最近、寒いね!
では、どうぞ( *・ω・)ノ
アルフside
雨が勢いよく降り注ぐ中、紅の狼少女アルフは一人険しい表情を浮かべながら様子を見ていた。
彼女の主である金髪の少女フェイトがあることを行うためだ。
二人は海の中にあると思われるジュエルシードの探索に来ていたのだ。
「アルカス・クルタス・エイギアス……きらめきたる
空に展開された金色の魔法陣の上に立つ一人の少女の詠唱が響く。
魔法陣の周囲ではバチバチと電流が迸る。
(ジュエルシードはたぶんこのへんの海の中…)
アルフは周囲を見回す。
彼女の視線には荒々しく流れる海が映っている。
(正確な位置は掴めないから海に魔力流を撃ち込んで強制発動させて捕まえる…。そのプランは間違ってないけど…でもフェイト……!)
アルフは今もなお詠唱を続ける少女に視線を向ける。
「…打つは
詠唱が終わったフェイトは閉じていた目をゆっくりと開く。そしてバルディッシュをゆっくりと掲げ…勢いよく振り下ろした。
「ハァアアアッ!」
《Thunder Fall》
ドドドドドドッ!
そのとき空にできている雷雲から海面に向けて複数の雷が放たれる。幾重にも轟音が響き、その破壊力には凄まじいものがあった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
シン…
先程とは違い、周囲を無音が包む。
「はぁ…はぁ…」
しかし程なくして…
ドドドドドン!!!!
海の中から巨大な七つの雷を纏った竜巻が姿を現した
「やった…!」
「見つけた…7つのジュエルシード……!はぁ…はぁ…はぁ…」
アルフは思わずガッツポーズをし、フェイトも少し笑う。
(でも…)
アルフはフェイトの様子を再度見る。
(こんだけの魔力を撃ち込んで7つ全部を封印して…こんなのフェイトの魔力でも……絶対に限界越えだ……)
アルフが心配するのも無理はない。
フェイトが使用した天候操作魔法サンダーフォールは魔力の消費が激しく何度も行える魔法ではないのだ。
「アルフ……空間結界と…サポートを…お願い…」
「う、うん……。まかせといて!」
(誰が来ようが何が起きようが……あたしが絶対守ってやる…!!)
アルフside end
◆◆◆
アースラside
俺達はアースラのメインルームまで走る。
そして目的の扉が見えてきたので三人揃って勢いよく入った。
「フェイトちゃん!」
メインルームに入り、俺達の最初に映った映像は七つの竜巻に果敢に挑むフェイトとアルフの姿だった。
「この子たちなんてコトを…!」
エイミィが青白い表情を浮かべる。
彼女の表情も分かる気がする。
ジュエルシードは暴走すれば1つだけでも世界を滅ぼせるほどの威力を出す危険物だ。それを7つも発動させたともなれば、フェイトとアルフがいかに無茶なことをしているかが分かる。
「なんとも……無茶をする子ね」
「無謀ですね……間違いなく自滅します。あれは個人が出せる魔力の限界を超えている…」
最初からモニターを見ていたリンディさんとクロノが発言する。やはり管理局の人間から見ても無茶なことのようだ。
「あの…わたし急いで現場に………!」
なのはが必死な声で話しかける。だがそれはある一人の執務官によって即座に却下された。
「その必要はない…」
「え?」
クロノの発言の意味が理解できなかったのか、なのはは首を傾げる。
「放っておけば、あの子は自滅する。たとえ自滅しなかったとしても力を使い果たしたところで叩く」
クロノの非情な言葉に、なのはは思わず後ずさる。だが一瞬、クロノが苦虫を噛み潰したような表情になったのを俺は見逃さなかった。口ではああ言っているが彼とて好きでそんな判断をしたわけではなく、苦渋の末にした決断だということはたやすく察することができた。
「いまのうちに捕獲の準備を」
「了解」
クロノは捕獲の準備を始める。
「でも……!」
なのはがそれでもクロノに噛みつく。そのそばで俺はモニターをじっと見ていた。
そこには竜巻と化した水に吹き飛ばされたフェイトがいた。すぐに体勢を立て直し、空中を駆け、バルディッシュをサイズフォームに変形させて斬りかかる。しかし切断することは叶わず、吹き飛ばされた。一瞬しか見えなかったが魔力刃の長さがいつもに比べて半分ほどしかなかった。どうやらここにきて魔力不足に陥ったようだ。
その傍らではアルフが悲痛な叫び声をあげてフェイトの名を呼んでいた。
「残酷に見えるかもしれないけど…これが最善」
「でも…………!」
納得できないなのはを今度はリンディさんが抑えるように話す。
リンディさんの言っていることも一理ある。まだ幼いなのはや、ユーノには分からないかもしれないが…組織とはそういうものだ。
組織に所属するということにおいて、指示を受けて行動するということはそこに所属する人間の安全を守るために必要なことだ。
ある組織に所属する一人の人間が命令違反を犯したとしよう。
その命令違反によって組織の統制に乱れが生じる。その乱れによって一人一人に対する負担は本来より大きくなり、他の仲間にその皺寄せがいってしまうのだ。
一人からできた乱れはさらに大きくなり、一人、また一人と、そこから加速度的に負担が増大することになる。小さな綻びは徐々に広がり、やがてそれは小さな穴となり、大きな穴となる。そしていつしか……内側から崩壊してしまうのだ。
話を戻そうか…。
あの魔力の渦と化している七つの竜巻に飛び込むのは、あまりにもリスクが高すぎる。あの膨大な魔力を抑え、封印しつつ、フェイトとアルフの二人を捕獲せねばならないのだ。
あの二人の実力の高さはここに所属している局員ならば…誰もが知っている。
ではどうすればよいか?
簡単な話だ。
フェイトたちにジュエルシードの魔力を消耗させるか、又は封印させ、そのあとに疲労困憊の彼女たちを捕縛し、ジュエルシードを横から掠めとればいい。
管理局が考えてるとすれば大体こんなところだろう。
俺はモニターから視線を外し、隣のなのはを見た。
なのはは顔を俯かせ、小さな手を思いっきり握り締め微かに震わせていた。
この子は聡明な子だ。
クロノやリンディさんの発言の意味を理解しているのだろう。…納得はしていないみたいだが。
そこでなのはの視線が俺へと向いた。
なのはの目元には涙が溜まり、今にも泣きそうな表情となっていた。なのはだけでなくユーノも何か言いたそうな視線を俺へと向けている。
はぁ…
そんな泣きそうな表情をされたら何もしない訳にいかないだろう…。
俺は二人に近付きなのはとユーノの頭を軽く撫でる。
「ヒエンくん?/兄さん?」
「ここは俺に任せろ。なのはとユーノは準備だけしといてくれ。それに安心しろ。
「「え?」」
俺はなのはから流れる涙を右手で払いながら安心させるように優しく笑いかける。
そして…
「え!?この魔力反応!?」
するとエイミィがモニターとこちらを何度も見る。正確には……
「どうしたエイミィ!?」
「フェイトちゃんたちの近くから…その……ヒエンくんの魔力反応が…」
「な、なんだと!?」
全員があるモニターへと視線を移す。そこには海へと吹き飛ばされたはずのフェイトを抱きかかえている
そして全員の視線がこちらへと向く。
なのはとユーノもびっくりしているのかモニターと俺の方を何度もキョロキョロと見ている。
どうやら
「どういうことか説明してもらうぞヒエン」
じゃあ……俺は俺で…自分の仕事をするとしますか。
アースラside end
◆◆◆
ヒエンside
俺はアースラから転送魔法を使い、上空に姿を現した……と同時にセットアップを済ませる。
今頃、
まぁ、バレた後が怖いがやってしまったものは仕方がない。それに分身がそれっぽいことを言ってくれることを期待しておこう!!
俺は落下もといスカイダイビングをしながら猛スピードで現場へと向かう。
遥か下では黒い雷雲が広がっている。その下ではフェイトとアルフが今でもジュエルシードを封印するため戦っているのだろう。
「じゃあさっさと助けにいこうか!!」
俺は雷雲を勢いよく抜けるため、炎の翼をはためかせスピードをあげた。
そして暗雲を抜けると、凄まじい風の吹く音が聞こえてきた。音のする方へ視線を向けると七つの竜巻があった。そこには吹き飛ばされ、海面へと勢いよく飛ばされているフェイトの姿があった。
俺は即座に高速移動魔法ソニックムーブで、フェイトの後ろに回り込む。そして吹き飛んでくる彼女を無事にキャッチすることに成功した。
腕の中にいるフェイトに目を向けると気を失っていた。しばらく待つこと数秒後…フェイトが目を覚ました。そして俺の存在に気付き、目を見開いた。
「どう…して…ここに?」
「決まってるだろ。助けにきたんだ」
俺の発言に驚いたのかフェイトは未だに呆然としている。
そこで俺はある魔力反応に気付く。
(来たか)
俺はある方向を指す。フェイトは俺の指す先に視線を向けると驚いた表情となる。
その視線の先には…
セットアップを済ませ、白いバリアジャケットを身に纏ったなのはがそこにいた。
暗雲に覆われていた空の一部から光が降り注ぐ。その背景と重なり、なのはの降りてくるその姿はまるで天使のようであった。
ヒエンside end
◆◆◆
アースラside
時刻は数分前までに遡る…
「さて、どういうことか説明してもらおうか?」
こちらを厳しい表情で見ている二人…クロノとリンディさんに俺は顔を向ける。
二人の言いたいことは分かる。だが今は時間がないので余計な事を言っている暇はない。
「クロノ、リンディさん言いたいことがあるのは分かります。だけど今は一分一秒が惜しい。なので単刀直入に言います。いますぐなのはとユーノをフェイトの所へ転送して下さい」
俺の発言に真っ先に食いかかったのはクロノだった。
「何を言っている?さっきも言ったはずだ。許可できないと」
「ああ、分かってる。俺も考えなしに言っているわけじゃない。ちゃんと根拠があって言っている」
「どういうことかしら?」
俺の発言が気になったのかリンディさんが食いついた。
「フェイトたちが疲弊したところを捕縛してジュエルシードも回収する…つもりなんでしょうけど今のままじゃ上手くいきません。むしろ……それ以上に悪化するでしょう」
「どういうことだ?ジュエルシードは今も魔力を使いあの二人を攻撃している。そのうち魔力は底をつくと思うが?」
「ああ、普通ならそうだろう。だがジュエルシードは今7つもあるんだ。この意味が分かるかクロノ?」
俺の発言にクロノは顎に手を当て考える。そしてハッとした表情となり俺の顔を勢いよく見る。
「待て!?まさか!?」
「そうだ。ジュエルシードはエネルギー結晶体のロストロギア。1つでも次元震を起こす危険性があるものだ。一度起動すればそれは段階を追うごとに強くなり、その力を増していく。そんな代物が今7つもあるんだ。それもすぐ近くに。それに…気付いてるか?
俺の発言を聞いていたアースラ局員は顔を青白くさせる。
「ほ、ほんとだ!ジュエルシードが徐々にだけど中心に集まっていってる!?」
エイミィが解析したジュエルシードの映像をモニターに映す。モニターにはジュエルシードが移動しているであろうデータが映っていた。
俺はチャンスとばかりにたたみかける。
「この意味が分かるか?このまま放置しておけば……下手をすれば……ジュエルシード同士が融合してしまうかもしれないんだ。理解できたか?俺達には……時間がないんだ!!」
俺は怒鳴るような声をあげる。
その声を受けて驚いたのか、側にいたなのはとユーノがビクリと肩をあげる。少し悪いなとは思いつつも俺はそれに気付かないフリをし、クロノとリンディさんを睨み付ける。
リンディさんは一度目を閉じ……そして再び静かに開けた。
「貴方の言いたいことは分かりました。これは四の五の言っている場合ではありませんね。クロノ…」
「了解です艦長」
クロノは俺達を一瞥する。
「なのは、ユーノ」
「「は、はい!」」
「君達を今から結界内へと転送する。転送後、彼女達と共闘しジュエルシードを沈静化させてくれ。その後…二人の確保。こちらも戦力が整い次第、人員を向かわせる」
「「はい!!」」
なのはとユーノが勢いよく返事をする。そこに様子を見ていたリンディさんが声をかけてきた。
「ヒエンくん?」
「なんでしょう?」
「貴方たちなら大丈夫だとは思うけど……万が一戦力が足りなかった場合、どうするつもり?」
「そのときはクロノに協力してもらいます。それでも足りなければ局員の人たちを派遣してください」
「分かりました。あと一つ。今の貴方は一体?」
「ああ。これは分身ってやつです。外にいるのが俺の本体です」
「そう…なの」
「まぁ、これは俺のオリジナル魔法です。じゃあ先に行ってます!」
そして俺はボンと消えた。
「あ、ちょっとま……いってしまったわね。はぁ…なのはちゃん、ユーノくん?」
「「はい」」
「まずはヒエン君と合流してジュエルシードの封印を最優先にね。あとは……できればでいいからあのがんばり屋さんの女の子二人を連れて帰ってきてね?」
「はい。分かりました」
「了解です」
「それとヒエンくんに伝えておいて。帰ったらお説教よ?って」
「わ、わかりましたー!」
「い、いってきまーす!」
リンディのにこやかすぎる笑顔を受けてなのはとユーノの二人は転送装置へと入っていった。
そして転送装置で上空へと送られたなのははさっそくレイジングハートを構える。
「いくよレイジングハート……!…風は空に星は天に…輝く光はこの腕に…不屈の
《Standby ready.》
なのはは眩い光を放ちながらセットアップを完了させる。
そして視界に炎の少年と金髪の少女を捉えると一直線に飛んでいくのだった。
アースラside end
◆◆◆
ヒエンside
俺は抱きかかえているフェイトをそっと下ろす。
「立てるか?」
「うん…」
フェイトがコクリと頷き、サッと浮き上がる。まだ飛べるだけの魔力は残っているようだ。
そしてなのはがこちらへ近付こうとしたとき…
「がぁああああ!フェイトのジャマを……するなぁあああ!!」
海水の竜巻に拘束されていたアルフが無理やり拘束を打ち破り、なのはへと殴りかかった。
しかし…
ガギィィイインッ!!
突如現れたユーノによってアルフの攻撃は防がれた。
「違う…!ボク達は君達と戦いに来たんじゃない…!」
「ユーノくん…!」
ここになのは、ユーノ、フェイト、アルフの四人が揃った。
だがまだ少し戸惑っているフェイトと、直情的で焦っているアルフは二人に任せて……俺は時間稼ぎをしないとな。
そして俺が一人動き出そうとしていると…
『ヒエン!』
ん?
『クロノか?』
『どうするつもりだ?二人とも話を聞けるような状態じゃないぞ?』
『大丈夫だ。なのはとユーノに任せておけば。フェイトもアルフも今の状況が分からないほどバカじゃない。ちゃんと状況を理解して、おのずと自分のやるべきことが分かるはずだ』
そして俺は一人離れ、七つの竜巻に向き合う。
「零地点突破・ファーストエディション」
周囲を冷気が漂う。
相手は勢いのある海水の竜巻…
ただのバインドじゃすぐにちぎれるのがオチだろう。
ならば…
その勢いをなくせばいい。
「
パキパキパキ
俺の前方にオレンジの魔法陣が現れる。そこから勢いよく青色…いや蒼白の鎖が現れ七つの竜巻を拘束する。そして一気に凍結させた。
いつも使う
言うなれば剛の氷である。
だが俺一人で七つの竜巻もとい、7個のジュエルシードの動きを止めるのは流石にきつい。
「ボク達は争っている場合じゃないんだ!まずはジュエルシードを停止させないと…マズいことになる!」
「うるさい!あたし達の邪魔をするな!」
「このままジュエルシードを放っておいたら融合して手のつけられない状態になるかもしれない!今は兄さんが何とか食い止めてくれてる!でもいつまで持つかは分からない!だからアレを止めるんだ…!ボク達はなのは達のサポートを…!」
俺の後ろではユーノとアルフが言い争っている。
うおおおおお!
なんでもいいから早くしてくれませんかねぇ!!正直ギリギリなんですけどおぉぉぉ!!!!
後ろは若干シリアスであるのに対して…俺の内心はシリアルである。
そのとき後ろにいるユーノから緑色の魔法陣が現れそこから七つの鎖が現れ、竜巻を拘束した。
ナイスユーノ!
少し負担が軽くなった!!
すると…
ババッ‼
さらに負担が軽くなった。
竜巻に目を向けるとオレンジ色の鎖が新たに七本増えていた。どうやらアルフも協力してくれているようだ。
つーか協力するならもう少し早く協力してほしかった。このツンデレめ!
あとはあの二人か。
さて、もう少し時間稼ぎがんばるとしますかね!!
そして俺は魔法陣にさらに魔力を込めるのだった。
ヒエンside end
◆◆◆
なのはside
その頃…
なのははフェイトへと歩み寄っていた。
「フェイトちゃん………」
なのははフェイトに呼び掛ける。
「手伝って……フェイトちゃん。いっしょにジュエルシードを止めよう」
「………」
フェイトはバルディッシュをギュッと握りしめる。それは何かに悩んでいるようにも見えた。
するとなのははレイジングハートをバルディッシュへとソッと近付ける。
《Divide energy.》
「…………!」
フェイトの中にバルディッシュを介して何か温かなものが送られてくる。それはなのはの魔力であった。
枯渇寸前だったフェイトの魔力が回復したのだ。
《Power charge.Supply complete.》
「二人できっちり……はんぶんこ」
なのははそっと笑いかける。
「今はヒエンくんにユーノくん、アルフさんが止めてくれてる……だからいまのうち!二人でせーので一気に封印!」
そしてなのははフェイトを一瞥すると空高く飛び上がり、まとめて砲撃ができる距離にまで上昇する。
《Cannon mode.》
そんな中、なのはは己の気持ちと向き合っていた。
(ああ…そうか…)
思い浮かぶのは過去の自分…
(ひとりぼっちで寂しい時に……一番してほしかった事は……)
一人で泣きながら過ごした寂しい時間…
(大丈夫?って聞いてもらう事でも優しくしてもらう事でもなくて…)
それでも家族に心配をかけたくなくて我慢していた…
(…なんだか…やっと分かった。フェイトちゃんに伝えたい事…フェイトちゃんと話したい事)
そんな寂しくて…辛かった時間があった。
「バルディッシュ…?」
《Grave form setup.》
そのときバルディッシュが封印モードに切り替わる。しかしフェイト自身はバルディッシュにそんな指示を出してはいない。
つまり…
「バルディッシュが自分の意思で…?」
バルディッシュ自身が自分で判断し、ここは共闘すべきだと主のために判断したのだ。
フェイトはバルディッシュが自分の事を気遣ってくれたことが嬉しかった。普段はあまり話さない無口でクールなデバイスだが、その実…主思いの優しいデバイスなのだ。
「バルディッシュ……」
フェイトはバルディッシュを優しく抱く。今は手に持つデバイスのひんやりとした冷たさが少し心地よかった。
そしてフェイトはなのはに視線を向ける。その視線を受け取ったなのはは優しく笑いかけた。
「いくよレイジングハート!ディバインバスターフルパワー!一発で封印いけるよね!?」
《Of course my master. 》
なのははピンク色の魔法陣の上に立ちレイジングハートを前方に構え…
フェイトは金色の魔法陣の上に立ちバルディッシュを上方に構える。
そして両者共に魔力をチャージする。
「せぇえーのっ!!」
レイジングハートの先端にピンク色の魔力が収束され…
バルディッシュの回りには金色のスフィアが配置される。
「ディバイーーーーン……!!」
「サンダー………!」
そして
「バスターーーーーっっ!!!」
「レイジッッッ!!」
収束されたそれぞれのエネルギーが放たれた。
なのはside end
◆◆◆
ヒエンside
「来たっ!!」
俺たちがそれぞれの拘束魔法で竜巻の動きを阻害していると凄まじい魔力エネルギーを感知した。
そして一斉に七つの竜巻に直撃した。
ドゴオオオオォォォッッッ!!
凄まじい威力の砲撃の余波で波が物凄い渦を作っている。
え…
これ津波とか起こらないよね?((((;゜Д゜)))
つーかこの二人が力を合わせると7個のジュエルシードを一気に封印できるのね…。
ははは…
すげぇわー
これしたのたった二人の九歳の女の子なんだぜ…
なのはは自分をよく平凡な小学三年生と言っているが今更ながら思う。
平凡ってなんだっけ?
俺がある意味で戦慄している間…
7個のジュエルシードを中心に少女達は向き合っていた。なのはがフェイトに向けて話している。恐らく自分の気持ちを伝えているのだろう。
そんな中、俺は二人に向けて飛んでくるであろう…
(そろそろか…)
そして…
『ガゥガゥ!』
心の中にいる相棒から合図があった。
見ると強烈な雷の砲撃が二人に向けて放たれていた。それを見た瞬間、俺はすぐ様飛び出していた。
ヒエンside end
◆◆◆
アースラside
その頃アースラでは、先ほどのダブル砲撃をクルー全員で見ていた。
「すごい…ジュエルシード7個一発で完全封印!」
「こんな……デタラメな……」
クロノが頭を抑えつつ…嘆息する。
「でも凄いわ」
「そう……ですね」
クロノはこの偉業を成し遂げた小さな少女二人が映っているモニターに視線を向ける。
少女達は互いに向き合っていた。
(さて、僕も動き出さないとな…)
そしてクロノも己のデバイスを取りだし、動き出そうとした瞬間…
ビーッビーッビーッ
突如、アースラ内を警報が鳴り響く。
「次元干渉…!?別次元から本艦・および戦闘空域に向けて高次元魔力来ます…あ…あと6秒!?」
ドゴゴゴゴ…
ズドオォンッッッ!!
「うわあああぁぁ!!」
「きゃあああぁぁ!!」
強烈な衝撃、揺れがアースラを襲う。
「これは一体…」
「これがクロノ君が言っていた…?」
だがそんな中、冷静な者もいた。
「皆落ち着け!すぐにアースラのシールドの強化!その後、艦内の異常がないかの確認!そして先ほどの攻撃の捕捉!急げ!!」
クロノである。
「エイミィ!僕も出る!あとはたのんだぞ!!」
「まっかせて~」
エイミィがサムズアップを決める。クロノはそれを微笑で返す。
そして転送ゲートへと向かった。
もうこの二人末永く爆発すればいいと思う。
アースラside end
◆◆◆
なのはside
ジュエルシードを封印したなのはは、フェイトと向き合っていた。
そして決めていた。
(今なら…分かる気がする)
自分の気持ちを伝えようと。
(同じ気持ちを…………わけあえること)
この寂しい表情を浮かべる少女に。
(寂しい気持ちも…悲しい気持ちも……はんぶんこに…できること)
伝えようと決めていた。
(わたし……この子とわけあいたいんだ……)
「フェイトちゃんに言いたいこと……やっとまとまったんだ」
なのはは笑顔を浮かべる。
「わたしはフェイトちゃんといろんなことを話し合って……伝え会いたい……」
そして伝える。
考えて考えて考え抜いて……やっと分かった自分の本当の気持ちを……
「友達に…なりたいんだ……」
だが…
そんな優しい少女の気持ちを嘲笑うかのように…
突如、天高くから雷が降り注いだ。
ドオオオォォォォンッ!!!!
「え?」
なのはは突然、響いてきた爆発音にキョトンとする。
しかしフェイトは違った。
感じたことのある…いやいつも身近に感じている魔力の波動に困惑を浮かべていた。
「か……母さん……!?」
「フェイトちゃん…?」
しかしそれがいけなかったのだろう。
迫り来る雷にフェイトもなのはも気付くことができなかった。
ドオオオォォォォンッ!
そして二人の視界が真っ白になる。あまりの眩しさに二人は思わず目を閉じた。そして直後に迫り来るであろう痛みに身構えた。
「「………」」
しかし…
いつまでたっても
痛みどころか衝撃すらこなかった。
二人は恐る恐る目を開ける。
そして納得した。
「
そこには……
「
いつだって…どんなときだって…自分達を助けにきてくれた…
一人の少年が守ってくれていたのだから…。
なのはside end
◆◆◆
ヒエンside
俺は雷の高次元魔力砲が飛んで来た瞬間、ソニックムーブでなのはとフェイトの前に躍り出た。
なのはとフェイトは余りの眩しさに目を閉じているようだった。
そして雷が目前にまで迫る。
並の防御魔法じゃすぐに破壊される。
なら…防御に優れてるあのモードを使う!!
「
俺は必要な
「
俺は黒衣のマントを纏い、咄嗟に二人をマントの中に入れるように抱き寄せた。
そしてその直後……
凄まじい威力の雷が俺を襲った。
「ぐおっ!?」
余りの攻撃の重さに思わず苦悶の声が出る。
その衝撃の強さは、以前戦いダメージを受けたことのある白い巨人戦以上であった。余りの辛さに膝を降りそうになる。
だが…
俺は自分の腕の中で、震えている小さな少女二人をチラリと見る。
その姿を見た瞬間、崩れそうだった体に再び力が戻る。
俺がここで崩れたら…この雷が二人を襲う。
そんなこと…させるもんか。
この二人が一体何をした?
なぜこんな理不尽な攻撃を受けなきゃならない?
俺はこの攻撃を繰り出してきているであろう黒幕に怒りを覚えた。知識ではこの攻撃が来ることはあらかじめ知っていた。
だが受けてみて分かった。
この攻撃には一切の躊躇がない。
確実に魔力ダメージで気絶するほどの威力がある。
「お……おおおおおおおおお!!!!!」
そんな理不尽な攻撃に負けてはならない。
俺は声をあげながら攻撃に耐える。そして…決意した。
(絶対に…一発ぶん殴る!!)
この騒動の黒幕…プレシア・テスタロッサに一発ぶちこんでやるということを。
しかし…ここで予想外なことが起こる。
ゴゴゴゴゴゴ……………
突如、俺達の前に黒い穴が現れた。
例えるなら…ワームホールみたいなものだろうか。なんの前触れもなく俺達の前に突然現れたのだ。
それを見た瞬間、嫌な気配を感じた。
咄嗟に二人を突き飛ばそうと考えたが、今はまだ攻撃に耐えている最中で動けない。突き飛ばしてしまえば…凄まじい魔力ダメージがなのはとフェイトを襲ってしまう。
そして黒い穴は徐々に広がり…俺たちを吸い込もうとしていた。
超直感が反応する。
【あれに触れてはダメだ】と。
だが今の俺にこれを防ぐ術はなかった。せめてもの抵抗として俺は抱き寄せている二人を更に強く抱き寄せた。
そして俺達は……
黒い穴へと吸い込まれてしまった…。
次はいよいよコラボレーションだ!!
では、また(・∀・)ノ