大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

もうすぐ年明けますね。

では、どうぞ( ゚∀゚)つ


第四十六話 魔導師vs怨霊 後編

ヒエンside

 

 

 

ジュエルシードが忽然と光りだす。

 

俺の砲撃が直撃するが、光によって打ち消されてしまった。

 

次第にその光量は目を開けていられるレベルではなくなり、余りの眩しさに俺達は目を瞑ってしまう。

 

「ぐ…」

 

「眩しい…」

 

「くぅ」

 

光が徐々に収まる。

 

俺は視界が元に戻るとすぐに前を見た。

 

そこには…

 

腕が四本となり長い髪から特徴的な恨みのこもった眼でこちらを見ている一人の白いワンピースの女がいた

 

俺は、最悪の形でジュエルシードが奴等の願いを叶えたことを察した。

 

「合体…した…」

 

あの女から四つん這い女特徴の恨みのこもった眼と苦しんでいるような声が…そして長髪女の特徴の長い髪が混じっていた。

 

それだけじゃない。

 

女の腕の数が四本に増えているのだ。

 

人間の生物学的にあり得ないことが実際に起こっていた。普通に足は二本みたいだが(ここまできたら足も四本でいいだろうと思わないでもないが…)どういう原理なのかがさっぱり分からない。…別に知りたいとは全く思わないが。

 

俺の隣では那美さんが顔を真っ青にさせていた。

 

「あ、ありえない…」

 

久遠の表情も優れない。

 

「くぅーん」

 

霊能力の専門家ともいえるこの二人がここまで取り乱すのだ。これはかなりの異常事態なのだろう。ハッキリいって不味いかもしれない。

 

ただでさえ一人でもヤバイほどの怨霊が二人もいるのに……その上合体してしまったのだ。

 

顔が真っ青になるのも分かる気がする。

 

その証拠に奴等から感じるプレッシャーが尋常ではないのだ。

 

まるで蛇に睨まれたカエルの気分だ。

 

だがこんな所で諦める訳にはいかない。相手が怨霊だろうが悪霊だろうが、俺は奴等に取り込まれてしまったジュエルシードを回収せねばならない。

 

それに…

 

那美さんと久遠の二人は未だに険しい表情のままとなっている。

 

この二人をこのままの精神状態で戦わせる訳にはいかない。

 

俺は再び視線を奴等へと戻す。

 

奴等の獲物は依然として俺のはず。

最悪、俺がやられるまで那美さん達には手を出さないはずだ。

 

なぜだかそれだけは自然と確信できた。

 

俺は眼をつむり一度、深呼吸をする。

 

「スゥーハァー」

 

そして額の炎の質を柔から剛に切り替える。

 

俺のグローブにオレンジ色の少し濃い炎、剛の炎が灯された。

 

さて、本気でやらないとな。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

俺は前方のワンピース女を見据えた。

 

対峙して改めて分かる。

 

(さっきとは実力が段違いだ…)

 

強者から溢れる雰囲気とでもいえばいいのだろうか?奴から漂う気配からそう感じるのだ。

 

俺は前を見ながら那美さんと久遠に指示を出す。

 

「二人は下がっててくれ」

 

那美さんと久遠はハッとし、こちらの言葉に反論する。

 

「いえ、私たちも戦います!あなた一人だけ戦うなんて…」

 

「くおんも!」

 

俺はそれを冷静に返す。

 

「そんな震えてる体で言われても説得力は皆無だぞ?」

 

那美さんの体がビクッと震える。

 

死ぬ気モードの影響からか言葉が少しきつめになっているがこればっかりは仕方ない。

 

「でも!」

 

しかし那美さんはそれでも引く気はないらしい。なかなか強情な人だ。

 

俺はため息をつきながら言う。

 

「はぁ、分かった。俺があいつを何とか弱らせるからあんた達は後方から隙を見て援護してくれ」

 

「は、はい!」

 

「くうー!」

 

そして二人に話がついた俺はグローブに炎を纏わせながら、ザッザッザッとワンピース女に近づいていく。

 

思えばこの怨霊達と邂逅してから、俺は逃げ腰になっていた。

 

どうやら怨霊という未知の敵との遭遇は想像以上に俺の精神を蝕んでいたらしい。

 

自然と思考が逃げの一沢になっていた。

 

だが俺を助けにきてくれたこの巫女達を見ていて気付いたのだ。

 

何も恐れる事はない。

 

ただ自分の信じる道を貫き通せばよいのだ。

 

彼女達は何の打算もなく俺を助けにきてくれた。俺はそこに彼女達の何か信念みたいなものを感じたのだ。

 

何て事はない。

 

相手はこちらに理不尽に恨みをぶつけてくる身勝手で自己中心的な女達というだけだ。

 

奴等が恨みや怨念といった負の感情をぶつけてくるのなら…こちらは皆を守りたい、助けたいといった純粋な思いで迎え撃つ。

 

恨みをただぶつけてくる怨霊なんぞに負ける道理なんて微塵もない。

 

それに…それにだ。

そもそもなぜこちらが何もしていないのに恨みのこもった眼で見られなくてはならないのか?

 

なぜ怖い思いをしなければならないのか?

 

そう考えるとフツフツと怒りが込み上げてくる。

 

先程の言葉を訂正しよう。

 

相手は女でもなんでもない。

こいつらは気に入らないことがあったら他人に八つ当たりをするガキみたいなものだ。

 

それにこのまま奴等を放置することになれば…

なのはやアリサ、すずか達…聖祥大付属小学校の生徒達や先生にまで危害を加えるかもしれない。いや、既に危害を加えられている者もいるかもしれない。

 

こいつらを放置していては危険だ。

 

俺は進む。

 

 

「俺はお前達の過去に何があったかは知らない」

 

 

ワンピースの女は首を傾げながら俺を見る。

 

 

「お前達がどうしてそんなに恨みを持つことになったのかも知らない」

 

 

俺はどんどんと進む。

 

 

「唯一できることがあるとすれば、生前辛いことがあったんだろうなと予想するくらいだ」

 

 

俺は女に近づいていく。

 

 

「お前達にも何か事情があったのかもしれない。恨みができるほど何か辛いことがあったのかもしれない。けどな…」

 

 

俺は右拳に力を入れる。

 

 

「ただ理不尽に恨みをぶつけられて、黙ってやられてやるほど…」

 

 

そして勢いよく振りかぶった。

 

 

「俺は人間できてないんだよ!!」

 

 

 

ドゴオォォォン!!!

 

 

 

俺の炎を纏った拳がワンピース女の顔面に炸裂し、屋上の壁に激突した。

 

 

「来いよ怨霊女。お前は死ぬ気でぶっ飛ばす!!」

 

 

俺と怨霊の本格的な戦いが始まった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

俺はワンピース女が吹き飛んでいった方向をじっと見る。

 

手応えはあった。

 

剛の炎は、柔の炎の攻撃と比べると段違いの破壊力がある。普通の敵ならば当たり所が悪ければ戦闘不能に陥るほどの威力だ。そう…普通の敵であるならば。

 

俺は炎熱疾走(フレアドライブ)を発動させ咄嗟に横に飛ぶ。

 

すると前方から長い髪が無数の槍のように現れる。俺はそのまま横を通りすぎ煙に突っ込もうとしたが、黒い髪がまるで意思でももっているかのように俺の後をついてくる。

 

咄嗟に方向転換することで難を逃れたが…厄介だ。

 

俺は高速で移動しながらチラッと那美さん達の方を見るが、彼女達の方には攻撃はいってないようだ。

 

やはり思った通り狙いは俺だけのようだ。だがこれで思いっきり戦える。

 

俺は屋上を縦横無尽に駆け抜け、後ろから追ってくる髪から逃れる。だが突然、前方から何かが無数に飛来した。

 

「ぐ!?」

 

俺は咄嗟にガードすることで致命傷を防ぐ。バリアジャケットも着ているおかげかダメージも少ない。

 

だが足を止めてしまったせいで片足を長い髪で拘束されてしまう。そしてそのまま持ち上げられ振り回される。

 

俺の視界がグルグルと回る。そして空中へと放り投げられた。

 

 

ドゴンッ!

 

 

「ごはっ!」

 

 

そして空中にて壁のようなものに激突した。恐らくワンピース女が構築した結界にぶつかったのだろう。

 

そして壁に何度も叩きつけられた。

 

 

ドゴンッ‼ドゴンッ‼ドゴンッ‼ドゴンッ‼

 

 

「くっ!」

 

俺は叩きつけられながらも咄嗟に右手を手刀の構えにし、炎を延ばす。すると炎の剣(ファイアエッジ)が現れる。拘束している髪の毛をそれで切り払った。

 

そして俺は炎の翼(ファイアウィング)を広げ空中で静止し、新たな魔法を発動させた。

 

剛炎の大剣(ブレイズブレイド)

 

俺は濃いオレンジ色の剛炎の大剣郡を自分の周囲に15個ほど配置する。

 

これはクロノのスティンガーブレイドを参考に考案したものだ。クロノのように複雑な操作はまだできないが、真っ直ぐ飛ばすだけなら簡単だ。

 

俺はそれらを操り全弾、ワンピース女がいるであろう煙の辺りに放った。

 

 

シュシュシュシュ‼‼

 

 

剛炎の大剣達が一気に向かっていく。

 

離れているから分からないが、当たっていればそれなりのダメージは期待したいところだが…

 

俺は少し離れたところに着地し様子を見る。

 

そして煙が晴れる。

 

そこには…

 

 

黒い髪を自分の体に覆い、グルグルと巻くことで剛炎の大剣達を防いでいるワンピース女がいた。

 

 

ひとつだけ言わせてもらいたい。

 

その髪の毛どれだけ延びるんだよ?( ; ゜Д゜)

 

とボーッとしていたのがいけなかったのか女が動き出したことに最初は気付けなかった。

 

 

シュン

 

 

と女が一瞬で消える。

 

「え?」

 

俺は一瞬呆けてしまうがすぐに戦闘体勢を整える。

 

なぜなら女が再び2メートル前に現れたからだ。

 

そしてまた消える。その次には3メートル前の右に現れ、また消える。

 

そして何度も瞬間転移を繰り返し女は徐々に俺に近付いてくる。

 

俺も迎撃するため魔法を使用する。

 

剛炎の銃弾(ブレイズバレット)verショットガン!」

 

俺の周囲に10個のスフィアを配置し、屋上全体に行き渡るように射撃魔法を使用する。

 

 

ドドドドドドッッッッッ!!!!!

 

 

凄まじい勢いで螺旋回転したスフィアが散弾銃のように放たれるが女は瞬間転移でかわし続け、俺が気づく頃にはすぐ目の前に存在していた。

 

「!?」

 

女の長い髪で隠れている左目を見るのを反射的にマズイと悟った俺は、咄嗟に女との間に炎の壁を生み出す。

 

剛炎の壁(ブレイズウォール)!」

 

そして一気に後ろに後退するが、女は直ぐ様俺の後方に転移し回り込み、俺の襟首を片手で持ち上げた。

 

 

ギュウウウウウ!!

 

 

女は今にも折れそうな細い腕で俺を簡単に持ち上げ首を締め上げる。

 

「ぐっ!息が…」

 

こいつ!?

窒息させる気か!

 

そうはさせまいと片足で後ろにいる女を蹴るが、威力が足りないのか女は平然と受ける。

 

 

ギュウウウウウ‼

 

 

さらに締め上げが強くなる。

 

俺の意識とは裏腹に強制的に瞼が重くなってくる。

 

マズイ!?

このままじゃ意識が…

 

そして追い詰められた俺はある決意をする。

 

「目に……物………見せてやる…」

 

俺は両手に剛の炎を小さく収束させる。

 

今から俺がすることは自殺行為にも等しい。だがもう時間がない。それにこの女にこのまま呪い殺されるよりは100倍ましだ。

 

「く…ら…え…剛炎の大砲(ブレイズキャノン)!」

 

 

 

ドオオオオオンンンン!!!!

 

 

 

俺は収束していた剛の炎を解放し自分事、女を爆発に巻き込んだ。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

那美side

 

 

 

ドオオオオオンンンン!!!!

 

 

 

那美は口元に手を当て先程の光景に驚愕していた。

 

「あ……あ……なんて…無茶を…」

 

那美は少年の戦いをずっと見守っていた。何度も飛び出したくなる衝動に駆られたが、戦いの渦中に飛び込んだ所で少年の戦いの邪魔になることを那美自身も気付いていたからだ。

 

少年と女の霊は激しい戦いを繰り返していた。

 

隙あらば久遠に助力を頼んで援護に向かわせようとしたが、少年と女の霊の戦いに入り込む隙がなかったため、久遠自身も様子を見ていた。

 

しかし、少年が女の霊に捕まってしまってから戦いの流れが変わってしまう。

 

少年はなんとか拘束から逃れようと抵抗するが女の霊が怯む様子が一向に見られない。

 

逆に少年の動きが徐々に無くなっていくのを那美は感じていた。

 

「久遠!」

 

「くぅ!」

 

これ以上はマズイと感じた那美は久遠に指示を出す。久遠は雷を身に纏い、女に突撃しようとするがここで予想外のことが起こってしまう。

 

なんと少年が女の拘束から逃れるために、自分もろとも爆発に巻き込まれたのだ。

 

那美は少年の言いつけを守らずに一目散に少年の元へと走っていく。

 

そして煙で視界が悪い中、那美は少年を見つけることに成功する。

 

そして直ぐ様、少年に駆け寄り抱き起こす。幸い意識はあるようだった。

 

「しっかりしてください!大丈夫ですか!?」

 

「あ、あははは。ちょっとだけ…無茶した……」

 

「なんてバカなことを!無事だったから良かったものの何かあったらどうするつもりだったんですか!?」

 

「いや、あれしか方法がなかったからつい…」

 

「ついで自分ごと、爆発させないでください!!」

 

「す、すまん…」

 

那美は声をあげる。

当然だろう。こちらに散々心配をかけておいて当の本人はこんなにボロボロの状態で呑気に笑っているのだから。

 

その証拠に、彼の着ている黒スーツは所々が破れておりボロボロになっていた。

 

「それよりもじっとしていて下さい。今治療しますから」

 

那美は動けない少年の頭を自分の太股に乗せ治療を始めた。

 

那美は霊と対話し説得して天に返す鎮魂術の他にも習得している術がある。それが霊力を使用したヒーリング能力である。

 

彼女はこれらの能力にて異能の力で傷つけられた人々や動物などを助けてきたのだ。

 

「ちょっと動かないで!じっとしててください!!」

 

少年はなぜか狼狽しながら抵抗していたが那美が少し注意すると大人しくなった。

 

彼女はなんだか弟みたいで可愛いなあと思いつつも彼の額に手を乗せヒーリングを使用する。

 

すると少年の顔にあった傷が何事もなかったように回復する。那美が順調に回復していることに安堵していると、側にいた久遠が突如威嚇の鳴き声をあげる。

 

「グルルルル」

 

「久遠!?」

 

那美が久遠の向いている方角を見ると、白いワンピース女がそこに存在していた。

 

しかしそこにいたのは変わり果てた女の姿だった。

 

 

右上半身が吹き飛び、左胸に四つん這い女の顔がついていたのだから

 

 

「ひ……」

 

その姿に那美は思わず小さく悲鳴をあげる。

 

そして恐怖心からか、又は防衛本能からなのか那美はいつの間にか少年を守るように力強くギュッと抱き締めていた。

 

久遠はそんな主を守るために女の霊と対峙する。

 

だがそんな二人を安心させるかのように少年が発言した。

 

「だい……じょうぶ。二人はじっとしてて…くれ」

 

少年が発言すると、なぜか霊の女が勢いよく後方へと吹き飛んだのだ。

 

那美は事態が分からず混乱する。

 

そこに彼女達に近付く三人の人影が…

 

 

「「「ここは俺達に任せてくれ」」」

 

 

その人影の姿を見た那美はますます混乱する。

 

なぜならそこには少年と同じ姿をした三人の少年が立っていたのだから。

 

 

 

那美side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

ワンピース女が勢いよく吹き飛んで行く。

 

俺はそれを見ながら心の底から安堵する。

 

保険を仕込んでおいて良かった。

 

保険とは勿論、三人の分身達である。

分身達を生み出すのにかなりの魔力を使ってしまった。

 

だが俺が動けるようになるまでの時間稼ぎは必要なため仕方ないと割りきる。

 

ちなみにそれらの指示は相棒からそれぞれ思念で出してもらっている。

 

あのあと勢いよく自分の魔法の爆発に巻き込まれた俺はボロボロになり、少し動けないほどのダメージを受けていた。

 

破壊力の高い剛の炎を使いながら収束させ、なおかつそれを防御もせずゼロ距離で食らったのだ。

 

そりゃダメージは甚大である。

 

だがその苦労したかいもあってワンピース女の方も随分とボロボロである。いやボロボロというよりも色々グロテスクな感じになっているが。

 

それよりなんでお前、左胸に顔がついてるんだよ!?

 

ってことはあれか、お前ら顔二つあったのかよ!?

 

ということはだ。

長髪女の顔はただ見えなかっただけのようである。

 

まぁ、今はそれよりも…

 

未だに俺を力強く抱き締めている那美さんのおかげで、全く身動きがとれない。

 

うん。

どうしようこれ。

こんな状況でなければ内心ヒャッホーイな状態なのだが…というかクールな死ぬ気モードでなければ俺は今ごろあわてふためいている。

 

「あれは一体…」

 

那美さんが三人の俺の分身を見て唖然としている。

 

そりゃそうですよね。

いきなり同じ顔のやつが三人もいるってどんなホラーやねん。

 

あ、でも今、現在進行形でホラー要素満載の奴と戦ってたわorz

 

まぁ、それはともかく俺は唖然としてる那美さんに説明をする。

 

「あれは俺の分身だ」

 

「分身?」

 

「ああ。制御はこいつに頼んでる。でてこい相棒」

 

「ガァウ!」

 

「きゃ」

 

そのとき相棒が勢いよく那美さんの胸に飛び込んだ。

 

おい相棒。

なぜお前はわざわざ那美さんの胸に飛び込む?

 

そのとき相棒から思念が飛んでくる。

 

『羨ましいくせに』

 

といったメッセージが飛んできた。

 

こんのクソ駄猫があぁ!

あぁそうだよ!

羨ましいよ!!

超羨ましいよ!!!

お前が他の女性の胸に飛び込むとき殺意が何度芽生えそうになったことか!!!

 

「わぁ、かわいい~」

 

しかし、那美さんの癒される笑顔を真下から見ていたら俺の邪な考えはどこかへと霧散していった。

 

というか俺は未だに那美さんに膝枕兼、抱きつかれてるんだよな。

 

 

「………」

 

 

リア充キタ━(゚∀゚)━!

 

 

とそんなことを思っていると相棒から呆れたような思念が送られてくる。そういえば俺と相棒、一心同体だったね。俺の思考が全て伝わっていたのかorz

 

というか今はそれどころじゃなかった。

説明の途中だった。

 

「とにかく分身達が時間稼ぎをしてくれているから、しばらくは大丈夫なはずだ。それにあいつを倒す……いや浄化する算段もついてる」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ」

 

俺は戦っている分身達に目を向ける。

 

分身の一人がワンピース女の髪の毛に拘束されていたが分身は三人いるため、それぞれがお互いをカバーするように動いていた。

 

俺も立ち上がり戦いにいこうとしたが那美さんに肩を押さえられた。

 

「ダメです!まだ治療がすんでいません!」

 

「いや…でももう動ける…」

 

「ダメです!!もう少しで終わりますから待っていて下さい!!」

 

「わ、わかった」

 

那美さんは再びヒーリング能力で俺を癒す。ユーノの治癒魔法とはまた違った感じだ。

 

俺の体の中を魔力とは違う、何か暖かなものが駆け巡る。恐らくこれが霊力…なのだろう。どこか死ぬ気の炎と似ている感じがする。

 

目を閉じると眠ってしまいそうになるがそこは必死に我慢する。

 

すると…

 

 

ドバアァン!

 

 

といきなり何かが爆発したような音が響く。

 

俺達が目を向けると、分身が二人に減っていた。すると俺の中に分身の経験値が蓄積される。

 

その蓄積された経験値からなぜ分身が減ったのか理由が判明した。

 

分身はワンピース女の目を見たのだ。

 

そして目を見た瞬間…

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

俺は恐ろしい能力に寒気がしたが…思わず手を止めていた那美さんに続きを促す。

 

「早く回復を!」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「くぅー」

 

久遠は戦う分身二人を心配そうに見つめる。

 

分身達はワンピース女にヒットアンドアウェイで攻撃を繰り出していた。互いに高速で動き続けることによってワンピース女を翻弄していた。

 

しかしワンピース女は瞬間転移を繰り出すことによって分身達を翻弄していく。女性とは思えないパワーで攻撃をし、長い髪を操り拘束し、叩きつけるなどの攻撃を繰り出す。

 

「「ゼェ…ゼェ…」」

 

分身達の疲労ももうピークになってきている。

 

無理もない。

5分以上高速で動き続けているのだ。それにワンピース女からのダメージもある。分身とはいえ俺が回復するまでの時間稼ぎを任せたが、俺は罪悪感でいっぱいだった。

 

「まだか!?」

 

「もう少しです。もう少しだけ耐えてください」

 

那美さんは俺が焦っていることに気付いているのだろう。彼女自身も少し辛そうだ。

 

「「ぐあ!」」

 

しかし…遂に分身二人が拘束される。

 

ワンピース女が一人の分身にゆっくりと近づき、顔を近付けた。

 

 

 

ドバアァン!

 

 

 

分身は爆発し、残り一体となる。

 

「ぐ!」

 

残った分身は炎の円斬(ファイアカッター)をワンピース女に繰り出すが、瞬間転移によってかわされる。そして分身の目の前に転移すると…

 

残り一体も爆発した。

 

そしてワンピース女はこちらに向くと、ゆっくりとこちらに歩いて近付いてくる。

 

瞬間転移で近付くこともできるのにわざわざ歩いてくることに、こいつの性格の悪さが滲み出ている。

 

 

 

ザッザッザッ

 

 

 

たどたどしい足取りでこちらへと近付いてくる。

 

俺はこれ以上は無理だと判断し、無理矢理起き上がろうと力をいれようとしたとき…

 

突然、久遠が俺達を守るようにワンピース女の前に出たのだ。

 

その姿を見たとき俺は思わず声をあげていた。

 

「バカ!早く逃げろ!そいつの目を見ると殺されるぞ!!」

 

久遠は俺達に目を向けると、人型に姿を変える。

 

「くおん、ふたりともまもる」

 

「久遠ダメ!逃げて!!」

 

那美さんも声をあげる。

 

俺は残ってる魔力でフェイクシルエットの幻影を5体生み出す。

 

正直もう分身を生み出すほどの魔力が残っていない。

 

それにこれ以上魔力を消費してしまえばヒートバーナーを撃てなくなってしまう。

 

しかし幻影達は髪の毛の攻撃ですぐに消え去ってしまう。

 

そしてワンピース女は久遠の前にたった。

 

久遠は電撃を前方に放つ。

しかし左手で振り払われた。

 

「あ…」

 

久遠がそれでも立ち向かおうとしたときワンピース女によって持ち上げられる。そして女の顔に近づけられようとしたとき…

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「零地点突破ファーストエディション……瞬間氷結(フリージングモーメント)

 

 

そしてワンピース女を拘束するように地面から生えてきた氷が体を覆う。

 

間一髪間に合った。

 

魔力を使う余裕はないが、体力ならばまだ余裕はあった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

零地点突破ファーストエディションは厳密には魔法ではない。死ぬ気の炎であるため体力を消費するのだ。よって例え魔力がなかろうが氷技を使用することはできる。強化することはできないが…それでもこのワンピース女一人を拘束するのは他愛もない。

 

「良かった久遠!」

 

「なみ!」

 

那美さんと久遠は互いに抱き合って喜んでいた。

 

それを確認すると俺はワンピース女の前に近づき両腕をクロスさせ機動詠唱(ワード)を唱えた。

 

 

 

「オペレーションヒート」

 

 

 

そして右手を前方に突き出す。

 

俺の目の前にオレンジ色の大きな魔法陣が現れる。それと同時に俺の背中に炎の羽も現れた。

 

 

「あ……ああ……ああ……!!」

 

 

ワンピース女は抵抗するように声を上げる。この攻撃を受けたらヤバイということを本能的に分かっているのだろう。

 

だがもう遅い。

 

 

「お前には特別すごいものをくれてやる。くらえ……ヒートバーナーフルパワー!!」

 

 

俺は左手で右手を支える。

 

すると魔方陣がさらに大きくなり、そこから特大のオレンジの砲撃が放たれた。

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!

 

 

 

ヒートバーナーフルパワーに俺は残りの体力と魔力を全て注ぐ。

 

そして勢いよくワンピース女に直撃した。そのとき俺とワンピース女の視線が交差する。ワンピース女は撃たれながらもこちらをジッと見ていたが…気のせいでなければ女の視線からは恨みや怨念といった負の感情は伝わってこなかった。

 

大空の炎には『調和』の能力がある。もしかしたらそれがワンピース女いや、二人の女の霊の負の感情を解かしたのかもしれない。

 

そして怨霊は消滅した。

 




1日遅れましたがメリークリスマス!Σヽ(゚∀゚;)

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