大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

28日に水樹奈々さんのライブいってきやす。

楽しみじゃウラアーΣ(゜Д゜)

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第四十九話 おいでませさざなみ寮 前編

カチカチカチカチ……

 

時刻はお昼の13時を指していた。

 

とある洋室の一室で一人の少年がぐっすりと眠っていた。その寝ている少年の側では、二匹の小動物が彼に寄り添うように添い寝をしていた。

 

すると眠っている少年の瞼(まぶた)がピクリと動く。

 

少年が目を覚まそうとしていた。

 

 

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

「うっ……」

 

うっすらと目が開く。

 

それと同時に意識が浮上する。

 

目が開いたことによって自分は眠っていたのだとおぼろげながらも理解する。

 

そのままボーッと天井を見上げていると意識が段々と覚醒してくるのが自覚できた。

 

そしてガバッと勢い良く起きあがる。

 

「こ、ここは…」

 

俺はゆっくりと周囲を見回す。

ある部屋の一室のようだ。そこのベッドで俺は寝かされていた。

 

「ガゥ…」

 

「くー…」

 

すると側には、寝ている相棒と久遠がいた。二匹仲良く寄り添うように寝ていた。

 

その光景に和んだ俺が、枕の近くに置いてあった自分のケータイで写メを撮ったのは悪くない。

 

というか二匹ともいつの間に仲良くなったのやら…。

 

そして俺は寝ている二匹を見てふと思い出す。

 

そういえば俺…どうして眠ってたんだ?

 

俺はおぼろげになっている記憶を無理矢理叩き起こす。

 

えーと…確か昨日那美さんをさざなみ寮まで送りにきて…それから…そうだ。

 

いきなり姉の薫さんが現れて…えーと…確か俺と那美さんの関係を誤解して急に木刀向けてきて……それで誤解をとこうとして……戦って………それで……

 

あー、気絶したんだった。

 

俺は昨晩に起こったことを思い出した。ということはここはさざなみ寮の一室なのだろう。あの後、気絶した俺を住人の誰かが運んでくれたらしい。

 

俺は自分のケータイで時間を確認する。時刻は13時を回ったところだった。

 

しかし…困ったな。

これからどうするか…。

 

側にいる二匹を起こそうにも、気持ち良さそうに寝ているので起こすのもどこかはばかれる。

 

俺ももう一度、二度寝させてもらおうかと思ったが目がパッチリと冴えてきたので眠れそうにない。だからといって知らない所を見回るという勇気もない。見回っている所にここの寮の住人とバッタリ出くわしてしまったら、正直気まずいのだ。

 

度胸がないとか言うんじゃないぞ?

俺の感性は至って普通なんだぞこのやろう。

 

そうして俺がベッドの上でどうしようか考えていると、部屋のドアがスッと開いた。

 

「あ、ヒエン君起きたんだ。良かった…」

 

そこには私服姿の那美さんがいた。オレンジの長袖に、ベージュのスカートを着ていた。落ち着いた那美さんらしいファッションであった。

 

「お腹すいてない?今から皆でお昼ご飯食べるんだけど」

 

「あー…」

 

俺がそれに答えようとすると…

 

 

 

グー

 

 

 

タイミングよく腹の虫がなった。

 

本当タイミングよすぎるぞコンチクショー!

 

おかげでクスクスと笑われた。

 

「お、お願いします」

 

「じゃ、食べにいこっか」

 

「うん」

 

そして俺は立ち上がろうとする。しかしうまく力が入らずフラリとよろけてしまう。それを見た那美さんがすかさず俺を支えてくれた。

 

「大丈夫!?」

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

するとそんな俺達のやりとりで目が覚めたのか眠っていた二匹が目を覚ました。

 

「ガゥ………ガウ!」

 

「くぅ………くー!」

 

二匹は伸びをし、キョロキョロと辺りを見回す。そして俺を視界に捉えたのか二匹とも勢いよく両肩にまで上ってきた。

 

右肩に相棒、左肩に久遠である。

 

やばい。

チョー癒されるんですけど(゜▽゜)

 

「ヒッツも久遠も、ヒエン君のこと心配してたんだよ」

 

「そうか。心配かけて悪かった」

 

俺は二匹の頭を軽く撫でる。

 

「ガゥ♪」

 

「くぅー♪」

 

いいってことよ!みたいなセリフが二匹から返ってきた気がする。

 

「それじゃいこっか?」

 

「うん」

 

そして俺達は移動を開始した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

さざなみ寮の中は意外と広かった。俺は歩きながら廊下をキョロキョロと見回す。前世のパソコンゲームでやった通りのほぼ配置通りだった。少し感動しながら歩いているとすぐに食堂の前に着いた。

 

そして中に入ると…

 

 

「本当にすまなかった!!」

 

 

俺の姿を確認した薫さんが開口一番謝罪をしてきた………土下座で。

 

おおう。

どうすりゃいいんだ。

恐らくいや、十中八九、昨日のことを謝っているのだろうが…

 

土下座なんてすることはあっても、されたことがないからどう対応していいかわかんねぇー!!

 

と困っている俺に気付いたのか那美さんが助け船を出してくれた。

 

「もう薫ちゃん!今からお昼ご飯なのにそんなことしたらヒエン君が困るでしょ!?」

 

「し、しかし那美…ウチは彼を木刀で気絶させてしまったんだぞ?謝罪しなければ…」

 

「い、いえもう十分ですから!だからもう土下座なんてやめて顔を上げてください!」

 

そんなこの世の終わりみたいな顔されたら誰だって許すしかないでしょうよ!?

正直もうお腹いっぱいです!!

 

「君は…こんなウチを……許してくれるというのか?」

 

「はい。許します!許しますから顔を上げてください!!」

 

ああ、この人めんどくせええぇぇ!!シスコンモードになった恭也君張りにチョーめんどくせえぇ!!

 

「ありがとう!君は良いやつだな!暴漢なんて言って悪かった!!」

 

「は、はぁ」

 

薫さんは俺の手を取り、ブンブンとふる。少し痛いです。

 

うん。

とりあえず悪い人ではないのは分かった。ただ空回りすることが多いだけなんだろう。たぶん。

 

と、そんな俺達の様子が可笑しかったのか他にそろっていたさざなみ寮の面々がクスクスと笑っていた。

 

そして俺は挨拶をしようと向き合ったとき…驚愕した。

 

「槙原…院長先生?」

 

「久しぶりね少年君♪」

 

そこには、ユーノの件でお世話になった動物病院の院長先生がいたのだ。そしてあのとき、この人のことを忘れていた俺は今になってようやくその事を思い出した。

 

こ、この人、槙原愛さんじゃねえかあああぁぁぁ!!!

 

槙原愛(まきはらあい)さん。

 

さざなみ寮オーナーであり、槙原動物病院の院長先生。おっとりしており穏やかでやさしい性格の人だ。

 

確か時系列的には『とらいあんぐるハート3』直前に念願であった動物病院を開院したはずだ。ということは開院したのは約1年前か。そして彼女ももちろん『とらいあんぐるハート2』のヒロインの一人である。

 

忘れてたのは仕方ない。

仕方ないったら仕方ない。

 

うーん

今度から困ったときは相棒に聞いてみればいいか?

俺と一心同体なのだから俺が忘れてしまった記憶の情報も持ってるんじゃないだろうか?

そこらへんどうなの相棒?

 

『ガゥガゥ』

 

覚えてるだと!?

言ってくれれば検索するそうな。

あざーす!多分何度かお世話になることがあると思います。

 

「二人は知り合いなのかい?」

 

190cmはあろうかという男性が俺と愛さんを交互に見る。はい。思いっきり『とらいあんぐるハート2』の主人公さんです。本当にありがとうございます。

 

「ええ。彼…少年君が私の病院に傷ついたフェレットを運んできたの~。そういえばあのフェレット君は元気?」

 

「は、はい。おかげさまで、元気に過ごしてます」

 

言っていなかったが俺はこの愛さんとは二度会っている。一度目は言わずもがななのは、アリサ、すずかの三人組と動物病院に行った日である。

 

そして二度目はあの最初のジュエルシードの戦いから翌日…

 

俺は一人、動物病院へと足を運んでいた。ユーノのことを報告にいくためだ。お世話になったのだから報告に行くのは当たり前だ。訪れたら案の定、院長先生、愛さんからかなり謝られた。

 

思った通り、その時の愛さんは罪悪感を感じており俺はそれを払拭するため彼女に伝えた。昨夜、心配になり動物病院を訪れ逃げ出したフェレットを保護したという形で。

 

すると愛さんは一瞬ポカンとした表情から安心した表情へと変わった。

 

その顔を見たとき、来て良かったと感じたのを覚えている。それ以来俺は動物病院を訪れることもなく、愛さんと一度も会っていなかったのだ。

 

「そう。あのフェレット君の経過を見たいから、また時間があるときにでも病院にきてね?」

 

「はい。あの子達も一緒にまたいきますね」

 

すまんユーノ!

人間だけどもう一度フェレットになって病院いくぞ!!

 

すると話が一段落したのを見計らってか主人公さんが声をかけてきた。

 

「じゃあそろそろ座ろっか。君もお腹すいてるでしょ?」

 

「は、はい」

 

俺は空いてる席に座ろうとするが…

 

「ヒエン君はここにどうぞ?」

 

那美さんが三人席の真ん中をサッと引いた。

 

いや…あの引いてくれるのはいいんですけどね?

 

なんで真ん中!?

 

とりあえず俺は進められるがまま座る。俺の肩の上にいる相棒と久遠は床にポンと着地した。

 

そして俺の右に那美さん、左に薫さんが座る。しかし微妙に居心地が悪い。美少女が両隣にいるというのにだ。なぜなら…

 

こちらをジーッと見つめる複数の視線があるからだ。正確には六人ほどから。

 

や、やりづれぇ……。

 

「さ、まずは皆、軽く彼に自己紹介をしようか?」

 

すると主人公さんから皮切りに自己紹介が始まった。

 

「俺は槙原 耕介(まきはら こうすけ)。このさざなみ寮の管理人兼コックを勤めてます。よろしく」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

俺は恐縮しながら挨拶する。

 

だが内心かなり興奮していた。

 

うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!

 

とらいあんぐるハート2の主人公の人だよ!主人公と挨拶しちゃったよ!!

 

高町家に遭遇したときとはまた違った感動がくる。しかしこんなところで取り乱してしまうと確実に変態確定なのでなんとかポーカーフェイスで乗り切る。こんなときのマルチタスクチョー便利。

 

そして愛さんが続く。

 

「知ってると思うけど私は槙原愛(まきはら あい)。ここのオーナーで動物病院の院長をしています。あと耕介君の妻です。改めてよろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

俺はペコリと頭をさげる。

 

そうか。

この世界では耕介さんは、愛さんと結婚しているのか。その辺りの話も親しくなったらいつか聞いてみたいな。

 

そして自己紹介は続く。

 

「おう。あたしゃー仁村真雪(にむら まゆき)ってんだ。一応、売れっ子漫画家だ。それより薫と良い勝負したんだって?やるじゃねえか」

 

眼鏡をかけた少し着崩した格好をしている女性が俺をジーッと見る。

 

やめてください。

そんなに見られたら緊張してしまいます。

 

真雪さんも同じく『とらいあんぐるハート2』のヒロインである。漫画家をしているがこの人、実は剣道家であり、腕に覚えがあるほどの天才である。多彩な剣技とスピードで翻弄する。しかしスタミナが5分しか持たないという欠点がある。

 

だがそれよりも…

俺の目の前には豊かな双丘があり、自然と視線がそこへいってしまう。というか下手すれば忍さんクラスである。

 

「お?」

 

その視線に気付いた真雪さんがニヤリと笑い…自身の胸を持ち上げながら

 

「お姉さんといいことするか?し・ょ・う・ね・ん♥」

 

「は…「ヒエンくん?」はははは……」

 

思わず欲望の赴くまま答えようと思ったが、隣から感じた威圧に即座に苦笑へと変えた。真雪さんは俺のその様子を見て爆笑していた。

 

引き続き、自己紹介が続く。

 

「次はあたしだね。あたしは陣内美緒(じんない みお)。城西高校二年生。那美から聞いたけど君、みゆきちと友達なんだって?」

 

俺と同い年のショートカットの女の子が声をかけてくる。

 

陣内美緒さん。

 

『とらいあんぐるハート2』では、小学3年生ながらヒロインとして登場した。れっきとした人間であるが猫耳と尻尾を持ち、動物と話が出来る能力を持つ。

 

ネコの遺伝子が混ざりこんでいる影響か、凄まじい跳躍力や、野生動物級の嗅覚、動物との会話能力がある。好物はチーズ入りのちくわ、魚全般であるらしい。

 

「みゆきち?ああ、美由希さんのことか」

 

「そうそう。それにしても君、どこかで見たことがあるような?」

 

「どこかで会ったことあるっけ?」

 

俺は首を傾げる。

はて?

俺、この子とどこかで会ったことあったかな?

 

「あぁー!思い出した!!翠屋の店員さん!!」

 

「ん?ああ、お客さんだったのか。まぁ、たまに翠屋でバイトしてるから」

 

「とりあえずよろしくねー」

 

「よろしく」

 

同い年なせいか話しやすい。というか翠屋で働いているときにこられても分かるわけないか…。だって面識ねえし。

 

次に金髪の綺麗な女性が俺を見る。

 

「次はウチやね。ウチは椎名(しいな)ゆうひ。たまに翠屋には行くからアンタのことは見たことあるわー。あとこう見えてもプロの歌手なんやで。一応SEENAって名乗ってんねんけど知らん?」

 

「いや全く」

 

俺が間髪いれずにそう答えると、なぜかその場にいた俺以外の全員がダーッと言いながらこけた。吉本新喜劇みたいである。まぁ本当は、前世の知識で彼女のことは少しは知っていたが…。

 

「あんたテレビとかみーひんかー?自分で言うのもなんやけど一応世界的に有名な歌手なんやけど…」

 

「見てますよ。……Youtubeとかニコニコ動画なら」

 

「全部動画やないか!」

 

「そうですね(笑)」

 

「軽いなアンタ!」

 

「ありがとうございます?」

 

「ほめとらん!とりあえず動画サイトでウチの名前検索してみ。それで多分出るから」

 

「了解です」

 

ゆうひさんは何か疲れたような表情となる。なんだかとても失敬な気がする。

 

他の面々は俺とゆうひさんのやり取りを見て笑っていた。

 

次に少し小さな銀髪の綺麗な女性が俺を見る。

 

「次は僕だね。僕はリスティ・槙原(まきはら)。まぁ、警察の関係者といったところかな。よろしく」

 

「よろしくお願いします」

 

この人はリスティ・槙原。

 

この人に対しては細かいことは忘れたが、確か超能力者だった気がする。サイコキネシスやテレパシー、テレポートなど多種多様な超能力を使いこなす。一番得意なのが電気系統だったか。

 

そしてこの中で俺が最も注意しなければならない相手でもある。リスティさんは相手の思考を読み取ることが可能なのだ。確か電気信号のやり取りを知覚して『翻訳』するんだったか。

 

もしも俺の思考を読まれでもしたら厄介なこと極まりない。俺はある程度、この人達のことを知識として知っている。そんな存在がいると分かればどうなるか…。それに下手をすれば転生者の存在まで明るみになってしまう。

 

バレないに越した事はないのだ。それにもし思考を読まれそうになったとしてもちゃんと策は用意してある。……問題はないと思う。たぶん。

 

今度は隣の薫さんがこちらを見る。

 

「次はウチか。改めて…ウチの名前は神咲 薫(かんざき かおる)。「破魔真道剣術 神咲一灯流」当代伝承者で、風芽丘学園のOBになる。よろしくたのむ」

 

薫さんはポニーテールから髪を下ろしていた。その姿がやたらと大人っぽく見える。何が言いたいかというとかなり綺麗だった。

 

「はい。よろしくお願いします」

 

そして最後は我らが巫女娘。

 

「じゃあ一応私も。自己紹介は昨日したけど改めて。神咲那美(かんざきなみ)です。よろしくね」

 

「うん。改めてよろしく」

 

これでさざなみ寮に属している人達八人の紹介が終わった。そして皆が俺をジーッと見る。次は俺の番か。ちょっと緊張するが…俺は立ち上がる。

 

「えー、すいません。色々皆さんにはお世話になったみたいで、まずはそのお礼を。ありがとうございました」

 

俺はペコリと頭を下げる。

 

「えーと、それじゃ俺も自己紹介します。俺の名前はヒエン、大空 氷炎と言います。風芽丘学園二年です。よろしくお願いします」

 

そして再び頭を下げ、席へと座った。

 

「さて、それじゃ自己紹介も終わったし皆お昼にしようか!」

 

俺の目の前には色とりどりの豪華な料理が並んでいる。正直早く食べてみたい。

 

耕介さんは床にいる相棒と久遠にも食事を用意してくれた。

 

そして皆で手を合わせ…

 

「「「いただきます!」」」

 

美味しく料理を頂いた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

楽しい食事が終わり、俺はお茶を飲んでいた。俺の膝の上では久遠が、頭の上では相棒が眠っている。

 

うん。

微妙にバランス感覚注意するぞこれは。

 

はぁ…。

でも耕介さんの作った料理はうまかったなあ。うますぎて大盛りに作ってあった料理をほぼ俺一人で完食してしまったまである。ごはんも3回ほどおかわりさせていただきました。

 

俺の食べっぷりに皆さん、空いた口がふさがらないような表情となっていた。耕介さんに至ってはどこか嬉しそうな表情だった。ちょっと恥ずかしかったとです。

 

正直、料理の美味しさは桃子さんにも負けてない気がする。

 

あー

こんな美味い料理が毎日食えるなら俺もさざなみ寮に住めないかなあ。

 

俺がそんなことを考えながら休んでいると食器の片付けを終えた耕介さんが再び席へとやってきた。

 

俺としてはご飯をご馳走になったお礼に手伝おうと思ったのだが「お客さんだから休んどいて」と言われたので休ませてもらっていたのだ。

 

そんな耕介さんだが少しばかり真剣な様子で俺の正面へと座った。

 

「皆、ちょっと集まってくれ」

 

そういうとさざなみ寮の面々が先ほどと同じ自分の席へとつく。

 

「ヒエンくん」

 

「はい」

 

俺は名前を呼ばれ、自然と気を引き締める。

 

「昨日、君が倒れてからのことは聞いているかい?」

 

「いえ…。まだ聞いていません」

 

「そうか。じゃあ話すよ」

 

そして耕介さんは俺が倒れてからのことを話してくれた。

 

あの後、気絶した俺は様子を見守っていたさざなみ寮の面々に、すぐに運ばれたらしい(運んでくれたのは耕介さん)。

 

なんでも大きな声で言い合いをしていたため丸聞こえだったそうだ。そしてすぐに俺の体に異常がないかを確認しつつ、ベッドのある空き部屋へと運んでくれた。

 

そこから那美さんがヒーリング能力で朝方まで治癒し続けてくれていたそうだ(那美さんがこっそり教えてくれた)。

 

だから朝起きたとき体がこんなにも軽かったのか。あんなに疲労困憊だった体が今ではすっかり全快である。それに気のせいでなければ、身体中から力が涌き出てくる気もする。

 

「あの後、薫には全員で説教しといたから安心してほしい。だからこれでどうか許してもらえないだろうか?」

 

「うう…」

 

薫さんは顔を俯かせている。

なんか段々可哀想になってきた。

 

「大丈夫ですよ。本人にも謝ってもらいましたし、俺ももう気にしてません」

 

「ありがとう。ほら薫も」

 

「すまなかった。それとありがとう」

 

「どういたしまして」

 

俺は苦笑しながら答えた。

 

「で、本題はここからなんだ」

 

俺は和やかだった空気が、今の一言で鋭いものに変わったことを察した。

 

 

 

「ヒエン君……君は一体何者なんだい?」

 

 

 

ある程度予想はしていたが……きたか。

さて、どう答えたものか。

 

「勘違いしないでほしいのは俺達は別に君をどうこうしようというつもりはないよ」

 

「………」

 

「君はわざわざ深夜なのに那美と久遠を送ってくれたし、何より俺の作った料理をあんなに美味しそうに食べてくれるんだ。そんな子が何か企んでるなんて思えない。それに…」

 

「………」

 

「それに…あの人見知りの激しい久遠が初日でここまでなついているんだ。久遠のそんな姿を見た時はここにいる全員驚いたものだよ。君は余程、信頼されてるみたいだね」

 

耕介さんが俺の膝で寝ている久遠に優しい視線を送る。

 

警戒されている……訳ではないのか?

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。基本的に久遠は身内以外には甘えないからね」

 

「そう…ですか」

 

なんだろう。

そう言われると認められたみたいで少し嬉しい。

 

「それに那美も君のことを信頼しているみたいだし…」

 

「こ、耕介さん!?」

 

那美さんが声をあげる。

 

「はははっ。ごめんごめん」

 

「もう!からかわないでください!」

 

二人の話している所を見ると、そのやり取りは管理人と寮生というよりはまるで兄妹みたいに思えた。

 

そして耕介さんが再び俺を見る。

 

「聞いてもいいかい?」

 

「なんでしょう?」

 

「君は那美と久遠についてどこまで知っているんだい?」

 

「那美さんが退魔師と呼ばれる者であり、久遠が妖狐と呼ばれる存在であることなら既に知っています」

 

「ふむ…。そうか」

 

耕介さんは少し考える素振りをする。

俺からも少し質問してみるか。

さっきから気になっていることもあったし。

 

「俺からも質問しても?」

 

「どうぞ」

 

俺はチラリと那美さんの方を向く。

 

「彼女から俺の事は聞かなかったんですか?」

 

そう。

それがずっと気になっていた。

昨日、俺は彼女と一緒にいた。ということは少なからず俺が何者か彼女から聞いているはずなのだ。

 

そう質問すると那美さんは少し顔を赤くさせ俯く。それを見ていた耕介さんが苦笑いをする。

 

どうしたんすか?

 

 

 

「彼女は一言も君のことについて話そうとはしなかったよ」

 

 

 

「え?」

 

俺は思わず彼女の方を見る。

 

「そ、その…約束したから」

 

「あー…なるほど」

 

なんという律儀な人だ。

 

「約束?」

 

耕介さんが首を傾げる。

 

「俺の事を言った時、誰にも言わないでほしいとお願いしたんです」

 

「なるほど。そういうことだったのか」

 

俺はこの人たちに自分のことについて話そうか迷っていたが…少し話して決心がついた。

 

「皆さんにご説明します。俺が何者で、どうして昨日那美さん達と一緒にいたのか」

 

「え?いいの?」

 

那美さんが俺にキョトンとした感じで返す。

 

「うん」

 

「むぅ…。昨日から思ってたけど少し軽率すぎだよヒエン君?」

 

「え?どこがさ?」

 

どこらへんが軽率なのか分からんのだが?

 

「いくら私に既に話したといっても即決すぎます!これじゃ悩んでた私がバカみたいじゃない…」

 

「いや俺が直接話して大丈夫だと判断したから話そうと思っただけなんだけど…」

 

「だとしても安直すぎます!少しくらい警戒心を持ちなさい!!」

 

「なんか理不尽!?」

 

すると俺と那美さんのやり取りをポカーンと見ていたさざなみ寮の面々が一言。

 

「那美にこんな一面があったとは…」(耕介)

 

「仲が良いわねぇ~恭也君とはまた違った反応ね」(愛)

 

「へぇ~」(真雪)

 

「那美が積極的だ…」(美緒)

 

「青春やねえ~」(ゆうひ)

 

「ほう」(リスティ)

 

「那美から積極的に話してる!?」(薫)

 

とそんなこんなあったが俺は那美さんに話した通りに、さざなみ寮の面々に事情を説明するのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「とまあ……内容はこれくらいですかね」

 

俺は魔法のこと、次元世界のこと、そしてジュエルシードのことを簡潔に説明した。

 

その反応は大小様々であったが、やはり皆さん驚いていた。

 

そして話し終えた俺が一息ついていると…

 

 

「!?」

 

 

突如何か嫌な気配を感じたが、特に異常は見受けられなかったので気のせいかと判断したのだが…

 

「ガアアァァ!!」

 

頭の上にいた相棒が突如、咆哮をあげた。

 

側にいた面々が驚く。

俺の膝で寝ていた久遠も耳をピクッと動かし飛び起きた。

 

「ど、どうした相棒!?」

 

『ガゥ!』

 

相棒からある思念が伝わってくる。

 

なるほど…。

大方、俺が嘘をついていないか確認を取ったといったところか?

 

「これは…驚いた」

 

俺はいつの間にか後ろに来ていたリスティさんに顔を向ける。

 

「耕介…彼はどうやら嘘はついていないみたいだよ」

 

「リスティ!?」

 

「ただそこにいるデバイスのヒッツ?だっけ。僕のことを察知したのかある程度防がれちゃったけど」

 

驚いた…

なんの予備動作もなかったから気付けなかった。

 

いや…

その前兆ならばあったな。

 

超直感だ。

 

あのとき感じた嫌な気配はこの人の仕業だったのか。

 

ただ、まだ何をされたか確信がとれないので素直に本人に聞いてみる。

 

「あの…何かしたんですか?」

 

「テレパシーって知ってるかな?君の意識の表面を少し読ませてもらった。すまないね。ただ、防がれるとは思わなかったけど…」

 

「相棒は少し特別ですから…」

 

この様子だと俺が隠してる情報までは読まれていないようだ。本体が俺の心の中にある相棒にはそれが察知できたらしい。読まれたのは本当に表面の情報だけのようだ。

 

どうやら策が成功したようだ。うまく調和の咆哮で防げた。

 

俺の策というのが相棒に防いでもらうことだった。

 

リスティさんから妙なラインが俺の頭へと伸ばされていたようで丁度それを調和の効果で打ち消した。

 

動物は人より危険感知や察知能力が高いと聞く。相棒も例に漏れずそれらが該当する。そして俺と繋がっている影響もあり、超直感の恩恵もあるのだ。

 

それより話の続きをした方がいいか。

 

「あの…リスティさんは…一体何者なんですか?」

 

多種多様な能力を持った人……ということは覚えているんだが。

 

「僕?そうだね…簡単に言えば超能力者…だよ。よろしく魔導師君♪」

 

「は、はい」

 

俺は少し萎縮しながら返事をする。まだ語るつもりはないか。…当然か。

 

「それより面白い映像が見えたんだけどね…」

 

そのときリスティさんがニヤリと笑いながらこちらを見る。

 

なんだろう…

とてつもなく嫌な予感がする。

というか完全には防げなかったか。

 

「ヒエン君…キミ、那美と久遠を守るために大分無茶したみたいだね?」

 

リスティさんの発言に那美さんがいち早く反応する。

 

「どういうことですか!?」

 

「彼の目線から、合体した怨霊二体と戦う映像が見えたんだけどね?」

 

「は、はい」

 

すると俺が合体した怨霊と戦っていたという新情報に全員が驚愕した表情で俺の方を向く。

 

やべぇ…。

まさかここであのとき、意図して言わなかった情報をばらすとは!?というか全員の目が少し鋭くなったような気がするのは気のせいか?

 

「その時の彼の思考が少し読めたのさ」

 

「はい…」

 

やべぇ…やべぇよ…

那美さんにあの事を言われたら…

 

「君と久遠が狙われないように…自ら囮を買って出たという狙いもあったみたいだけどね……彼……保険としてもしも自分がやられてしまったとき…自爆してでも怨霊を道連れにして……君達を逃がそうと……そう思ってたみたいだよ?」

 

その発言を聞いたとき、俺は思わず短距離高速移動魔法ブリッツアクションを展開させていた。

 

 

 

ヒュン

 

 

 

俺の姿が一瞬で消える。

 

 

 

しかし…

 

 

 

「逃がさない」

「逃がさん」

「逃がさないよ」

 

 

 

とらハ2の主人公、退魔師姉、超能力者に既に回り込まれていた。

 

バカな!?

 

一般人には認識できないほどのスピードを出したのにこんなにあっさり捕まるだと!?

 

あ、そう言えばここの住人超人ばっかりやったorz

 

そして俺は自動的に正座へと移行し、後方からザッザッザと近付いてくる修羅と化した笑顔の巫女と向き合うこととなった。…巫女の側にいる一匹の小狐がガタガタブルブルと震えているのは見なかったことにしよう。罪悪感が半端ないのでorz

 

「そういえば……さざなみ寮に来たとき、また説教の続きをするっていってたよね?」

 

無駄だと思うが一応の抵抗をしてみる。

 

「いや…あのですね…あのときばかりは仕方ないと思うんですよ」

 

「何がかな?」

 

「いやだって…あのとき那美さんブルブルと子犬の如く震えてらっしゃいましたし…だったら俺がやるしかないじゃない…みたいな」

 

「へぇ…そんなこと言うんだあ。あのとき私達に言ったよね?後ろから援護たのむって。ヒエン君が捕まったとき、私達助けにいこうとしてたんだよ?」

 

「いやあのときは…「戦わせるつもりはこれっぽちもなかったみたいだよ」リスティさん!?」

 

何を余計なことを言うかこの合法ロリはあああぁぁぁ!

 

「へえぇ~あのときに援護頼めば良かったのに……結局は自爆する気まんまんで私達に戦わせる気はなかったんだね?」

 

「ほら…それはあれじゃないですか。女の子を守るのが男の役目と言いますか。そ、それに…その…周りを気にする余裕もなかったといいますか…あと」

 

「あと?」

 

「つい…ノリで……」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………テヘッ」

 

「………正座二時間。他の人からの説教つき」

 

うおおおお!!!

鬼や!!!

鬼がここにおる!!!

チクショー!!!

鬼!悪魔!!コスプレ!!!」

 

そんなことを思っていると…

 

「ヒエン君、途中から心の声漏れてるよ…」

 

と耕介さんから一言。

 

那美さんの笑顔が別の意味で更に明るくなった。

 

その結果…

 

正座の時間が倍になりましたorz

 

そして無茶して戦ったことや自爆のことがリスティさんに暴露された結果、全員から説教を食らったのは言うまでもない。

 

説教が終わったときは、キッチリ倍の四時間でしたorz

 

俺はこんな事態を引き起こした銀髪合法ロリにささやかな復讐を誓うのだった。

 




fate/goのマシュってかわいいですな(゜▽゜*)

fateキャラで一番好きかもしんねえ。

では、また(・∀・)ノ

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