Infinite possibility world ~ ver Servant of zero   作:花極四季

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ハッピーバースデー俺エエエエエエエエエエエエ!!

寝ないと、寝ないと明日死ぬぅ……


第十九話

アルビオンでのイベントを終えた自分に待っていたのは……別に何も待ってなかった。

いや、あることにはあったよ?自分にじゃなくて、ルイズちゃんにだけど。

 

ニューカッスル城にて待っていた姫殿下にウェールズの死を告げ、そこからは互いに涙を流し合う友情物語が繰り広げられることになった。

吉報どころか訃報を告げることになったルイズちゃんの無力感や罪悪感からくる涙と、友人を戦地に送り込みただ心の傷だけを残す選択をしてしまった姫殿下の後悔の涙。

不謹慎にも、その今にも壊れそうなほどに儚い光景を、美しいと思いながら眺めていた自分がいた。

姫殿下には、ウェールズは自ら死を受け入れたことを濁さず伝えた。

彼はあの場で死ぬことで、レコンキスタにトリステインへ攻め込む理由を与えないようにすることを、ワルドをハメる作戦を立てている最中に聞いていた。

彼が姫殿下の為に死んだことは、決して秘匿するべき内容ではない。

例えどんなに辛い言葉であろうとも、彼女には知る責任がある。

歪んだ真実を突きつけても、誰も幸せになどなれないのだから。

 

それから、魔法学院に帰ってきた僕達は、元通りの生活に戻っていた――なんてこともなかった。

ルイズちゃんは後悔が尾を引いたまま、消沈する日々が続いていた。

キュルケは普段通りを装っているけど、ルイズちゃんへの干渉が以前よりも多くなっている。少しでも気を紛らわせたいと思ってのことなんだろうけど、改善は見られない。

ギーシュは今回の件で自身の無力を認識したらしく、魔法の訓練と戦闘技術を時間を見ては行っている。自分もスパー役に抜擢されたこともあって、彼と時間を共有することが多くなった。

時間を共有するようになった、と言えばタバサ先生もだ。

例の口止め料金という名のメタ知識の提供を、口裏合わせて彼女の部屋でしている。今のところ世界観を歪めない程度の内容を、即興のネタ込みで話しているけど、ネタが尽きたらどうなるんだろうと、今から不安で仕方がない。

 

そして、自分自身の事だけど――あれから、無手での戦闘訓練をやり始めた。

テンコマンドメンツが使えない状況でも戦えるようになりたいと言うのと、テンコマンドメンツに頼りすぎていた反省を兼ねてのものである。

舐めプと言われても仕方ない掌モーター回転フルスロットルな流れだけど、実際あんなデカイ武器に頼って、いざ使えない状況になってただの案山子になろうものなら、恥ずかしくて表を歩けなくなりそう。

シルファリオンならそこそこ小振りとはいえ、長剣であることに変わりはないし、エクスプロージョンで無理矢理空間を広げるにしても、地下とかでの戦闘だったら生き埋めもあり得る。

結局、メインウェポンが使えない時に咄嗟に使える武器っていうのは、己の身体なんだと結論付けたのだ。

 

だけど、格闘って言っても何をすればいいかさっぱりだ。

格闘で思いつくのがレットの竜人技だけど、あれって人間だと再現不可なのばかりなんですが……。

ていうか、気ってどうすれば出せるの?あの世界の気合は節理さえ覆せるし、凄いものだということは分かる。気合で何でも破壊する力から服を護るって、どういうことだってばよ。

他にも、RAVEの作者の続編である漫画の主人公も格闘で戦ってた気がするけど、あれもぶっちゃけ似たり寄ったりな気がする。

何だ。格闘するなら竜人になれと言うのか。無茶を申す。

 

とはいえ、やってみないことには始まらない。

確か新作の主人公の方は、魔法の分類に入ってたけど実際はただのステゴロだったし、頑張ればいけるかもしれない。

取り敢えず、これを期に新作の方を読んでみて、イメージを固めることから始めることにした。

……気が付けば、一日ログインしないで没頭していた。ログアウトしたのって確か森の中だから、黙ってルイズちゃんを放置していたことになる。

すぐにログインして止むに止まれぬ事情があったと言い訳をし、次からは気を付けるようにと軽い警告だけで済んだ。

懲りずに森の中で訓練再会。イメージを固めて、型を真似てひたすらに拳を振るう。

 

結果を申し上げると……何の成果も!!得られませんでした!!

いやー、スキルイメージアウトの難しさ嘗めてました。と言うか、僕の想像力が貧困なだけか。

テンコマンドメンツのお蔭であんなド派手な攻撃が出来ていただけであって、自分には向いてないのかなぁ、と少しショボくれた今日この頃。

まぁ、必殺技なんてポンポン思い浮かぶものじゃないよね。頭の上に電球浮かべて突然人外染みた動きで攻撃できるようになれば、誰も苦労しないよ。

とは言え、諦めるつもりはない。取り敢えず、今は基礎的な部分を磨くことに専念しよう。参考にするのは結局漫画だけどな!!

 

そんなこんなで日々を過ごしていると、アンリエッタに結婚することになりその巫女?役にルイズちゃんが抜擢されたとの報告が耳に入った。

んで、その祝詞を読む為に渡された『始祖の祈祷書』なるものは、何と始祖ブリミルが所持していたとされる大層な代物らしい。

でも、聞くところによるとこれって写本が各地にばら撒かれており、それらが原本だと言い張っている輩の争いが水面下で絶えないとのこと。

リアルでもあるあるな流れだね。そりゃあ、自分の持っているものが莫大な名誉や金になるお宝な可能性を秘めているとなれば、それも仕方ないこと。

それこそ、真実が何であれ世間的に本物だと証明されればそれで良いのだから楽でいい。倍率が高すぎて高望み出来ないのが欠点だけどね。

それにしても、巫女だの祈祷だの、まるで和風文化な言い回しだね。西洋文化なんだからそこら辺どうにかなんなかったんですかねぇ……。

 

それにしても、ルイズちゃんの心中は穏やかではないだろう。

各言う自分もそうだが、アンリエッタの結婚は十中八九政治的な要因で沸いてきた、大凡幸福とは言い難いものだ。

加えて、僕達は彼女が愛した青年の存在を知っている。生死不明ではあるが、状況を鑑みるにそれも望み薄。

そんな消沈した彼女に追い打ちをかけるように、今回の話だ。無体にも程がある。

それが王族としての使命だ~だの、漫画とかでは良くそんな返しをされているケースがあるが、その理屈は同じ境遇を経た人間しか言ってはいけないものだ。

愛する人を失い、その恋慕も冷めない間に政略結婚?そんな相手に対してそれが運命だ、とお気楽なことを抜かせる奴がいたら、思わず手が出てしまうかもしれない。

激情家ではないが、ウェールズの死を聞いた時の彼女の悲痛を堪えて毅然とする、そんな痛々しい表情を見ているからこそ、そんな安易な言葉に対して強く反応してしまう。

僕の胸中は置いておくとして、そんな幸せとは程遠い結婚に至る過程で、せめてルイズちゃんに祝詞を読んでもらい間近で祝福して欲しい――そんな切なる思いが、あの一冊の本に込められている気がした。

だからこそ、ルイズちゃんも事の重大さを理解し、必死に祝詞を考えている。

持って回った――良く言えば詩的な言い回しが伝統だと言うことから、どうにも四苦八苦している。

今こそ僕の厨二ノートを晒すときか……!!と思いもしたが、頼ってくる様子はない。

期待されていないだけか、一人でやり遂げたいと思っているからか。何にせよお節介すぎてもウザがられるだろうし、様子見だね。

 

 

 

 

 

 

羽根ペンを走らせる音が、静寂に響く。

部屋の中には、ただ黙々と一心不乱に目的に向かって突っ走る少女、ルイズが机上で祝詞の文章を適当な紙に書きあげては、クシャクシャに丸めて捨てていく。

此度の名誉ある巫女への抜擢ということもあり、学園側からもバックアップは多く受けている。そのひとつが、紙である。

製紙技術が発展途上なハルゲキニアにおいて、ただの試し書きで紙を消耗するのは如何に貴族とはいえ馬鹿にならない出費だ。

とは言え、頭の中で考えるだけでは閃くものも閃かない。呟き、文字に変換し、内容を実際に目で見てこそ、無駄や粗が正確に掴めるのであって、そこをケチっていては祝詞の出来も知れているというもの。

だから、その点に関して心配する要素はない、のだが――それでもゴミ箱に収まりきらない紙くずの数を思えば、彼女がどれだけ苦労しているかが窺える。

 

「あー……もう!!」

 

乱暴に紙を丸めて、鬱憤を吐き出すようにゴミ箱へと投げつけるも、満杯なソレを前に弾かれて寂しそうに床を転がるだけに終わる。

そんな虚しい光景を眺め、ルイズは顎を机に乗せる形で突っ伏す。

貴族らしからぬ下品な立ち居振る舞いであるが、最早それどころではない。

刻限が迫る中、彼女の内には一向にインスピレーションが沸いてこず、それが焦りとなって彼女をより一層混乱させる。

負のスパイラルに陥りながらも、それを打開する手段がない。――否、それに縋ることを拒んでいる。

 

「駄目だなぁ、私」

 

哀愁に満ちた呟きは、残響も残さず静かに消えていく。

ルイズが打開手段に縋ろうとしない理由。それは、意地の問題だった。

聞く人が聞けば、何を馬鹿なと思うだろう。

公的な――しかも、王族直々に賜った名誉ともなれば、万が一にも失敗など許されない。意地で失敗しようものなら、最早弁明の余地もない、それこそヴァリエール家そのものさえも揺るがす問題に発展するのも想像に難くない。

しかし、彼女のこれまでの境遇を知る者からすれば、強く言えない問題でもある。

今、彼女がこうして『始祖の祈祷書』を手元に置いておけるのは、ひとえに彼女の使い魔であるヴァルディのお蔭。

客観的に見ても、彼女が相応の活躍をして得られた功績が現状へと導いたとは言い難い。

使い魔の功績=主人の功績、と言う公式はあくまでも主人が上位であることが前提の、本来ならば揺らぐ筈の無い事象あってのもの。

ヴァルディは、誰がどう見てもイレギュラーな存在だ。エルフであることを抜きにしても、その戦闘能力や忠誠心は使い魔の枠を超えた、超常そのものと言っても差支えないパーフェクトな存在。

『ゼロのルイズ』と馬鹿にされ続けた彼女にとっての唯一の成功魔法であり、同時に身に余る結果を齎したそれは、降って沸いた奇跡そのものである。

まるで今までの不幸を上書きするように、ヴァルディは彼女の危機を救い、名誉を齎してくれた。

だけど、それが当然の結果だと割り切れる程傲慢でもなければ、堕落思想の持ち主でもない。

誰かに頼り続けて今があるだなんて、他の誰かが許しても彼女自身がそれを許容できないのだ。

だからせめて、魔法も戦いの強さも求められない今回ぐらいは、自分の力だけでやり遂げたい。そう考えるのは、決して許されないことではないだろう。

 

「……『火』は原初の光、生命の灯火にして立ちはだかる万象を焼き尽くす力の象徴……って、仮にもおめでたい場で力とかそんな物騒なこと書いていいのかしら……」

 

うんうん唸りながらも、思考放棄だけはしない。

絶対に頼らない、と意固地になるつもりはないが、それでもギリギリまでは自分の手で成し遂げたい。

アンリエッタがルイズに託した物の重さは、出来るならば誰かに背負って欲しくないと言う、切なる思いがあってこそ、妥協したくもなければ安易に誰かに頼ることもしない。

これぐらい出来なくて、ヴァルディの主に相応しくなれるものか。何度も声に出さず反芻し、時に弱気になった心を叱咤する。

ヴァルディも、ここ数日の間人気の無いところで特訓をしていると聞いていた。

「来たるべきに備えて、少しでも君の力になれるように」――そんな真っ直ぐな気持ちを受けてしまえば、頑張らない訳にはいかない。

彼は今でも努力を続けている。今でさえ一騎当千の実力を持ちながら、それでも足りないと飽くなき向上心で貪欲に実力を高めていく。他ならぬルイズの為に。

嬉しくない訳がない。恥も外聞も捨てて叫んでしまいたくなるぐらいに歓喜したかった。

そんな子供みたいな無様は晒せないと自制したが、感情の熱は数日過ぎてなお残ったまま燻っている。

 

「……よし、軽く休憩。今日も眠れなさそうね」

 

熱の発露を祝詞を書くことに集中させ、ルイズは今日も睡眠時間を削って没頭する。

辛くはあるが、程よく心地よい辛さではある。

無力に苛まれた結果ではなく、役に立てる可能性を追求するための過程で生み出された辛さでは、気の持ちようは断然違う。

ふと、窓の外を見る。

ヴァルディが訓練から帰ってくる様子を偶然見つけ、思わず微笑む。

今日はいつもよりも頑張れそう。些細な出来事が彼女の心を解し、結果としてその日彼女は、満足のいく成果を出す事が出来たのだった。





二年越しの投稿、もう誰も待ってないんだよなぁ……誰得だよ。
おせーよホセ、と思ったそこの貴方!!いつから次回からまともに更新すると錯覚していた……?
ぶっちゃけ気まぐれで投稿したようなものなので(ネタはあるよ)、今月週間一日しか休みないのも含めて更新速度には期待しないで、他の投稿している奴もあるし。
とはいえ、温めていただけあって書く時間さえあれば速いかも(無駄に期待させる人間の屑)

それはそれとして、前話より半分以下の文章量なんですが……
ウルセェ!(ドン!)一日で描いたらこんなもんだよ!!エブリディスランプシキちゃん嘗めんな!!
……疲れとか諸々のせいでテンションおかしい。もう寝る!終わり!閉廷!以上!皆解散!

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