんだよ」
「たった今だけど?」
「そこで室伏サンとあったんですよ」
気付けば秋太と二年生の
「あ、遥さんも梓さんと同じで講義が終わった途端消えましたよ」
「だからなんで……ってもういいわ。それじゃあ今日はこのメンツか」
海里から目を離して改めて部室を見渡す。
曜子と友和はパソコンと睨めっこ中。そんな二人の後ろに秋太と真里が眺めつつ、偶にちょっかいを掛けてる。いや、辞めてやれよ。
その隣の余ったパソコンで夏生が何か描いてる。多分今度の冊子の挿絵でも描いてんだろうなぁ。
その正面のソファじゃ春一がノートにペンを走らせてる。偶に冊子を見てることから、きっとこっちも挿絵を描いてると思われ。挿絵担当は春一が受け継いでくれるから安泰だな。
「そういえば民さんはあんな時間から入り浸ってるなんて、もしかしなくても暇なんですか?」
「おー暇だぞ~」
また欠伸をしてるとプリントされた原稿を持った友和がやってきた。てかあんな時間って一限が終わって少しだから、お前といた時間そんなに変わらないと思うんだが……
「民はレポートとか、執筆とか終わってんの?」
秋太も面白いこと言うな。三年の付き合いになるのにまだ分かってないのか?
「俺はやることやってからここに来てんの。だから後は皆の原稿待ちなわけ」
だから皆の提出が遅いと俺がバタつくんだけど、やっぱしそのイメージが目立つのかね。ちなみに部内で提出が早いのが梓に真里、曜子、秋太の四人。秋太は提出が終わると同時に自分と他三人の挿絵を描き始める。遅いのが大体友和、夏生、遥辺り。
「へぇ~そうだったんですか。それはご迷惑を……?」
「いや、民はそこら辺考えてスケジュール調整してるっしょ。……してるよな?」
秋太が心配そうにこっちを見てくるも、それを教えて余裕を持たれても厄介だから答えないでおこう。
「ま、まぁたぶん大丈夫だろ……きっと、恐らく」
おいおい秋太、いやこの部室にいる全員か。何を不安がってる。てか、不安がるならもっと余裕をもって原稿寄越せ。そこ、友和、夏生。お前らだよ。あ、目を逸らしたな。
「おいーっす」
そんな中、突然部室の扉が開いた。
誰だろうか? 入稿の締め切りは来週末だから催促はまだ先だし、心当たりがない。しかも今は講義中だからなおさらだ。
「あれ? 梓帰ったんじゃないん?」
「聞いてくださいよ梓さーん。民さんが構ってくれないんですよー」
「はいはい」
海里が梓に甘えようとするも、軽くあしらわれてる。てか、いつの間に移動したんだあいつ。
「梓さん今日用事あったんじゃないんですか?」
「そ〜なんだけどね〜」
「部室内見回して、誰か探してるんですか?」
「ん〜いないみたいだから良いや。それじゃあ皆頑張ってね〜」
何しに来たんだ、あいつ……
「いや〜励んでるね〜」
「まぁな……で、なんでお前もいるんだ?」
「ちょっとしたデート?」
声がしたから振り返ると、そこには
デートって……まぁ今は急ぎじゃないから良いんだけど
「デートって誰とですか!? まさか滝沢サンとですか!?」
「夏生は早く原稿続き書く。どうせ来月もギリギリになるんだし」
てか二年生以下はなんで驚いてんだ? 相手なんて分かりきってるじゃん。俺らとしてはいつの間に付き合ったんだって話だけど。
「まぁデートって思ってるのは私だけだと思うけどねぇ〜」
「だろうな。あの様子じゃ」
「遥はなんて言ったんだ?」
取り敢えず話のわかる
「えーっとね、「今日暇だからどっかに行かない?」ってなって、気付けばこんな事に」
「何がどうしてそうなったし」
ほんと、こいつはいつもこうなんだよな。自由奔放神出鬼没って言葉がよく似合うんだよなぁ。
「つか、いつからいたんだ?」
「んー? 民が欠伸を漏らしてる時からだよ?」
つまりは俺らより先に入って……ってあれ? 遥って確か一限の講義に出てたんじゃ……
「民さん。考えるのやめましょう」
「だな。お前と遥相手に深く考えるだけでバカらしくなる」
「ちょ、それどういう事ですか!」
目に涙を浮かばせないで泣きついてくる海里は無視して、部室に置きっ放しのトランプで大富豪で無双してる遥を見る。
「遥、梓の事だからそろそろ学外に捜索範囲広げると思うんだが」
「それはダメッ! てな訳で私はもう行くね!」
「え、ちょ、ま」
「遥さんここ三階!」
トランプを机の上に投げて窓に向かって走り出した遥に、秋太と曜子が止めようとするけど、まぁ、無駄だろうね。あ、海里窓開けてくれてありがとう。
「とぅっ!」
目だけで海里にお礼を言うのと、遥が開けられた窓から飛び降りるのはほぼ同時。
「あぁぁぁずぅぅぅさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
叫びながら落ちて行く遥を、窓から顔だけ覗かせて見送る。着地点には狙ったかのように梓。
あ、落ちてくる遥に気付いた。
「梓さん、驚いてますね」
「まぁ、普通驚くよな。俺だって驚く」
「じゃあ私が落ちて来たらどうします?」
「急いでその場から離れる」
「酷い」
隣の海里とそんな軽口を叩いていると、梓が遥をキャッチした。
「おぉ〜よく二人とも無傷だな」
「て言うか、受け止め方凄くないですか? なんで普通にお姫様抱っこしてるんですか」
「そのまま校門に向かいましたよ」
「田口サン、恥ずかしいのかジタバタしてますね」
「あ、下ろした途端ドロップキックされた」
いやいや、校門前で何してんのあの二人。あ、梓が本当にドロップキックされてる。起き上がろうとした所に背中からのしかかられてるし。て、梓それ無視して歩き始めんなよ。
「あれ、絶対に周りから注目されてるの気付いてないよな」
「まぁ気付いてないでしょうね」
気付けば部室にいた全員が窓から二人の様子を見ていた。
二人が見えなくなると同時に各々窓から離れ、好きなように過ごし始める。そんな時、再び勢いよく開かれる扉。誰かと思いそっちに目をやると
「皆大変だヨ! さっき梓が校門でドロップキックされてタ!」
「おー梨歌来たか。バイトお疲れ様」
何やら興奮した様子の
大方、さっきのを見て報せに来たってとこか。だけど生憎とここにいる全員それ見てたから、梨歌に反応する部員は皆無。
「あ、梨歌が来たって事はもうそろそろで次の講義始まる時間か」
「ですね。名残惜しいですが民さん、お別れです」
「それじゃあ行ってきます」
一人おかしいのがいたが三人が講義に出るため部室を出て行く。
秋太、海里、真里の三人がいなくなって静かになると思ったんだけど、梨歌が来たからそんなに変わらんか?
それから三限、四限、五限と部員達が入れ替わりで来たり帰ったりするのを一人部室で眺める。
今日は一日特に何もなかった。部での急ぎの用もなかったから別に家でボーッとしてても良かったんだけど、なんとなくここに来たくなった。
結果今日も一日楽しく過ごす事が出来た。
「そんじゃ、今日も一日お疲れ様でした」
五限も終わり放課後。皆が帰ったことを確認し無人になった部室に鍵を掛け帰路に着いた。
さて、明日は一体何をしよう。
「あ、そうそう梓」
「なんだよ。変な笑顔浮かべて」
「へ、ん……!? 偶にだけど梓ってかなり失礼だよね」
「それで? 何を言おうとしたの?」
「……あぁ、うん。百斗くん、いるじゃん?」
「いるね。何か失礼な事した?」
「いや、この前バス停でキスしてたよ」
「ふ〜ん………………はぁ!?」
「反応の遅さからして信じてないみたいだね。はいこれ。証拠写真」
「
その日の夜。とある一軒家から叫び声が上がったとか、上がらなかったとか
いかがでしたでしょうか?
とりあえず、大量に出たキャラ紹介ですw
田口遥
滝沢家とは小学生からの腐れ縁で、梓とは毎年同じクラスになる程。
七歳下に妹がいる。
本編で言われてる通り自由奔放、神出鬼没の似合う人。一度見失うと、家族と梓以外の人が見付ける事は困難と言われている。
高野夏生
文研部所属の二年生。
友和、遥、夏生で原稿の提出が遅い三人として民から「(民の)
現文研部で春一とともに挿絵を担当している。
小澤梨歌
文研部所属の二年生。
校内に設けられてるコンビニでアルバイトをしている。
語尾がカタカナになるのが特徴。
暇を見つけては文研部室に入り浸っている。
江原友和
文研部所属の二年生。
家では家族がいて集中できないとの事で、原稿は部室で書いている。その為原稿を出すのが遅い。
松原曜子
文研部所属の二年生。
集中すると周りが見えなくなるタイプ。と言い張るもそんな事はなく、よく集中が切れ周りと話してしまう。
やる事よりやりたい事を優先してしまうタイプ。
南條海里
文研部所属の一年生。
双子の弟、春一とともに文研部に所属している。
何かと民の近くにいては心の中を正確に読み取っている。
その正確さは民曰く「あ……ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺は奴の前で考え事をしていたと思ったら、海里がそれに返答してきやがった。な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……俺の独り言を聞いていただとか読心術だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ」とのこと。
南條春一
文研部所属の一年生。
双子の姉、海里とともに文研部に所属している。
部室に向かうと必ず海里と遭遇する為、いつも一緒に来るイメージが文研部員全員にある。
現文研部で夏生とともに挿絵を担当している。
小坂真理
文研部所属の一年生。
原稿や課題は早く終わらせるタイプ。それ故に周囲からは真面目なイメージを持たれるも実際はそんな事なく、後々楽をしたい為早く終わらせているだけ。
文研部
正式名称「文化研究部」
三年生四人、二年生四人、一年生三人の計十一人からなるサークル。サークルだが呼びやすさから「部」を使っている。
活動内容は月一での冊子作成及びそれの販売。学園祭では昨年までの作品ごとに纏めた冊子や特別号を販売している。この冊子が学祭には人気で毎月売れ行きが良い。
一年生以外の部員は梓周辺の人達とは知り合いである。
さあ、いよいよたくさんではじめて動かすのが大変になってきましたねww
どうなるのかな?ww
ではまた次回‼