十一月なりましたねぇ。
これからどんどん寒くなるんだろうなぁ。
では、どうぞ( ゚д゚)ノ
第三者side
「う、うー」
ある一室で一人の少年が眠っていた。
だが見る限り少しうなされているようだ。
「カ…カレーはもう食べられない…」
しかし見ている夢は大したことなさそうだ。
そんな少年の様子を、呆れた様子で見ているツインテールの少女が一人。
「はぁ~」
少女はため息をひとつ。少女は肩の上に乗っているフェレットに目を向ける。
「よく寝てるね」
「うん。少し様子を見にきただけだしもう少し寝かせといてあげようよ。それに兄さんがいたら朝練止められるかもしれないしね」
「うん。ヒエン君の言ってることも分かるんだけど今はやれることはやっておきたいの」
「無茶はしちゃダメだよ」
「ヒエン君ほどじゃないから大丈夫だよ」
「ははは。そうだね」
「ふふ。そうだよ」
二人は少年が聞いてたら怒りそうなことを言っているが、肝心の少年は未だに夢の中なので怒られる心配はない。
「じゃあ行こっか」
「そうだね」
ツインテールの少女高町なのはと、フェレットユーノは日課となっている魔法の朝練に出かけていった。
第三者side end
◆◆◆
ヒエンside
人は寝ていると起きる感覚というものがなんとなく分かるらしい。
あ、これは目が覚めるなと。
俺もそういった感覚は何度か経験がある。
そんな感覚を感じながら俺はゆっくりと目を開けた。
「知らない天井だ…」
何気に言ってみたかった台詞を言えて少し嬉しい俺だが、状況把握のために起き上がる。
俺が寝ているのは布団であった。辺りを見回してみると畳の和室だった。
と、そこでお腹に違和感を感じた。そしてそのことに気付いたとき、昨夜の記憶が甦った。
そういえば昨日、高町家のカレーをご馳走になったんだ。それであまりの美味しさに4杯おかわりしてお腹を壊したんだっけ。
我ながらなんと情けない理由かorz
それからもう夜も遅いということで俺は高町家にお世話になったというわけだ。
だが、まだお腹が痛い。
胃薬は一応飲んだんだがなぁ。
そうだ。
こんなときこそあの能力を使えばよいのではないだろうか?
俺は目をつむり集中し、ちょっと死ぬ気モードとなる。額の炎はつかない程度に抑える。
思考がクリアとなる。
相棒は言っていた。
対象物があればそれを包み込んで浄化するイメージをするのだと。
ならばその対象物とは俺である。
俺は掌を自分のお腹に当て、自分を調和の炎で包み込み胃の中のものごと消し去るイメージをする。しばらく集中し、作業を続ける。
そしてある程度時間がたつと、呼吸をはきながら作業をやめる。すると額に汗をかいていた。こういった作業ははじめてなせいか、体力を余分に消費したようだ。
それはそうとどうなのだろう?
上手くできたのだろうか?
いまのところお腹の違和感はなくなっている。俺は隣で寝ている相棒を起こし見てもらうことにした。
「相棒?相棒?」
「ガァウ?」
「寝てるところすまん。さっきお腹に調和の能力使ってみたんだがうまくできてるか?」
相棒は俺のお腹をジーッとみて一声ないた。
「ガゥ」
「分かった。起こして悪かったな」
相棒は再び布団の上にくるまり二度寝を慣行した。
相棒曰く、一応出来ているとのこと。だが実戦で使うにはまだまだ練度が足りない。
うまく使えるようになるまで相棒に見てもらいながらやった方がいいだろう。
すると、タッタッタッとこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。
「あ、起きた?」
するとなのはが廊下からひょっこりと姿を現した。
「あ、おはよー」
「うん。おはよう。朝ごはんもうできてるよ」
「了解ー」
俺は寝ている相棒を抱いて立ち上がり、高町家へのリビングへと向かった。
リビングには既に高町家の面々が揃っていた。皆は俺の姿を見ると笑顔を向けてきた。
「「「「「おはよう」」」」」
「おはようございます」
桃子さんが紅茶を用意してくれた。
「お腹の調子はどう?」
「はい。もう大丈夫です」
「もうあんなに食べ過ぎちゃダメよ。それはそうと恭也のジャージ、サイズが合ってたみたいで安心したわ~」
「あ、はい。もうぴったりです」
俺は今着ている青いジャージを見る。着心地もいいし、寝やすかった。
「なんだったらやるぞ」
「え?いいの?」
「ああ。ジャージは余ってるからな。問題ない」
「ありがとう。じゃあありがたくもらってくよ」
「はいはい~。話はそれくらいにして皆で朝ごはん食べましょう」
桃子さんは朝食にトーストを持ってきてくれた。俺は寝ている相棒をリビングのソファに寝かせてから席についた。
そして朝食を皆でいただくのだった。
朝食を食べ終わったあと、俺は一度家にもどることにした。今日も普通に学校はあるのだ。
玄関には高町家の面々が俺を見送るために揃っていた。
「おじゃましました」
俺は頭を下げる。
「また遊びにいらっしゃい」
「気を付けていくんだよ?」
「食べ過ぎには注意しろよ」
「今晩、また電話するね」
桃子さん、士郎さん、恭也君、なのはが声をかけてくれた。そして美由希さんは…
「うん。元気になって安心したよ」
「え?」
「昨日、元気なかったでしょ?クラスの皆も心配してたんだよ?」
「あー、ちょっと色々悩んでて…」
「相談ならいつでものるよ?」
「ありがとう。何かあったら相談させていただきます」
「うむ。よろしい」
美由希さんが俺の肩をたたく。
「じゃあまたあとでね」
「うん。またあとで」
そして俺は自宅へと足を進めるのだった。
自宅に帰った俺は、恭也君からもらったジャージからすぐに制服へと着替え今日の授業の準備をする。
時計をチラッと見る。
時間は7:50と表示されていた。
時間的に余裕はある。
ゆっくり歩いていくか。
通学路のコンビニで眠気覚ましのコーヒーと、朝食の焼きそばパンを買う。コンビニを出て隣の公園のベンチに座り袋を空ける。トーストだけでは少し足りなかった。
そこでむしゃむしゃと食べていると視界の端に何やら小さな黄色い物体が動いた。
「くぅん」
視線を向けると、そこには一匹の子狐がいた。
金色の毛並みに、尖った耳が先端だけ黒く染められている。くりっとした愛らしい瞳がこちらをジーッと凝視していた。―――正確に言うならば俺のもつ焼きそばパンに向けられていた。
焼きそばパンを右に持っていく。子狐の視線が右に動く。焼きそばパンを左に持っていく。子狐の視線が左に動く。焼きそばパンをパクリと食べる。気のせいか子狐の顔が悲しそうな表情となった。
「………」
た、たべづらい…
そんな無垢で純粋に悲しそうな瞳を向けられながら食事をとれる人間がいるだろうか?
否、俺は無理だ。俺はしぶしぶあげることに決めた。だが普通にあげても子狐は警戒して逃げてしまうだろう。
なら俺が離れればいい。
焼きそばパンを半分ちぎり、食べていない方をベンチから少し離れた地面に袋ごと置く。
そして俺はスタコラサッサとベンチに戻りケータイをいじりながら、残った焼きそばパンを食べる。ただしチラ見は忘れずに。
子狐はジリジリとこちらを警戒しながら焼きそばパンまで歩み寄っていく。3分ほどかけてたどり着き、美味しそうに食べ始めた。
それにしても狐がこんな町中にいるとは…。誰かのペットか?そういえば狐って確か雑食だったっけ?なら焼きそばパンあげても問題ないよな?
美味しそうに食べる子狐を他所に俺はカバンと袋を持ち立ち上がる。
子狐がビクッとしながらこちらを見ているが、俺は気にする素振りを見せず公園の出口まで歩いていく。
そしてその俺の後ろ姿を興味深そうに見つめ続ける子狐の姿に、このときの俺は気づいていなかった。
そして今日も今日とて、無事平穏に授業は終わる。
美由希さんが「また泊まりにきなよ。お母さんもお父さんも楽しそうだったし」とクラスメートがいる前でそんな爆弾を落としにかかったこと以外は…。
それからは質問の嵐だった。美由希さんは女子からキャーキャー言われながら囲まれ、俺は主に男子からチクショー!こら!おお?などとヤジを入れられながら囲まれていた。
はい。
死ぬかと思いました(°Д°)
美由希さんは美由希さんで囲まれて質問されたときにようやく事の重大さに気付いたのか、顔を赤くしながら誤解を解いていた。
だが顔を赤くしながら否定する美由希さんが可愛かったので、男子達が悶絶したのは仕方ないのかもしれない。
その間、俺は誤解が解けるまでクラス中の男子からつるし上げ状態だったが…。だって全員、目が充血してたんだぜ。一瞬男子達がT-ウィルスにでも感染したのかと疑ったまである。
俺に味方は居なかった。いやいつも昼飯を一緒に食べてる亜依さんと美羽さんは俺の側にいてくれていたか。だが面白がって俺をからかってたからやっぱり味方は居なかった。
ただ照れた美由希さんが俺の背中を何度もビシバシと叩くもんだから背中に紅葉ができていた。あなた普段から修行して凄い怪力なんだから自重しなさいよと心の中で思ったのも束の間、肩をみしりと捕まれこう言われた。
「今度、ウチで一緒にトレーニングしようか?別に遠慮なんてしなくていいからね?ビシバシ鍛えてあげるね」
どうやら声に出ていたようであるorz
そしてなぜか流れ的に俺と美由希さんの組手も組まれてしまった。どうやら俺が太極拳をしていることをなのはからリニス経由で知っていたそうでいつか戦ってみたかったそうな。
どうしよう…。勝てるビジョンが全く思い浮かばねぇ。いざとなればちょっとだけ死ぬ気モード使おうかなぁ。
さて、そんな俺だが今は海鳴市の郊外の工場地帯にいる。美由希さんの拘束から逃れたとき、ユーノからジュエルシードが見つかったと念話で報告を受けた。
なのはとユーノは既に向かっていたらしく、先程到着した俺と違ってもうここについているだろう。さっそく2人に連絡をとろうとしたとき、轟音が響いた。
上空を見上げると、例のごとくジュエルシードの光柱が空へと上がっていた。
俺は直ぐ様セットアップし飛翔魔法を使い、現場へと向かう。するとユーノの封時結界が展開される。とりあえず急ぐか…。あの光の中心に皆がいるはずだ。
急ごう…!
ヒエンside end
◆◆◆
なのはside
PM18:24
海鳴市 工場地帯
なのはは今、工場地帯である金髪の少女と向き合っていた。
自分と同い年に見える少女…。
どこか儚さがありながらも瞳に強さを宿す少女…。
しかしその強さを見せる裏で、なのはは少女の一抹の寂しさを感じ取っていた。
それはなのはが幼き頃に感じていたことがあったから感じ取れたのかもしれない。
二人の少女が向かい合う。
「………」
「………」
二人の少女のバックにはそれぞれのパートナーが控えていた。
「あの……フェイト…ちゃん?」
なのはは緊張しながらもおずおずと話しかける。
「フェイト・テスタロッサ……」
フェイトはなのはに初めて名を告げた。なのははその事が嬉しいのか少し笑みがこぼれながらも名前を反芻する。
「ん……フェイトちゃん」
そして決意したかのように再び話しかける。
「わたしはフェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど……」
「……バルディッシュ…起きて」
《Yes my master.》
フェイトは金色の三角形のデバイス、バルディッシュを前に掲げ、セットアップを完了させる。
「ジュエルシードは…譲れないから」
《Device form setup.》
フェイトは己の決意を見せつけるかのようにバルディッシュを構える。
(やっぱり話し合いは……まだ厳しいのかな…)
なのはも構え、セットアップを完了させる。
「わたしも譲れない……」
そして己のデバイス、レイジングハートを構えた。
「理由を知りたいから…」
「………」
「フェイトちゃんがどうしてジュエルシードを集めてるのか」
「………」
「どうしてそんなに…寂しそうな目をしてるのか」
ビクッ「………」
そのときフェイトが一瞬驚いた表情をする。少なからず思っていた感情を当てられたことに驚いたのだろう。
フェイトは首をブンブンとふり、なのはをキッと睨み付ける。
「よかったら……フェイトちゃんのお話聞かせてほしい…ゆっくりでかまわないから…」
ドクン!
そのときジュエルシードが脈動し、発動する。
それらをいち早く察知した使い魔達がそれぞれのパートナーに知らせた。
「「なのは!/フェイト!」」
フェイトはバルディッシュを近接戦闘用形態サイズフォームへと変え、いち早く飛び出した。なのはもその後を追いかけるようにフェイトの後ろにつく。
「……相変わらずスゴイねこりゃあ…!これがロストロギアのパワーってやつか…!……ずいぶん不完全で不安定な発露のしかただけど…!」
ジュエルシードの凄まじいパワーにアルフが冷や汗を流す。アルフはその恐ろしさが身に染みて分かっているからだ。
『必ず封印するよ……アルフサポートして』
『オッケー……!』
フェイトとなのはは低空飛行で猛スピードでジュエルシードへと近づいていく。
「封時結界展開……!」
そのときユーノの結界が発動し、工場地帯一帯を囲む。
「この結界にこの間の強制転移魔法といい…いい使い魔を持ってる…」
「ユーノくんは……その使い魔…ってやつじゃないよ…。わたしの…大切な友達!」
「友達…?」
「そう!大事な友達!理由があるなら…わたしはフェイトちゃんの事も助けたい!話し合いで…なんとか出来るってことない…!?」
「……ッ話す必要なんてないッ!」
二人は会話をしながら共に地面へと着地する。そして前方にあるジュエルシードを見据えた。
「……ジュエルシードには衝撃を与えたらいけないみたいだ」
「うん…ゆうべみたいなことになったら……わたしのレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも可哀想だもんね…」
「…………だけど…ジュエルシードは譲れないから…」
「わたしは……フェイトちゃんと話をしたいだけ…!きちんと真っ直ぐ!だから……わたしが勝ったらただの甘ったれた子じゃないってわかってくれたら…!お話きちんと聞いてほしい!!」
なのはの瞳には力強さが宿っていた。二人の少女が再び激突しようとしていた。
なのはside end
◆◆◆
アースラside
時空管理局
次元空間航行艦船
『アースラ』ブリッジ
あらゆる次元世界を繋げる空間、次元空間を渡る次元渡航船アースラ。
偶々この近くを渡航していたアースラは、三日前に起きたジュエルシードの波動を感知しこの地球へとやってきた。
「現地ではすでに二名による戦闘行動が開始されています」
「中心となっているロストロギアのクラスはA+。動作不安定ですが…無差別攻撃の特性を見せています」
アースラのオペレーター二名が、この船の艦長兼提督リンディ・ハラオウンへと現状を報告する。
「次元干渉型の禁忌物品…回収を急がないといけないわね…。クロノ・ハラオウン執務官…出られる?」
執務官と呼ばれた少し幼さを残した少年、クロノは小さく頷づいた。
「転移座標の特定はできてます…。命令があればいつでも」
「それじゃあクロノ執務官…これより現地での戦闘行動の停止とロストロギアの回収…両名からの事情聴取を!」
「承知しました…リンディ艦長」
「気をつけてね」
「はい…行ってきます」
時空管理局執務官クロノ・ハラオウンは転移魔法を使い、現場へと向かった。
アースラside end
◆◆◆
ヒエンside
俺がジュエルシードの元までもうすぐ着くと思われたとき、前方に見知った二人の人影があった。
一人は茶髪のツインテールで白いバリアジャケットを身に纏い、白い杖を持った少女高町なのは。
もう一人は金髪のツインテールに黒いバリアジャケットを身に纏い、黒い戦斧を持った少女フェイト・テスタロッサ。
二人はジュエルシードの近くで再び激突しようとしていた。
っておいおい!
そんな近くで戦ったらまたジュエルシードが暴走するぞ!?
それに気のせいでなければ、この風景どこか見覚えがあるんだが…何か重大なことを忘れているような…ってそれよりあれを止めないと!?
なのはとフェイトがお互いの得物を手に、真っ向からぶつかり合うと思われたとき――突如現れた少年によって制止させられた。
「…そこまでだ」
「な…!!なになに!?」
「……ッ!」
なのはのレイジングハートは片手で掴まれており、フェイトのバルディッシュも少年の杖によって受け止められていた。
そしてなのはとフェイトの両手両足に青色のバインドがかけられる。
「フェイト!!/なのは!!」
アルフとユーノが思わず声を上げる。
「ここでの戦闘行為は危険すぎる…。こんな場所で戦闘して…また次元震を起こすつもりか?」
俺はその少年の姿を見て驚愕していた。
そうか…
今まで見たことのあるような風景の違和感…なのはとフェイトの工場地帯での戦闘…
そしてクロノ執務官の登場…
すっかり忘れてたああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
いよいよ小倉唯さんのFuture strike発売&配信ですね。
筆者は既にダウンロード済みです(゜◇゜)ゞ
では、また( ・∀・)ノ